- 更新日 : 2025年9月19日
売上過少申告とは?個人事業主がやりがちな理由やリスクを解説
個人事業主にとって確定申告は避けて通れない業務の一つですが、売上や利益の申告内容に誤りがあると、思わぬペナルティや信用リスクを招くことがあります。「うっかりミスだから問題ない」と考えていても、税務署から過少申告とみなされ、追徴課税や延滞税などの負担が生じます。
本記事では、個人事業主が売上過少申告をしてしまう原因や、発覚する経路、課されるペナルティ、過少申告を防ぐための対策について解説します。
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目次
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売上過少申告とは
売上過少申告とは、確定申告において実際よりも少ない金額の売上を申告し、納税額を過少にする行為を指します。これは意図的な脱税行為に限らず、ミスや記帳漏れなどによって発生することもあります。ここでは、基本的な考え方と対象となる行為を解説します。
法的には「所得隠し」とみなされる
日本の所得税制度は自己申告制です。つまり、納税者自身が毎年所得や売上を計算して申告し、税金を納める必要があります。このとき、実際に得た売上の一部を申告から除外したり、架空経費を計上して所得を低く見せかける行為は「過少申告」とされます。これは所得隠しと同等に扱われ、悪意の有無を問わず税務署から指摘される可能性があります。
単純ミスでも追徴対象になる
たとえ意図がなく、帳簿記載の誤りや計算ミスによって申告額が実際よりも少なくなってしまった場合でも、税務上は「結果として納税額が不足した」と判断されます。この場合も過少申告とみなされ、後日修正申告や追徴課税を求められることになります。
正しい申告が安定経営の基本
過少申告が発覚すれば、追加の税金に加え加算税・延滞税などのペナルティが課されます。仮に小規模な事業者であっても、税務署は取引内容や銀行口座の動きなどから不正を把握できます。したがって、正確な帳簿付けと誠実な申告こそが、個人事業主の信頼維持と安定経営の土台といえるでしょう。
個人事業主が売上過少申告をしてしまう原因
売上過少申告は、意図的なものから知識不足によるものまで、さまざまな背景で起こり得ます。以下では代表的な原因について解説します。
税負担を減らしたい心理と資金繰りの問題
個人事業主の多くが感じるのが「税金の支払いはできるだけ少なくしたい」という心理です。所得税や住民税、さらには事業税や消費税まで、年間を通じてさまざまな納税が発生する中で、税負担を回避したいと考えるのは自然なことです。
開業直後や資金繰りが厳しい時期には、納税資金の確保が困難になり、「売上を低く申告して納税額を抑えよう」といった行動に走ることがあります。しかし、こうした行為は一時しのぎにすぎず、税務調査で発覚すれば過少申告加算税や延滞税などの追加負担が発生します。結果として、かえって資金繰りが悪化する危険性があるため、正直な申告と税務署との相談による対応が賢明です。
課税事業者認定を避けるため売上を圧縮したい
売上が1,000万円を超えると課税事業者となり、消費税の納付義務が発生します。そのため、意図的に売上を1,000万円以下に抑えることで課税事業者認定を避けようとするケースも少なくありません。現金収入を一部除外したり、売上記録を帳簿に載せなかったりといった手法が取られることがあります。
ただし、税務署もこうした「ギリギリ回避」の動きには敏感で、売上が毎年990万円台で推移している場合などは不自然と判断され、調査対象となる可能性が高まります。仮にばれなかったとしても、信頼性を損なう行為であり、取引先からの信用にも影響しかねません。
税知識の不足や記帳ミスによる申告漏れ
過少申告は悪意のある脱税だけではなく、知識不足や記帳の不備が原因となることも多くあります。たとえば、事業とプライベートの収入を混同して申告漏れが生じたり、年度をまたいだ入金の記帳漏れによって売上が過小に計上されてしまったりするケースです。
