- 更新日 : 2025年9月19日
ずっと赤字の個人事業主が見直すべき原因は?赤字の影響や改善策を解説
個人事業主として事業を続けていると、思うように売上が上がらず赤字が続くことがあります。一時的な赤字であれば問題ありませんが、慢性的な赤字の状態が長引くと、税務署からの心証や信用低下や資金繰りの悪化といったリスクも高まります。
本記事では、個人事業主における赤字の定義から、長期的な赤字がもたらす影響、原因別の対処法、確定申告時の注意点などを解説します。
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個人事業主の「赤字」とは
個人事業主にとって赤字は特別なことではありませんが、赤字の定義や税務上の扱いを正しく理解しておくことは重要です。ここでは、赤字とは何を指すのか、確定申告との関係、そして「ずっと赤字」が意味する状態について整理します。
赤字とは利益がマイナスの状態
個人事業主における赤字とは、収入から経費を差し引いた「事業所得」がマイナスになっている状態をいいます。たとえば、年間の売上が100万円で必要経費が120万円だった場合、事業所得はマイナス20万円となり、その年の所得税は発生しません。収入より経費が多い場合は、利益が出ていないため「赤字」とされます。
「ずっと赤字」とは事業所得が毎年赤字のこと
「ずっと赤字の個人事業主」とは、複数年にわたって毎年事業所得が赤字で、収支が安定しておらず、事業として黒字化できていない状態を指します。このような状況が続くと、税務上や信用上の問題が生じる可能性があるため、早期の見直しと対策が求められます。
個人事業主の赤字が続く場合のリスク
事業において赤字は一時的なものならば大きな問題ではありませんが、長期間続く場合には税務上や経営面での影響が無視できません。赤字が続くと、税務署や金融機関からの評価にも影響を及ぼす可能性があるため、早めにそのリスクを把握し対応していくことが求められます。
税務上のリスクと確定申告の重要性
赤字であっても、青色申告を行っていれば、その損失を最長3年間繰り越して、翌年度以降の黒字と相殺することが認められています。また、事業所得の赤字は給与所得など他の所得と損益通算が可能となり、結果として源泉徴収されていた所得税の一部が還付されることもあります。このように、赤字の場合、確定申告をすることで節税や将来の税負担の軽減につながることがあります。
一方で、意図的に経費を水増しするなどして赤字を作り出す行為は、違法な行為であり、脱税と見なされます。架空の経費や実体のない取引で赤字を装うことは、税務署の調査対象となりやすいです。国税庁は調査選定基準を公開していませんが、長期間にわたる赤字申告は、その所得が「事業所得」に該当するかどうかの観点から税務署の調査対象の候補となる可能性があります。事業実態が伴わないと判断された場合、「事業所得」と認められず、損益通算が認められないリスクがあるため、事業計画や日々の記帳を適切に行うことが重要です。
悪質な場合は延滞税や重加算税といった追加的な課税措置が科されることもあるため、赤字申告はあくまで正当な範囲内で行う必要があります。
信用・経営への悪影響
赤字が続くことは、対外的な信用力にも影響を及ぼします。金融機関に事業融資を申し込む際、金融機関は過去の確定申告書や収支実績を確認しますが、連続して赤字が続いている場合には「収益性が乏しい」と判断され、融資の審査に通りづらくなる傾向があります。借入できたとしても、限度額が低くなったり、金利が高めに設定されたりする可能性もあります。
また、仕入先や取引先に対しても、業績が安定していない事業者という印象を与えかねません。経営面では、慢性的な赤字によって自己資金が減少し、資金繰りが悪化することが避けられません。その結果、日々の運転資金や生活費を借入や貯蓄に頼る必要が出てきて、事業継続がさらに困難になる場合があります。
さらに、赤字が続く状態が長引くことで、事業主本人のメンタル面にも大きな負担がかかります。常に不安を抱えながら事業を運営することで、判断力が鈍ったり、リスクを回避できなくなったりすることもあるでしょう。このような状況を避けるためにも、赤字が慢性化していると感じたら早めに原因を分析し、改善のための具体的な対策を講じることが求められます。
