- 更新日 : 2025年9月19日
赤字でも住民税はかかる?個人事業主が知っておくべき仕組みと対策を解説
個人事業主として事業を営んでいると、年によっては赤字になることもあります。そんなときに気になるのが「赤字でも住民税はかかるのか?」という点です。
本記事では、赤字の際の住民税の仕組みや注意点、必要な手続きについて解説します。
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目次
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赤字の個人事業主に住民税はかかる?
事業が赤字になった年、個人事業主が住民税を納めなければならないのかという疑問はよくあります。ここでは住民税の基本的な仕組みと、赤字時に課税が生じるかどうかを整理します。
個人住民税の仕組み(所得割と均等割)
個人住民税は、前年の所得に基づいて翌年課税される地方税です。税額は「所得割」と「均等割」の合計で構成されます。
所得割は、課税所得(収入から必要経費と各種控除を差し引いた金額)に対して課され、標準税率は一律10%(市町村民税6%、道府県民税4%)です。所得がなければこの部分は課税されません。
一方、均等割は所得の多少に関係なく、住んでいるだけで一律に課される部分です。標準額は、たとえば市町村民税3,000円、道府県民税1,000円、森林環境税1,000円の合計5,000円が目安とされます。自治体によっては若干の差異があるため、正確な金額は居住地の市区町村に確認が必要です。つまり、所得がゼロでも住民である限り課税される可能性があるのが均等割です。
ただし、住民税には非課税の基準が設けられています。単身者で前年の合計所得(※)が45万円以下の場合は、均等割も含めて住民税がかからないことになります。この基準に該当すれば、収入が少ない人も税負担を回避できます。
※「合計所得」とは、給与所得者の場合は、給与所得控除後の金額をいいます。
赤字かつ他に所得がなければ住民税は原則0円
個人事業主が事業で赤字となり、他に給与や不動産所得などが一切ない場合、住民税は課税されません。所得割は赤字でそもそも課税対象がなく、均等割についても、非課税限度額以下であれば発生しないため、住民税全体が0円になります。
単身者であれば所得金額が45万円以下(令和7年の税制改正後で給与収入で110万円以下)が目安です。住民税では所得税よりも基礎控除が低く設定されているため、所得税が非課税でも住民税は発生するというケースもあります。たとえば前年の所得が47万円であれば、所得税は課税されませんが、住民税では課税所得が生じ、数千円程度の納付が必要になることがあります。
なお、法人の場合は赤字でも法人住民税の均等割が必ず課されますが、個人事業主にはこのような最低納税額の制度はありません。前年の所得が非課税基準を満たしていれば、赤字でも住民税は一切かかりません。
赤字でも確定申告は必要?
赤字となった年は「税金が発生しないから申告は不要」と考えがちですが、注意が必要です。法律上は確定申告義務がない場合でも、住民税の判断や行政手続きに支障が出ることがあるため、申告をしておくことが望ましいといえます。
所得税上は赤字なら確定申告義務はない
個人事業主が赤字になった場合、課税所得がゼロ以下であれば所得税の確定申告義務は発生しません。確定申告は、原則として「納めるべき税額がある人」が対象であり、税金が発生しない年に申告を行わなくても違法ではありません。事業所得のみで大きな損失が出た年は、法律上の観点では申告不要とされています。
住民税のためには申告が必要となることも
一方、住民税に関しては事情が異なります。所得税の確定申告をしないと、税務署から市区町村へ所得情報が送られず、自治体はその年の所得を把握できません。そのため、住民税の課税や非課税の判断ができず、行政サービスに支障が出ることがあります。多くの自治体では、確定申告をしていない人に対し、住民税の申告書提出を求めています。赤字であっても、住民税のためには何らかの形で所得を申告することが重要です。
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赤字でも確定申告をするメリット
個人事業主が赤字になった年でも、確定申告を行うことで得られるメリットは少なくありません。ここでは主な利点を解説します。
損失の繰越控除により将来の税負担を軽減できる
青色申告をしている個人事業主であれば、赤字となった年に確定申告を行うことで「純損失の繰越控除」が適用されます。これにより、最大で3年間、翌年以降の黒字と相殺が可能です。たとえば、今年200万円の赤字、翌年300万円の黒字が出た場合、翌年の課税所得は差引き100万円となり、所得税・住民税の負担を大きく減らせます。この控除を受けるには、期限内に正しく申告を行う必要があり、申告しなければ適用されません。
前年分の所得税を還付できる可能性がある
青色申告者は、赤字を繰り越す代わりに「損失の繰戻し還付」を選ぶこともできます。これは、赤字を前年度の黒字と相殺し、既に納めた所得税の一部を還付してもらう制度です。たとえば、前年に黒字で所得税を納めており、今年赤字になった場合に適用できます。繰越控除と繰戻し還付は併用できないため、資金繰りや事業計画に応じてどちらか一方を選ぶ必要があります。
所得証明書を取得できるため行政手続きに役立つ
確定申告をしておくと、たとえ所得がゼロであっても市区町村で「課税証明書(所得証明書)」を発行してもらえます。この書類は、融資申請、児童手当や保育園の入園、公営住宅の申請など、さまざまな行政手続きで必要とされます。確定申告をしていない場合は、非課税証明書すら発行されないことがあり、書類不備で手続きが進まないおそれがあります。
国民健康保険料が軽減される場合がある
国民健康保険料は前年の所得に基づいて算定されるため、確定申告で所得が少ないことを示すことで、保険料が大幅に軽減される場合があります。特に住民税非課税世帯と認定されれば、保険料の負担は非常に小さくなります。一方、申告をしていないと自治体に所得が伝わらず、「所得不明」として高額な保険料が課されることもあります。適正な負担とするためにも、赤字でも申告をしておくことが重要です。