また、確定申告初心者や副業で収入を得ている人は、そもそも申告義務のある収入を把握できていないこともあります。このような「悪意のない過少申告」であっても、結果的に納税額が不足していれば税務署は厳格に対処します。
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個人事業主の売上過少申告が発覚する理由
「規模が小さいから税務署に見逃されるだろう」と安易に考えるのは危険です。税務署はさまざまな情報網と調査手段を持っており、少額でも不自然な申告には敏感です。ここでは、売上過少申告が発覚する主なパターンを解説します。
税務調査で発覚する
最も典型的なのが税務調査による発覚です。税務署は任意または強制調査を通じて帳簿や書類を精査し、売上や経費の不自然な点を洗い出します。売上の記載漏れ、架空の経費、帳簿と実態のズレなどがあれば、ほぼ確実に指摘されます。税務調査の頻度は事業者によって異なりますが、不正が疑われる場合や、長期間調査が行われていない法人・個人などが対象となることがあります。一度調査対象となると、過去数年分に遡って調べられます。
銀行口座や資産購入から発覚する
税務署は金融機関に対して情報照会を行う権限を持っています。申告では赤字なのに銀行口座には多額の入金がある、所得に見合わない高額資産を購入しているといったケースは、即座に疑念を招きます。不動産購入が引き金となり、資金の出どころを調査されて申告漏れが発覚する例も珍しくありません。資金の流れと申告内容が一致しているかは、重点的に確認されます。
内部告発・第三者通報により発覚する
元従業員や元配偶者、取引先などからの内部告発によって、税務署が不正を把握するケースもあります。国税庁は匿名での情報提供窓口を用意しており、実際にこの制度を使った通報がきっかけで税務調査が行われることもあります。社内外に不信を持たれるような行動があると、こうした通報の対象になりやすくなります。
取引先の税務調査から芋づる式に発覚する
自分に税務調査が入っていなくても、取引先の調査結果をきっかけにばれることもあります。取引先が「外注費」として支出した記録と、自分の申告内容に差異があれば、不自然な点として税務署に指摘されます。支払調書や源泉徴収票といった資料は税務署に提出されるため、申告内容の不一致はすぐに浮かび上がります。
SNSなどの生活情報から発覚する
SNSの投稿から税務署が過少申告を察知するケースも増えています。タワーマンションでの生活、ブランド品の購入、頻繁な海外旅行など、生活レベルが申告内容と著しく乖離していれば、不審に思われても当然です。申告内容と生活実態のバランスが取れていない場合など、SNSが調査のきっかけになることがあります。
売上過少申告が発覚したらどうなる?
売上の過少申告が税務署に発覚した場合、個人事業主には重い経済的・信用的ダメージが及びます。ここでは、どのような処分や影響があるのかを整理します。
追徴課税と修正申告が必要になる
過少申告が指摘されると、税務署から修正申告を求められ、本来納めるべき税額に加えて過少申告加算税(原則10〜15%)や延滞税が課されます。また、調査対象は1年にとどまらず、最長7年間に遡るケースもあります。追徴額が高額になると、事業資金に大きな影響を与える可能性があります。
信用失墜と制度上のデメリットが発生する
不正が発覚すると、青色申告の承認が取り消されることもあり、65万円控除などの税制優遇が受けられなくなります。また、税務調査後に修正申告を行うと、金融機関から融資を受ける際に提出する決算書や納税証明書の内容も更新する必要があります。その結果、金融機関に修正申告の事実が伝わり、融資審査に影響を与える可能性があります。
悪質な場合は刑事罰の対象になる
意図的な所得隠しや大規模な不正があった場合、税務署が国税局査察部(マルサ)へ告発し、刑事事件に発展することもあります。所得税法違反では、10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(またはその両方)が科される可能性もあるため、たとえ小規模事業であっても「ばれなければ大丈夫」という油断は危険です。
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売上過少申告が発覚した場合のペナルティ
