• 更新日 : 2025年7月7日

個人事業主が店舗改装に使える補助金は?確定申告のポイントもあわせて解説

個人事業主が店舗のリニューアルや設備改修などを行う場合、国の補助金制度を利用することで、自己負担を軽減しつつ事業の成長を図ることができます。どのような補助制度が利用できるのか、どの経費が対象となるのかを知りたい方も多いでしょう。

補助金を受け取った後には、収入としての計上や経費処理、場合によっては圧縮記帳といった税務上の対応も必要になります。

本記事では、小規模事業者持続化補助金や2025年4月から新たに始まった「新事業進出補助金」など国の主な支援制度を中心に、店舗改装を検討している個人事業主が押さえておきたい情報について解説します。

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個人事業主が店舗改装に利用できる補助制度はある?

個人事業主が店舗改装自体を対象とする単独の制度があるわけではありませんが、小規模事業者向けや事業転換支援など複数の補助金を組み合わせて利用することが可能です。

中小企業庁所管の「小規模事業者持続化補助金」や、2025年4月から新たに始まった「新事業進出補助金」などが挙げられます。新事業進出補助金は、既存事業とは異なる新市場や高付加価値事業への進出に取り組む中小企業・個人事業主を支援するもので、店舗の大規模改装や設備投資も補助対象となります。第1回公募の締切は2025年7月10日です。

これらはそれぞれ目的や支援内容が異なりますが、条件を満たせば個人事業主でも申請できます。また、厚生労働省所管の「業務改善助成金」等、設備投資や職場環境改善を支援する助成金制度が店舗改装に役立つ場合もあります。

個人事業主向けの補助金① 小規模事業者持続化補助金

店舗の改装を検討している個人事業主にとって、「小規模事業者持続化補助金」は非常に活用しやすい制度です。販路拡大や業務効率化などの目的に沿って行う店舗改装であれば、費用の一部を補助してもらえる可能性があります。

制度の目的と概要

小規模事業者持続化補助金は、中小企業庁の支援施策の一環として提供されている制度です。主に商工会議所や商工会を通じて運用され、小規模事業者が策定した経営計画にもとづく販路開拓や生産性向上に資する取り組みに対して支援が行われます。新商品・新サービスの開発、店舗のリニューアル、設備導入、広告宣伝など幅広い用途に利用可能です。個人事業主でも、常時使用する従業員が商業・サービス業で5人以下(製造業等では20人以下)であれば申請対象となります。

店舗改装費は補助対象になるか

店舗改装の費用は、この補助金の趣旨に合致すれば補助対象経費として認められます。たとえば、来店客の増加を見据えて内外装を刷新したり、動線を改善するためにレイアウトを変更したりといった改装は、「販路開拓」や「サービス品質の向上」に直結すると判断され、補助対象となることが多いです。看板の設置、商品棚の増設なども対象経費に含まれるケースがあります。ただし、単なる老朽化による修繕や、美観維持のためだけの塗装といった工事は、事業成長との関連が薄いとして補助対象外になることがあります。改装がいかに事業発展につながるかを計画書でしっかり説明することが求められます。

補助額・補助率

通常枠では、補助率は2/3、補助上限額は50万円と設定されています。つまり、75万円の支出に対して50万円が補助される仕組みです。さらに、従業員の賃上げやインボイス制度への対応を行う事業者は加点・増額の対象となり、補助上限額は最大250万円まで引き上げられる場合があります。加えて、2025年度からの制度改正により「創業型」や「共同・協業型」といった新たな申請類型が導入されました。創業間もない個人事業主にとっても申請しやすい設計となり、「創業型」は最大で200万円(条件付きで250万円)、「共同・協業型」は5,000万円まで補助を受けることができます。ただし、補助金には自己負担が伴うため、事業者側もあらかじめ十分な資金計画を立てる必要があります。

留意点

申請を行うには、経営計画書および補助事業計画書を作成し、商工会議所または商工会から支援計画書(確認書)を取得する必要があります。商工会議所等では会員以外でも相談を受け付けており、無料でアドバイスを受けながら計画書を作成することが可能です。補助金の採択率は過去には約60%前後を維持していましたが、最近では応募数の増加により競争が激化し、30%台まで低下するケースもあります。そのため、内容の説得力や実現可能性が重視される傾向が強まっており、より緻密な計画立案が採択の鍵となります。

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個人事業主の"経費"、うまく活用できていますか?

