- 更新日 : 2025年3月3日
個人事業主は消費税還付を受けられる?書類の書き方や勘定科目をわかりやすく解説
個人事業主であっても、消費税の課税事業者で要件を満たす場合は、消費税の還付を受けられます。消費税の還付とは、多く支払い過ぎた消費税の払い戻しを受けることです。消費税の還付を請求できる要件や還付対象になるケース、必要書類などについて解説します。
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消費税還付とは
事業者が納付する消費税は、原則として、以下の計算式により求められます。
消費税還付とは、上記の計算において納付する消費税額がマイナスになるときに発生します。売上に関する消費税額よりも仕入税額控除が上回る場合です。
個人事業主が消費税還付を受ける要件
消費税還付を受けたい場合、課税事業者であること、かつ原則課税を適用していることが要件になります。
課税事業者である
課税事業者とは、消費税の申告を行い、計算上納めるべき消費税額があれば、納付の義務が生じる事業者のことです。個人事業主の場合、以下の事業者が該当します。
- 前々年の課税売上高が1,000万円を超えている
- 課税事業者の選択届を提出している
- 適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けている
前々年の課税売上高が1,000万円以下である免税事業者や課税事業者の選択届を提出していない免税事業者については、消費税の還付は受けられません。免税事業者は事業規模が小規模であることから消費税の納付が免税されている事業者のことです。
原則課税を適用している
消費税の課税事業者のうち、課税売上高が5,000万円以下の事業者については、簡易課税制度が利用できます。中小企業者の納税事務負担を軽減する目的で設けられた、第1種から第6種事業別に定められた40%~90%のみなし仕入率を利用して、仕入税額控除額とする制度です。
簡易課税は、原則的な方法と比較して簡単に消費税額を求められるメリットがある反面、仕入税額控除の割合が固定されることになります。最大でも90%となるため、原則的な計算上は仕入税額控除のほうが上回っていたとしても、消費税の還付を申請することはできません。
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消費税の還付対象になるケース
消費税の課税事業者かつ原則課税の適用を受けていることを前提に、どのようなケースで還付が発生するのでしょうか。主なパターンを3つ紹介します。
経営が大幅な赤字になった場合
消費税の還付が発生する可能性が高いのは、大幅な赤字になってしまった場合です。
事業が赤字になると、売上に対する消費税額よりも仕入税額控除額が上回る可能性が出てきます。ただし、貸借対照表の収益と費用のバランスだけでは判断できません。費用に関する勘定科目の中には、不課税取引や非課税取引に該当するものも含まれるためです。例えば、従業員に支払う給与や保険金、寄附金などは、消費税の課税対象にはなりません。
消費税が課税されない取引を除いて計算する必要があるため、全体の中で非課税取引の割合が多い場合は、大幅な赤字でないと消費税の還付対象にならない可能性があります。
大規模な設備投資や資産投資をした場合
消費税の納税義務が成立するタイミングは、資産の譲渡等をしたときや特定課税仕入れをしたときです。つまり、資産を購入した場合、購入した時点で消費税全額の納税義務が成立すると考えられます。
このような消費税の成立時期を踏まえて、消費税の還付が発生する可能性があるのは、大規模な資産投資や設備投資を行なったタイミングです。投資額が大きいと消費税額も増えることから、仕入税額控除が課税売上に対する消費税額を超える可能性があります。
輸出業者で免税取引の割合が多い場合
消費税は、国内で消費される商品やサービスに対して広く課税される税金です。国内での消費を前提としていることから、国外に対する商品の提供やサービスの提供は輸出類似取引として、一定の要件を満たすことで免税となります。
輸出業者のように輸出をメインにしている会社は、売上高のうち、輸出に関する免税取引の割合が大きくなります。課税売上に対する消費税と比べて仕入税額控除のほうが金額が大きくなる傾向にあることから、輸出の多い業者も消費税の還付が発生する可能性が高いでしょう。
個人事業主が消費税還付を受ける流れと書類の書き方
個人事業主が消費税の還付を受けるために必要な書類や提出先について解説します。
必要書類と書き方
消費税の申告をする場合、提出が求められるのは以下の書類です。
- 課税標準額等の内訳書(申告書第二表)
- 税率別消費税額計算表兼地方消費税の課税標準となる消費税額計算表
- 課税売上割合・控除対象仕入委税額等の計算表
消費税の還付を受ける場合には、上記に加えて「消費税の還付申告に関する明細書」を添付する必要があります。ここでは、消費税の還付申告に関する明細書(個人事業主用)の内容と書き方を簡単に紹介します。
