• 更新日 : 2025年8月28日

仕事中の怪我は国民健康保険で対応できる?個人事業主が知るべき補償や備えを解説

個人事業主は、仕事中の怪我に対する公的な補償が会社員と比べて限定的であることを理解しておく必要があります。会社員であれば労災保険や傷病手当金によって治療費や休業中の収入が保障されますが、個人事業主の場合は、治療費は国民健康保険で一部補助されるものの、休業による所得補償は基本的にありません。

本記事では、国民健康保険と労災保険の違い、個人事業主が仕事中の怪我に備える手段としての公的・民間保険の活用、そして医療費控除や保険料の税務処理などを解説します。

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個人事業主の仕事中の怪我と国民健康保険の関係

仕事中の怪我に対する公的補償制度は、会社員と個人事業主とで異なります。ここでは、国民健康保険と労災保険の仕組みの違いに触れながら、個人事業主が仕事中に怪我を負った場合、どのように医療費を賄うことになるのかを解説します。

会社員は労災保険が優先され健康保険は使えない

会社員などの労働者が業務中に怪我をした場合、その治療費は原則として労災保険から支給されます。労災保険を利用すれば、治療費の全額が保険で賄われるため、本人の自己負担は一切発生しません。

一方で、仕事中の怪我については、健康保険(協会けんぽや組合健保)は原則適用外です。誤って健康保険証を使って受診してしまった場合でも、後から労災保険への切り替え手続きが必要となり、一時的に医療費の全額を立て替えるか、健康保険組合等に医療費の7割分を返還し、改めて労災保険に請求する手続きが発生するため注意が必要です。このように、会社員は仕事中の怪我に対して健康保険を使うことはできず、労災保険が優先される仕組みとなっています。

個人事業主は国民健康保険で治療を受けられる

一方、個人事業主は労働者ではないため、労災保険の一般的な適用対象外です。そのため、仕事中であっても、怪我の治療には自分が加入している国民健康保険を利用することになります。

つまり、業務中であっても国民健康保険証を使って病院にかかることができ、他の病気や私傷病と同じように医療費の3割を自己負担して受診します。会社員と異なり、事業主自身をカバーする労災制度がないため、原則として、仕事中の怪我の治療には国民健康保険を利用します。ただし、個人事業主であっても、建設業、個人タクシー、運送業など特定の業種や条件によっては労災保険に特別加入でき、その場合は労災保険から治療費が給付されます。

国民健康保険では労災保険と違い、治療費の全額補償はされず、3割の自己負担がかかる点は大きな違いです。万が一の高額な治療が必要となった場合には、国民健康保険の「高額療養費制度」を利用することで、自己負担額には自身の所得に応じた上限が設けられており、その上限を超えた分があとから支給される救済措置も用意されています。これにより、極端に大きな出費を防ぐことは可能です。

個人事業主の仕事中の怪我による収入補償

仕事中の怪我で働けなくなった場合、会社員と個人事業主では受けられる補償制度に大きな差があります。ここでは、それぞれの立場における公的な休業補償の有無や、収入面でのリスクについて解説します。

会社員は労災や健康保険による補償がある

会社員が仕事中の怪我で働けなくなった場合、原則として労災保険から休業補償給付が支給されます。休業4日目から、給付基礎日額(事故発生直前3か月間の賃金総額を暦日数で割ったもの)の60%が給付され、さらに特別支給金として20%が上乗せされるため、実質的に約80%の所得が補償される仕組みです。この制度により、会社員は治療中の生活費を心配せずに療養に専念できます。

さらに、仕事に関係のない病気や怪我で休職した場合でも、協会けんぽや健康保険組合から最長1年半にわたって「傷病手当金」が支給され、標準報酬月額の約67%が補償されます。このように、会社員には万が一の際に備えた制度が整っています。

個人事業主は公的な休業補償が受けられない

これに対して、個人事業主には労災保険の休業給付や傷病手当金といった公的な所得補償制度がありません。仕事中の怪我で一定期間働けなくなった場合でも、労災の適用対象外であるため、治療費こそ国民健康保険で一部補助されるものの、その間の収入はゼロになります。

国民健康保険にも原則として傷病手当金制度はなく、会社員と同様の補償を受けることはできません。重い後遺障害が残った場合に国民年金から支給される障害基礎年金の対象となることはありますが、これはあくまで長期的かつ重度な障害を負った場合に限られ、数週間~数か月の一時的な休業には対応していません。

このように、個人事業主には一度怪我で業務ができなくなると、生活や事業継続に直結する重大な収入リスクが生じます。したがって、自分の身を守るためには、公的制度の限界を認識したうえで、民間保険などによる事前の備えが欠かせません。

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個人事業主が仕事中の怪我に備えるための対策

個人事業主は、会社員のような公的な休業補償制度がないため、仕事中の怪我に備える自助努力が必要です。ここでは、労災保険の特別加入と民間保険の活用という2つの対策について説明します。

労災保険の特別加入制度を利用する

個人事業主や一人親方でも、一定の条件を満たせば労災保険に特別加入できます。これは中小企業の事業主や自営業者などに向けて、労働者でなくても労災保険の補償を受けられるように設けられた制度です。建設業や運送業など、一人で現場に出るような業種では、業界団体などを通じて加入手続きを行うことが一般的です。

特別加入しておけば、仕事中の怪我による治療費は全額労災保険で補償され、窓口負担はありません。さらに、休業中の所得も補償されるため、収入が途絶える不安も和らぎます。保険料は全額自己負担ですが、社会保険料として所得控除の対象となり、確定申告で節税にもつながります。まずは自分の業種が加入対象となっているかを確認し、活用を検討しましょう。

