• 更新日 : 2022年10月11日

元入金とは?計算方法と仕訳例の解説

元入金とは?計算方法と仕訳例の解説

元入金はさまざまなことが計算に影響するため、貸借対照表で元入金が合わないことや、元入金がマイナスになり、計算に間違いがないのか不安になることがあると思います。

この記事では、そもそもの元入金を説明した上で、確定申告のときや帳簿付けで困らないよう、具体的な仕訳を解説していきます。

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元入金とは

元入金とは、個人事業主の貸借対照表で使われる純資産の勘定科目です。元入金は、個人事業主の出資と事業で得た利益が合計されるため、毎年金額が変わります。ここでいう出資とは、個人のプライベートの資金と事業用資金のやりとりの意味です。

また、元入金の意味は事業を辞めたときに事業主に戻ってくる、または負担する価値を表します。ただし、この価値はあくまでも帳簿価額のための参考程度にしかならず、実際に事業を辞めたときにさまざまな資産を売却し、負債を返済した残りの価値とは異なります。

元入金と資本金の違い

個人事業主の場合は、出資された部分と得た利益を区別することが重要ではありません。したがって、元入金は出資と利益を含む性質があります。

これに対して、会社(法人)の場合は出資された金額と得た利益を区別することが重要なため、これらを区別します。基本的に出資された部分は資本金として、得た利益は利益剰余金となります。

まとめると、元入金は資本金と利益剰余金の両方の性質を含んだ勘定科目です。

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元入金の計算方法

元入金の計算式は以下の通りです。

期末の元入金 = 期首の元入金 + 事業主借 - 事業主貸 + 当期純利益

計算に必要な要素をそれぞれ説明します。

まず、期首の元入金は年初めの元入金の金額です。開業した年の場合は、開業時に計上した元入金の金額になります。開業した翌年以降の場合は、繰越処理をした後の元入金になります。(繰越処理については、後ほど詳しく説明します)

次に、事業主借と事業主貸は以下の通りです。

事業主借プライベートの資金 → 事業資金へ移動した金額
事業主貸事業資金 → プライベートの資金へ移動した金額

ポイントは、事業資金の立場から見て貸す、借りると考えると間違えが減ります。

次に、当期純利益は売上から売上原価・経費などを差し引いた最終的な利益のことです。青色申告特別控除を差し引く前の金額となるため、注意しましょう。差し引く前の理由として、青色申告特別控除は税金的に利益から控除する項目であり、実際、事業資金の収支が伴わないためです。

元入金の仕訳方法

元入金の各仕訳を例題とともに説明します。なお、元入金は貸借対照表を作成することが前提のため、白色申告や青色申告でも貸借対照表を作成しない場合は、元入金の仕訳は不要です。

開業時

開業時は、開業日に事業資金とする金額で仕訳を行います。

【例題】
4月1日を開業日として100万円で事業を開始した。

【仕訳】

借方勘定科目
借方金額
貸方勘定科目
貸方金額
預金100万円元入金100万円

上記の仕訳は、資産の勘定科目である預金が増加するため、借方勘定科目を預金とします。
貸方は純資産の勘定科目である元入金が増加するため、貸方勘定科目を元入金とします。
金額は、事業を始める際の100万円です。

なお、仕訳では借方勘定科目を預金としていますが、現金で始める場合には現金とします。
以下の仕訳例でも同様に預金として説明していきますが、現金として処理しても問題ありません。

