- 更新日 : 2025年10月21日
損害保険金は雑収入になる?個人事業主が確定申告で知っておくべき税務と会計処理を解説
個人事業主として事業を営む中で、災害や事故などにより損害保険金を受け取る機会があるかもしれません。
では、その保険金は「雑収入」として課税対象になるのでしょうか?本記事では、所得税法上の非課税・課税の区別や、確定申告における処理方法、会計仕訳消費税の取り扱いなどを解説します。
目次
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損害保険金を受け取ったら雑収入に計上する?税金はかかる?
個人事業主が損害保険金を受け取った場合、その取り扱いには注意が必要です。原則として非課税で収入に含める必要はありませんが、保険金の性質によっては事業収入として課税対象となることがあります。
ここでは、非課税・課税の区別と判定基準について解説します。
【原則】損害補填の保険金は非課税で収入にしない
事故や災害により建物や身体に損害が生じた際に支払われる保険金は、原則として非課税です。店舗の火災による建物損害に対して受け取った火災保険金や、車両の事故による修理費の補填として支払われた保険金、さらには業務中のケガに伴う傷害保険金も、いずれも非課税扱いとなります。
事業所得における売上や雑収入として確定申告書に記載する必要もなく、帳簿上は「事業主借」などの科目を用いて処理するのが一般的です。
【例外】補填内容によっては課税対象になることがある
損害保険金のうち、事業に関する損失の補填に当たるものについては、課税対象となり収入に計上する必要があります。
そのため、販売用の商品(棚卸資産)が火災によって失われた場合に支払われる補償金は事業収入として課税対象となります。
たとえば、商品仕入原価が300万円で、その焼失に対して500万円の保険金を受け取った場合は、500万円を収入に、300万円を経費(原価)として差し引いた200万円が課税所得となります。
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損害保険金を受け取った後の経費や消費税の扱いは?
損害保険金を受け取った場合には、課税・非課税を判断するだけでなく、それに伴う経費の扱いや消費税の処理についても適切に対応する必要があります。
保険金で補填された支出は経費にできないのが原則
保険金で補填された損失や費用については、その金額に対応する部分を経費(必要経費)として計上することはできません。
台風により事業用の屋根が破損し、修繕費として100万円を支出したが、火災保険金として120万円を受け取ったケースでは、受け取った保険金が修繕費を上回っているため、修繕費100万円は経費にはできません。
このように、非課税の損害保険金で完全に補填されている費用は、経費計上の対象外とされます。
逆に、損害額が保険金を上回る場合には、その超過部分のみが経費として認められます。損害額150万円に対して保険金が100万円だった場合、差額の50万円については自己負担となり、必要経費として算入可能です。
このように、保険金と経費の関係は「補填された支出は経費にしない」「補填されていない支出だけが経費になる」という対応関係にあり、保険金の会計処理と密接に連動しています。
損害保険金は消費税の対象外、ただし支出には注意が必要
損害保険金自体は、消費税法上「資産の譲渡等」の対価に該当しないため、原則として消費税の課税対象とはなりません。つまり、保険金を受け取ったとしても、その金額は消費税の課税売上には含めず、課税売上高や免税・簡易課税制度の判定にも影響を与えません。
課税事業者が1,000万円の保険金を受け取ったとしても、その1,000万円は消費税計算のベースとなる売上には算入されず、消費税の納付義務に関する基準にも含まれない扱いとなります。
ただし注意すべきなのは、保険金で支払った経費に消費税が含まれている場合です。
たとえば、保険金を用いて事業用の建物を修繕した場合、その修繕費には通常どおり消費税が課されています。このような支出に対しては、たとえ所得税上で経費に含めなかったとしても、支払った消費税相当分については帳簿やインボイスの保存要件を満たせば仕入税額控除の対象となります。
つまり、「保険金は不課税」でも、「保険金で支払う費用には消費税が発生する」ため、消費税の申告処理では正確に控除対象とする必要があります。仕入税額控除の適用漏れがないよう、帳簿上の「事業主貸」処理や証憑書類の保存を徹底することが求められます。
損害保険金の課税対象と経費算入の関係の一覧表
| 区分 | 課税対象性 | 経費算入可否 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 商品(棚卸資産)補償 | 課税対象(事業所得に計上) | 商品の仕入原価は経費算入可 | 店舗在庫が火災で焼失 → 保険金500万円を収入に計上、仕入原価400万円は経費算入、差額100万円が課税所得 |
| 資産(建物・設備)の損害補償 | 非課税(収入に含めない) | 補填された部分の修繕費・除却費は経費算入不可 | 火災で機械が壊れ、保険金で修繕 → 保険金は非課税処理、修繕費は経費不可(保険金超過分のみ経費可) |
| 心身の損害補償(傷害保険等) | 非課税(心身の損害に基づく部分) | 補填対象が経費でないため経費算入の概念なし | 業務中のケガによる治療費補償 → 保険金は非課税、治療費も生活費扱いで経費対象外 |
損害保険金を受け取ったときの会計処理は?
