- 更新日 : 2025年9月19日
車を減価償却途中で売却するには?個人事業主のための税務と仕訳を解説
個人事業主として事業に使用している車を途中で売却したいと考えたとき、「減価償却中でも売却できるのか?」「税金や確定申告はどうなるのか?」といった疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
本記事では、減価償却の基本から売却時の会計処理、譲渡所得としての税務上の取り扱い、青色申告と白色申告の違いを解説します。
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目次
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個人事業主の車の減価償却とは?途中で売却できる?
個人事業主が事業用に車を購入した場合、その支出は高額になるため、一度に経費として処理せず、数年にわたって分割して費用配分する「減価償却」を行います。以下では、減価償却の基本的な考え方と途中売却の可否について見ていきます。
減価償却は車の取得費を年数で分けて費用化する方法
事業用の車は、会計上「固定資産」に該当するため、耐用年数に応じて費用化する必要があります。たとえば、一般的な普通自動車の法定耐用年数は6年と定められており、購入価格200万円、耐用年数6年(定額法)の場合、満1年間使用した場合の減価償却費は年間約33.3万円となります。ただし、年の途中で購入した初年度は、事業で使用を開始した月から年末までの月数で按分して計算する必要があります。
一方、中古車を取得した場合は、その経過年数に応じて「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」といった計算式(簡便法)で、より短い耐用年数を設定します。
このようにして、毎年の経費を計上でき、正確な所得の算出につながります。なお、減価償却方法には定額法と定率法がありますが、個人事業主が新車を購入する場合は原則として定額法が適用されます。
減価償却中でも車の売却は可能
減価償却が進行中であっても、車を売却することは制度上認められています。事業の内容が変わって車を使わなくなった場合や、より性能の良い車に買い替えたい場合など、状況に応じて売却することは自由です。法律的な制限もなく、資産としての車両を途中で手放すことに問題はありません。ただし、減価償却が途中の状態で売却した場合、帳簿価額や売却価額の整理、利益や損失の計上など、会計処理は複雑になる傾向があります。そのため、売却時には帳簿の整理と確定申告に向けた正確な処理が必要です。
減価償却途中で売却した場合の仕訳
個人事業主が減価償却中の車を売却する際は、帳簿価額の算出と正確な仕訳が必要になります。以下では、減価償却資産の売却に伴う会計処理の流れを解説します。
帳簿価額の確認と売却益・売却損の考え方
減価償却途中の車を売却する際、まず必要なのが「帳簿価額(簿価)」の把握です。帳簿価額とは、購入価格からこれまでに計上した減価償却費の累計額を差し引いた残りの価値です。たとえば、購入価格300万円の車で、すでに200万円の減価償却をしていれば、帳簿価額は100万円となります。この帳簿価額と実際の売却額を比較し、その差額によって売却益または売却損が計上されます。150万円で売却すれば売却益が50万円、80万円であれば売却損が20万円という計算です。
売却時の仕訳の記録例とポイント
帳簿価額100万円の車を150万円で売却した場合の仕訳例は以下の通りです(※税込経理の場合)。
借方(費用・資産の増加) | 金額 | 貸方(収益・資産の減少) | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 1,500,000円 | 車両運搬具 | 3,000,000円 |
減価償却累計額 | 2,000,000円 | 事業主借(売却益) | 500,000円 |
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車を減価償却途中で売却した場合の税金
個人事業主が減価償却中の事業用車両を売却した際、売却益は事業所得ではなく「譲渡所得」として課税対象になります。以下では、譲渡所得としての扱いや計算方法、注意点を解説します。
譲渡所得の扱いと例外
