- 更新日 : 2025年3月3日
個人事業主はパートと掛け持ちできる?確定申告・税金・社会保険の疑問をまとめて解説
個人事業主がパートを掛け持ちすることは可能ですが、それに伴い税金や社会保険の手続きが発生するケースがあります。パート先で年末調整を受けられる場合でも確定申告が必要になることもあるなど、把握しておきたいポイントも少なくありません。
本記事では、個人事業主がパートを掛け持ちする際の確定申告や税金、社会保険について解説します。
なお、マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が確定申告する際に知っておきたい基礎知識や、確定申告の準備、確定申告書の作成方法・提出方法などを分かりやすくまとめた「青色申告1から簡単ガイド」を無料で用意しております。
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目次
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個人事業主はパートと掛け持ちできる?
個人事業主は、パートとの掛け持ちが可能です。法律で明確に禁止されているわけではなく、事業所得と給与所得の両立は問題ありません。
なお、法的には「個人事業主として働いていることをパート先へ報告しなければならない」という義務はありませんが、職場のルールや信頼関係の観点から、トラブルを未然に防ぐためにも先方に伝えておくほうが望ましいでしょう。パート先の就業規則で副業が制限されている場合や、事前に申告が必要な場合があるため、採用時や勤務開始前に必ず就業規則を確認し、掛け持ちの可否をパート先へ相談しておくと安心です。
個人事業主とパートを掛け持ちした場合の税金計算方法
個人事業主として事業を行いながらパートを掛け持ちする場合、事業所得と給与所得が発生します。これらの所得を合算して総所得金額を求め、そこから控除額を差し引いた後、所得税や住民税を計算しなければなりません。確定申告をする際には、パート収入の源泉徴収票の情報と個人事業の売上・経費などを正しく反映し、最終的な税額を算出する必要があります。
実際に計算する際の流れは、以下のとおりです。
- 事業所得を計算する
- 給与所得を計算する
- 事業所得と給与所得を合算したうえで、基礎控除などの各種控除を差し引く
- 所得税(および復興特別所得税)と住民税を計算する
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
事業所得の計算方法
個人事業主として得た事業所得は以下の計算式で算出します。
総収入金額には売上金額のほか、物品での受取対価や自家消費分、リベート収入なども含まれます。
そこから、必要経費を差し引いて事業所得を算出しましょう。経費は売上原価、給与賃金、地代家賃、減価償却費など、業務の遂行に必要な支出が対象です。
給与所得の計算方法
パート先からの収入である給与所得は、以下の計算式で求められます。
パート先から得た給与収入については、給与所得控除を差し引いた額が実際の給与所得となります。ここで用いる給与所得控除は、給与所得者が業務遂行に伴う諸経費を個別に証明する必要を省くために、国税庁が定めた一律の控除制度です。控除額は、給与収入に応じて段階的に変わります。
令和6年4月1日現在法令等1に基づく給与所得控除額は、以下のとおりです。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
~1,625,000円 | 550,000円(最低保障額) |
1,625,001円~1,800,000円 | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円~3,600,000円 | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円~6,600,000円 | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円~8,500,000円 | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
給与所得控除額は、195万円が上限です。また、給与等の収入金額が660万円未満の場合には、上記の表にかかわらず、所得税法別表第五により給与所得の金額を求めます。
なお、令和6年12月10日に発表された「令和7年度 税制改正の大綱」において、給与所得控除の最低保障額を現行の55万円から65万円に引き上げることになっています。そのため令和7年の年末調整からは、この新しい最低保障額が適用される見込みです。
実際の税額計算シミュレーション
では、事業所得、給与所得それぞれの計算方法を踏まえたうえで事業所得300万円、パートの給与収入100万円として所得税・住民税をシミュレーションしてみましょう。ここでは基礎控除、給与所得控除以外の控除(社会保険料控除、青色申告特別控除、扶養控除など)は考慮しないものとします。
所得税
- 課税所得の算出(所得税):合計所得金額から基礎控除(48万円)を差し引く
- 所得税の累進課税の適用:日本の所得税は超過累進課税方式を採用しており、このケースでは以下の税率を適用
- 195万円まで:5%
- 195万円超~330万円まで:10%
【計算】
① 最初の195万円:195万円×5%=97,500円
② 残りの金額(297万円-195万円 )102万円×10%=102,000円
③復興特別所得税の加算
所得税額に対して約2.1%の復興特別所得税がかかります。
所得税合計
住民税
①住民税対象所得の算出:合算所得から住民税の基礎控除を差し引く
②住民税の税率適用
住民税(所得割)は概ね 10%(市民税約6%+県民税約4%)
③均等割の加算
自治体により金額は異なりますが、ここでは年間約5,000円(道府県民税 1,000円、市町村民税が3,000円、森林環境税1,000円)と仮定します。
住民税合計
実際には社会保険料控除や配偶者控除等、さまざまな控除が加わるためあくまでも概算にはなりますが、シミュレーションのケースでは30万円超の税金がかかることがわかります。
参考:国税庁 No.1410 給与所得控除
参考:財務省 令和7年度税制改正の大綱の概要
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個人事業主はパート先の社会保険に入ったほうがお得?
