- 更新日 : 2023年8月29日
個人事業主は資本金が必要ある?ない?
法人登記の際に必要となる開業資金が資本金ですが、登記の必要がない個人事業主にはこうした概念がありません。しかし、事業を始めるには設備資金や運転資金が必要です。こうした個人事業主の開業資金を、複式簿記の勘定科目上では「元入金」としています。
個人事業主にとっての資本金にあたる「元入金」はどのようなものなのかを理解しておきましょう。
なお、マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が確定申告する際に知っておきたい基礎知識や、確定申告の準備、確定申告書の作成方法・提出方法などを分かりやすくまとめた「青色申告1から簡単ガイド」を無料で用意しております。
チェックリスト付きなので、情報収集だけでなく、書類作成・申告手続きを行う時にもお使いいただけます。
この記事を読む方におすすめ
税理士監修で、40ページ以上の情報がギュッと詰まったお得な1冊となっていますので、毎年使える保存版としてご活用ください。
「マネーフォワード クラウド確定申告」なら日々の取引入力→申告書の作成→申告作業が、オンラインで完結します。
取引明細の自動取得と仕訳の自動作成に対応しており、手入力を減らしてカンタンに記帳・書類を作成。来年の確定申告は余裕を持って対応できます。
PC(Windows/Mac)だけでなく、スマホアプリからも確定申告が可能です。
個人事業主にとっての資本金「元入金」とは
平成18年施行の「会社法」により、それまでは株式会社なら1,000万円、有限会社なら300万円が必要だった最低資本金の規制が撤廃され、株式会社は資本金が1円でも設立できることになりました。しかし実際には開業に伴う初期費用や運転資金が必要です。1円あれば会社を経営できるというわけではありません。その点は個人事業主もまた同様ですが、経理処理上は資本金という科目はありません。
その代わりに設けられているのが「元入金」という科目です。事業を経営するために準備した資金が「元入金」になります。これは個人事業主特有の科目となり、法人経理にはありません。
また、資本金は増資・減資をしなければ営業年度ごとに変化することはありませんが、「元入金」は事業主借と事業主貸の金額をお互いに相殺し、残高の差額を元入金に振り替える作業を行うため、毎年元入金の金額が変化します。
期首の元入金の計算について
「元入金」を求めるには、資産合計から負債合計を差し引きます。個人事業主が開業した際は、開業日に用意した現金・事業のための預貯金・売掛金・支払われた小切手、事業用の固定資産など資産を元入金として計上し、経理をスタートさせます。買掛金・預り金・未払金・借入金など負債があれば、「元入金」から差し引きます。
固定資産を計上する場合には、減価償却による期首残高の計算が必要になります。
期末には、事業による利益と事業以外から得た資金を加え、事業以外の支払いに費やした資金を引きます。この合計が翌期首の「元入金」です。
実際には、元入金は(期末の元入金の額)+(青色申告特別控除前の所得金額)+(期末の事業主借)-(期末の事業主貸)で求められます。
事業主貸の方が多い場合は元入金をマイナスし、事業主借が多い場合は元入金をプラスします。
確定申告時には、上記のような計算式で、翌期首の事業主借と事業主貸の残高をゼロにするため、元入金に振り替える作業を行います。
「元入金」を立てる意味
株式会社は登記によって会社の資金を資本金として明確に区別します。しかし、個人事業主にはこの方法をとることができません。
個人事業主が自宅の光熱費やカードの支払いの口座と事業の入出金の口座をきちんと分けていても、同じ名義では外部の人にはわかりません。
こうした事業とプライベートを経理できちんと分けるために設けられているのが、「元入金」という勘定科目です。
「元入金」に関係して、プライベートな資金の管理に使われる科目には、「事業主借(店主借)」と「事業主貸(店主貸)」があります。
・事業主借:個人事業者が、開業後にプライベートな会計から事業に使う資金を受け入れる際に使われる科目。個人名義の給与用口座から事業のために引き出した現金などが該当する。また、事業用口座の利息や配当金などもこれに含まれる。
・事業主貸:開業後にプライベートな会計へ事業資金から移動したお金が該当する。また、事業用口座から引き落とされる個人用の税金や保険、年金に住宅ローンなどの支払いもこれに含まれる。
