- 更新日 : 2025年10月21日
賃貸収入があるのに確定申告していない個人事業主は要注意!放置リスクや対応策を解説
賃貸収入があるにもかかわらず確定申告をしていない場合、個人事業主にはリスクが生じます。税務署による調査や無申告加算税、延滞税などのペナルティが発生するほか、青色申告控除の適用除外といった不利益も避けられません。ただし、申告漏れに気付いた段階で速やかに行動すれば、負担を最小限に抑えることも可能です。
本記事では、確定申告が必要になる条件や申告しないことによる影響、対処法について解説します。
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目次
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賃貸収入がある個人事業主は確定申告が必要?
賃貸収入を得ている個人事業主は、原則として確定申告を行う必要があります。不動産所得は課税対象であり、一定額を超えると申告義務が生じます。以下では、申告要否の判断基準を整理します。
合計所得から各種控除を引き、課税所得が残る場合は確定申告が必要
2025年分の所得税から、基礎控除額は従来の48万円から58万円に引き上げられます。賃貸収入は「不動産所得」として扱われ、家賃収入から必要経費(固定資産税、修繕費、減価償却費など)を差し引いた金額が算出されます。この金額に他の所得を加え、合計所得から基礎控除58万円やその他の所得控除を差し引いた結果、課税所得が残る場合には確定申告が必要となります。
なお、所得税の申告義務がない場合でも、住民税の申告を求められることがあります。また、金融機関の融資申込や行政手続きにおいて、所得証明として確定申告書の控えが必要となる場面も少なくありません。そのため、税額がゼロであっても申告しておくことには意義があります。
個人事業主には「20万円以下の副収入」ルールは適用されない
給与所得者には、「副収入が20万円以下であれば申告不要」とする特例がありますが、これは個人事業主には適用されません。個人事業主は、すべての所得を自ら計算して申告する義務があるため、不動産所得がたとえ少額であっても、基礎控除を超えていれば確定申告が求められます。
また、賃貸収入は一定の経費があるとはいえ、家賃の総額が年間100万円を超えるケースも多く、経費差し引き後も課税対象となる可能性は高いです。基礎控除が引き上げられた2025年以降も、収支の確認と正確な申告が重要です。
控除額が上がっても「申告不要」にはならない点に注意
基礎控除が58万円へと引き上げられても、「確定申告が不要になる」と早合点するのは危険です。事業所得と不動産所得の合計が58万円を超えれば課税対象ですし、青色申告や赤字の繰越控除などを受けるには、期限内の申告が必須条件となります。
最新の税制改正では扶養控除の見直しなども進められており、合算所得額の変動によって家族の控除要件に影響が出る可能性もあります。税金を払うか否かだけではなく、今後のライフプランや信用にも関わる問題として、確定申告はきちんと行っておくことが望ましいと言えるでしょう。
賃貸収入があるのに確定申告をしていないとどうなる?
賃貸収入があるにもかかわらず確定申告をしていない個人事業主は、税務署からの調査や加算税、延滞税といったペナルティを受ける可能性があります。ここでは無申告に伴う税務上のリスクと罰則について解説します。
無申告加算税や延滞税が課される
確定申告を行わないまま申告期限(通常3月15日)を過ぎると、納税義務を怠ったと見なされ、「無申告加算税」が発生します。これは本来納めるべき税額に対して課される罰金で、通常は15%、50万円を超える部分には20%が課されます。さらに300万円超部分は30%です。
加えて、期限までに納税もしなかった場合は、「延滞税」が発生します。これは税金を遅れて支払うことへの利息のようなものです。延滞税の割合は毎年の基準割合に連動して変動し、法定上限は14.6%で日割り加算されます。
つまり、放置すればするほど課税額が膨らむ仕組みになっています。
自主的な申告で軽減措置がある
一方で、税務署の調査が始まる前に自主的に期限後申告を行えば、無申告加算税は5%に軽減されます。さらに、法定申告期限から1か月以内に申告と納税を済ませれば、加算税がかからない場合もあります。悪質でない限り、早期の対応には軽減措置が設けられています。