白色申告から青色申告にした場合

白色申告から青色申告にする場合は、期首の現金や預金、売掛金などを把握しなければいけません。

【例題】
以前から白色申告で事業を営んでいたが、青色申告に変更した。
青色申告をしようとする年の初め※の資産・負債は以下の通り。

・預金50万円
・売掛金20万円
・車両100万円
資産合計170万円

買掛金10万円
借入金80万円
負債合計90万円

【仕訳】
まず資産項目は、借方を資産の勘定科目、貸方勘定科目を元入金とします。
なお、元入金の金額は借方金額の合計金額とします。

借方勘定科目
借方金額
貸方勘定科目
貸方金額
預金50万円元入金170万円
売掛金20万円
車両100万円

次に負債は借方勘定科目を元入金に、貸方勘定科目を負債の勘定科目で処理します。
なお、元入金の金額は貸方金額の合計金額とします。

借方勘定科目
借方金額
貸方勘定科目
貸方金額
元入金90万円買掛金10万円
借入金80万円

補足になりますが、上記の仕訳を以下のようにまとめて行われても問題はありません。
仕訳の借方金額の合計と貸方金額の合計が一致することを確認しましょう。

借方勘定科目
借方金額
貸方勘定科目
貸方金額
預金50万円買掛金10万円
売掛金20万円借入金80万円
車両100万円元入金80万円(※)
借方合計170万円貸方合計170万円

※元入金の金額は、借方合計170万円から負債合計90万円を差し引いた金額である80万円になります。

事業資金から個人へ支払ったとき

事業の資金からプライベートの資金へ移動させた場合は、事業主貸の勘定科目を使用します。

【例題】
事業用資金からプライベートの生活費として20万円を銀行口座から引き出した。

【仕訳】

借方勘定科目
借方金額
貸方勘定科目
貸方金額
事業主貸20万円預金20万円

貸方は資産の勘定科目である預金が減少するため、貸方勘定科目を預金とします。
次に借方勘定科目を事業主貸とします。
金額はプライベートの生活費とした20万円です。

個人から事業資金へ支払ったとき

プライベートの資金から事業の資金へ移動した場合は、事業主借の勘定科目を使用します。

【例題】
プライベートの資金30万円を事業用資金とした。

【仕訳】

借方勘定科目
借方金額
貸方勘定科目
貸方金額
預金30万円事業主借30万円

まず、事業用資金である預金が増加するため、借方勘定科目を預金とします。
次に、貸方勘定科目を事業主借とします。
金額は事業用資金にした30万円です。

年が変わるとき(繰越処理)

確定申告が終了して、次の年の帳簿に切り替える処理を繰越処理といいます。

繰越処理では損益項目と事業主貸、事業主借の残高をゼロにリセットします。
それぞれの項目をゼロにするため、基本的に取り消すように仕訳を行い、元入金に反映していきます。

【例題】
1年間の売上、売上原価、各経費は以下の通りであった。

売上:800万円
売上原価:300万円
交際費:50万円
消耗品費:30万円
旅費交通費:20万円
青色申告特別控除前の利益金額:400万円

また、期末の各資産、負債、純資産の残高は以下の通りであった。

預金:400万円
売掛金:300万円
事業主貸:200万円

買掛金:100万円
事業主借:100万円

また、今年の初めの元入金の残高は以下の通りであった。
期首の元入金残高:300万円

【仕訳】
まずは、損益項目をゼロにするための仕訳を行います。

損益項目をゼロにする仕訳

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
売上800万円売上原価300万円
交際費50万円
消耗品費30万円
旅費交通費20万円
利益(※1)400万円(※2)

※1:説明上「利益」という勘定科目を使用していますが「損益」などの勘定科目でも問題ありません。この勘定科目はすぐに元入金に反映するため損益計算書へ影響するものではありません。
※2:金額は売上から売上原価と各経費を差し引いた金額の400万円とします。

次に上記の利益を元入金へ反映します。

利益を元入金に反映する仕訳

借方勘定科目
借方金額
貸方勘定科目
貸方金額
利益400万円元入金400万円

上記の損益項目をゼロにする仕訳で貸方に利益400万円があるため、取り消すように借方に利益400万円として処理します。貸方勘定科目は元入金として増加させます。

次に、事業主借を元入金に反映させます。

事業主借を元入金に反映させる仕訳

借方勘定科目
借方金額
貸方勘定科目
貸方金額
事業主借100万円元入金100万円

上記の仕訳で事業主借を取り消すとともに、貸方勘定科目を元入金として増加させます。

次に、事業主貸を元入金に反映させます。

事業主貸を元入金に反映させる仕訳

借方勘定科目
借方金額
貸方勘定科目
貸方金額
元入金200万円事業主貸200万円

上記の仕訳で事業主貸を取り消すとともに、借方勘定科目を元入金として減少させます。

次に、元入金の残高を計算します。
上記までの一連の仕訳を集計して元入金の残高を求めることも可能ですが、説明のため以下の計算式で求めます。仕訳でも計算式でも計算結果は同じになります。

