- 更新日 : 2025年9月19日
小規模企業共済の掛金は経費になる?仕組みや確定申告の方法を解説
個人事業主にとって、将来の備えと節税を同時に実現できる制度が「小規模企業共済」です。退職金のように積み立てができ、掛金は全額が所得控除の対象となるため、老後資金の準備と税負担の軽減を両立できます。
本記事では、小規模企業共済の仕組みや加入条件、掛金の税務上の扱い、iDeCoとの違い、注意点などを解説します。
なお、マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が確定申告する際に知っておきたい基礎知識や、確定申告の準備、確定申告書の作成方法・提出方法などを分かりやすくまとめた「青色申告1から簡単ガイド」を無料で用意しております。
チェックリスト付きなので、情報収集だけでなく、書類作成・申告手続きを行う時にもお使いいただけます。
この記事を読む方におすすめ
税理士監修で、40ページ以上の情報がギュッと詰まったお得な1冊となっていますので、毎年使える保存版としてご活用ください。
マネーフォワード クラウドでは、個人事業主を限定にエントリー&条件達成で最大6,000円分のAmazonギフトカードをプレゼントするキャンペーンを実施しております。
詳しい支給条件は、 こちらのページで紹介していますので、ぜひ併せてご参考ください。

目次
「マネーフォワード クラウド確定申告」なら日々の取引入力→申告書の作成→申告作業が、オンラインで完結します。
取引明細の自動取得と仕訳の自動作成に対応しており、手入力を減らしてカンタンに記帳・書類を作成。来年の確定申告は余裕を持って対応できます。
PC(Windows/Mac)だけでなく、スマホアプリからも確定申告が可能です。

小規模企業共済の基本
小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者が老後や廃業後に備えるための共済制度です。退職金のような役割を持ちながら、掛金が全額所得控除となるため節税にもつながります。以下では仕組みと加入要件について解説します。
小規模企業共済とは
小規模企業共済は、国が中小企業基盤整備機構(中小機構)を通じて運営している共済制度です。個人事業主や小規模企業である会社の役員等が、将来の廃業や引退に備えて積み立てを行い、退職時に共済金を受け取る仕組みです。掛金は月額1,000円から70,000円までの範囲で自由に設定でき、毎月積み立てた掛金に応じて退職時に共済金が支給されます。受取方法は一括・分割のいずれも選択可能で、税法上の優遇も受けられます。
個人事業主が加入できる条件
加入できる個人事業主の条件は、常時使用する従業員数が、製造業や建設業、宿泊業・娯楽業などでは20人以下、商業(卸売業・小売業)やサービス業(宿泊業・娯楽業を除く)では5人以下であることです。
法人の役員や共同経営者でも、企業の規模が一定の範囲内であれば加入が認められます。また、開業して間もない場合でも、事業実態があれば加入は可能です。共済契約は原則として一人一契約で、事業内容に大きな制限はありません。
個人事業主は小規模企業共済の掛金を経費にできる?
小規模企業共済の掛金について「経費にできるのか」という疑問を持つ個人事業主は多くいます。掛金については、事業上の必要経費ではなく所得控除として取り扱われますが、節税効果は経費と同様に大きなものがあります。ここでは、その理由と確定申告における処理方法について解説します。
小規模企業共済掛金は経費ではなく所得控除になる
小規模企業共済の掛金は、税務上「必要経費」ではなく、「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除として所得から控除することができます。これは、国税庁の公的ガイドラインにも明記されており、その年に支払った掛金の全額が所得控除の対象になります。つまり、帳簿上で経費計上はしないものの、課税所得から差し引かれることで結果的には必要経費と同様の節税効果を得られるという仕組みです。
このように、帳簿に記載せずとも税金の負担が軽減されるため、個人事業主にとっては実質的に「経費のように使える制度」として認識されています。
確定申告での記入方法と証明書の提出
個人事業主が確定申告を行う際は、所得税の確定申告書(第一表)の「所得から差し引かれる金額」にある「小規模企業共済等掛金控除」の欄に、その年に支払った掛金の総額を記入します。さらに、確定申告書の第二表においても「小規模企業共済等掛金控除」の欄に記入します。
また、中小機構から毎年発行される「掛金払込証明書」を証拠書類として提出または提示します。書面による申告の場合は、申告書に証明書を添付して提出します。電子申告の場合、共済掛金払込証明書を電子データとして添付することも可能ですが、提出の省略も認められており、その場合には5年間の保存義務があります。
この処理を正確に行えば、支払った掛金の全額が控除され、所得税・住民税の節税につながります。
マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が知っておきたい"経費"のキホンや勘定科目を分かりやすく1つにまとめた「個人事業主が知っておくべき経費大辞典」を無料で用意しております。
税理士監修で、経費の勘定科目や具体例だけでなくワンポイントアドバイスもついているお得な1冊となっていますので、ぜひ手元に置きたい保存版としてご活用ください。