原則として、個人事業主が事業用に使用していた減価償却資産(例:車両)を売却すると、その売却益は「譲渡所得」として扱われます。法人の場合は通常の収益計上で済みますが、個人では所得の区分が明確に分かれているため、申告上も別項目として処理する必要があります。譲渡所得とならない主な例外は、中古車販売業者が商品を売るような「棚卸資産の譲渡」や、取得価額10万円未満で一括経費化した「少額減価償却資産」を売却した場合などです。これらの利益は事業所得に区分されます。
譲渡所得の計算方法と特別控除
譲渡所得は次の計算式で求めます。
取得費は購入金額から減価償却済み額を差し引いた帳簿価額に相当し、譲渡費用とは売却に要した仲介手数料などを指します。譲渡所得には年50万円までの特別控除があり、譲渡益が50万円以下なら所得税がかからないケースも多くあります。実際には、車の売却益が50万円を超えるケースは限られており、非課税となることも珍しくありません。
長期・短期の区分と課税の違い
譲渡所得には保有期間による区分があり、売却時点で5年超の保有なら「長期譲渡所得」、それ以下は「短期譲渡所得」となります。どちらも総合課税の対象ですが、長期譲渡所得は課税計算上、所得金額の1/2だけが課税対象になるため、税負担が軽くなる特例があります。高額な利益が出る場合や、車を長期間保有していた場合には、この区分が大きな影響を与えます。
家事按分と消費税の関係
車を事業とプライベートで併用していた場合は、売却時も使用割合で所得を按分します。たとえば事業割合70%であれば、売却益のうち70%分のみが課税対象になり、残りの30%は生活用動産として非課税です。ただし、損失が出た場合のプライベート部分は損益通算できません。
また、課税事業者である個人事業主が事業として車を売却した場合、事業割合に応じた売却金額に消費税がかかります。たとえば車両価格が100万円、事業割合70%であれば、70万円が課税売上となり、消費税の計算と申告が必要です。
車を減価償却途中で売却した場合の確定申告
個人事業主が車を売却し譲渡所得が発生した場合、確定申告での適切な処理が求められます。申告方法が青色か白色かによって帳簿や提出書類に違いはありますが、譲渡所得の申告方法そのものは基本的に共通です。ここでは、それぞれの申告形態における必要な処理と書類を解説します。
青色申告の場合の処理と書類
青色申告者は複式簿記で帳簿を付け、青色申告決算書を作成します。車を売却した場合、売却益は帳簿上では「事業主借」として仕訳を行い、貸借対照表に反映します。税務上の取り扱いではこの売却益は事業所得ではなく「譲渡所得」として区分され、確定申告書とは別に「譲渡所得の内訳書(総合課税用)」を作成して申告します。
譲渡所得の内訳書には、売却額、取得費(帳簿価額)、減価償却費累計額、譲渡費用などを記載します。これらは日々の帳簿や固定資産台帳の情報から転記します。また、売却した車両は貸借対照表の固定資産から除かれ、減価償却明細からも翌期以降は削除されます。
白色申告の場合の処理と書類
白色申告者でも譲渡所得の計算方法は同じですが、記帳方法は簡易簿記でよく、複式仕訳を行う必要はありません。収支内訳書には車の売却益は記載せず、減価償却費のみを当年の経費欄に反映させます。
譲渡所得の申告にあたっては、青色申告と同様に「譲渡所得の内訳書」と「確定申告書」を作成し、売却に関する情報を正確に記載します。白色申告では貸借対照表の提出義務がない分、資産管理は個人の記録に委ねられます。また、30万円未満の資産に対する特例(即時償却など)は青色申告者のみに認められているため、白色申告では原則として耐用年数に従って減価償却を行う必要があります。
青色・白色いずれの場合も、車の売却により発生した譲渡所得は確定申告書と譲渡所得内訳書で申告します。記帳方法や帳簿の整備に違いはありますが、譲渡所得の申告内容に大きな差はありません。
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減価償却中の車を売却するときは正しく申告しよう
個人事業主が減価償却中の車を売却する場合、帳簿価額や売却益の確認に加え、譲渡所得としての正しい申告が求められます。青色申告・白色申告で処理方法や書類に差はありますが、確定申告では共通して「譲渡所得の内訳書」と「確定申告書」の提出が必要です。売却益が50万円以内であれば非課税となる可能性もあるため、帳簿の整理を徹底し、適切な形で税務処理を行いましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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