損害保険金を受け取った際の会計処理は、その保険金が「非課税」か「課税対象」かによって異なります。それぞれのパターンごとに、適切な会計処理を行う必要があります。
非課税の保険金は「事業主借」で処理する
損害保険金が非課税となる場合、会計上は事業収入には計上せず、「事業主借」勘定を使って処理します。「事業主借」は、事業に対する個人資金の預け入れや、非課税資金の受取などに用いる勘定科目です。
火災により事業用の設備が損傷し、500万円の保険金が事業用口座に振り込まれた場合、次のような仕訳を行います。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 500万円 | 事業主借 | 500万円 |
摘要:損害保険金受取
これにより、入金は記録されますが、売上や利益には影響しません。また、もし保険金が個人口座に直接入金された場合は、事業とは無関係となるため、帳簿上の仕訳は不要です。
さらに、保険金により補填される資産の除却や修繕費についても、損益に影響を与えないよう「事業主貸」勘定で処理します。たとえば帳簿価額300万円の機械装置が被災により廃棄となり、修繕費として200万円支出して、全額保険金で補填されるケースでは、以下のように仕訳します。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 事業主貸 | 300万円 | 機械装置 | 300万円 |
摘要:機械災害廃棄
| 事業主貸 | 200万円 | 普通預金 | 200万円 |
摘要:修繕費支出
| 普通預金 | 500万円 | 事業主借 | 500万円 |
摘要:損害保険金受取
事業主貸と事業主借は最終的に相殺します。これにより、保険金によって補填された分の損失・費用が帳簿上で相殺され、課税所得に影響を与えない形で処理されます。
課税対象の保険金は「雑収入」で計上する
損害保険金のうち、売上補填や経費補填など「課税対象」となるものについては、通常の収益科目である「雑収入」などで処理します。
これは法人と同様の取り扱いで、会計上は売上とは別に区分して計上します。たとえば、商品在庫が盗難により損失し、その補填として500万円の保険金を受け取った場合、次のように仕訳します。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 500万円 | 雑収入 | 500万円 |
摘要:商品損害保険金
この場合、保険金は事業収入として課税され、帳簿に収益として反映されます。なお、対応する商品の仕入原価(例:400万円)が商品在庫として計上されているのであれば、売上原価に振り替えます。
在庫ではなく当期の売上原価としてすでに計上しているのであれば、追加仕訳は不要です。
結果的に、雑収入500万円-原価400万円=100万円が課税所得となります。
課税・非課税が混在する場合は内訳ごとに処理を分ける
一度の事故で、課税対象の保険金と非課税の保険金を同時に受け取ることもあります。そのような場合には、保険金の内訳ごとに会計処理を分ける必要があります。
たとえば、火災により建物と商品がともに損害を受け、建物分として1,500万円、商品分として500万円、合計2,000万円の保険金が支払われた場合、次のような仕訳になります。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 2,000万円 | 事業主借 | 1,500万円 |
| 雑収入 | 500万円 | ||
このように、非課税の保険金は「事業主借」、課税対象の保険金は「雑収入」などで処理し、混同しないよう明確に区別することが重要です。
損害保険金を受け取ったときの、確定申告での扱いは?
損害保険金を受け取った際の確定申告での処理は、「非課税の保険金」か「課税対象の保険金」かで対応が異なります。ここでは、それぞれのケースでの確定申告書上の取り扱いを説明します。
非課税の保険金は申告不要だが記録は必要
損害保険金が非課税に該当する場合、確定申告書の収入欄にその金額を記載する必要はありません。
このような場合、受け取った保険金は確定申告書の「収入金額」に含めず、申告の対象外となります。
ただし雑損控除など他の計算に影響する場合があるため、雑損控除を受ける際は保険金の金額は控除計算に反映させる必要があります。また、非課税だからといって、まったく記録しなくてよいわけではありません。
後の税務調査で保険金の使途や内訳について確認を求められる可能性もあるため、保険会社からの支払明細や損害発生の経緯を証明する資料、写真や修繕記録などを整備し、最大7年間は保存しておく必要があります。
また、保険金の受取口座が事業用のものの場合、帳簿上も非課税の保険金は「事業主借」などの科目を使って収入には含めず処理します。
課税対象の保険金は収入に計上して申告
損害保険金のうち、商品在庫が盗難・焼失した場合の補償金は課税対象になります。課税対象の保険金は、確定申告書の「事業所得」欄で他の売上と合算して申告してください。
申告書上には「保険金」の項目は存在しないため、帳簿上で「雑収入」や「営業外収益」といった適切な勘定科目を用い、内訳として明示しましょう。たとえば、商品の保険金として500万円を受け取った場合、「雑収入」500万円として記帳し、対応する商品原価(例:400万円)を必要経費として控除します。
この場合、差額の100万円が課税対象の所得です。
加えて、補填内容が複数ある場合には、それぞれの保険金が何に対する補償かを明確に分けて判断することが不可欠です。建物補償は非課税、商品補償は課税というように、混同せず分類することで正確な申告が可能になります。
帳簿の摘要などに補償の内容を簡潔に記録しておくと、後の確認時にもスムーズに対応できます。
正しく損害保険金を処理して税負担を抑えよう
個人事業主にとって、損害保険金は内容次第で「雑収入」となる場合とならない場合があります。
原則的には非課税で事業収入に計上しませんが、火災などで被害にあった商品の補填に対する保険金は課税対象となり確定申告でも申告が必要です。
受け取った保険金が何の損失に対するものかを見極め、非課税なら事業主借で処理し、課税なら雑収入計上するなど正しい会計処理を行いましょう。
税制に沿った正確な処理によって、損害保険金を安心して受け取り、事業継続に役立ててください。
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データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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