個人事業主が小規模企業共済を利用する節税以外のメリット
小規模企業共済は、節税効果が注目されがちですが、それ以外にも個人事業主にとって魅力的な利点が多数あります。以下では、節税以外の主なメリットを紹介します。
将来の退職金を積み立てながら保障を得られる
小規模企業共済は、個人事業主が自ら退職金を準備できる制度でもあります。積み立てた掛金に応じて、廃業や引退の際に共済金(退職金)が支給されます。受取方法は一括または分割を選べるため、老後資金の使い方に応じて柔軟に対応できます。一括受取の場合は退職所得扱い、分割受取なら公的年金等の雑所得扱いとなり、いずれも所定の控除が適用され税負担が軽減されます。さらに、掛金の納付期間が長くなれば、受取額が元本を上回るケースもあります。たとえば30年間で合計360万円積み立てた場合、廃業時には約434万円(約120%:共済金Aの場合)の共済金を受け取れると試算されますので、長期的な運用による利回りも期待できます。
掛金を自由に設定・変更でき資金繰りに柔軟対応
小規模企業共済の掛金は、事業の収支状況に応じて自由に調整できます。月額1,000円から70,000円まで、500円単位で選べるうえ、年払いや半年払いの選択も可能です。業績が良いときには掛金を増額し、厳しいときには減額や払込猶予の制度を利用して負担を軽減できます。なお、掛金の減額には一定の事由及び申込が必要ですが、事業環境の変化に柔軟に対応できる設計になっています。無理のない範囲で積み立てを続けられるため、長期間にわたり活用しやすい点が特徴です。
緊急時には貸付制度で資金を借り入れ可能
急な資金需要にも対応できる「契約者貸付制度」が利用できるのも、大きなメリットです。契約者は、一定の要件を満たした場合に納付した掛金合計額の7~9割の範囲内(上限2,000万円)で事業資金の借入れが可能です(一般貸付の場合)。一般貸付の利率は年1.5%と低く設定されていますが、貸付制度の種類によって条件は異なります。
これにより、急な資金不足が発生しても共済を解約せずに乗り切り、積み立てを継続しながら事業運営の安定を保てます。銀行融資に比べて手続きが簡単で、迅速に利用できる点も安心材料の一つです。
小規模企業共済を利用する際の注意点・デメリット
小規模企業共済は、節税と老後資金の準備に有効な制度ですが、活用にはいくつかの注意点があります。
短期解約は元本割れのリスクがある
小規模企業共済は長期の積み立てを前提とした制度のため、短期間で解約すると元本割れのリスクがあります。納付月数が40カ月未満の任意解約では、掛金の払込総額を下回る金額しか受け取れないことがあり、納付月数が12か月未満で解約した場合、解約手当金は支給されません。
たとえ法人成りなどやむを得ない事情があっても、短期での解約は損失につながる可能性が高いため、加入時には長期的な利用を前提とした資金計画を立てることが大切です。
共済金の受取時には課税対象になる
掛金の拠出時には全額が所得控除となる一方、共済金を受け取る際には税金がかかることを忘れてはいけません。一括で受け取る場合は退職所得扱いとなり、退職所得控除が適用されるものの、控除を超える部分には課税されます。分割受取の場合は年金扱い(公的年金等の雑所得)となり、毎年の所得に加算されて税額に影響を与えます。さらに、65歳未満の方が任意解約をする場合には一時所得となることもあります。共済金は非課税ではなく、税負担の繰り延べに過ぎないため、受取額や受取時期を慎重に設計する必要があります。
マネーフォワード クラウド会社設立は、個人事業主が法人成りを検討したほうがよいタイミングをまとめた「法人化を検討すべき7つのタイミング」を無料で用意しております。
創業支援に強い税理士監修で、ポイントがまとまったお得な1冊となっていますので、ぜひ将来を見据えた情報収集でご活用ください。
小規模企業共済とiDeCo(個人型確定拠出年金)の違い
小規模企業共済とiDeCo(個人型確定拠出年金)は、いずれも個人事業主が利用できる代表的な老後資金の積立及び節税制度です。それぞれの制度の特徴と違いや併用のポイントを整理します。
制度の目的・運営主体の違い
小規模企業共済は、国が設けた「経営者の退職金制度」であり、中小企業基盤整備機構が運営しています。主に個人事業主や中小企業の役員を対象に、廃業や退任後に退職金として共済金を受け取ることを目的としています。
一方、iDeCoは公的年金を補完するための私的年金制度で、厚生労働省が所管し、国民年金基金連合会や証券会社・銀行等が運営機関として関与します。原則60歳以降に年金や一時金として受け取るもので、年金色の強い制度です。
掛金限度額・税制優遇の違い
小規模企業共済の掛金は、月額1,000円から70,000円までの範囲で自由に設定でき、全額が「所得控除」の対象になります。年間最大84万円が所得から差し引かれ、所得税・住民税の節税につながります。
一方、iDeCoの掛金上限は個人事業主(第1号被保険者)で月額68,000円(年間81.6万円)です。こちらも全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除されます。つまり、両制度を活用すれば、最大165.6万円の掛金を所得控除できる可能性があります。なお、iDeCoは加入期間中の運用益も非課税となるという追加の税制メリットもあります。
