• 更新日 : 2025年9月19日

個人事業主のための業務委託源泉徴収マニュアル|対象報酬・計算方法・確定申告について解説

業務委託契約での源泉徴収は、フリーランスや個人事業主にとって避けて通れない税務のポイントです。報酬等を受け取る側では、報酬の種類によって源泉徴収されるかどうかが異なり、支払う側では、自分が源泉徴収義務者かどうかを判断し、適切に税額を天引きして納付する必要があります。

本記事では、源泉徴収の仕組みから対象報酬、計算方法や確定申告での精算などを解説します。

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個人事業主が知っておきたい業務委託契約と源泉徴収の基本

フリーランスや個人事業主が業務委託契約で得る報酬は、場合によっては源泉徴収の対象になります。会社員の給与とは異なり、すべての報酬が源泉徴収されるわけではありません。まずは雇用契約との違いと、源泉徴収制度の仕組みを正しく理解することが大切です。

源泉徴収とは

源泉徴収とは、本来支払を受ける側が納めるべき所得税を、支払う側があらかじめ差し引いて国に納付する仕組みです。会社員の場合は給与支給時に所得税が引かれ、年末調整で精算されます。一方、個人事業主やフリーランスは、自分で年間の所得を計算して確定申告を行い、納税額を決定します。

この違いにより、業務委託契約での報酬が必ずしも源泉徴収の対象という訳ではありません。所得税法で定められた一定の報酬(原稿料や講演料、デザイン料など)のみが対象となります。そのため、報酬の内容や取引先の属性によって、天引きされる場合とされない場合があるのです。個人事業主は、契約ごとに源泉徴収の要否を確認し、必要に応じて確定申告で精算する必要があります。

個人事業主が業務委託で受け取る報酬の源泉徴収

フリーランスや個人事業主が業務委託契約を結び、報酬を受け取る際には、仕事の内容によって源泉徴収が行われる場合と行われない場合があります。ここでは、対象となる報酬の種類や税額の計算方法、さらに差し引かれた税金を確定申告でどう精算するかを解説します。

源泉徴収の対象となる業務委託報酬

所得税法第204条で定められている、個人事業主への報酬のうち源泉徴収の対象となる8種類は以下のとおりです。

  • 原稿料や講演料などの原稿作成・講演に対する報酬
  • 弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、土地家屋調査士など特定の資格を有する者への報酬
  • 社会保険診療報酬支払基金などから支払われる診療報酬以外の医師や歯科医師への報酬
  • プロフェッショナルスポーツ選手やモデル、外交員などへの報酬・料金
  • 芸能人などへの出演料、演出料、指導料などの芸能に関する報酬
  • ホステス、コンパニオン、バンケットホールスタッフなど接待業務に従事する者への報酬
  • プロ野球選手の契約金など一時的に支払われる契約金
  • 懸賞や競馬などにおける一時的な賞金や類似の金銭・物品の価値

これらに該当する報酬は、支払者が所得税および復興特別所得税を天引きして国に納付する必要があります。

一方、システム開発やサイト構築など、法定対象外の業務報酬については源泉徴収は行われず、報酬を全額受け取ったうえで、自分で所得税を計算して確定申告します。

参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁

源泉徴収される税額の計算方法

通常、源泉徴収税額は報酬額の10.21%です。この税率は、所得税10%と復興特別所得税(所得税額の2.1%)を合わせたものです。同一支払者からの1回の支払いが100万円を超える場合、超過部分には20.42%(基本20%+復興特別所得税2.1%)の税率が適用されます。たとえば120万円の講演料では、100万円までは10.21%、超過の20万円には20.42%が課されます。

ただし、司法書士・土地家屋調査士・海事代理士に支払う報酬に係る源泉税は特別な計算方法となり、「(支払金額-1万円)×10.21%」で計算式します。

消費税の扱いも重要です。請求書などで消費税額が明確に区分されている場合は、税抜金額に対して源泉徴収額を計算しますが、区分されていない場合は税込金額に対して源泉税を計算します。

