• 更新日 : 2025年9月17日

個人事業主はパートと掛け持ちできる?確定申告・税金・社会保険の疑問をまとめて解説

個人事業主がパートを掛け持ちすることは可能ですが、それに伴い税金や社会保険の手続きが発生するケースがあります。パート先で年末調整を受けられる場合でも確定申告が必要になることもあるなど、把握しておきたいポイントも少なくありません。

本記事では、個人事業主がパートを掛け持ちする際の確定申告や税金、社会保険について解説します。

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個人事業主はパートと掛け持ちできる?

個人事業主は、パートとの掛け持ちが可能です。法律で禁止されているわけではなく、事業所得給与所得の両立は問題ありません。ただし、パート先によっては副業が禁止されており、個人事業が副業とみなされる場合もあるため、パート先の規定を確認しておきましょう。

個人事業主とパートを掛け持ちした場合の税金計算方法

個人事業主として事業を行いながらパートを掛け持ちする場合、事業所得と給与所得が発生します。これらの所得を合算して総所得金額を求め、そこから控除額を差し引いた後、税額を計算しなければなりません。確定申告をする際には、パート収入の源泉徴収票の情報と個人事業の売上・経費などを正しく反映し、最終的な税額を算出する必要があります。

実際に計算する際の流れは、以下のとおりです。

  1. 事業所得を計算する
  2. 給与所得を計算する(パート先で年末調整を受けている場合は、その金額をそのまま使用できるため計算不要)
  3. 事業所得と給与所得を合算したうえで、基礎控除などの各種控除を差し引く
  4. 税額を計算する

    それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

    事業所得の計算方法

    個人事業主として得た事業所得は以下の計算式で算出します。

    事業所得=総収入金額−必要経費

    総収入金額には売上金額のほか、物品での受取対価や自家消費分、リベート収入なども含まれます。

    そこから、必要経費を差し引いて事業所得を算出します。

    経費は売上原価、給与賃金、地代家賃、減価償却費など、業務の遂行に必要な支出が対象です。また、青色申告を行うことで、最大65万円の控除が受けられます。

    給与所得の計算方法

    パート先からの収入から計算される給与所得は、以下の計算式で求められます。

    パート先で得た給与収入から、給与所得控除を差し引いた額が給与所得となります。ここで用いる給与所得控除は、給与所得者が業務遂行に伴う諸経費を個別に証明する必要を省くために、国税庁が定めた一律の控除制度です。控除額は、給与収入に応じて段階的に変わります。

    令和6年4月1日現在法令等1に基づく給与所得控除額は、以下のとおりです。

    給与等の収入金額給与所得控除額
    ~1,625,000円550,000円(最低保障額)
    1,625,001円~1,800,000円収入金額×40%-100,000円
    1,800,001円~3,600,000円収入金額×30%+80,000円
    3,600,001円~6,600,000円収入金額×20%+440,000円
    6,600,001円~8,500,000円収入金額×10%+1,100,000円
    8,500,001円以上1,950,000円(上限)

    給与所得控除額は、195万円が上限です。また、給与等の収入金額が660万円未満の場合には、上記の表にかかわらず、所得税法別表第五により給与所得の金額を求めます。

    なお、令和6年12月に発表された「令和7年度 税制改正の大綱」において、給与所得控除の最低保障額を現行の55万円から65万円に引き上げることになっています。

    そのため令和7年の年末調整からは、この新しい最低保障額が適用される見込みです。

    実際の税額計算シミュレーション

    事業所得、給与所得それぞれの計算方法を踏まえたうえで事業所得300万円、パートの給与収入100万円として所得税・住民税をシミュレーションしてみましょう。

    ここでは基礎控除、給与所得控除以外の控除(社会保険料控除青色申告特別控除扶養控除など)は考慮しないものとします。

    合計所得の算出:事業所得+給与所得控除(55万円)を引いた課税対象給与所得45万円=345万円

    所得税

    • 課税所得の算出(所得税):合計所得金額から基礎控除(48万円)を差し引く
    • 所得税の累進課税の適用:日本の所得税は超過累進課税方式を採用しており、このケースでは以下の税率を適用
      • 195万円超~330万円まで:10% 控除額9万7,500円

    【計算】

    ① 合計所得345万円-基礎控除48万円=297万円

    ② 297万円×10%-9万7,500円=19万9,500円

    ③復興特別所得税の加算

    所得税額に対して約2.1%の復興特別所得税がかかります。

    199,500円×0.021 ≒4,189円(端数切捨て)

    所得税合計

    199,500円+4,189円≒203,600円(100円未満切捨て)

    住民税

    ①住民税対象所得の算出:合算所得から住民税の基礎控除を差し引く

    345万円-43万円=302万円

    ②住民税の税率適用

    住民税(所得割)はおおむね 10%(市民税約6%+県民税約4%)

    302万円×10%=30万2,000円

    ③均等割の加算

    自治体により金額は異なりますが、ここでは年間約5,000円(道府県民税 1,000円、市町村民税が3,000円、森林環境税1,000円)と仮定します。

    住民税合計

    30万2,000円+5,000円=約30万7,000円

    実際には社会保険料控除や配偶者控除等、さまざまな控除が加わるためあくまでも概算にはなりますが、シミュレーションのケースでは30万円超の税金がかかることがわかります。