消費税の還付申告書は、全2ページにわたる明細書です。還付申告の理由を記載する項目、課税売上に関する項目、課税仕入れに関する項目があります。
1. 還付申告となった主な理由
該当する主な理由に〇印、該当する理由がない場合はそのほかに理由を記載します。
2.(1)主な課税資産の譲渡等
消費税の課税売上に関する項目で、資産の種類や譲渡年月日、取引金額、取引先、取引金額が100万円以上のものについて、取引金額が大きい順に記載します。(以下同様)千円単位での記載になる点に注意が必要です。取引金額等の下に記載されている(税込 税抜)は消費税の経理方式を表します。該当する方式に丸を付けます。
3.(2)主な輸出取引等の明細
消費税が免税になる輸出取引に関する記載項目です。取引先、取引金額、主な取引商品、所轄税関を記載します。輸出取引等に利用する主な金融機関と通関業者の記載も必要です。
4.(1)仕入金額等の明細
課税仕入れの計算の基礎になった税額について、損益科目と資産科目別に記載する部分です。決算額には損益計算書の金額や資産の取得価額を記載します。課税仕入れにならないものがあれば記載し、決算額から差し引いた額を課税仕入高とします。
5.(2)主な棚卸資産・原材料等の取得
仕入金額等の明細のうち、商品仕入高の内訳を記載する項目です。棚卸資産や原材料に関する内容を記載します。
6.(3)主な固定資産等の取得
仕入金額等の明細のうち、資産の内訳を記載する項目です。
7. 当該課税期間中の特殊事項
還付申告が発生した特殊な事情など、記載しておいたほうがよい内容がある場合に関係する項目です。
申告期限
消費税の還付申告を含む申告期限は、個人事業主の場合、原則として翌年の3月31日です。この日までに消費税の申告や納税を済ませる必要があります。
提出先
消費税の還付申告を含む申告書の提出先は、住所地のある管轄の税務署です。税務署の所在地については、国税庁のホームページからも検索できます。
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還付金の受取時期と受取方法
消費税の還付金の受け取りについて解説します。
受取時期
還付金は、税務署側で申告書の記載内容や添付書類などの確認が行われた後に処理が行われます。申告後すぐに還付されない点に注意しましょう。
国税庁によると、所得税の確定申告や消費税の申告が集中する時期は還付までに時間がかかり、おおむね1カ月から1カ月半が目安になるとしています。電子申告で消費税の申告書を提出する場合は、還付までのスピードが速く、提出から3週間程度が目安になります。
受取方法
還付金の受取方法は2つあります。
まず、指定の預貯金口座に振り込んでもらう方法です。指定の口座に還付金が直接振り込まれるため、別途、何らかの手続きを行う必要がありません。令和5年1月以降は登録済みの公金受取口座を指定することもできるようになりました。
口座振込のほかに、郵便局またはゆうちょ銀行の窓口で還付金を受け取ることもできます。
還付金を受け取った場合の勘定科目と仕訳
消費税の会計処理には、税抜経理方式と税込経理方式があります。税抜経理方式は、消費税額と本体の価格を分けて経理処理する方法です。税込経理方式は、消費税と本体の価格を分けずに経理処理する方法をいいます。
消費税の還付については、税抜経理方式と税込経理方式で違いがあります。
【税抜経理方式の場合】
(例)消費税の還付金として30万円が普通預金に入金された。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 300,000円 | 未収消費税 | 300,000円 |
「未収消費税」は、まだ受け取っていない消費税、つまり還付される消費税のことを表します。還付される消費税を会計処理する際に、受け取った消費税と支払った消費税の残額を未収消費税(還付される場合)として仕訳していることが前提となっています。上記の仕訳は、未収消費税として資産計上していたものを、入金により相殺した形です。
【税込経理方式の場合】
(例)消費税の還付金として30万円が普通預金に入金された。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 300,000円 | 雑収入 | 300,000円 |
消費税の還付に関する仕訳自体は、税込経理方式と変わりません。還付される消費税を会計処理する際に、還付金を「雑収入」に計上します。
消費税還付は要件を満たす場合に受けられる
個人事業主であっても、課税事業者で、かつ原則課税により消費税を申告している場合は、消費税の還付を受けられます。消費税が還付されるのは、大幅な赤字になった場合や大型の設備投資を行なった場合、輸出の割合が大きくなった場合です。還付を受ける場合は、明細書を添付して消費税の申告をする必要があります。
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