ただし、過去に無申告を繰り返していた場合や、多額の申告漏れがあった場合には、通常の無申告加算税よりも高い税率(最大30%)が適用されることがあります。さらに、意図的に所得を隠すなど仮装・隠蔽行為があった場合には、無申告加算税ではなく重加算税が課され、無申告の場合は40%、過少申告の場合は35%が加算されることになります。
青色申告特別控除が適用されなくなる
確定申告を行わないことのもう一つの大きなデメリットが、「青色申告特別控除」が使えなくなる点です。個人事業主が青色申告を選択している場合、期限内に申告することで最大65万円(または55万円)の控除が受けられますが、申告が遅れるとこの控除は10万円に減額されてしまいます。
賃貸収入を含む複数の所得がある場合、青色申告特別控除の適用を失うことは、税負担に大きく影響します。正しく申告していれば大きく節税できるはずが、無申告によって損失となることも少なくありません。
税務署に発覚するリスクは高い
無申告をしていても「バレない」と考えるのは危険です。現在はマイナンバー制度や不動産の使用料に関する支払調書などにより、賃貸収入は税務署に把握されやすい仕組みになっています。法人等が同一人に対し年間15万円を超える家賃等を支払う場合には、支払調書を提出する義務が生じ、税務署に情報が提供されます。
また、金融機関の入出金履歴や不動産登記情報なども調査の対象になり得るため、無申告が判明する可能性は高まっています。
仮に発覚しなければ時効(原則5年、悪質な場合は7年)を迎えることもありますが、税務調査が入り未納分を追徴されるケースがほとんどです。
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確定申告を忘れた場合の対処法は?
確定申告を忘れてしまったとしても、早期に自主的に対応すればペナルティを軽減できる可能性があります。ここでは、期限後申告の基本と手続き方法、注意点を解説します。
できるだけ早く期限後申告を行う
申告期限(通常3月15日)を過ぎてしまっても、税務署の調査が入る前に自主的に申告すれば、「無申告加算税」が軽減されます。期限から1か月以内に申告と納税を完了させた場合は、加算税が「課されない」ケースもあります。それを過ぎても、自主申告であれば通常15%の加算税が5%に軽減される制度があります。
一方、税務署から連絡や調査が入った後では軽減措置が適用されず、加算税が15%〜20%、場合によってはさらに高くなる可能性もあります。申告漏れに気付いた時点で一日でも早く行動することが重要です。
期限後申告の手続きは通常とほぼ同じ
期限後申告は、通常の申告と手続きはほぼ同様です。該当年の「所得税及び復興特別所得税の申告書B様式」と、「不動産所得の収支内訳書(または青色申告決算書)」を準備します。
賃貸収入に関しては、家賃などの収入金額から、固定資産税、修繕費、保険料、ローンの利息、減価償却費などの必要経費を差し引いた金額が所得となります。これらを元に申告書を作成します。
作成が難しい場合は、国税庁の「確定申告書作成コーナー(e-Tax)」を使えば、ガイドに従って入力するだけで計算と帳票出力が可能です。郵送や窓口提出だけでなく、e-Taxからの電子申告も利用できます。
申告と同時に納税も速やかに行う
期限後申告書を提出した日が、新たな納期限とされます。そのため、申告だけでなく納税も速やかに完了させる必要があります。遅れれば「延滞税」が日割りで発生するため、追加負担を防ぐには早めの納付が大切です。
納税は、税務署での窓口納付のほか、金融機関、ダイレクト納付、インターネットバンキング、コンビニ払いなど、さまざまな方法で対応可能です。もし一括納付が困難な場合は、税務署に分割納付(延納)の相談をすることもできます。
賃貸収入を含めていなかった場合は修正申告
「申告自体は済ませたが、賃貸収入を含め忘れていた」という場合は、「無申告」ではなく「過少申告」となり、修正申告が必要です。この場合も、指摘前に自主的に修正すれば加算税は5%に軽減されますが、調査後では10%〜15%になる可能性があります。
申告に使う証拠書類(契約書、通帳、領収書など)は最低5年間の保存義務があるため、忘れずに整備しておきましょう。計算や内容に不安がある場合は、税理士や税務署窓口への相談も有効な手段です。
賃貸収入の確定申告のポイント