    参考:国税庁 No.1410 給与所得控除
    参考:財務省 令和7年度税制改正の大綱の概要

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    個人事業主がパートしながら節税する方法

    副業やパートを掛け持ちしながら個人事業を営む場合、収入が複数に分かれるため税金の仕組みが複雑になりがちです。しかし、正しい知識と適切な節税対策を行えば、納税額を抑えつつ手取りを増やすことが可能です。ここでは、掛け持ちする個人事業主が実践できる代表的な節税方法を解説します。

    青色申告特別控除を活用する

    個人事業主として開業届と青色申告承認申請書を税務署に提出すれば、事業所得について最大65万円の青色申告特別控除を受けられます(電子申告・複式簿記の場合)。帳簿付けや領収書管理は必要ですが、会計ソフトを使えば初心者でも対応可能です。

    必要経費を漏れなく計上する

    事業に関連する支出は、可能な限り事業所得の必要経費として計上します。自宅での作業に使う光熱費・通信費・家賃の一部、業務用のパソコンや文房具代、打ち合わせ時の交通費や飲食費などが該当します。「プライベートでも使うから経費にできない」と思われがちですが、業務使用分を割合で按分すれば経費計上が可能です。

    業務使用分の割合は、電気の使用料や作業時間、自宅で作業している場合は作業スペースの面積比などで按分します。

    小規模企業共済の加入

    掛け持ちであっても、個人事業主として小規模企業共済に加入できます。これは国が運営する退職金制度のようなもので、掛金は全額所得控除の対象になります。月1,000円から7万円まで自由に設定でき、節税しながら将来の資金準備が可能です。事業の規模や収入が安定していない時期でも無理のない掛金から始められるのが魅力です。

    ただし、パート先で社会保険に加入している場合などは小規模企業共済に加入できないため注意しましょう。

    iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用する

    パート先に企業年金がない場合、iDeCoの利用で掛金全額が所得控除となります。掛け持ちの個人事業主なら、事業所得の節税と老後資金準備を同時に実現可能です。ただし、加入条件や上限額は職業や勤務形態により異なるため、事前に確認が必要です。

    家族への給与支払いを専従者給与とする

    家族が事業の手伝いをしている場合、「青色事業専従者給与」として給与を支払うことで、その分を必要経費にできます。支払額は仕事内容や労働時間に応じた妥当な水準であることが条件です。これにより所得分散が可能になり、全体の税負担を軽減できます。

    個人事業主とパートを掛け持ちした場合、パート先で年末調整を受けてもよい?

    個人事業主がパートをしている場合でも、パート先で年末調整を受けることは可能です。また、1つの職場においてパートの年収が103万円超で、年末まで勤務している場合は年末調整は必ず受けることになります。パート先が年末調整を行ってくれるなら、給与所得部分の税金はそこで精算できます。ただし、個人事業の所得やその他の所得の合計が20万円を超える場合は、パート収入と合わせた合計所得で確定申告する義務が生じます。

    また、年末調整は1社でしか行ってもらえないため、複数のパート先を掛け持ちしている場合は、年末調整をしてもらった1社を除いて自分で給与所得の計算をする必要があります。

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    個人事業主とパートを掛け持ちした場合の確定申告

    個人事業主としての所得とパート収入があって、個人事業やその他の所得の合計が20万円を超えている場合や、パートを掛け持ちしている場合は確定申告が必要です。ここでは申告書の記入方法や注意点、確定申告が不要となるケースなどを解説します。

    確定申告書の記入方法

    確定申告の際には、パート先からの源泉徴収票を手元に用意しておきましょう。

    事業所得の記入

    確定申告書の第一表に、事業所得(売上、所得金額)を記入します。

    青色申告の場合は青色申告決算書白色申告の場合は収支内訳書に売上や経費の詳細を記入し、その合計を申告書に転記します。

    給与所得の記入

    パート先から源泉徴収票を受け取り、その源泉徴収票に記載の支払金額(給与収入)と源泉徴収税額を申告書に転記します。年末調整を受けている場合でも、必ず給与収入と所得の合計額を申告書に記入し、源泉徴収税額も正確に入力しなければなりません。

    合算後の控除や税額計算

    事業所得と給与所得を合算した合計所得をベースに、基礎控除やその他の控除(社会保険料控除、医療費控除など)を差し引いたうえで税額を計算します。

    注意点

    源泉徴収票は確定申告に必要な重要書類であるため、必ず保管しておくようにしましょう。また、年末調整によって給与所得部分の税金精算はされますが、個人事業の所得と合わせて最終的に正確な所得税を計算するためには、確定申告が必要です。年末調整を受けた分の情報(源泉徴収票の内容)を確定申告書に漏れなく反映させることが大切です。

    確定申告が不要になるケース

    合計所得が48万円以下の場合は基礎控除(48万円)の範囲内で収まるため、確定申告が不要です。令和7年度以降は58万円以下で確定申告が不要になります。また、年末調整をした本業以外のパート収入と、事業所得やその他の所得の合計が20万円以下の場合は確定申告が不要です。

    個人事業主はパートとの掛け持ち可能

    個人事業主はパートとの掛け持ちが可能であり、実際に多くの方が事業とパートを両立しています。税金計算では事業所得と給与所得を合算して確定申告を行い、パート先で年末調整を受けていても、個人事業での所得やその他の所得の合計が20万円を超える場合は申告が必要な点には注意しましょう。

    掛け持ちすると税金や社会保険の扱いについては複雑になりがちであるため、不安があれば専門家と相談するとよいでしょう。

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    ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

    マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例

    データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。

    ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

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