- 更新日 : 2025年2月6日
個人事業主に税務調査が入る確率は?入りやすい特徴や対応を解説
個人事業主の税務調査の確率は、それほど高いわけではありません。ただし、法人と比較すると確率が低いというだけで、リスクがまったくないわけではないため注意が必要です。
本記事では、個人事業主であっても税務調査が入りやすい業種や特徴、対策方法を詳しく解説します。
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目次
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個人事業主に税務調査が入る確率は?
個人事業主に税務調査が入る確率は、一般的に0.5%~1%程度とされています。この数字は、確定申告を行った個人事業主の中で実地調査を受けた件数を基に算出されたものです。
100人に1人以下の割合であり、個人事業主に税務調査が入る確率はそれほど高くないことがうかがえます。
ただし、この確率は単なる平均値であり、すべての事業者が同じ条件で調査対象となるわけではありません。税務署は申告内容や経営状況、業種などの要素を考慮して調査対象を選定しています。そのため、不自然な経費計上や売上の急増などがある場合、調査のリスクが高まることがあります。
中小企業の確率
中小企業が税務調査を受ける確率は、法人全体の平均で約1.5%~2.5%といわれています。これは、個人事業主よりも高い確率ですが、法人全体の中でも規模や業種によってリスクは異なります。
なお、実地調査を受けた企業の8割程度でミスや不備が指摘されているというデータもあり、いかに企業の経理作業が複雑であるか、という点も垣間見られるでしょう。
大企業の確率
一方、大企業が税務調査を受ける確率は約3%前後とされており、中小企業よりも高めです。
これは大企業の取引規模が大きく、申告内容に誤りがあった場合の影響が大きいことや、国際取引や移転価格税制など、複雑な税務問題が絡むケースが多いためです。また、内部統制システムの整備状況なども調査対象となるため、より綿密な確認が必要とされています。
税務調査に狙われやすい業種はある?
税務調査の対象となる業種は、現金取引が多い業態や、経費計上が複雑な業種が中心となっています。
以下で、ここ数年の動向から税務調査に狙われやすい業種を紹介します。
経営コンサルタント
経営コンサルタント業は、令和5事務年度において1件あたりの申告漏れ所得が3,871万円と、最も高額でした。この業種が特に注目される理由は、物品の仕入れなどが少なく原価の確認が難しいことや、経費の計上が適切かどうかの判断が難しく、支払いの対価として物品が残らない点などが理由と考えられます。
1件当たりの追徴課税額は1,040万円と、かなり高額です。なお、経営コンサルタントは令和4事務年度においても申告漏れ所得金額がトップでした。
廃棄物処理業
廃棄物処理業は、マニフェスト(産業廃棄物管理票)と実際の処理内容の整合性が重点的にチェックされる業種です。特に、処理料金の現金取引や、処理量と請求金額の関係性について詳細な確認が行われます。
産業廃棄物の適正処理の確認と合わせて、収入の網羅性についても調査対象となりやすい特徴があります。
ブリーダー
ペット関連ビジネスの中でも、ブリーダー業は令和5事務年度の統計で1件あたり2,028万円の申告漏れが確認され、上位にランクインしています。特に近年のペット人気による需要増加により業績を伸ばした事業者が多く、在庫管理や売上計上の適切性について重点的な確認が行われています。
焼き鳥店
焼き肉店は1件当たり1,657万円の申告漏れがあり、令和5事務年度においては上位にランクインしました。焼き鳥店は個人が経営する店舗も多く、現金取引やレシート管理の不備が調査の対象となりやすい傾向があります。
タイル工事業
タイル工事業は、令和4事務年度の統計で1件あたり1,598万円の申告漏れが確認されています。特に、外注費の実態確認や、工事の進行度合いと売上計上時期の整合性について重点的な調査が行われます。
冷暖房設備工事
冷暖房設備工事業では、現金取引の多さが特徴的で、特に工事代金の現場での受け取りや、協力会社との相殺取引などについて詳細な確認が行われます。売上の計上漏れや外注費の実態確認が重要な調査ポイントとなっています。
バー・飲食店
バーや飲食店は、現金取引が中心となる業態として従来から重点的な調査対象となっています。特に、売上の除外や架空人件費の計上、経費の水増しなどについて詳細な確認が行われます。税務署による覆面調査が行われることもあるようです。
スナックやホステス、ホストなども申告漏れ所得⾦額上位の常連といえます。
建設業・土木工事
建設業・土木工事業は、工事の規模や期間がさまざまで、外注費や材料費の割合が高いことから、特に注目される業種のひとつです。一人親方として活動する事業者も多く、申告内容の適切性について問われるケースが多い傾向があります。特に、工事原価の妥当性や外注費の実態確認が重要な調査ポイントとなっています。