ただし、上記の金額については原則として2025年12月に見直し(第1号被保険者の拠出限度額:月額75,000円等)が予定されており、今後の動向に注視する必要があります。
受取時の税金の取り扱いの違い
共済金の受け取りは、小規模企業共済では退職所得または公的年金等に係る雑所得として課税されます。一括で受け取る場合は退職所得控除が、分割受取の場合は公的年金等控除が適用されます。
iDeCoも同様に、一時金として受け取れば退職所得扱い、年金で受け取れば公的年金等に係る雑所得扱いとなり、いずれも一定の控除が適用されます。ただし、iDeCoは60歳まで引き出せない点に注意が必要です。小規模企業共済は廃業等の事由があれば60歳前でも受給可能な点が異なります。
小規模企業共済とiDeCoの併用は可能
小規模企業共済とiDeCoは併用が可能で、両方の掛金を所得控除として活用できます。それぞれの掛金が独立して控除対象になるため、節税効果は単体利用よりも高くなります。
併用にあたっては、資金繰りや将来の資金用途を踏まえて掛金額を調整することが重要です。短期の資金確保が必要な場合には解約が可能な小規模企業共済、長期的な老後資金にはiDeCoというように、目的に応じた使い分けが望まれます。
両制度を適切に併用すれば、節税と老後資金準備の両面でバランスのとれた資産形成が実現できます。個人事業主にとっては非常に有効な選択肢と言えるでしょう。
小規模企業共済の加入手続きと必要書類
小規模企業共済への加入は、比較的簡単な手続きで行えます。申し込みは全国の委託団体(商工会、商工会議所、青色申告会、金融機関など)を通じて行うのが一般的で、インターネットから資料請求することも可能です。
加入時にはまず制度への加入要件を満たしているかを確認します。次に、「加入申込書」と「掛金預金口座振替依頼書」を提出します。あわせて、個人事業主であることを証明する書類(開業届の控えや所得税の確定申告書の写しなど)の提出も求められます。法人の役員であれば登記簿謄本や在職証明書などが必要です。
申請後、内容が承認されれば、掛金の口座振替が開始され、正式に加入となります。掛金の支払いは月払いが基本ですが、半年払いや年払いも選択できます。加入後は中小機構から毎年「掛金払込証明書」が届くため、確定申告時に所得控除を受けるための証明書として使用します。
小規模企業共済を理解して賢く活用しよう
小規模企業共済は、個人事業主が将来の廃業や老後に備えつつ、所得控除による節税効果も得られる優れた制度です。掛金の設定が柔軟で、退職金としての積み立てや貸付制度も備えている一方、短期解約による元本割れや受取時の課税といった注意点も存在します。制度の特徴を正しく理解し、長期的な視点で利用することで、経営の安定と将来の安心を両立できる手段となるでしょう。

マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例
データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
確定申告の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
個人事業主の就労証明書の書き方は?フォーマットのダウンロード方法や注意点を解説
保育園の入園審査や住宅ローンの申し込みで使用するため、従業員から就労証明書(雇用証明書)の作成を求められるケースがあります。あまり作成する機会のない書類ですが、今回は個人事業主が従業員を雇用しているケースで就労証明書を作成する方法やフォーマ…
詳しくみる個人事業主が安定して案件を獲得するには?単価アップや契約トラブル回避の方法を解説
個人事業主として長く活躍するためには、継続的な案件の確保と安定した収入を得るための工夫が欠かせません。案件の探し方ひとつを取っても、クラウドソーシングから人脈紹介、SNSの活用まで多様な選択肢があります。また、契約時の注意点や報酬の交渉方法…
詳しくみる個人事業主でも住宅ローンは通る?フラット35の審査基準や通過のポイントを解説
個人事業主にとって、住宅ローンの審査は会社員よりも厳しくなりがちですが、フラット35は比較的利用しやすい選択肢の一つです。全期間固定金利による返済計画の立てやすさや、直近の収入だけで評価される柔軟な審査基準が特徴で、多くの自営業者が検討して…
詳しくみる個人事業主に税務調査が入る確率は?入りやすい特徴や対応を解説
個人事業主の税務調査の確率は、それほど高いわけではありません。ただし、法人と比較すると確率が低いというだけで、リスクがまったくないわけではないため注意が必要です。 本記事では、個人事業主であっても税務調査が入りやすい業種や特徴、対策方法を詳…
詳しくみるフリーローンは個人事業主でも使える?審査基準・金利・注意点を解説
個人事業主の方が資金を調達するとき、「フリーローン」という言葉を耳にすることがあります。フリーローンとは、資金の使いみちが自由なローンのことで、事業資金からプライベートの費用まで幅広く利用できる点が特徴です。ただ、個人事業主であるため審査に…
詳しくみるTikTokビジネスアカウントとは?個人事業主が成果を出すための運用・収益・税務を解説
個人事業主にとって、SNSは集客やブランディング、顧客との接点づくりに欠かせない時代となりました。中でもTikTokは、短尺動画を通じて多くのユーザーにリーチできる強力なプラットフォームです。 本記事ではTikTokのビジネスアカウントと通…
詳しくみる