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個人事業主向けの補助金② 新事業進出補助金(2025年4月開始)

新事業進出補助金は、2025年4月から始まった国の新しい補助金制度で、個人事業主も対象です。業種転換や新事業展開など、大胆な変革を図る事業者に対し、高額な補助が行われます。店舗改装が新市場進出や新分野展開の一環として認められる場合、改装費用も支援対象となります。

制度の目的と概要

新事業進出補助金は、既存事業とは異なる新たな市場や高付加価値事業への進出を促進し、中小企業や個人事業主の成長をサポートすることを目的としています。申請には「新事業進出指針」に基づく新規性や、付加価値額・賃上げなどの要件を満たす必要があります。

たとえば、飲食店が新たな業態に挑戦する場合や、既存のノウハウを活かして異業種へ進出する場合などが対象です。

店舗改装費は補助対象になるか

新市場進出や業種転換のための店舗改装であれば、建物の設計施工費、設備投資、什器購入費など幅広い経費が補助対象となります。単なる修繕や既存事業の拡大は対象外ですが、新たな市場や顧客層への進出を伴う改装であれば積極的に活用できます。

補助額・補助率

補助率は1/2で、従業員規模に応じて最大9,000万円(特例適用時)まで補助されます。個人事業主の場合は従業員20人以下で上限2,500万円など、規模に応じた上限が設定されています。2025年7月10日が第1回公募の締切です。

留意点

この補助金では、交付決定前の着工・契約は補助対象外です。また、申請には新規性や付加価値向上、賃上げなど複数の要件があります。採択後も事業計画の進捗や経費精査によって補助額が減額される場合があるため注意が必要です。

個人事業主の補助対象となる改装工事と経費

補助金を活用して店舗を改装する場合、どのような工事や費用が対象となるのかを明確にしておくことが大切です。事業計画に沿った費用であっても、補助対象にならないケースもあるため、対象経費と対象外経費の区分を理解し、計画段階で適切に整理しておく必要があります。

補助対象となる改装工事・経費の例

事業拡大や販路開拓、生産性向上に資する目的で行う改装であれば、多くの工事が補助対象に該当します。たとえば、店舗の内装や外装の工事費(壁や床のリフォーム、間仕切りの変更、外観の刷新など)は代表的な対象経費です。さらに、改装に伴って必要となる厨房機器や業務用設備などの購入費、店舗運営の効率を高めるための業務システムの導入費も含まれます。また、改装に合わせて新たな集客を狙う場合の広告宣伝費(ウェブ広告、チラシ作成費、キャンペーンイベント費など)も補助対象として認められることがあります。加えて、事業の遂行に不可欠な外注費(設計士への設計委託料や改装ディレクション費用など)や、サービス品質を高める目的の従業員研修費用も条件を満たせば補助対象となる可能性があります。

補助対象外となる主な経費

一方で、補助対象外とされる経費も存在します。もっとも代表的なのが人件費です。改装に伴う一時的な人員増加やスタッフへの残業手当などは、たとえ改装と関係していても補助対象にはなりません。同様に、交通費や宿泊費などの旅費、出張に関わる経費も対象外となるのが一般的です。また、不動産の取得費、すなわち店舗用地や建物自体の購入費は補助対象外です。改装のために新たな物件を取得する際は、補助金とは別に資金手当てを行う必要があります。汎用性が高く改装と直接関係のない消耗品や備品(事務用文具や通常の仕入商品など)も対象には含まれません。判断の分かれ目となるのは「改装プロジェクトに直接かつ不可欠な費用であるかどうか」であり、対象とならない費用を誤って計画に含めてしまわないよう慎重に判断する必要があります。