美容室
美容室は現金商売であることから税務調査の対象になりやすい業種のひとつです。特に売上の計上漏れや経費の家事按分(自宅で開業している場合)が適切に行われているかがチェックポイントになります。
税務調査が入りやすい個人事業主の特徴
税務調査は無作為に行われるわけではなく、特定の条件や特徴を持つ個人事業主が対象となりやすい傾向があります。以下では、税務調査が入りやすい特徴について解説します。
売上が900万円台
売上が900万円台の個人事業主は、税務調査の対象になりやすい傾向があります。これは、消費税の課税事業者となる基準である1,000万円に近い売上規模であるためです。
特に、売上が1,000万円をわずかに下回る場合には、意図的に売上を調整しているのではないかと疑われる可能性があります。複数年にわたり売上が900万円台で推移している場合、税務署に売上除外や架空経費計上を疑われかねません。
適正に処理したうえでその金額なのであれば問題はないため、正確な帳簿管理を行いきちんと証明できるようにしておきましょう。
経費が急に増えている
経費の急激な増加も、税務調査のリスクを高める一因です。特に、前年と比較して大幅な経費増加が見られる場合や、売上の伸びに対して経費の増加が不自然な場合、水増しが疑われ調査が入る可能性があります。
所得が不自然に少ない
所得が極端に少ない場合も、税務調査の対象になりがちです。特に、同業他社と比較して利益率が著しく低い場合や、所得水準と生活水準が一致しない場合には注意しましょう。
高額な自家用車や住宅ローンを抱えているにもかかわらず、申告所得が低い場合には不自然な所得隠しを疑われる可能性があります。また、赤字申告を何年も続けている場合も、不審点として調査対象になるケースも見られます。
消費税の還付申告をしている
還付申告は、本来納めた消費税よりも仕入れで支払った消費税額が多い場合に行われます。しかし、この仕組みを悪用して架空の仕入れを計上し、不正に還付金を受け取ろうとするケースもあるため、税務署は慎重に確認しなくてはなりません。
特に高額な還付申告を行った場合には、その内容について詳細な調査が行われる可能性があります。
確定申告していない
確定申告を怠っている個人事業主は、最もリスクの高い対象です。取引先から提出される支払調書やマイナンバー制度による情報収集で、多くの場合、その収入は把握されています。
そのため、確定申告を行わないことで所得隠しとして認識される可能性が否定できません。また、無申告の場合にはペナルティとして重加算税が課されることもあります。
税理士が関与していない
ある程度の事業規模であるのに税理士が関与していない個人事業主は、税務調査の対象となりやすい傾向があります。
これは、自身で帳簿管理や確定申告を行う際にミスや不備が発生しやすいためです。税理士のもとでしっかりと作られた申告書は不備や不正のおそれが少ないと判断されるため、税理士がいない場合は相対的にリスクが高まるといえるでしょう。
個人事業主の税務調査では何を調べるのか
税務調査では、申告内容の正確性を確認するため、事業活動に関連するあらゆる書類や取引記録が調査対象となります。特に売上の計上漏れや不適切な経費計上がないかを重点的に確認します。
以下で、調査対象になるものや、調査のポイントについて詳しく見ていきましょう。
調査対象になるもの
税務調査では、事業活動に関連するすべての資料が調査対象となります。確定申告書や青色申告決算書、収支内訳書などの申告書類、日々の取引を記録した会計帳簿、売掛帳や買掛帳などの補助簿は重点的に確認されるでしょう。
また、取引の証拠となる領収書、請求書、納品書、契約書などの原始書類、銀行口座の通帳や残高証明書も調査対象です。近年では、クラウド会計ソフトのデータや電子メールなどの電子記録も調査対象となっており、調査範囲は広範囲に及びます。
調査されるポイント
税務調査では、申告内容の適正性を確認するため、帳簿書類や証憑類の確認が行われます。特に注目されるのは、売上高と仕入金額の妥当性、帳簿と通帳の整合性、経費計上の適切性です。
前年比で10%以上の増減がある科目や、同業他社と比較して極端な数値を示している項目は、重点的な確認対象となります。例えば、売上高に対して極端に高額な経費計上や、不自然な期ズレがないかなどです。
また、現金取引の管理状況や、事業用経費と私的経費の区分けも重要な確認ポイントといえます。特に高額な設備投資や、役員報酬、接待交際費などについては、その必要性や金額の妥当性について詳細な説明を求められることが多いでしょう。
調査は通常、事業内容の概要や経理処理の方法についてのヒアリングから始まり、そこで得られた情報を元に、より詳細な確認へと進んでいきます。
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個人事業主に税務調査が来た時の対応は?