事業主借と事業主貸については「事業主貸と事業主借の違いとは?個人事業主の勘定科目を解説」を参考にしてください。
マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が知っておきたい"経費"のキホンや勘定科目を分かりやすく1つにまとめた「個人事業主が知っておくべき経費大辞典」を無料で用意しております。
税理士監修で、経費の勘定科目や具体例だけでなくワンポイントアドバイスもついているお得な1冊となっていますので、ぜひ手元に置きたい保存版としてご活用ください。
提出書類に資本金の記入欄がある場合
取引先への提出書類や、融資を受ける際の創業計画書には、資本金の額を記載する欄が設けてある場合があります。個人事業主には資本金の概念がありませんので、この欄にどう記入するか迷う人が多いようですが、特に記入しなくても差し支えありません。
「元入金」をきちんと算出できる帳簿や申告書類をそろえていれば、資本金の概念がない個人事業者でも融資や新規取引に不利になることはありません。「元入金」が明確であるということは、事業とプライベートをしっかり区別しているということです。
つまり、取引相手に加えて金融機関に対しても信用度を高める科目が、個人事業主にとって資本金代わりとなる「元入金」ということです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。個人事業主には資本金の概念がないため、まとまったお金を準備して事業を開始する必要がありません。その分、事業計画を綿密に立てることがポイントです。また、事業主借や事業主貸で個人と事業のお金がクロスすることがあるため、プライベートと事業の切り分けが難しくなる原因となります。資金管理には気を付けましょう。
マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例
データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
確定申告の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
求人を検討している個人事業主向け!雇用手続きから保険・税務を解説
個人事業主でも、事業が拡大し忙しくなれば従業員の求人を検討する場面が出てきます。しかし、個人事業主が人を雇用する際には、法人企業と同様に様々な手続きや制度対応が必要です。 本記事では従業員を雇用する個人事業主が押さえておくべき法的手続きや効…
詳しくみる修繕積立金は経費になる?個人事業主が押さえるべき税務処理や確定申告のポイントを解説
マンションやアパートなどの集合住宅で毎月支払っている「修繕積立金」。建物の維持管理に不可欠な費用である一方、個人事業主にとっては「経費にできるのか?」といった取り扱いが気になるところです。 本記事では、修繕積立金の基本から管理費との違い、経…
詳しくみる個人事業主の利息の仕訳は?勘定科目や注意点をわかりやすく解説
個人事業主が取り扱う利息には、借入に伴う支払利息や、預金・貸付による受取利息などさまざまな種類があります。これらは一見似ているようでいて、税法上の取扱いや仕訳方法が大きく異なるため、正確な知識が求められます。 本記事では、利息の種類別に適切…
詳しくみる所得計算の基本を個人事業主向けに解説|経費・青色申告・控除のポイントとは
個人事業主として事業を運営していく上で、避けて通れないのが「所得計算」です。売上や経費を正確に把握し、適切に所得を算出することは、税務申告や納税の土台となります。 本記事では、所得計算の基本から控除の考え方などを解説します。 個人事業主の所…
詳しくみる個人事業主のカードローンは難しい?メリット・デメリットや勘定科目も解説
カードローンは、個人事業主でも利用することができます。個人事業主は会社員に比べてカードローンの審査に通りにくいことがありますが、しっかりとポイントを押さえれば審査に通ることは十分可能です。 ここでは、カードローンのメリットやデメリット、審査…
詳しくみる消費税と所得税は二重課税になる?個人事業主が誤解しやすい税の仕組みを解説
個人事業主の間でしばしば疑問に上がる「消費税と所得税の二重課税」問題。売上に含まれる消費税まで所得税の対象になっているのでは、と不安を感じたことはありませんか? 本記事では、消費税と所得税がどのように異なる仕組みで課税されているのかや、二重…
詳しくみる