• 更新日 : 2025年2月27日

中小企業退職金共済とは?個人事業主も対象?加入資格や手続きを解説

中小企業退職金共済制度は、企業の退職金制度の1つです。中小企業で働く従業員の退職金を共済掛金として企業が毎月負担し、退職時の原資とします。名称に「中小企業」とあるものの、一定の条件を満たしていれば個人事業主も加入可能です。今回は、中小企業退職金共済制度の制度の内容や加入資格、手続きの進め方などを中心に解説します。

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中小企業退職金共済(中退共)とは?

はじめに、中小企業退職金共済制度の概要について解説します。

個人事業主も対象

中小企業退職金共済制度に加入できる企業(共済契約者)は、法人および個人事業主です。加入資格は業種によって異なり、「常用従業員数」または「資本金・出資金」の規模で判定されます。ただし個人事業主の場合「資本金・出資金」がないため、「常用従業員数」のみで判定されます。

業種常用従業員数資本金・出資金
一般業種(製造業、建設業等)300人以下または3億円以下
卸売業100人以下または1億円以下
サービス業100人以下または5千万円以下
小売業50人以下または5千万円以下

引用:加入の条件|中小企業退職金共済事業本部(中退共)

全額が事業主負担

中小企業退職金共済制度に加入して、企業が得られるメリットの1つは「共済掛金の全額損金算入・必要経費算入」です。

共済制度に加入した場合、企業は掛金を毎月納付することになりますが、法人の場合は支払った金額を全額損金に算入できます。個人事業主の場合でも、全額必要経費にすることが可能です。従業員の退職金をケアしつつ、企業の節税にもつながる点が大きなメリットだと言えるでしょう。

中小企業退職金共済の掛け金はいくらから?

中小企業退職金共済制度の掛金は、全部で16種類あります。

5,000円6,000円7,000円8,000円
9,000円10,000円12,000円14,000円
16,000円18,000円20,000円22,000円
24,000円26,000円28,000円30,000円

引用:掛金|中小企業退職金共済事業本部(中退共)

掛金は従業員ごとに選択できるほか、加入期間中に変更することも可能です。掛金が多ければ退職金の額も増えるため、職制や勤務実績などに応じて掛金を設定するのもよいでしょう。

またパートタイマーのような短時間労働者向けの特例として、次のような低い掛金で加入することもできます。

2,000円3,000円4,000円

引用:掛金|中小企業退職金共済事業本部(中退共)

中小企業退職金共済に加入できる条件

次に、従業員(被共済者)の加入資格や加入条件について解説します。

従業員は原則として全員加入が必要

共済制度に加入させる従業員は、原則として雇用している全ての従業員でなければなりません。特定の従業員だけを制度に加入させることはできないため注意してください。

ただし、先にも述べましたが、掛金は従業員ごとに設定できるため、加入した全員が同一の掛金である必要はありません。

加入させなくてもよい従業員とは?

なお、次に挙げる従業員に該当する場合には制度に加入させる必要がありません。

  • 短期アルバイトのような期間を定めて雇用される従業員
  • 季節的業務のために雇用される従業員
  • 入社後の試用期間中の従業員
  • パートのような短時間労働者
  • 休職期間中の従業員
  • 定年等を理由に近々退職する予定である従業員
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中小企業退職金共済の掛け金の決め方

中小企業退職金共済の掛金は全部で16種類(特例3種類)ありますが、ここでは従業員ごとの掛金の設定はどのように決めればよいかについて解説します。

入社時の共済掛金の決め方

入社時には、当該社員の能力や勤務実績など分からない部分があります。そこで「採用して一定期間経過後の査定で決める」「すぐ加入させるが、一番低い掛金からスタートする」などの判断が必要です。

「退職金規定」に中小企業退職金共済を利用する旨の記載を入れ、そのなかで入社後どの時点で制度加入するか、どの時点で掛金の見直しを行うか等を決めておくのがよいでしょう。

退職金は給与の支給水準に合わせるケースが多い

退職金は、当該従業員が退職する時点で支給している給与の水準に合わせて、相応額を支給するのが一般的です。中小企業退職金共済から支給される退職金は、毎月の掛金で決定されるため、勤続年数が長くなるにつれ上昇する給与に合わせて共済掛金も上げていく必要があります。

入社後の共済掛金の決め方

入社してから退職時までの共済掛金を決定する基準はいくつか考えられます。

  • 給与のベースアップに合わせて掛金を増額する方法
  • 勤続年数に応じて掛金を増額する方法
  • 給与支給額をテーブル化して掛金を増額する方法

いずれの方法も、年数の経過とともに掛金の会社負担額は増加することになります。退職金の準備も大切ですが、毎月の資金繰りの負担にならないよう、できる範囲で無理のない掛金を設定するようにしましょう。

中小企業退職金共済の掛金の税法上の扱い

次に、企業が負担する共済掛金の税法上の取扱いについて解説します。

中小企業退職金共済は課税か非課税か

中小企業退職金共済の掛金は、消費税法上の「非課税取引」に該当します。その理由は、生命保険料と同様に、本来は課税取引であるものの、退職後の生活を保障するための制度であることから、政策的な配慮が必要な取引であるとされているためです。したがって、企業が毎月納付する掛金は全額非課税となります。

中小企業退職金共済は経費にできる?