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赤字が続く主な原因
個人事業主が慢性的な赤字の状態に陥る原因は一つではなく、複数の要素が複雑に絡み合っている場合がほとんどです。
売上不足による赤字
最も定番かつ多い原因が、売上自体が不足していることです。商品やサービスに対する需要が予想よりも少ない、あるいは営業やマーケティング活動が弱いと、収入が十分に得られず赤字に転じやすくなります。特に開業初期は顧客基盤がなく、認知度の低さや初期投資の負担により、黒字化までに時間がかかるのが一般的です。
また、価格設定のミスも深刻です。相場より安く設定してしまうと顧客が集まっても利益が出ず、結果的に赤字が続くことになります。事業開始時の赤字自体は特別ではありませんが、長期化する場合は商品価値の見直しや単価の引き上げ、新規顧客開拓といった施策が求められます。
経費過多・コスト管理の問題
売上がそれなりにあるにもかかわらず赤字が続く場合、多くは経費のかけすぎが原因です。無駄な広告費や過大な設備投資、交際費の使いすぎなどが挙げられます。特に固定費が高額な場合、少し売上が落ちるだけで収支が赤字へ転落しやすくなります。
個人事業主では事業と私生活の境目が曖昧になりやすく、プライベートな支出を経費として処理しているケースも見られます。これは事業実態の正確な把握を妨げるだけでなく、経費過多の原因となります。徹底した支出の見直しとコスト管理が不可欠です。
市場環境の変化など外部要因
赤字の原因が事業者の努力だけでは防げない外的要因であることもあります。たとえば景気後退、業界全体の需要減少、競合の急増などにより売上が落ち込む場合があります。新型コロナウイルスの影響で急激な売上減少に直面した個人事業主も多く見られました。
また、法制度の変更や規制強化によりこれまでのビジネスモデルが通用しなくなることもあります。このような場合、事業内容の見直しや新たな収益源の開拓など、柔軟な対応が求められます。
経営戦略や計画上のミス
赤字が続く根本原因が経営判断そのものにあるケースも少なくありません。市場リサーチが不十分なまま開業したり、想定顧客を誤っていたりすると、商品やサービスが売れず赤字が慢性化します。
さらに、事業計画の甘さや過度に楽観的な売上見込みも失敗につながります。「とにかく売上を増やせばよい」と営業範囲を無計画に拡大すると、人件費や在庫管理の負担が増し、固定費倒れを引き起こす可能性もあります。また、経営数値を把握せずに感覚だけで事業を進める姿勢も危険です。自分では原因に気づきにくいケースもあるため、専門家の助言を受けながら戦略の見直しを進めることが重要です。
赤字から脱却するための改善策
赤字が続いているからといって、すぐに廃業を選ぶ必要はありません。まずは原因を正確に見極めた上で、現実的かつ実行可能な対策を講じていくことが重要です。ここでは、個人事業主が慢性的な赤字から抜け出すための代表的な改善策を、分野別に整理して解説します。
売上を増やす施策の強化
赤字脱却の基本は、売上高の向上です。次のような取り組みを検討しましょう。
- マーケティング戦略の見直し
SNS、ブログ、チラシ、SEO広告など、多角的に発信し、反応を見ながら最適化する。 - 顧客ターゲットの再設定
市場調査を行い、新たな顧客層やニーズを発掘し、商品・サービスを調整する。 - 商品・サービスの差別化
品質強化や付加価値の提供により、「この店だから買う」という理由を作る。 - 価格戦略の調整
採算が取れる価格設定へ見直す。高価格で売れない場合は割引や新プランの導入も検討。 - 販路の拡大
オンラインショップの開設、営業エリアの拡張、既存顧客へのクロスセルなどを実施。
地道な施策の積み重ねによって、少しずつ売上基盤を安定させることが黒字転換につながります。
経費の見直しと削減
支出の最適化も赤字解消には不可欠です。次の観点で経費を精査しましょう。
無理のない範囲でスリムな経営体質を目指すことが、利益率の改善につながります。
事業計画・戦略の再構築
根本的に事業の方向性を見直すことで、再成長のきっかけをつかむことが可能です。
- 事業コンセプトの再検証
提供価値が市場ニーズと合致しているかを分析し、必要なら方向転換も検討。 - 収支計画の再設計
損益分岐点を試算し、達成可能な売上目標・コスト構造を具体的に計画化。 - 強みの再定義と活用
