- 更新日 : 2025年8月28日
個人事業主が事業資金の融資を受けるには?法人との違いや審査対策・融資制度を解説
個人事業主として事業を運営していると、設備投資や運転資金の確保など、さまざまな場面で資金調達の必要性に直面します。しかし、法人に比べて情報が少なく、どの制度を選び、どう準備すべきか悩む方も少なくありません。
本記事では、個人事業主と法人の融資における違いや審査に通るための準備、活用しやすい融資制度などを解説します。
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目次
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事業資金の融資における個人事業主と法人の違い
事業資金の融資を検討する際、個人事業主と法人では審査基準や申込手続きに違いがあります。見落とされがちですが、これらの違いを理解しておくことで、よりスムーズな資金調達が可能になります。ここでは両者の違いについて解説します。
融資審査における信用の見られ方
個人事業主の場合、事業用と個人(プライベート)用の財産や信用が一体となって評価されます。金融機関は申込者本人の信用情報や納税状況、生活面まで含めて総合的に判断します。
一方、法人は法人格が独立しているため、基本的には法人の収益力や保有資産の内容、決算書の内容に基づいて審査が行われます。ただし、法人であっても代表者の連帯保証が必要なケースが多く、実質的に個人の信用力が無視されるわけではありません。
提出書類の範囲と形式
個人事業主が融資を申し込む際は、青色申告をしていれば確定申告書と青色申告決算書が、白色申告であれば確定申告書と収支内訳書が基本的な提出書類になります。これらは事業の収益性や継続性を示す重要な書類であるため、正確に作成し、保存しておく必要があります。なお、個人事業主が青色申告をしている場合に作成する青色申告決算書は、損益計算書及び貸借対照表を作成することとなるため、より詳細な事業実態を示すことができ有利です。一方、法人の場合は決算報告書、法人税の申告書、勘定科目内訳明細書など、より多くの資料が必要となります。これにより金融機関はより客観的かつ正確に財務状況を把握できますが、資料作成には専門的な会計知識が必要になります。
担保・保証人の取り扱い
個人事業主は原則として事業部分と個人(プライベート)部分が同一とみなされるため、融資契約において第三者保証人や担保の提供を求められる場合があります。無担保・無保証人で借入できる融資制度を除き、個人資産を担保に差し出す必要があるのが実情です。
一方、法人では法人自身の資産を担保に差し入れるのが基本ですが、中小企業では経営者保証(代表者個人の連帯保証)を求められることが一般的です。ただし、2023年からは一定条件を満たせば経営者保証を不要とする制度も始まり、法人の資金調達の自由度は少しずつ高まりつつあります。
返済責任と法的影響
個人事業主の場合、事業に失敗して借入金が返済できなくなると、個人としての財産が差し押さえられることになります。つまり、返済義務は事業の枠を超えて本人に直接かかってくるのです。法人はあくまで法人自体に返済義務があるため、法人の倒産とともに借入金も処理されるのが原則です。ただし、代表者保証をしている場合は、個人に返済義務が残る点には注意が必要です。
個人事業主が利用しやすい事業資金の融資制度
ここでは、個人事業主が比較的利用しやすい代表的な事業資金の融資制度を紹介します。
日本政策金融公庫の融資制度
日本政策金融公庫(日本公庫)は、政府が100%出資する政策金融機関で、個人事業主や小規模事業者への融資を積極的に行っています。日本政策金融公庫では、2024年3月末で「新創業融資制度」の取り扱いを終了しましたが、「新規開業資金」などの制度にその役割が統合されました。新しい制度でも、一定の要件を満たすことで、創業期の事業者が無担保・無保証人で融資を利用できる枠組みが維持されています。
また、運転資金や設備資金など幅広い用途に対応しており、金利も民間金融機関に比べて低めに設定されています。申し込みには事業計画書や確定申告書、本人確認書類などが必要です。さらに、現在ではインターネット経由での申し込みも可能であり、手続きの利便性も向上しています。
自治体の制度融資(信用保証協会付融資)
地方自治体と信用保証協会、金融機関が連携して提供する「制度融資」も、個人事業主が利用しやすい選択肢の一つです。これは、信用保証協会が融資の保証人となることで、金融機関が融資しやすくなる仕組みであり、個人事業主でも一定の条件を満たせば活用できます。金利や保証料の一部を自治体が補助する制度も多く、実質的な利息負担を軽減できる点も魅力です。地域ごとに名称や制度の細部は異なりますが、共通しているのは、信用保証協会による審査と、金融機関による審査の二段階があることです。融資限度額や返済期間、用途などの条件は自治体によって異なるため、最寄りの商工会議所や各地方自治体に確認するとよいでしょう。