中小企業退職金共済の掛金は全額法人税法上の「費用」、あるいは所得税法上の「必要経費」にすることができます。全額費用や必要経費にできることから、共済掛金は法人税や所得税でも「非課税取引」に該当します。

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中小企業退職金共済の手続きの流れ

次に、中小企業退職金共済に新規加入するための申請手続きの流れについて解説します。

加入するには従業員の同意が必要

新規加入するためにはまず、雇用している従業員の同意が必要です。前述した除外できる従業員を除き、全員加入が原則のため、全従業員に加入する旨を通知して、加入についての同意を得なければなりません。これを「包括加入の原則」と呼びます。

その上で、給与や勤続年数等を基準に各従業員の掛金を決定していくという流れになります。

申請書類の入手方法

申請に必要な「退職金共済契約申込書」の入手方法については、以下の3つの方法があります。

1.取扱い窓口で入手する方法

「退職金共済契約申込書」は中小企業退職金共済本部(東京)や相談コーナー(名古屋、大阪)の窓口で入手することができます。また、金融機関(ゆうちょ銀行や農協、ネット銀行などは除く)や商工会議所・商工会、労働保険事務組合、税理士協同組合などの取扱い窓口でも入手できます。

2.郵送で入手する方法

中小企業退職金共済本部から、申込書を郵送で送ってもらう方法です。本部HPの「資料請求ページ」に必要な情報を入力して資料請求を行います。

参考:資料請求|中小企業退職金共済事業本部(中退共)

3.HPからPDF形式で出力する方法

中小企業退職金共済本部のHP内には、申込書のPDF入力様式があります。必要事項を直接入力して、PDF形式で出力できます。

参考:各種申込書|中小企業退職金共済事業本部(中退共)

申請時に添付する資料

前述した通り、中小企業退職金共済に加入するためには資本金または従業員数に上限があるため、条件を満たしていることを証明する資料の添付が必要です。

なお、株式会社や合資会社、合名会社など会社法上の営利法人については、資本金等の額が証明できる登記事項証明書を添付すればよいこととされています。

書類の提出先

申込書の提出は、中小企業退職金共済本部へ郵送するほか、共済を取り扱っている金融機関(ゆうちょ銀行や農協、ネット銀行などは除く)や委託事業主団体の窓口に提出することもできます。

中小企業退職金共済の勘定科目や仕訳例

企業が共済掛金を納付する際の仕訳例を確認してみましょう。

掛金を納付した場合

例:中小企業退職金共済の掛金100,000円を口座振替で納付した

借 方貸 方
福利厚生費100,000円普通預金100,000円

従業員が退職した場合

例:従業員が退職し、退職金が支給された

借 方貸 方
仕訳なし

中小企業退職金共済から支給される退職金は、従業員に直接支払われます。従業員自らが請求手続きを行うことになるため、企業側の仕訳処理はありません。

中小企業退職金共済は確定申告が必要?

中小企業退職金共済から受け取った退職金は「退職所得」に該当します。通常、退職金の支払いを受ける際には会社に対して「退職所得の受給者申告書」を提出し、退職金にかかる税金を源泉徴収してもらうため、原則として確定申告は不要です。

中小企業退職金共済の場合「退職金請求書」のなかに「退職所得申告書」の欄が設けられているので、必要事項を記載すれば「退職所得の受給者申告書」の提出を省略することができます。

中小企業退職金共済と小規模企業共済の違い

中小企業退職金共済と同じような退職金制度として「小規模企業共済」があります。中小企業退職金共済は、主に中小企業の従業員の退職金制度として活用されるのに対して、小規模企業共済は従業員数20名以下(商業、サービス業の場合は5名以下)の個人事業主と会社役員が加入対象です。

両者とも掛金に対する税法上の特典がありますが、特典を受ける方法が異なるのも大きな違いです。詳しくは以下のリンクを参照してください。

参考:【個人事業主・中小企業経営者向け】小規模企業共済とは?加入するメリットを解説

中小企業退職金共済は会社にも従業員にもメリットがある

中小企業退職金共済は、企業の退職金制度を充実させられる制度です。掛金を費用や必要経費にできるため、企業の節税にもつなげられます。したがって、中小企業退職金共済は、企業と従業員の両者にとってメリットがあると言えるでしょう。退職金制度がない企業は一度加入を検討してみるのもよいかもしれません。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

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