パート先で加入する場合、従業員が負担する健康保険料は企業と折半になります。そのため、ほとんどのケースでお得になるといえるでしょう。また社会保険に加入すれば、健康保険組合が提供する健康診断、傷病手当、出産手当などの各種給付が受けられるため、万一の病気やケガ、出産時のリスクに対しても手厚い保障が得られるというメリットもあります。
ただ、厚生年金の受給額はパート収入のみに基づくものであり、事業所得も反映されるわけではありません。そのため、それほど大きな年金額の上乗せは期待できないでしょう。
元々個人事業主としての事業所得がかなりある場合、無理に社会保険に加入するためにパート比率を増やして個人事業主としての収入を落とすことになるよりも、そのままの事業所得を維持したほうが手取りとしては多くなることも考えられます。
ただし、短期的にみると健康保険などの負担は軽くなることがほとんどのため、何を優先するか、ケースバイケースで判断するとよいでしょう。家族構成や将来的な見通しも含め判断に迷う場合は、社労士などの専門家に相談することをおすすめします。
個人事業主とパートを掛け持ちした場合、パート先で年末調整を受けてもよい?
個人事業主がパートをしている場合でも、パート先で年末調整を受けることは可能です。パート先が年末調整を行ってくれるなら、給与所得部分の税金はそこで精算できます。ただし、個人事業の所得がある場合は、原則として別途確定申告が必要です。
特に、個人事業の所得が20万円を超える場合は、パート収入と合わせた合計所得で確定申告する義務が生じます。年末調整を受けるかどうかはパート先の方針にもよりますが、年末調整を受けても最終的には事業所得を含めた申告が必要となる点に注意してください。
年末調整について、詳しくは以下の記事もご覧ください。
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個人事業主とパートを掛け持ちした場合の確定申告
個人事業主としての所得とパート収入がある場合、基本的には確定申告が必要です。パート先で年末調整をしていても、個人事業の所得がある以上は確定申告をしないと正しい税額計算にはなりません。ここでは申告書の記入方法や注意点、確定申告が不要となるケースなどを解説します。
確定申告書の記入方法
確定申告の際には、パート先からの源泉徴収票を手元に用意しておきましょう。
事業所得の記入
確定申告書Bの第一表および第二表に、事業所得(売上、経費、所得金額)を記入します。 青色申告の場合は、青色申告決算書(または収支内訳書)に詳細を記入し、その合計を申告書に転記します。
給与所得の記入
パート先から源泉徴収票を受け取り、その源泉徴収票に記載の支払金額(給与収入)と源泉徴収税額を申告書に転記します。年末調整を受けている場合でも、必ず給与所得の合計額を申告書に記入し、源泉徴収税額も正確に入力しなければなりません。
合算後の控除や税額計算
事業所得と給与所得を合算した合計所得をベースに、基礎控除やその他の控除(社会保険料控除、医療費控除など)を差し引いたうえで税額を計算します。
注意点
現在は、源泉徴収票の提出が義務付けられているわけではありません。ただし源泉徴収票は確定申告に必要な重要書類であるため、必ず保管しておくようにしましょう。
また、年末調整によって給与所得部分の税金精算はされますが、個人事業の所得と合わせて最終的に正確な所得税を計算するためには、確定申告が必要です。年末調整を受けた分の情報(源泉徴収票の内容)を確定申告書に漏れなく反映させることが大切です。
確定申告が不要になるケース
事業所得が48万円以下の場合は基礎控除(48万円)の範囲内で収まるため、事業所得部分に関しては確定申告が不要です。
ただし、副業であるパート収入が20万円を超えた場合は、その分の確定申告をしなければなりません。
確定申告について、詳しくは以下の記事もご覧ください。
個人事業主はパートとの掛け持ち可能
個人事業主はパートとの掛け持ちが可能であり、実際に多くの方が事業とパートを両立しています。税金計算では事業所得と給与所得を合算して確定申告を行い、パート先で年末調整を受けていても、個人事業での所得が20万円を超える場合は申告が必要な点には注意しましょう。
掛け持ちすると税金や社会保険の扱いについては複雑になりがちであるため、不安があれば専門家と相談するとよいでしょう。

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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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