事前着手前の経費は補助されない

補助対象となる改装工事や経費であっても、補助金の交付決定前に支出されたものは対象外となります。これは補助金の原則として「事後精算型・後払い制」が採用されているためで、交付決定が通知された日以降に契約・着工した経費のみが対象になります。申請前や審査期間中に契約や工事を始めてしまった場合、その支出は補助の対象にならず、全額自己負担となってしまうため注意が必要です。

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補助金受給後の確定申告と税務処理

補助金を受給した場合、確定申告での処理を適切に行うことが求められます。補助金は基本的に事業に関連する収入とみなされるため、税務上の計上方法や経費との関係を把握しておかないと、後に誤りを指摘される可能性があります。

補助金は収入として申告する

補助金は、国や自治体から交付されたものであっても、原則として所得税法上の課税対象です。法人では営業外収益、個人事業主であれば事業所得の一部として「雑収入」などの勘定科目で収入計上します。計上するタイミングは、補助金の交付決定が通知された年であり、実際の入金日ではありません。たとえば、前年度に申請し、今年度に交付決定が下りた場合は、今年度の事業収入として計上します。この点を誤って入金ベースで処理すると、年度違いの申告ミスにつながるため注意が必要です。また、補助金は物品販売などの対価ではないため、消費税の課税対象外(不課税取引)として扱います。したがって、補助金の受領によって消費税の納税額が増えることはありません。

経費との相殺関係と損益への影響

補助金は収入として計上する一方で、それに対応する支出が経費として認められます。たとえば、100万円の店舗改装費を支出し、50万円の補助金を受給した場合、事業者は経費として100万円を計上しつつ、収入として50万円の補助金も記録します。これにより、結果的に損益に反映されるのは自己負担分である50万円だけとなります。つまり、補助金の分は収入と経費が相殺されるため、課税対象となる利益に影響を与えるのは、補助されなかった部分に限られます。よって、補助金によって税金が軽減されるわけではなく、あくまでも自己資金で支出した部分だけが所得控除につながる形となります。

圧縮記帳を利用した課税繰延べの特例

個人事業主は、圧縮記帳を利用できません。個人事業主が補助金を受け取って固定資産を購入した場合には、総収入金額不算入の特例で補助金分を差し引くことになります。 総収入金額不算入の特例とは、固定資産を取得する際に補助金を受給した場合に適用できる制度です。高額になりがちな法人税負担を一時的に軽減させる(翌年度以降に繰り延べる)ことで、資金不足を防ぐ目的があります。

総収入金額不算入の特例を利用する際にも、確定申告時に国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書を税務署へ提出する必要があります。

実務での使い分けと判断基準

圧縮記帳は、課税の繰延べ効果が得られる一方で、年間の減価償却費が減るため、長期的に見れば節税効果は変わらないという特性があります。そのため、少額の補助金であればあえて通常どおり収入計上して処理することが多く、税理士など専門家に相談したうえで、利益計画や資金繰りに合わせて処理方法を選択することが望ましいです。とくに多額の補助金を受給した場合や、大規模な改装による影響が大きい場合には、圧縮記帳を利用することで年度の利益調整や納税額の平準化が可能になります。

店舗改装補助金は計画と申告を丁寧に進めよう

個人事業主にとって、店舗改装補助金は事業成長の大きな後押しになります。小規模事業者持続化補助金や新事業進出補助金は、改装に伴う費用の負担軽減に役立ちますが、申請には事業計画の整備や関係機関との連携が必要です。また、補助金を受け取った後の確定申告では、収入計上や経費処理、圧縮記帳などの税務対応も求められます。制度の仕組みを理解し、段階ごとの要件を丁寧に確認することで、補助金を安心して活用できるでしょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例

データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。

ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

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