個人事業主が過少申告を行い、税務署に発覚した場合は、単に不足分の税金を納めれば済むわけではありません。追加の税金に加え、複数の「罰則的な税金(加算税・延滞税など)」が課され、金銭的負担が大きくなります。ここでは主なペナルティについて説明します。
過少申告加算税が課される
本来の納税額と申告額に差がある場合、差額に対して原則10%の「過少申告加算税」が課されます。差額が大きく、50万円または当初申告額のいずれか大きい方を上回る部分には15%が適用されます。たとえば当初申告額が30万円で、200万円の差額がある場合、50万円までは10%、残り150万円は15%の加算税となります。
延滞税も追加で発生する
追徴された税額については、納期限までに納付していなかったことになるため「延滞税」も発生します。令和7年(2025年)時点では、納期限から2ヶ月以内は年2.4%、2ヶ月超過後は年8.7%の割合で日割り計算されます。申告漏れが数年にわたると延滞税額も非常に大きくなります。
悪質な場合は重加算税が適用される
売上除外や架空経費の計上など、意図的な不正とみなされた場合は「重加算税」が課され、加算税率は35%に跳ね上がります。これは単なるミスとは区別される重い処分で、調査対象も過去7年分まで遡る可能性があります。事実上、税務署から「脱税」と認定される行為です。
売上過少申告を防ぐための対策
売上過少申告が発覚すれば、税額の追徴に加え、加算税や延滞税、信用失墜、最悪の場合は刑事責任にまで及ぶことがあります。ここでは、過少申告を未然に防ぐためのポイントを解説します。
自主的な修正申告を早めに行う
過少申告に気付いた場合、最も効果的な回避策は、税務署からの通知前に「自主的に修正申告」を行うことです。調査前であれば、加算税は免除され、延滞税のみの負担で済みます。調査通知後でも、開始前に修正すれば過少申告加算税率は10%から5%へ軽減される制度があり、早期の対応が損害を最小限に抑えるポイントとなります。
誤りに気付いた段階で放置せず、すぐに修正の手続きを始めることが大切です。調査が入ってからの対応では、軽減措置は使えず、調査の対象期間が広がることもあるため、結果的に大きな負担につながります。
日常的な正確な記帳と確認の習慣をつける
過少申告を防ぐための基本は、日常の帳簿管理を徹底することです。売上や経費の取引は、タイムリーに記帳し、証憑(領収書・請求書など)を保存することが原則です。帳簿を日々つけることで収入や支出を明確に把握でき、申告時に漏れが生じにくくなります。
また、前年の売上・利益との比較や、業種平均と自社のデータを照らして違和感がないか確認するなど、事前の見直しも重要です。現在では、会計ソフトやクラウド会計ツールを使えば、自動で取引データを記録・整理でき、ミスのリスクを減らせます。
税理士の活用で正確な申告を担保する
税務の知識や記帳作業に自信がない場合は、税理士に依頼するのも有効な方法です。税理士が関与した申告書類は、税務署からの信頼度が高く、調査対象になりにくい傾向があります。申告書のチェックに加えて、節税のアドバイスや税務調査時の対応まで任せられ、安心感が違います。
費用はかかるものの、ペナルティや信用失墜のリスクを考えれば、十分に見合う投資といえます。事業規模が拡大し始めたタイミングでは、顧問契約を検討するのも一つの選択肢です。
売上過少申告を防ぎ、信頼と事業の安定を守ろう
個人事業主にとって、売上の過少申告はリスクが大きく、税務署に発覚すれば追徴課税や加算税、信用低下といった重い代償を伴います。意図的な不正だけでなく、知識不足や記帳ミスでも過少申告とみなされるため、常に正確な帳簿管理と適切な申告が求められます。もし申告漏れに気付いた場合は、税務調査の前に自主的に修正申告を行うことで、過少申告加算税等の軽減や信頼の維持につながります。過少申告を回避するには、「ばれない工夫」ではなく、「正しく申告する」姿勢が何よりの防御策です。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
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