- 更新日 : 2025年10月21日
個人事業主のエンジニアとして独立するには?手続き・仕事の取り方・税務知識を解説
エンジニアとしての経験を活かし、より自由な働き方や収入アップを目指して個人事業主として独立する人が増えています。しかし、自由と引き換えに必要な準備や知識も多く、開業手続きや税金、案件獲得、経費処理などを自ら管理しなければなりません。
本記事では、個人事業主のエンジニアとしての働き方、メリット・デメリット、開業や確定申告のポイントなどを解説します。
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目次
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個人事業主として働くエンジニアの働き方は?
個人事業主として独立を目指すエンジニアには、いくつかの働き方があります。それぞれの特徴を把握しておくことで、自分に合った独立スタイルを見つけやすくなります。
受託型フリーランスエンジニア
受託型フリーランスは、企業や団体から開発・運用・保守といった業務を請け負い、報酬を得る働き方です。契約形態は業務委託契約が中心で、報酬は月単価制や案件ごとの固定報酬が主流です。特定の技術スタックに精通しているエンジニアは、需要の高いプロジェクトを安定的に受注しやすい傾向にあります。
近年はリモート可やハイブリッド型の案件が定着し、居住地に関係なく全国や海外企業と契約できるケースがコロナ前より増えています。
また、フリーランスエージェントを活用することで営業や契約交渉の負担を軽減しつつ、自分のスキルにマッチした案件に出会える可能性が高まります。
個人開発型フリーランスエンジニア
個人開発型は、自らアプリケーションやWebサービス、SaaS製品などを企画・開発し、それを通じて収益を得るスタイルです。収益化の手段としては、有料アプリの販売、広告収入、サブスクリプションモデル、ノーコードツールとの連携によるマネタイズなどが挙げられます。成功すれば自動的かつ継続的な収入を生む可能性があり、受託とは異なる自立的なビジネス展開が可能です。
ただし、開発からマーケティング、サポートまでをすべて自分で行う必要があるため、技術以外のビジネススキルや長期的な視点も求められます。なお、受託案件で収入を確保しながら、個人開発を副業的に進めるハイブリッド型の働き方もよく見られます。
技術顧問や講師・執筆などの専門性活用型
受託や開発以外にも、技術顧問として企業にアドバイスを提供する、プログラミングスクールの講師として教える、技術書やWebメディアに記事を寄稿するといった働き方も可能です。開発経験が豊富な中堅〜ベテランエンジニアにとっては、マネジメントやアーキテクチャ設計などの知見を活かして報酬を得る有効な手段となります。こうした働き方は時間単位の契約が多く、他の業務との両立もしやすいため、柔軟な働き方を求める個人事業主にとって魅力的な選択肢です。さらに、自身のブランディングや情報発信にもつながるため、継続的な案件獲得にも良い影響を与えます。
エンジニアが個人事業主になるメリットは?
会社員から独立して個人事業主となるエンジニアは、働き方や収入の面でさまざまなメリットを得られます。以下では主要なメリットを解説します。
努力次第で会社員以上の収入が得られる
フリーランスエンジニアの魅力のひとつは、実力次第で会社員時代よりも高収入を実現できる点です。日本全体の平均給与は約460万円(国税庁統計、令和5年)で、ITエンジニアの平均年収は年代や職種により幅がありますが500万円前後とも言われています。フリーランスエンジニアの中には年収800万円を超える人も一定数存在します。
需要の高いスキル(例:クラウド技術、モバイルアプリ、AI開発など)を持つ人材は、単価交渉で有利に働くことが多く、自らの市場価値を反映した報酬を得やすい傾向にあります。また、プロジェクト単位や時間単位で契約することで、働いた分だけ報酬に直結しやすく、成果がダイレクトに収入に反映される点がモチベーションにもつながります。
自分の得意分野や興味のある案件を選べる
個人事業主として働くことで、参画する案件の選択肢が大きく広がります。会社員の場合は与えられたプロジェクトに従事することが基本ですが、フリーランスであれば自分の得意な領域や興味のある技術に関連した仕事を選ぶことが可能です。最新の技術スタックを扱う開発案件や、スタートアップ企業との共同開発など、スキルアップにつながるような案件に積極的にチャレンジすることもできます。自身のポートフォリオや実績を強化しながら、キャリア形成の主導権を握れるのは、個人事業主ならではの大きな利点です。
働く時間・場所の自由度が高い
個人事業主は勤務時間や勤務場所に縛られず、柔軟に働けます。リモートワークを前提とした案件も増加しており、自宅やコワーキングスペース、さらには旅行先などからでも仕事を進めることが可能です。ライフスタイルに合わせた働き方ができるため、家庭の事情や個人の都合に応じて労働時間を調整しやすく、ワークライフバランスの向上にもつながります。また、通勤による時間的・身体的負担がなくなる点も見逃せません。
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エンジニアが個人事業主になるデメリットは?
