• 更新日 : 2025年10月21日

個人事業主として人材紹介業を始めるには?要件やメリット・デメリットを解説

副業や独立の手段として「人材紹介業」を個人で始めたいと考える方が増えています。必要な許可を得れば個人事業主でも人材紹介業を営むことは可能です。

しかし、開業には「有料職業紹介事業許可」をはじめ、資産要件・事務所の設備・管理体制など複数の条件をクリアする必要があります。

本記事では、制度の仕組みから許可申請の条件、確定申告の注意点などを解説します。

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人材紹介業は個人事業主でも始められる?許可は必要?

個人で働く人が増える中、人材紹介業を個人事業主として始めたいと考える方も少なくありません。個人であっても人材紹介業を始めることは可能ですが、事前に職業安定法第30条に基づき「有料職業紹介事業」の許可を取得しなければなりません。(学校・商工会等一部届出制で実施できる類型もあります。)この許可は厚生労働大臣が管轄のもとで運用され、事前に資産要件や事業計画の審査を経る必要があります。無許可での営業は同法第32条に違反し、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となるため、必ず正規の手続きを踏むことが重要です。

個人でも人材紹介業は始められる

個人事業主であっても、職業安定法第30条に定められた要件を満たせば、人材紹介業を合法的に営むことができます。法人でなくとも、有料職業紹介事業の許可を取得すれば、求人企業と求職者のマッチングを行い、紹介手数料を得ることが可能です。厚生労働省の指針でも示されているように、人材紹介業は、他の業種と比べて初期投資が少なく済むため、事務所や人材紹介責任者の配置など基本的に体制を整えれば始めやすいのが特徴です。そのため、副業やフリーランスで活動する人が、エージェントとして活躍するケースも増えてきました。

有料職業紹介事業許可がなければ営業できない

人材紹介業は職業安定法に基づく許可制であるため、許可を得ずに営業することは法律違反となります。同法第30条では、有料で人材をあっせんする事業は、厚生労働大臣の許可を受けた者に限られると想定されており、無許可営業は第32条により1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となります。個人で始める場合も、法人と同様に、資産要件や事務所の独立性、専任の職業紹介責任者の選任といった条件をすべて満たしたうえで、適切な手続きを経て許可を取得する必要があります。

業務委託契約型や副業型も可能

個人事業主が人材紹介業に携わる場合は、自ら許可を取得して独立開業する方法に加え、既存の紹介会社やエージェント会社と「業務委託契約」を結ぶ形でも活動可能です。ただし、職業安定法第30条の規定により、有料で人材をあっせんできるのは厚生労働大臣の許可を受けた事業者に限られるため、自ら免許を持たない個人が活動する場合には、必ず契約先の法人が有料職業紹介業の許可を有していることが前提となります。自ら許可を取得して完全独立する方法と、既存エージェントと委託提携型のいずれかを選べる点は、個人事業主の柔軟な働き方を後押ししています。

個人で人材紹介業の免許を取得するために必要な条件は?

人材紹介業の許可(正式名称:有料職業紹介事業許可)を取得するには、法人・個人問わず、一定の要件を満たす必要があります。ここでは、免許取得に必要な条件を解説します。

(1) 資産要件

人材紹介業の許可取得において最も重要な要件の一つが、十分な財産的基盤を備えていることです。厚生労働省が定める以下の基準を満たす必要があります。

  • 純資産額:負債を差し引いた正味資産が500万円以上(事業所1ヶ所あたり)であること。
  • 現金・預金額:自己名義の現金や預金が150万円以上あること。

この資産要件は法人と同様ですが、個人事業主の場合は「資産総額−負債総額」で判定されるため、住宅ローンや自動車ローンなど個人の各種ローンを含む負債全体が純資産額の算定に反映されます。

そのため、表面上の資産が多く見えても、負債の影響で要件を満たせないケースも少なくありません。自宅評価額が2,000万円の評価額があっても、ローン残高が1,800万円あれば、純資産は200万円と算定され、不適格となります。このように、自己資金の把握と債務整理は許可取得の前提条件といえます。

(2) 職業紹介責任者の設置と講習修了

人材紹介業を営む事業所には、必ず「職業紹介責任者」を1名以上配置することが職業安定法施行規則で義務付けられています。この責任者は、労働者と求人者の間で行われる紹介業務全般の適正な運営について管理責任を負います。

責任者に選任されるには、以下の条件をすべて満たさなければなりません。

  • 満20歳以上であること。
  • 常勤であり、かつ当該事業所に常駐できること。
  • 雇用管理等に関する実務経験が3年以上あること。
  • 許可申請前5年以内に、厚生労働省指定の「職業紹介責任者講習」を修了していること。

個人事業主が開業する場合、自身が責任者を兼ねるケースが多いですが、講習未受講のままでは申請できないため、事前に日程を調整し、指定機関で受講し、修了証を取得しておく必要があります。また、名義貸しなど実態のない責任者配置は法令違反とされ、常勤・常駐が原則となります。副業で人材紹介業を行う場合は、勤務実態と兼任の可否について慎重に確認することが求められます。