確定申告を行わない場合は「住民税申告書」を利用する
赤字で所得税の確定申告義務がない場合でも、住民税の判断や行政手続きに支障が出ないよう、自治体に所得状況を申告する必要があります。その際に使用するのが「住民税申告書」です。ここでは提出方法や記載内容について解説します。
住民税申告書とは
住民税申告書とは、市区町村が住民税の課税・非課税を判断するために提出を求める書類です。確定申告をしていない人を対象に、前年の所得状況を明らかにするための書類として位置づけられています。特に収入が少ない、または赤字の個人事業主は、この申告を通じて非課税扱いや保険料の軽減措置を受ける根拠となる情報を提供できます。
提出方法と記載内容
住民税申告書は、居住地の市区町村役場の窓口やホームページから入手できます。必要事項として、前年の収入、経費、事業収支の明細、各種所得控除の内容などを記入します。赤字であれば、その旨を具体的に記載し、帳簿の写しや控除証明書の添付が求められる場合もあります。申告期間は例年2月中旬から3月中旬までで、確定申告とほぼ同時期です。書類の提出により、非課税証明書や課税証明書を正しく発行してもらえるようになります。
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個人事業主が赤字でも支払う可能性のある税金
個人事業主が赤字になった場合、所得税や住民税の支払い義務は基本的にありませんが、それ以外の税金については状況によって納税が求められる場合があります。事業所得がマイナスであっても、別の基準により課税される税目が存在するため、注意が必要です。
個人事業税は赤字ならかからないが黒字でも免除される場合あり
個人事業税は都道府県が課税する税金で、事業所得が対象です。ただし、所得金額から「事業主控除」として年間290万円を差し引いた残りの金額に、業種ごとの税率(3~5%程度)をかけて計算されます。つまり、事業所得が赤字なら控除を差し引くまでもなく課税される金額がないため、個人事業税は発生しません。また、黒字であっても所得(所得税の青色申告特別控除は適用されません。)が290万円以下であれば税額はゼロとなるため、事業開始初期や小規模事業者にとっては負担が比較的少ない税目です。
消費税は売上高が一定以上なら赤字でも申告義務あり
消費税は所得ではなく課税売上高に応じて課される税金です。原則として、前々年度の課税売上高が1,000万円を超える事業者は、赤字でも消費税の申告・納税義務があります。さらに、2023年10月に開始されたインボイス制度により、課税売上高が1,000万円以下でも「適格請求書発行事業者」として登録した場合は、同様に消費税の申告・納税義務が発生します。
赤字となるほど経費や仕入れが多ければ、「仕入税額控除」により納付すべき消費税が少なくなり、場合によっては還付を受けられるケースもあります。ただし、前々年の売上が1,000万円以下で免税事業者の要件を満たしていれば、赤字か黒字かを問わず消費税の納税義務は生じません。
固定資産税は赤字でも必ず発生する
事業用に土地や建物、設備などの資産を所有している場合、それらには固定資産税が課されます。これは資産の評価額に基づいて課税されるため、事業の収支とは無関係です。たとえ赤字でも、所有している資産に応じて毎年税金を支払う必要があり、事業の規模や保有資産によっては負担が大きくなることもあります。減価償却の対象となる設備類(機械装置、工具、備品など)については、償却資産税として毎年1月末までに申告が必要です。法人に比べて赤字時の税負担が軽いのが個人事業主の特長
法人の場合、赤字であっても「法人住民税の均等割」が必ず課税されます。これは資本金や従業員数などに応じた定額税で、年間最低でも7万円程度を支払わなければなりません。一方、個人事業主にはこのような最低課税制度はありません。個人住民税の均等割も、所得が一定額以下であれば非課税となります。したがって、赤字が続く状況では、法人よりも個人事業の方が税負担の面で有利といえます。
個人事業主が赤字でも行っておきたい手続きや届出
赤字で税額が発生しない年であっても、個人事業主として必要な手続きや届出はあります。これらを適切に行っておくことで、将来の節税や行政手続きの円滑化につながります。
青色申告の承認申請は早めに行う
赤字であっても、将来的に黒字へ転じた際の節税効果を高めるために、青色申告への切り替えを検討する価値があります。青色申告の承認を受けると、損失の繰越控除や最大65万円の特別控除といった優遇措置が受けられます。(ただし、最大65万円の控除を受けるには、複式簿記での記帳に加え、「e-Taxによる申告」または「電子帳簿保存」のいずれかの要件を満たす必要があり、これを満たさない場合の控除額は55万円となります。)
帳簿の整備が前提ですが、赤字の段階から準備しておくことで、有利な制度を活用できます。
所得控除の申告も忘れずに対応する
赤字で課税が発生しない年であっても、社会保険料控除や配偶者控除などの各種控除は忘れずに届け出ておきましょう。住民税では控除内容が所得税と基本的には共通ですが、控除額が異なることがあります。将来的に黒字となった際の課税所得を正しく抑えるためにも、控除項目の申告は毎年欠かさず行うことが大切です。
赤字でも正しく申告し、将来に備えた対応を
個人事業主が赤字となった年は、基本的に所得税や住民税の課税はありませんが、状況に応じて均等割や他の税負担が発生することもあります。また、確定申告を行うことで損失繰越や保険料の軽減、各種証明書の発行など多くのメリットがあります。申告を怠ると行政手続きに支障が出るため、赤字であっても住民税申告や青色申告の準備、控除の申告をきちんと行うことが重要です。税務の基本を押さえ、将来の黒字に備えて今できる対応をしておきましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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