個人事業主として独立すれば自由な働き方が可能になる一方で、会社員にはない責任やリスクも伴います。以下で主要なデメリットを整理します。
収入が安定しにくい
個人事業主は案件の有無や契約状況によって月ごとの収入に波があります。会社員のように毎月固定給が入るわけではないため、継続的な案件確保や貯蓄が重要になります。また、病気や家庭の事情で一時的に働けなくなった場合でも収入が途絶えてしまうリスクがあるため、生活防衛資金の準備が求められます。
社会保険・年金の負担が増す
会社員時代は保険料の半額を会社が負担してくれていましたが、個人事業主になると国民年金・国民健康保険に全額自己負担で加入する必要があります。さらに、傷病手当金や失業保険などの給付対象外となるため、公的保障の手薄さが将来への不安要素となりがちです。
営業・経理などの雑務もすべて自分で対応する
フリーランスは、案件獲得のための営業活動から契約書の作成、請求処理、会計管理、確定申告まで、すべてを自力で対応する必要があります。技術業務以外にも時間と労力が割かれ、特に税務や経理に不慣れな場合は大きなストレスになることもあります。
エンジニアの個人事業主はどうやって仕事を獲得する?
フリーランスエンジニアとして安定した収入を得るには、継続的な案件獲得が欠かせません。以下では、主要な案件獲得手段を紹介します。
エージェントサービスを活用して営業負担を軽減
IT系に特化したフリーランスエージェント(例:レバテックフリーランス、ギークスジョブなど)に登録すると、自身のスキル・希望条件に合った案件を紹介してもらえます。フルスタックやフロントエンド、インフラ構築など需要の高い技術領域を持つエンジニアは、月単価60万〜100万円以上の高額案件にアクセスできる可能性もあります。エージェント経由では、契約交渉や請求手続きも代行してくれるため、営業が苦手な人にとっても安心です。エンド直請け案件も多く、スキルと報酬のバランスを取りやすい点が魅力です。
クラウドソーシングは実績作りに有効
クラウドワークスやランサーズといったクラウドソーシングサービスも案件探しの手段です。掲載される案件は短期・小規模なものが中心ですが、初心者の実績作りやスキル習得には向いています。Web制作やツール作成、デバッグ対応など、短期間で成果が出しやすい業務をこなすことで、評価や実績を積めます。ただし、単価は全体的に低めで競争も激しいため、本業として安定的に活用するには工夫が必要です。プロフィールや提案文の質を高め、専門分野に特化したアカウント運用を行うことで差別化を図れます。
人脈やコミュニティでの紹介案件を大切に
過去の勤務先やエンジニア仲間、勉強会や技術コミュニティで築いた人脈は、仕事の紹介や共同プロジェクトのきっかけになることがあります。紹介案件は信頼関係があるため、スムーズに業務が進みやすく、単価交渉も柔軟です。SNSやポートフォリオサイトを通じて自身の活動を発信しておくことで、思わぬタイミングで声がかかることもあります。GitHubの公開リポジトリや技術ブログを持つことも、自分のスキルを可視化するうえで効果的です。
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エンジニアとしての開業に必要な手続きは?
エンジニアが個人事業主として独立するには、税務や保険、年金に関する複数の行政手続きが必要です。以下に手順を解説します。
開業届と青色申告の申請は事業設計とセットで進める
開業にあたって最初に提出するのが「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」です。提出することで確定申告時に青色申告を選択できるようになります。青色申告特別控除は、複式簿記と決算書添付で55万円、さらにe-Tax申告または優良電子帳簿保存を満たすと65万円が控除されます。
エンジニアの場合、事業内容の記載には「システム開発」「Webアプリケーション制作」「AI関連業務」など具体性を持たせることが望ましく、金融機関での事業用口座開設や各種契約時に信用性を高める要素となります。また、クラウド会計ソフトとの連携を想定し、早い段階で記帳方法や会計処理の準備も進めておくと効率的です。
国民年金の切り替えは退職後すぐに
会社員から独立した場合、厚生年金から国民年金への切り替えが必要です。これは市区町村の役所で行い、退職日の翌日から14日以内に申請することが義務付けられています。
なお、フリーランスエンジニアは収入変動があるため、一定の条件を満たせば保険料の免除制度や付加年金制度の活用も可能です。将来に備えて公的年金以外にiDeCo(個人型確定拠出年金)を併用する選択肢もあります。
国民健康保険の加入も速やかに
会社の健康保険を脱退した後は、国民健康保険へ加入する必要があります。この手続きも14日以内に、市区町村で健康保険資格喪失証明書や本人確認書類を提出します。フリーランスのエンジニアは業務委託やリモート勤務が中心となるため、病気やケガに備えて民間の医療保険や所得補償保険の検討も重要です。
個人事業主のエンジニアが経費にできるものは?