源泉徴収された税金の確定申告での精算

源泉徴収はあくまで概算の「仮納税」です。個人事業主は原則毎年確定申告を行い、総収入から必要経費や各種控除を差し引いた所得に基づき正確な税額を計算します。原則として、年間の総所得金額から基礎控除社会保険料控除医療費控除などすべての所得控除を差し引いた結果、残額(課税所得)があり、所得税額がある場合に確定申告と納税が必要です。

もし源泉徴収された税額が実際の税額より多ければ差額は還付され、少なければ追加で納税します。

業務委託先である取引先からは申告までに支払調書が作成されるのが一般的で、ここには支払額と源泉徴収額が記載されます。給与所得と異なり源泉徴収票ではなく、支払調書が発行され、支払調書を基に申告書へ正確に記載し、納税額を確定させます。

後述するとおり、支払側は税務署に対しての支払調書の提出義務がありますが、支払先には交付義務はありません。上記、「一般的」としたのは慣行として支払先にも交付しているケースが多いという意味になります。必ずしも支払先にも交付されるとは限りません。

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個人事業主が業務委託契約で支払う報酬の源泉徴収

個人事業主が発注者(支払者)として業務委託契約を結び、他の事業者やフリーランスに仕事を依頼する場合、報酬の内容や支払先の属性によっては源泉徴収を行う義務が発生します。ここでは、源泉徴収義務の有無を判断する条件と、必要な場合の手続きについて整理します。

個人事業主が源泉徴収義務者に該当する条件

所得税法では、源泉徴収の対象となる所得の支払者は、法人だけでなく個人も原則としてすべて源泉徴収義務者に該当するとされています。個人事業主は、報酬の支払内容によって源泉徴収義務者になります。従業員を雇用していなくても、税理士への報酬やライターへの原稿料など、所得税法で定められた特定の報酬を支払う場合には、源泉徴収を行う義務がありますので、源泉徴収義務者となります。

一方、従業員を雇用し、すでに給与の支払いに伴う源泉徴収を行っている個人事業主は、給与支払事務所等の開設届出書を提出しているため、源泉徴収義務者となります。この場合、特定の報酬を外注先に支払う際には、所得税の天引きが必要です。

源泉徴収が必要なケース・不要なケース

源泉徴収の要否は、支払先が法人か個人か、そして報酬の種類によって決まります。

原則として、支払先が法人である場合の業務委託費は源泉徴収の必要がありません。 たとえ報酬の内容が法定の源泉徴収対象に該当していても、株式会社や合同会社などの法人であれば、全額を支払えばよいことになります。

支払先が個人事業主やフリーランスである場合は、その報酬が源泉徴収対象の8種類に該当するかを確認します。デザイン料や原稿料、講演料、士業報酬などが該当します。個人事業主自身が源泉徴収義務者であれば、報酬額の10.21%を差し引いて支払います。支払額が100万円を超える部分には、20.42%の税率等が適用されます。

一方、源泉徴収義務者に該当しない場合や、報酬が対象外業務(事務代行料やシステム開発など)の場合は、天引きは不要です。

源泉徴収を行う場合の手続き

源泉徴収を行った場合は、差し引いた所得税と復興特別所得税を、支払った月の翌月10日までに税務署へ納付します。納付は、金融機関の窓口やe-Taxによる電子納税で行えます。期限を過ぎると延滞税などのペナルティが発生するため、期限管理が重要です。

また、常時10人未満の従業員規模であれば、納期特例制度を利用でき、源泉徴収した税金を年2回(7月と翌年1月)にまとめて納付できます。この特例を受けるには、税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出します。

さらに、年末調整時期または翌年1月末までに「支払調書」を作成します。支払調書には、外注先ごとの年間支払額と源泉徴収額を記載し、原則税務署に提出します。

ただし、税務署への提出義務は、報酬の種類ごとに定められた年間の支払合計額が一定の基準(例:原稿料は5万円)を超える場合に限られます。受給者本人への交付義務はありませんが、求められれば交付することが望ましいです。

支払調書は、フリーランス側の確定申告の参考資料となるため、適切に作成・保管しておくことが必要です。源泉徴収税額や納付状況は帳簿にも反映し、納付漏れを防ぎましょう。