(3) 事務所の設備と物理的要件

人材紹介業を行うには、適切な環境を整えた専用の事務所を設置することが求められます。特に、求職者や求人企業との面談を行うにあたっては、プライバシーを確保できる面談スペースの設置が必須とされています。

自宅を事務所にする場合でも、以下のような基準を満たす必要があります。

  • 面談スペースが生活空間と明確に区切られていること。
  • 書類保管場所やPCなどの機密情報を適切に管理できる設備が整っていること。
  • 専用の電話番号や郵便受けを設置していること。

また、住所貸し型のバーチャルオフィスは原則として不適合とされますが、シェアオフィスであっても独立した区画が確保され、施錠管理や面談の秘匿性が担保できる場合許可対象になり得ます。

事務所は必ず日本国内に所在し、継続利用が可能であることが必要です。さらに、物件契約書の写しの提出も求められるため、契約内容が不明確だと審査で不利になる可能性があります。個人で開業する場合は、設備基準を満たすかどうか、事前に所轄労働局へ確認すると安心です。

(4) 個人情報管理規程・業務運営規程の整備

人材紹介業では、求職者の履歴書や職務経歴書、求人企業の採用情報など多数の個人情報・企業機密を取り扱います。そのため、個人情報保護法に基づく体制整備と、運営ルールを明文化した規定類の整備が不可欠です。

厚生労働省の「有料職業紹介事業運営容量」でも、以下の規程の提出が求められています。

  • 個人情報管理規程
    情報の取得、利用、保管、廃棄、第三者提供に関するルールを定めたもの。
  • 業務運営規程
    事業全体の運営方針、手数料徴収の基準、職業安定法に基づく遵守事項などを定めたもの。

これらの規程は、申請書類の一部として整合性や具体性が審査対象となるため、形式的な記載では不十分です。内容に不安がある場合には、行政書士や社労士など専門家に相談して制度を高めることが望ましいでしょう。

(5) 2025年の法改正による新たな許可条件

2025年の法改正により、優良職業紹介事業の許可取得・更新に関する要件が強化されました。新たに追加された主な内容は以下の通りです。

  • 金銭等の提供禁止・転職勧奨の禁止
    就職お祝い金やギフト券などの提供、また採用後2年間にわたる転職勧奨は、職業安定法に基づく許可基準として明文化され、全面的に禁止されました(2025年1月1日施行) 。
  • 紹介手数料の実績公表義務
    厚生労働省が運営する人材サービス総合サイトにおいて、職種別の「常用就職1件あたりの平均手数料率」を公表することが義務化されました(2025年4月1日施行) 。
  • 違約金・損害賠償規定の明示義務
    求人企業と契約を締結する際には、違約金や損害賠償に関する規定を契約書面で明確に提示し、誤解が生じないように事前に説明することが義務付けられました(2025年4月1日施行) 。
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個人事業主の"経費"、うまく活用できていますか?

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人材紹介業の免許取得に必要な費用・期間は?

人材紹介業の免許(有料職業紹介事業許可)を個人で取得する場合、申請にかかる費用と許可までの期間を事前に把握しておくことが重要です。費用は全額自己負担で、許可が下りなかった場合も返金されないため、計画的な準備が求められます。

必要な費用は最低でも14万円以上

申請時に必要な費用は大きく分けて2種類あります。まず、登録免許税法に基づく「登録免許税」が9万円、次に申請書に貼付する「収入印紙代(手数料)」が5万円です。これらを合わせて、合計14万円が基本費用として必要となります。さらに、事業所が複数ある場合は、1ヶ所追加するごとに1万8千円の登録免許税が加算されるため、複数拠点での開業を予定している場合は予算計画に留意が必要です。

これらの費用は行政手数料であり、仮に許可が下りなかった場合でも返金されません。そのため、資産要件や責任者講習修了、事務所基準などの条件を事前に満たしているか十分に確認し、不備のないよう慎重に準備を進めることが重要です。

許可が下りるまでには2〜3ヶ月を想定

申請書類を都道府県労働局へ提出してから、正式に許可証が交付されるまでには、通常2〜3ヶ月程度を要します。審査の進行状況や労働局の繁忙期によっては、それ以上の期間を見込む必要があるため、余裕を持ったスケジュール設計が重要です。

厚生労働省の案内でも、開業予定日の2〜3ヶ月前までには申請することが推奨されています。加えて、申請に先立っては「職業紹介責任者講習」の受講、必要書類の収集、税務署への開業届提出といった準備作業が必要となるため、逆算して計画的に進めることが求められます。

個人事業主で人材紹介を始めるメリット・デメリットは?