賃貸収入のある個人事業主は正しく確定申告を行うことで、節税の恩恵を受けながら、将来の税務トラブルも回避できます。不動産所得は事業所得とは別の区分ですが、最終的には他の所得と合算されて課税されるため、正確な記帳と申告が求められます。
賃貸収入は「不動産所得」として申告する
賃貸による家賃収入は、税法上「不動産所得」に該当します。個人事業主が不動産経営を行っている場合、確定申告書には「事業所得」と「不動産所得」の両方を記載する必要があります。
青色申告の承認を受けている場合は、不動産所得についても「事業的規模」であれば、65万円(または55万円)の青色申告特別控除を適用可能です。青色申告特別控除(最大65万円)は、複式簿記・貸借対照表の添付・期限内申告に加え、不動産所得が「事業的規模」であること等の要件を満たす必要があります。
複式簿記による帳簿付けや貸借対照表の作成が求められますが、65万円の控除を得ることで、所得税・住民税の大幅な軽減につながります。
経費計上で課税所得を正しく抑える
確定申告では、必要経費を正確に計上することが重要です。不動産所得において認められる主な経費には、以下のようなものがあります。
- 固定資産税:所有物件に課される税金
- 減価償却費:建物や設備の取得費を耐用年数に応じて経費化
- ローン利息:物件購入時の借入金に対する利息部分
- 修繕費:維持管理や原状回復などの費用
- 火災・地震保険料:賃貸物件に付帯する保険料
- 管理費・清掃費:管理会社への手数料や共用部の光熱費など
これらの支出は、「収入を得るために必要だった」と認められれば経費として計上でき、課税対象の不動産所得を減らせます。経費の計上漏れがあれば不要な税金を支払うことになるため、漏れのない記帳が重要です。
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不動産所得が赤字だった場合の申告メリットは?
賃貸経営で赤字が出た年でも、確定申告を行うことには大きな意味があります。不動産所得の赤字は、他の所得と相殺できる「損益通算」や、翌年以降に繰り越す「純損失の繰越控除」により、納税額の軽減につながるためです。以下では、それぞれのメリットと申告時の注意点を解説します。
損益通算によって他の所得と相殺できる
不動産所得が赤字だった場合、その損失は事業所得や給与所得などと合算して相殺(損益通算)できます。たとえば、事業所得が200万円の黒字で、不動産所得が50万円の赤字であれば、課税対象となる所得は150万円となり、その分所得税や住民税を軽減できます。
ただし、損益通算ができるのは原則として、赤字の原因が通常の経費や減価償却費など「必要経費」による場合に限られます。住宅ローンの元本返済や自己使用部分の支出は事業に必要な経費とは認められないため、計上する経費の内容には注意が必要です。
繰越控除により翌年以降の黒字と相殺できる
青色申告をしている事業者は、損益通算しても控除しきれない赤字がある場合や、他に所得がない場合でも、「純損失の繰越控除」を活用することで、翌年以降3年間にわたって赤字を繰り越せます。初年度に設備投資などで多額の赤字が出ても、次年度に利益が出た際に相殺できるため、税負担を抑えられます。
この制度を利用するには、期限内に確定申告を行うことが条件です。また、純損失の繰越控除は原則として青色申告をしている事業者の利用に限られており、青色申告の場合は特に、複式簿記による帳簿管理や貸借対照表および損益計算書の作成、期限内申告などが求められ、繰越控除の適用を受けるためにも適正な手続きをする必要があるため注意が必要です。
賃貸収入の申告漏れは早めの対応が肝心
賃貸収入があるにもかかわらず確定申告をしていない場合、個人事業主にとって大きなリスクとなります。無申告加算税や延滞税といったペナルティによる金銭的負担に加え、青色申告特別控除が受けられなくなるなど不利益も生じます。不動産所得は税務署にも把握されやすいため、申告せずに済ませることはできません。
もし申告を忘れていた場合でも、できるだけ早期に自主的に期限後申告を行えば、ペナルティの軽減や信頼回復の余地があります。正しい手続きで速やかに申告・納税することが、結果的に安心と将来の節税につながります。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
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