商工会・商工会議所のマル経融資
「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」は、商工会または商工会議所の経営指導を受けている小規模事業者を対象にした無担保・無保証人の融資制度です。商工会または商工会議所の推薦を得て日本政策金融公庫へ融資の申し込みをします。運転資金や設備資金として、最大2,000万円まで借り入れが可能で、金利も低く設定されています。個人事業主であっても、従業員数が商業・サービス業で5人以下、製造業などで20人以下であれば対象となり得ます。利用条件としては、原則として1年以上の事業実績が必要となりますが、商工会等の推薦を得られることで信頼性が補完される点が特徴です。定期的に経営指導を受けていることも信用の一助となり、融資後も経営改善の支援が受けられるため、資金だけでなく経営全体の安定にもつながります。
銀行や信用金庫による保証付き融資
地方銀行や信用金庫などの民間金融機関も、個人事業主向けの事業資金融資を取り扱っています。これらの多くは、信用保証協会の保証を前提とした保証付き融資であり、信用保証協会の審査をクリアできれば融資が実行される仕組みです。信用金庫や信用組合は、地域に根差した取引を重視しており、地元で長く事業を営んでいる個人事業主に対して柔軟な対応をしてくれることもあります。保証料は事業者の負担になりますが、自治体の制度と併用することで軽減されることもあります。審査では、確定申告書や事業計画、資金使途の明確さが重視されるため、事前の準備が重要です。過去に返済遅延などのトラブルがなければ、比較的スムーズな資金調達が可能です。
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個人事業主が融資審査に向けて行うべき準備
金融機関の融資審査を通過するには、個人事業主として信頼を得られる書類と体制の整備が欠かせません。ここでは、申し込み前に整えておくべき準備について解説します。
確定申告書と帳簿の整備
融資申請時には、過去の収益状況を確認できる確定申告書の提出が求められます。原則として直近2期分の確定申告書と収支内訳書を整えておくことが必要です。ただし個人事業主が青色申告を行っている場合は、収支内訳書に変えて青色申告決算書を提出することとなります。青色申告決算書では損益計算書と貸借対照表を作成することから、青色申告を行っている個人事業主の場合には損益計算書と貸借対照表の提出も可能となり、より信頼性の高い情報として評価されます。日頃から帳簿を正確に記録しておきましょう。白色申告で作成する収支内訳書では内容が簡易的で、審査で不利に働くこともあるため、白色申告を行っている場合には経営状況が分かるようにより丁寧な説明が必要となります。
事業計画書の作成
創業間もない個人事業主や新規資金調達を行う場合には、事業計画書の提出が不可欠です。事業の内容、市場動向、競合との差別化、売上計画、費用見積もり、資金の用途と返済プランを具体的に記載し、数字に基づいた説明ができるようにします。日本政策金融公庫や自治体の制度融資では、事業計画書のひな型が用意されており、それを活用すると構成を整えやすくなります。計画書の精度が高いほど、金融機関からの信頼は厚くなります。
自己資金を証明する記録や帳簿の準備
創業融資の場合には、自己資金の有無が審査で重視されます。自己資金は、事業に対する本気度と返済意欲の指標とされるからです。たとえ少額でも事業準備に投入した金額を、通帳や帳簿で証明できるよう準備しておくことが重要です。親族からの支援を受けた場合は、贈与契約書や振込記録などで出所を明らかにする必要があります。なお、自己資金を多く見せようと見せ金を行うことだけはやめましょう。見せ金と判断された場合、心証が悪くなるだけではなく、信頼できないとして融資で審査に落とされる原因になります。
個人事業主が融資審査を通過するためのポイント
融資審査を通過するには、金融機関に対して事業の信頼性や返済能力を明確に伝えることが求められます。ただ書類を揃えるだけでなく、申込内容の伝え方や信用の見せ方も結果を左右します。ここでは、審査を突破するためのポイントを整理します。
資金使途を明確にする
金融機関は、融資された資金がどのように使われるかを重視します。資金使途が曖昧だと、貸したお金が事業成長に結びつくか判断できず、審査で不利になります。たとえば、設備投資であれば設備の見積書、広告出稿であれば掲載予定の媒体や出稿費の見積書、在庫購入であれば見積書や発注書など、資金の用途を証明する具体的な資料を添付することで信頼が高まります。また、申請金額が過大である場合、資金計画の甘さを疑われる可能性があるため、実際に必要な額に絞って申請するように心がけましょう。