フリーランスのエンジニアは、業務に関係する支出を経費として計上することで、課税所得を抑え、税負担を軽減することが可能です。以下では、経費として認められる費用と注意点を解説します。
経費にできる代表的な費用
エンジニア個人事業主が経費に計上しやすい支出には、主に次のようなものがあります。まず、業務に使用するパソコン、ディスプレイ、キーボードなどの機材購入費は明確な事業用支出として認められます。また、クラウドサービス(AWSやGCP、GitHubなど)の利用料や、開発ソフトウェアのライセンス費用も経費となります。
通信関連では、インターネット回線や携帯電話料金も、事業使用分が明確であれば按分して計上できます。自宅を仕事場として使用している場合は、家賃や水道光熱費の一部を面積比や使用時間に基づいて合理的に按分すれば、これも経費となります。
さらに、技術書籍の購入、セミナー参加費、資格取得費なども「研修費」として処理可能です。クライアントとの打ち合わせで発生する交通費や会議時の飲食代も「旅費交通費」「会議費」として経費計上できます。
経費処理の注意点
経費計上において重要なのは、「業務に必要であることを証明できる」ことです。そのためには、領収書や請求書など証憑の保管が必須です。また、プライベートとの支出を明確に区分するために、事業専用の銀行口座やクレジットカードを使い分けておくと、帳簿付けや確定申告がスムーズになります。
さらに、経費を過剰に計上すると、税務署に疑われる可能性もあります。家賃や光熱費の按分が非現実的だったり、収入に対する経費率が極端に高かったりすると、税務調査の対象になるリスクがあります。
エンジニアの税金と確定申告はどうなる?
エンジニアとして個人事業主になると、所得税や消費税を含む税金の申告と納付を自ら行う必要があります。エンジニア特有の収入構造や支出傾向に合った対応も重要です。
青色申告で節税を最大化する
個人事業主は毎年、2月16日から3月15日までに確定申告を行い、前年度の所得を申告します。申告方式には「白色申告」と「青色申告」がありますが、節税効果を重視するなら青色申告の選択が有利です。青色申告では最大65万円の特別控除が受けられ、専用ソフトを使った複式簿記や電子申告によって手続きも比較的スムーズに行えます。
エンジニアは業務用PCやソフトウェアの購入、クラウドサービスの利用など経費も多岐にわたるため、記帳管理を正確に行えば控除額を最大化しやすい業種です。青色申告を行うには事前に「青色申告承認申請書」の提出が必要ですが、一度承認されれば翌年以降も継続可能です。
インボイス制度と消費税への対応
2023年10月から導入された「インボイス制度」は、エンジニアにとっても重要な転換点です。この制度では、クライアント企業が仕入税額控除を受けるためには、フリーランス側が「適格請求書(インボイス)」を発行できる登録事業者であることが求められます。
これにより、年商1,000万円以下の免税事業者だったエンジニアも、取引継続のために課税事業者として登録せざるを得ないケースが増えています。エージェント経由で受託している場合、インボイス未対応だと案件を紹介されにくくなる可能性もあります。消費税の納税義務が発生する点には注意が必要ですが、課税事業者となるか免税事業者のままでいるかは、事業規模や取引先の方針に応じて慎重に判断する必要があります。
独立に備えて、開業・税務・仕事獲得の準備を整えよう
エンジニアが個人事業主として働く道には、受託開発や個人開発、技術顧問など多様なスタイルがあります。自由な働き方や収入面でのメリットがある一方、収入の不安定さや自己管理の負担といった課題も存在します。独立に向けては、開業手続きや税務対応、スキルや人脈の整備といった準備が欠かせません。自分に合った働き方と適切な制度の活用により、個人事業主として安定的にキャリアを築けるでしょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
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