他社にないスキル・資源を洗い出し、サービス・販売戦略へ反映させる。 - 柔軟な体制の構築
市場変化や災害などに対応できるよう、事業の多角化や収入源の分散を進める。 - 第三者の視点を取り入れる
自分では見えない課題を把握するために、専門家の意見や顧客の声を反映させる。
戦略の再構築には一定の時間と労力がかかりますが、将来的な持続可能性を高める上で欠かせません。
専門家の助言と資金サポートの活用
外部の知見や制度を活かすことで、自力だけでは解決しにくい問題を乗り越える手助けになります。
- 専門家への相談
税理士、会計士、中小企業診断士などから財務や経営戦略の助言を受ける。 - 公的支援機関の利用
商工会議所や自治体による無料相談、専門家派遣、経営診断サービスを活用。 - 補助金・助成金の活用
設備導入、販促活動、人材育成など、事業再建に活用できる公的資金制度を調査・申請。 - 資金調達の検討
日本政策金融公庫などの低利融資や、クラウドファンディングの活用で事業資金を確保。 - 慎重な返済計画の設計
借入に頼りすぎず、返済可能な範囲で運用し、資金繰り悪化を回避する。
専門家や支援制度を上手に活用することで、経営の立て直しに向けた現実的な道筋を描けます。
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確定申告における赤字の扱いと注意点
個人事業主にとって、赤字でも確定申告を行うことには大きな意味があります。青色申告の制度を活用すれば、将来の税負担を軽減するチャンスにもつながります。
赤字でも確定申告をすべき理由
赤字の年でも確定申告を行うことで、翌年以降の黒字と相殺できる「損失の繰越控除」が利用できます。青色申告をしている場合、この制度により赤字を最長3年間繰り越し、将来の所得税を減額することが可能です。また、給与所得や不動産所得など他の所得と損益通算できる場合もあり、結果として所得税の還付を受けられるケースもあります。
一方、白色申告の場合、青色申告のように事業所得の赤字を翌年以降に繰り越すことは原則としてできません。赤字であることを最大限節税対策として活かしたいなら、青色申告の活用が有利です。
正しく申告するための注意点
赤字の確定申告では、帳簿の正確性と客観的な証拠の保存がとても重要です。青色申告で損失の繰越を適用するには、所定の帳簿(複式簿記など)を記帳し、貸借対照表や損益計算書を添付する必要があります。また、青色申告では、帳簿や領収書などの証拠書類を原則として7年間保管する義務があります。ただし、請求書や領収書などの一部の書類については、前々年の所得金額が300万円以下の場合、保管期間は5年間とされています。
意図的に赤字を作る目的で架空経費を計上する行為は、税務調査で発覚すれば重加算税の対象となる可能性もあります。連年で赤字申告が続く場合、「本当に事業実態があるのか」と疑われやすく、厳格な調査が行われることがあります。
青色申告承認申請と届出のタイミング
青色申告を利用するには、事前に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出する必要があります。青色申告の承認を受けるには、原則として適用を受けたい年の3月15日までに申請書を提出します。新規開業の場合、その年の1月16日以降に開業した方は、開業日から2か月以内が提出期限です。なお、1月1日~15日の間に開業した場合は、その年の3月15日が提出期限となります。
提出期限を過ぎるとその年は白色申告扱いとなってしまうため、注意が必要です。
赤字から抜け出すために今こそ見直そう
赤字が続いている状態は、個人事業主にとって精神的にも経営的にも大きな負担になりますが、適切な対策を講じることで立て直しは可能です。売上や経費の状況を丁寧に見直し、確定申告を通じて税務上の制度も有効に活用しましょう。また、自分だけで抱え込まず、税理士や公的支援機関に相談することで、新たな視点や改善策が得られることもあります。継続的な改善と小さな行動の積み重ねが、赤字体質からの脱却につながります。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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