【計算式】

期末の元入金 = 期首の元入金 + 事業主借 - 事業主貸 + 当期純利益

【計算過程】

項目符号金額
期首の元入金+300万円
事業主借+100万円
事業主貸-200万円
当期純利益+400万円
合計600万円

上記の合計600万円が、期末の元入金の残高です。
元入金の繰越処理は、上記までの流れを対象の年の帳簿で行います。

次の年では、新しい帳簿に以下の仕訳で資産、負債、純資産を引き継ぎます。

【新しい帳簿で行う仕訳】

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
預金400万円買掛金100万円
売掛金300万円元入金600万円

上記の仕訳は、必ず借方金額の合計と貸方金額の合計が一致することを確認しましょう。

確定申告と元入金の流れ

実際に個人事業主が青色申告特別控除を利用して確定申告を行う場合は、損益計算書と貸借対照表を作成しなければいけません。

特に国税庁のHPから確定申告書と決算書を作成する場合は、貸借対照表に事業主借や事業主貸の残高を入力する必要があります。

つまり、上記で説明した繰越仕訳を行う直前の状態です。
具体的には、損益項目、事業主借、事業主貸の残高をゼロにしていない状態になります。

まとめますと、確定申告と元入金の処理は以下の流れになります。

  1. 繰越仕訳以外の仕訳をすべて入力して、繰越仕訳を行う直前の状態にする
  2. 残高試算表を作成して仕訳の集計漏れや計算ミスがないか確認する
  3. 確定申告用の貸借対照表と損益計算書を作成する
  4. 元入金の繰越仕訳を行う
  5. 翌年の帳簿に資産、負債、純資産を引き継ぐ

これまでの説明は元入金がプラスになる前提でしたが、元入金がマイナスになることもあります。

元入金がマイナスになる状態は、以下の2つを満たすときになります。

  • 負債の金額が資産の金額よりも大きいこと
  • 損失を計上すること

元入金がマイナスになる流れを例題で説明していきます。

【例題】
事業用資金100万円と銀行からの借入金300万円で事業を開始した。
事業では経費のみが発生し、200万円の損失を計上した。

まず、事業開始時に借入金を反映した貸借対照表は以下のようになります。

【貸借対照表】

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
預金400万円借入金300万円
元入金100万円
借方合計400万円貸方合計400万円

次に経費の支払いと損失を元入金へ反映する仕訳を行います。

【仕訳】

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
経費200万円預金200万円
元入金200万円経費200万円

上記の仕訳の結果、貸借対照表は以下のようになり、元入金がマイナスになります。

【貸借対照表】

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
預金200万円借入金300万円
元入金-100万円
借方合計200万円貸方合計200万円

補足として、元入金がマイナスになる場合は、貸借対照表で貸方に元入金をマイナスの金額で表示します。

1つ1つ確認しましょう!

元入金は、出資と利益の両方を含んでおり、直接計算して求めることが難しい勘定科目でもあります。
特に確定申告ソフトを使用しない場合は、事業主借、事業主貸、利益は、元入金の計算に影響するため1つ1つ丁寧に確認し、確定させていきましょう。

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よくある質問

元入金とは?

個人事業主の貸借対照表で使われる純資産の勘定科目です。詳しくはこちらをご覧ください。

元入金の計算方法は?

「期末の元入金=期首の元入金+事業主借-事業主貸+当期純利益」で求められます。詳しくはこちらをご覧ください。

元入金の仕訳方法は?

開業時、白色申告から青色申告にした場合、事業資金から個人へ支払ったとき、個人から事業資金へ支払ったとき、年が変わるとき(繰越処理)などで異なります。詳しくはこちらをご覧ください。


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