信用情報を整える
金融機関は、申込者の個人信用情報を、信用情報機関を通じて確認します。過去のクレジットカードやローンの支払い状況に延滞があると、信用度が低下し、融資の審査に影響します。融資申し込みの前には、CICやJICCなどで自己の信用情報を確認し、誤った情報が登録されていないかをチェックすることが重要です。また、不要な借入を整理し、延滞がある場合は直近での正常な支払い実績を積み重ねることで、信用評価を回復できます。金融機関は「現在の信用状況」だけでなく「改善の姿勢」も評価するため、日常的な信用管理を心がけることが大切です。
返済能力を示す
審査では、返済能力があることを明確に示す必要があります。過去の確定申告書に基づいた売上・利益の推移、継続的な取引先の存在、今後の売上の見込みなどを具体的な数値で示しましょう。季節変動がある業種の場合は、繁忙期と閑散期の収支を明示することで、年間を通した資金繰りの計画性を伝えることができます。さらに、既存の借入がある場合は、毎月の返済額と今回の借入による負担増加が返済可能な範囲であることも計算して示すと、審査担当者の理解が得られやすくなります。
経営姿勢をアピールする
金融機関は数値だけでなく、申込者の経営姿勢や信頼性も見ています。経営に対して真摯に取り組んでいること、リスクに対して備えをしていること、そして融資に対して責任を持って対応する意思があることを、書類や面談を通して伝えることが重要です。たとえば、自己資金をどのように積み立てたか、これまでの経費管理や経営判断の背景などを説明できれば、数字では伝わらない信用を補うことができます。丁寧な対応や誠実な説明が、融資の後押しになる場面は少なくありません。
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開業届・確定申告書が融資に与える影響
個人事業主が融資を受ける際、税務手続きである「開業届」や「確定申告書」も、審査に影響します。事業の実態や継続性を示すこれらの書類が、融資審査でどのように評価されるかを解説します。
開業届の提出が事業実態を証明する
個人事業主として融資を申請する際、開業届の提出は事業を正式に開始していることの基本的な証明手段になります。開業届を税務署に提出していないと、事業実態が不透明とみなされ、金融機関が審査において判断に困ることがあります。日本政策金融公庫や自治体の制度融資では、開業届の控えを提出書類として求められることも多く、提出済みであることが前提となるケースも少なくありません。創業融資の場合は、開業からの期間や準備状況を示すうえで、開業届の日付や内容が審査資料として重視されます。提出が遅れている場合は、早急に対応しましょう。
確定申告書の内容が収益と信用を裏付ける
確定申告書は、事業の収支を金融機関に客観的に示すための重要な書類です。申告していなければ、過去の売上・利益を証明することができず、返済能力の確認が困難になります。青色申告を選択していれば、損益計算書や貸借対照表を添付することで、財務の健全性を数値で伝えることができ、審査上の信頼度が高まります。白色申告や設立後まだ申告期限が来ておらず未申告の場合は、収支の裏付けが弱く、審査に不利となることが多いため、その場合には収支について丁寧な説明ができるよう準備をしておくことをおすすめします。
税務状況と納税実績が審査評価に反映される
融資審査では、過去の納税状況も確認対象となります。たとえば、所得税の未納や滞納があると、事業管理の面で不安があると判断され、信用を損ねる可能性があります。確定申告書に記載された所得や納税額は、収益の安定性や税務コンプライアンスを評価する材料となるため、過少申告や申告漏れは避けなければなりません。確定申告書は税務署の受領印があるものの控えや、e-Taxの送信票など申告済みであることがわかるものを用意し、確実な提出実績を証明できるようにしておくことも大切です。
信頼を築ける書類と姿勢で融資に臨もう
個人事業主が事業資金融資を受けるには、法人とは異なる視点での審査に対応する必要があります。確定申告書や開業届の提出、事業計画書の作成、信用情報の管理など、求められる準備は多岐にわたりますが、融資審査に向けて一つ一つ丁寧に整えることで審査通過の可能性は高まります。自身の事業の状況を正確に伝えることができれば、金融機関からの評価も向上し、資金調達に有利な状況へとつながります。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
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