源泉徴収義務違反のペナルティ

個人事業主や法人が源泉徴収義務を怠った場合、税務署から追加の税負担や罰則が科されることがあります。ここではペナルティの内容を解説します。

不納付加算税

源泉徴収した税金を期限までに納付しなかった場合、不納付加算税が課されます。原則として納付すべき税額の10%(納税の告知を受ける前に自主的に期限後納付した場合は5%)が課税されます。例えば、源泉所得税10万円の納付を怠った場合、1万円(自主的な納付なら5千円)が本来の税額に加算されます。金額が少なくても累積すると負担が大きくなるため、納付期限の管理は重要です。

延滞税

納付期限から納付日までの日数に応じて延滞税が発生します。延滞税の年利は法律で定められており、短期延滞(2か月以内)は年2.4%、それを超える部分は年8.7%(2025年現在)です。延滞税は日割り計算されるため、納付が遅れるほど負担が増します。早めの納付が延滞税軽減につながります。

源泉徴収漏れによる追徴課税

源泉徴収そのものを行わなかった場合、後日税務調査などで判明すると、本来天引きすべきだった税額を事業主が一括で負担しなければなりません。この場合、元の税額に加えて不納付加算税や延滞税が同時に課されることが一般的です。受給者から後から税金を回収するのは困難な場合が多く、結果的に事業主が二重の負担を負うことになります。

参考:No.9205 延滞税について|国税庁

ペナルティの予防策

ペナルティを防ぐには、支払先や報酬内容が源泉徴収対象かを事前に確認し、納付期限(原則翌月10日)を守ることが基本です。納期特例を活用して納付回数を減らすことや、会計ソフトやe-Taxを利用して期限管理を自動化することも有効です。日常的な確認と事務体制の整備が、余計な税負担を避けるためのポイントです。

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源泉徴収票・支払調書の保存期間と電子化対応

源泉徴収票や支払調書は、税務上の重要な証拠書類であり、適切な保存と管理が求められます。

保存期間

源泉徴収票や支払調書の保存期間は、事業形態や申告方法により異なります。青色申告の場合、帳簿や関連書類は原則7年間の保存が必要です。白色申告では、法定帳簿は7年間ですが、請求書や領収書などは5年間と定められています。また、法人が欠損金の繰越控除を適用する場合は、10年間の保存が求められます。

これは、税務署が過去に遡って調査を行う際の最長期間に対応するためです。交付した源泉徴収票や作成した支払調書の控え、及びそれに付随する関連書類(納付書や計算根拠資料など)を対象とします。個人事業主の場合も、青色申告・白色申告にかかわらずこの期間の保存が必要です。

参考:記帳や帳簿等保存・青色申告|国税庁No.5930 帳簿書類等の保存期間(法人)|国税庁

電子化対応の要件

紙の書類はスキャンや会計ソフトを利用して電子化できますが、電子帳簿保存法に適合する形で保存する必要があります。主な要件としては、真実性の確保(改ざん防止)、可視性の確保(容易に閲覧できる状態)、関連性の確保(検索性)が求められます。さらに、電子データは保存時から7年間、適切なバックアップを確保することが重要です。クラウド会計サービスやストレージサービスを利用する場合も、これらの要件を満たすことが前提となります。

スキャナ保存の注意点

紙の書類を電子化する場合、スキャンした日付やタイムスタンプの付与、検索機能の確保など、運用ルールを社内または自分自身で定めておくと安心です。また、原本を廃棄するかどうかの判断も重要です。電子帳簿保存法の要件を満たしていない場合は、原本の紙書類も併せて保存しておくべきです。日常的に発行・受領する源泉徴収票や支払調書は、毎年の確定申告や税務調査における重要な証拠となるため、確実な保管体制を整えておきましょう。

参考:スキャナ保存関係|国税庁

正しく理解して源泉徴収対応を徹底しよう

業務委託契約における源泉徴収は、個人事業主にとって「受け取る」と「支払う」の両面で関わる重要な税務手続きです。対象となる報酬の種類や税率、消費税の扱い、そして確定申告での精算方法を正確に把握することで、不要な税負担やトラブルを避けられます。また、支払う立場では、自身が源泉徴収義務者に該当するかを正しく判断し、期限内の納付や支払調書の作成・保存を徹底することが不可欠です。日々の業務の中で制度を正しく運用し、安定した事業基盤を築いていきましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

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