- 更新日 : 2024年12月25日
個人事業主は法人を掛け持ちできる?兼業のメリットや注意点を解説
個人事業主と法人を掛け持ちして、節税や保険料の負担軽減をしたいと考えている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、掛け持ちによるメリットやデメリット、マイクロ法人や確定申告の有無について解説します。
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目次
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個人事業主と法人を掛け持ちできる?
個人事業主と法人は、別事業であれば掛け持ちが可能です。
同じ事業を展開してしまうと、売上や経費の付け替えなどをして、意図的に税金を調整できるとみなされるため、税務署より租税回避を指摘される場合があります。
租税回避とは、「一般的ではない方法」によって課税額を減額させようとする行為です。法律的違反ではありませんが法の趣旨に沿った節税対策ではないため、悪質なケースであれば税務署から指摘され、追徴が発生してしまうこともあります。
税務署からの指摘はできるだけ避けたいため、個人事業主で翻訳業務、法人でアパレルといったように、誰からみても別事業だとわかる事業選択をしましょう。
個人事業主が法人を掛け持ちするメリット
個人事業主と法人を掛け持ちすることで、以下のメリットがあります。
個人事業主と法人の両方の節税対策を実施できる
掛け持ちによって、各事業形態両方の節税対策を実施できます。具体的には以下のとおりです。
- 個人事業主として青色申告をすることで、最大65万円の特別控除が受けられる
- 個人事業主と法人で売上を分散することで、消費税の免税事業者を維持できる
- 法人での役員報酬として、給与所得控除が受けられる
- 出張手当や退職金など、法人では経費にできる範囲が広がる
税金の負担を減らすことで手元にお金が残り、事業拡大や設備投資の資金にすることもできます。
法人の役員報酬を少なくすれば社会保険料が安くなる
社会保険料は給与や報酬金額に応じて決められる仕組みのため、役員報酬を少なくすることで、個人と企業それぞれの社会保険料負担分が安くなります。
社会保険に加入できるのは法人のみであるため、個人事業主と法人を掛け持ちした場合、社会保険料の算定基準となるのは「法人の役員報酬」のみとなります。
個人事業主の収入を増やして、法人からもらう役員報酬を少なくすることで、全体の収入金額は下げずに、社会保険料の削減につながります。
法人の社会的信用力を個人事業にも活用できる
個人事業主に比べて法人は社会的信用が高いため、法人と掛け持ちをすることで強みを活かすことが可能です。
個人事業主より銀行融資が受けやすくなるため、資金調達やビジネスの拡大につながります。
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個人事業主と法人を掛け持ちするデメリット
個人事業主と法人の掛け持ちは、以下のようなデメリットもあります。
- 個人事業主と法人の両方の税金がかかる
- インボイス制度の導入により消費税の負担が軽減しづらくなった
- 経費計上などの事務処理の負担が増える
- 法人では社会保険への加入が必須となる
個人事業主と法人の両方の税金がかかる
個人事業主と法人は、それぞれで発生した税金を両方で納める必要があります。各種税金は次のとおりです。
個人事業主 |
|
---|---|
法人 |
|
上記の中でも法人住民税だけは、利益額に関係なく発生する「均等割」と呼ばれる税金の納付が必要です。
均等割とは、法人であれば支払う義務があり、資本金等の額や従業員の数によって金額が決まります。
赤字であっても均等割の支払いは必ず発生するため、個人事業主のみの場合よりは、税の負担額は確実に増えてしまう点に留意しましょう。
インボイス制度の導入により消費税の負担が軽減しづらくなった
節税を見込んで個人事業主と法人の掛け持ちをしても、インボイス制度の導入による影響で期待通りに叶わない可能性があります。
免税事業者であることを理由に、取引先から取引の見直しを求められた場合、課税事業者への変更も選択肢に入るでしょう。
そのため、取引継続のために課税事業となった場合、消費税の負担軽減どころか申告業務が増加してしまいます。
法人と掛け持ちしている個人事業主が課税事業者へと変更するなら、消費税や申告業務の負担増加に留意して検討しましょう。
経費計上などの事務処理の負担が増える
経費処理や確定申告は、法人と個人の各事業で必要になるので、以下のような事務負担が増えます。
上記に加えて法人は決算処理が必要になるため、個人事業主に比べて複雑な経理業務が求められます。
事務負担の増加によって事業に集中できない可能性や、各事業の売上計算や経費処理などの混同によって税務署から指摘されるリスクがあります。
法人では社会保険への加入が必須となる
法人を設立した場合、従業員がいなくても社会保険への加入が義務付けられています。
従業員0人で代表だけの法人であれば、個人事業主で国民健康保険を払うより、法人と掛け持ちし、社会保険に加入したほうが保険料を押さえられるメリットがあります。
しかし、社会保険料は従業員と会社の折半で支払う仕組みのため、従業員を雇用すると会社側の保険料負担分が増えてしまうのです。
資金に余裕がないうちに従業員を雇ってしまうと、社会保険料の支払いが重荷になる可能性がある点に注意しましょう。
個人事業主との掛け持ちでよくあるマイクロ法人とは?
個人事業主として事業活動をおこなったまま、法人の代表を掛け持ちすることで、多数のメリットを得られるため、最近ではマイクロ法人を設立する機運が高まっています。
マイクロ法人とは、個人事業主が税金や社会保険料の節減、社会的信用を活用する目的で設立された会社を指します。会社法で正式に定義されたものではなく、法律上は一般的な法人と同じ扱いです。
しかし、一般的な法人と異なる部分があります。
マイクロ法人 | 一般的な法人 | |
---|---|---|
規模の大きさ | 株主・役員・従業員が自分ひとり | 株主や従業員が複数 |
設立の目的 | 税金や社会保険料の低減 | 事業規模の拡大 |
また、設立する法人格の種類に決まりはなく、各特徴や利点を踏まえて将来のビジョンに合わせて選択をします。
株式会社 |
|
---|---|
合同会社 |
|
節税対策が目的であるなど、法人化に費用をかけたくないという場合は合同会社で設立をし、事業拡大のタイミングで株式会社に変更することも可能です。
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個人事業主は法人を掛け持ちしていても確定申告が必要?
個人事業主と法人は別々の事業形態であるため、事業ごとに確定申告が必要です。
売上や経費は、法人の場合は法人税として申告し、個人事業主は事業所得として申告します。役員報酬を受け取っている場合は、給与所得として確定申告の対象になります。
ただし、ひとりで2つの事業を運営している場合、申告業務が煩雑化する恐れがあるため以下の点に注意しましょう。
- 法人の経費や収支と個人事業主の収支は別々に記録する
- 法人と個人事業主で支払う税の種類が異なるため、計算方法に注意
- 提出書類が違うため、不備を指摘されないように作成が必要
取引や経費の処理が不明瞭だと、税務署から指摘や是正を求められる可能性があるので、疑念を持たれないように、それぞれの収支は明確に分けて管理しておくことが大切です。
個人事業主と法人の掛け持ちは収支管理が大切
別事業であれば個人事業主と法人の掛け持ちはできますが、収支混同をさけるための管理が重要です。
ひとりで2つの事業の経理処理や確定申告が必要なため時間や手間がかかります。誤った申告をしてしまうと、追徴や是正といった税務署から指摘を受ける可能性もあります。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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