民間保険で補償を補完する

公的制度に加えて、民間の保険に加入しておくことも重要です。個人事業主向けの代表的な保険としては、就業不能保険(所得補償保険)と傷害保険があります。

就業不能保険は、病気や怪我で働けなくなった場合に給付金を受け取れるもので、補償開始までの待機期間が短いプランもあり、収入が不安定な事業主に適しています。一方、傷害保険は事故による入院・通院費、死亡・後遺障害などに対応し、仕事中かどうかを問わず広く補償する商品もあります。24時間補償型のものを選べば、業務中の事故にも対応可能です。

中には、健康保険の3割自己負担や保険適用外の医療費(先進医療の技術料など)をカバーする特約付き商品もあり、高額治療費に対する備えとして有効です。就業不能保険であれば、働けない期間中に一定の収入を確保でき、事業や生活の維持にも役立ちます。補償内容や保険料を比較し、自身の業務内容やライフスタイルに合ったプランを選びましょう。

医療費控除の活用も忘れずに

仕事中の怪我で高額な治療費を支払った場合には、確定申告で「医療費控除」の対象になることがあります。1年間の医療費が10万円(または総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%)を超えた場合、超過分を所得控除でき、所得税の還付を受けられる可能性があります。治療費の領収書は保管し、確定申告時に活用すると負担軽減につながります。

仕事中の怪我による医療費と医療費控除の正しい申告方法

仕事中の怪我で医療費を支払った場合、その費用を確定申告でどう処理するかは、個人事業主にとって重要なポイントです。ここでは、医療費控除の対象になるケースと、経費計上との違いについて整理します。

医療費控除の対象となる費用

国民健康保険を利用して治療を受けた場合、自己負担分(通常3割)や保険適用外の診療費は、医療費控除の対象になる可能性があります。医療費控除は、1年間に支払った医療費の合計が10万円(または総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%)を超える場合に、超過分を所得から控除できる制度です。

対象になるのは、治療費や入院費、処方薬代、通院にかかる交通費(電車やバスなど公共交通機関。自家用車でのガソリン代や駐車場代は対象外。)などです。仕事中の怪我でも、事業用経費に該当しない支出については、医療費控除で処理するのが原則です。

経費にできる場合と医療費控除との違い

仕事中の怪我に関する医療費であっても、原則として事業経費にはなりません。医療費は「生計費」の一部と見なされるため、たとえ業務中の事故であっても、国税庁の見解では経費計上ではなく医療費控除の対象として処理すべきとされています。

ただし、民間保険の掛金や業務用の労災特別加入制度の保険料などは、事業に直接関係する支出として必要経費や社会保険料控除として所得控除に計上できるケースもあります。一方、医療機関に支払った治療費は、確定申告の「医療費控除」の欄に記載する形で処理します。

領収書と記録の管理

医療費控除を正しく申告するためには、医療機関や薬局から受け取った領収書を保管しておくことが大切です。2017年分の確定申告から、原則として「医療費控除の明細書」を作成・提出すれば、領収書の提出は不要となりましたが、税務署から求められた際には提示できるよう自宅で5年間保管しておく必要があります。

また、通院交通費の明細や日付、病院名なども記録しておくことで、よりスムーズに申告が可能です。事業用経費と混在させず、正しく分類・記帳することが、後々の税務調査や申告ミス防止につながります。

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傷害保険・就業不能保険の保険料と給付金の税務処理

個人事業主が仕事中の怪我に備えて加入する傷害保険や就業不能保険については、支払う保険料や受け取る給付金の扱いが、税務処理上どうなるのかを明確に理解しておくことが大切です。ここでは、確定申告時の経費計上や課税の有無について解説します。

保険料は基本的に経費にできないが例外もある

原則として、傷害保険や就業不能保険の保険料は「生活保障を目的とした個人支出」と見なされ、事業経費にはできません。これは、所得税法上、私的なリスクに対する備えと位置づけられているためです。

ただし、保険の内容が「事業専用」と明確にされており、対象が仕事中の事故や就業不能に限定されている場合は、支払った保険料を必要経費として計上できるケースもあります。たとえば、従業員を雇用している個人事業主が、その従業員を被保険者として加入する傷害保険の保険料は、福利厚生費等として経費計上できます。個人事業主の場合でも、保険会社に契約内容を確認し、事業に直結する補償内容であれば税務上の経費処理が可能なことがあります。

給付金の課税有無は契約内容により異なる

傷害保険や就業不能保険で給付金を受け取った場合、その金額が課税対象になるかどうかは、契約形態や保険の目的によって異なります。

自分自身が契約者・被保険者・受取人となっている場合、原則として入院給付金や通院給付金などは「非課税」とされます。これは、所得税法上、身体の傷害に起因して支払われる給付金と見なされるためです。一方で、業務上の損害を補填する性質が強い場合や、法人契約で従業員が受け取るケースなどでは、給付金が課税対象になる場合があります。

また、給付金が事業の売上補填として扱われるような構造になっている場合には「雑所得」として課税されることもあるため、受給時には内容の確認が必要です。確定申告時には、非課税と判断した根拠を明記しておくと安心です。

個人事業主は仕事中の怪我に備えて制度と保険を正しく活用しよう

個人事業主が仕事中に怪我をした場合、会社員とは異なり公的な補償が限定的であるため、自助努力による対策が不可欠です。国民健康保険を利用して治療を受けられるものの、治療費の自己負担は避けられず、さらに休業期間中の収入補償は基本的に存在しません。保険料の経費処理や給付金の課税関係など、税務上の取り扱いも事前に理解しておくことで、リスク発生時に落ち着いて対応できます。自身の業務内容やライフスタイルに合った準備を行い、安心して事業を継続できる体制を築いていきましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

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