税務調査の連絡を受けた際は、慌てることなく準備を整え、適切に対応することが大切です。
税務調査には「強制調査」と「任意調査」がある
税務調査は「強制調査」と「任意調査」の2種類に分類されます。
個人事業主への税務調査は、任意調査として実施されるケースがほとんどです。任意調査は納税者の同意のもとで行われ、日程調整も可能です。
一方、強制調査は重大な不正や脱税の疑いがある場合に、裁判所の令状に基づき国税局査察部(マルサ)によって行われます。ただし、任意調査であっても税務職員には質問検査権が認められており、正当な理由なく調査を拒否することはできません。
税務調査に必要な書類を用意する
税務調査では、過去3年分の帳簿書類や証憑類の提示が求められます。
具体的には、確定申告書、総勘定元帳、現金出納帳、請求書、領収書、契約書類などが対象です。特に売上や経費に関する原始書類は重点的に確認されるため、事前に整理して準備しておく必要があります。
税理士に立ち会いを依頼できる
税理士に立ち会いを依頼することで、専門的な観点からの適切な対応が可能になります。顧問契約している税理士なら事業内容や経理・納税の状況を把握していることに加え、税務調査に立ち会う機会も多いため、専門的なアドバイスを受けられるでしょう。
調査当日は、質問の内容によっては税理士に回答を任せることも可能です。
税務調査でよく質問される内容
調査では、事業概要や取引の流れ、売上計上の基準、経費の内容など、多岐にわたる質問が行われます。特に売上の計上時期や経費の妥当性、在庫管理の状況などが重点的に確認されるのが一般的です。
また、一見雑談のような質問でも、取引実態の確認を目的としている場合があるため、注意しましょう。
質問されたことがわからない場合はどうする?
質問の意図や内容が不明確な場合は、その場で安易に回答せず、確認を求めることが重要です。特に、記録として残る質問応答記録書への署名を求められた場合は、内容を十分確認してから対応する必要があります。
不明な点については「確認させていただきたい」と伝え、後日回答することも可能です。
個人事業主に税務調査が来ないための対策
税務調査のリスクを最小限に抑えるためには、日々の適切な経理処理と記録管理が不可欠です。以下の点に注意して、そもそも税務調査の対象にならないようにしましょう。
- 正確な帳簿を作成し申告する
- 領収書・請求書を整理しておく
- 常識的な範囲で経費計上をする
- 税理士に依頼する
- 会計ソフトを活用する
正確な帳簿を作成し申告する
帳簿の正確な記帳と適切な申告は、税務調査対策の基本です。売上と経費を日々正確に記録し、取引の実態を適切に反映した帳簿を作成しましょう。特に、現金取引については取引の都度記録を残し、後から誰が見ても取引内容が明確にわかるようにしておく必要があります。
また、売上の計上基準や経費の計上時期については、一貫した基準を設定し、それを継続して適用することが大切です。期末における在庫の評価や、未払金・前払金の処理なども、正確に記帳する必要があります。
領収書・請求書を整理しておく
取引に関する証憑書類は、取引の実在性を証明する証拠になります。領収書や請求書は取引日順に整理し、いつでも提示できる状態で保管しておきましょう。特に、経費として計上した支出については、事業との関連性を説明できる資料と共に保管することが推奨されます。
電子帳簿保存法の改正により、令和6年以降は一定規模以上の事業者に対して電子取引のデータ保存が必要となりました。紙の領収書・請求書についても、スキャナ保存の要件を満たせば電子データでの保管が認められます。
常識的な範囲で経費計上をする
経費の計上は、事業との関連性が明確で、金額が常識的な範囲内である必要があります。特に、接待交際費や広告宣伝費などの高額な経費については、その必要性や金額の妥当性を説明できる資料を残しておくことが重要です。
また、固定資産の取得や減価償却についても、適切な処理が求められます。事業用と私用の区分が明確でない資産については、使用実態に応じた合理的な家事按分を行い、按分割合については根拠資料を保管しておきましょう。
税理士に依頼する
税理士に依頼することで、申告書の信頼性が高まり、税務調査のリスクを軽減できます。税理士は税法の解釈や適用について専門的な知識を持っており、適切な経理処理と申告をサポートしてくれます。
インボイス制度への対応や、電子帳簿保存法への対応など、新しい制度への対応においても専門的なアドバイスを受けることができる点もメリットです。また、万が一税務調査が入った際の立ち会いや対応についても、専門家としてのサポートを受けられます。
会計ソフトを活用する
会計ソフトを活用すると記帳の正確性が向上し、ミスのリスクを軽減できます。特に、銀行口座やクレジットカードとの連携機能を持つソフトなら取引の自動記帳が可能になり、経理処理の負担を軽減しつつ正確な記帳を実現できるでしょう。
電子インボイスへの対応や、電子帳簿保存法の要件を満たす帳簿作成もできるため、業務効率化も図れる点もメリットです。
税務調査の対象にならないよう日頃から対策を
税務調査は、申告内容に不自然な点がある場合や、特定の条件に該当する場合に実施されます。ただしどの事業者も、税務調査が入る可能性はゼロではありません。万が一対象となった場合でも、税務調査は避けるべきものではなく、適切な申告を証明する機会として捉えることも大切です。
日頃から適切な記帳と申告を心がけ、証憑書類を適切に管理するなど継続的な取り組みを行っていきましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
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