人材紹介業を個人事業主として始めることには、手軽さや柔軟性といった魅力がある一方で、法人と比較したときに見落とせないリスクや制約も存在します。ここでは、個人事業主として人材紹介業を始める際の主なメリットとデメリットを解説します。

【メリット】手続きの簡便さとコストの低さ

個人事業主として開業する最大の利点は、開業手続きの簡便さにあります。法人のように定款を作成したり、法務局で登記手続きを行ったりする必要はありません。税務署に「個人事業の開業・廃棄等届出届(開業届)」を提出するだけで、すぐに事業をスタートできます。この手軽さは、初めてビジネスに挑戦する人にとって大きな安心材料となります。

さらに、事業開始後の会計処理や税務申告の負担が軽い点もメリットです。法人税や地方税の申告が必要な法人と異なり、個人事業主は所得税・消費税(条件により)などの申告に限られ、複雑な決算書類も不要です。帳簿をつけて確定申告を行えばよく、国税庁のe-Taxを活用すれば、税理士を雇わずに自分で対応できるケースも多いため、コストを抑えながら運営を始められます。

加えて、一般的に個人事業主は法人よりも税務調査の対象になりにくいといわれています。もちろん業種や売上規模によって違いはありますが、国税庁の調査選定方針でも規模の大きい法人や高額所得者が優先されやすいため、小規模で始める事業であれば調査対象になる確率が低く、心理的な負担も少ないといえるでしょう。

【デメリット】信用力・制度面の限界

一方で、個人開業にはいくつかの重要なデメリットも存在します。第一に挙げられるのは「社会的信用力の低さ」です。法人格を持たないため、取引先企業や求職者からの信頼が得にくく、契約や提携交渉で不利になることがあります。実務上も「個人と契約するのは不安」と感じる企業が、法人格を有する大手エージェントを選ぶ可能性は十分に考えられます。

また、将来的に法人化を検討する場合には注意が必要です。個人名義で取得した有料職業紹介事業の許可はそのまま引き継げず、法人名義での「再申請」が必要となります。この場合、資産要件や事務所基準などの再度の審査を受け、許可交付まで2〜3ヶ月を要するため、事業移行のタイミングによっては業務に支障が生じる可能性もあります。

さらに、個人事業主にとっては「資産要件のハードル」が法人以上よりも重く感じられるケースがあります。免許取得の条件である純資産500万円は、個人の場合「資産総額ー負債総額」で判定され、住宅ローンや自動車ローンなどの指摘債務も差し引かれるため、表面的に資産を有していても要件を満たせず、開発準備の段階で資金計画に苦労するケースも見られます。

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人材紹介業を営む場合の確定申告の注意点とは?

人材紹介業を個人事業主として営む場合、一般的な事業と同様に毎年の確定申告が必要になりますが、紹介業特有の収入構造や報酬の受け取り方によって、いくつか注意すべきポイントがあります。

紹介手数料の源泉徴収

人材紹介業の主な収入源は、企業から支払われる「成功報酬型の紹介手数料」です。この手数料が所得税法204条に列挙された報酬・料金等に該当すれば、法人企業が個人事業主へ支払う際には、原則として10.21%の源泉徴収が必要となります。

税法上、報酬や料金等として扱われるため、企業側に源泉徴収義務があり、事業者は差し引かれた後の金額を受け取ることになります。

差し引かれた源泉所得税は、確定申告時に支払調書や振込明細をもとに正確に反映させる必要があります。実際の税額より多く控除されていれば還付を受けられ、逆に不足していれば追納が必要です。なお、支払調書が発行されない場合でも、帳簿や入金記録をもとに収入を把握し、申告漏れを防ぐことが義務付けられています。

売上計上のタイミングと入金遅れ

紹介手数料の売上は、契約の締結日や求職者の入社日をもって収益計上するのが一般的ですが、実際の入金までに数か月を要することも少なくありません。そのため、売上計上時期と入金時期のタイミングがずれることで、現金収支と所得計算にギャップが生じやすくなります。青色申告発生主義を採用している場合は、入金の有無にかかわらず収益が確定した時点で計上しなければならないため、帳簿管理において入金時期だけでなく、契約条件や入社日などの根拠を明確に記録しておくことが重要です。

経費計上の可否と範囲

人材紹介業における主な経費には、打ち合わせや面談に要する交通費、営業活動に必要な名刺作成費やWebサイト運営費、さらには求人媒体への掲載費などが挙げられます。ただし、接待交際費やスーツ代といった支出については、事業に直接関連するかどうかを客観的に証明できるかがポイントになります。私的支出と混同しやすいため、領収書の保存と支出の具体的な使途の記録を徹底しておくと税務上も安心につながります。

人材紹介業の個人開業は可能!制度に即した準備を進めよう

人材紹介業は、個人事業主でも制度に基づき許可を取得すれば始めることが可能です。ただし、職業安定法に基づく「有料職業紹介事業」の許認可制であるため、資産要件・講習修了・事務所基準・業務規程の整備など、準備すべき内容は多岐にわたります。副業・独立いずれの場合も、制度を正しく理解し、スケジュールに余裕を持って開業準備を進めましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例

データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。

ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

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