- 更新日 : 2025年9月19日
個人事業主が従業員を雇うときの正しい呼び方とは?知っておきたいルールを解説
個人事業主が人を雇う際、求人媒体などで相手をどのように呼称すべきか悩む場面があるでしょう。
「従業員」「スタッフ」「社員」「パートナー」など、さまざまな呼称がありますが、実態と呼称が一致していないと、労務トラブルや税務上の誤解につながる可能性もあります。
本記事では、法的定義、契約形態ごとの違い、確定申告上の取扱いなど、適切な呼び方とその根拠を解説します。
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個人事業主が従業員を雇用する場合の呼称
個人事業主が人を雇う場面では、どのような呼称を使えばよいのか迷う場面があります。ここでは、個人事業主が雇用した人に対して用いるべき呼び方と、背景にある法的な区分について整理します。
「従業員」と呼ぶのが適切
個人事業主に雇用されて働く人については、「従業員」という呼称が最も一般的かつ適切です。法律上は労働基準法などにより「労働者」として定義され、これは雇用契約を結び賃金を受け取るすべての人を指します。
実務上の書類では「労働者」と表現される場合がありますが、日常的には「従業員」で問題ありません。
「会社員」との区別
一般に「会社員」とは株式会社などの法人に雇用されている人を指します。個人事業主が雇った従業員は法人に属するわけではないため、社会通念上も会社員とは区別されます。履歴書や各種申請書に記載する際は、「○○業従業員」や「自営業従業員」などと明記されるのが通例です。呼称を使い分けることで、雇用形態や所属組織に対する誤解を避けることにつながります。
従業員の呼び方における法的定義
従業員の呼び方には、法律上の定義に基づいた表現と、職場内や社会で使われる慣習的な呼び方があります。個人事業主として人を雇う立場であれば、法的な区分と日常的な呼び方の違いを理解し、場面に応じて適切に使い分けることが求められます。
法律上の呼称は「労働者」が基準
労働基準法では、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者を「労働者」と定義しています。このため、個人事業主が雇用している人は、正社員・パート・アルバイトといった形態を問わず、すべて法的には「労働者」に該当します。
日常的には「従業員」と呼ぶのが自然ですが、公式な書類や法的な場面では「労働者」という表現が使われます。一方で、請負契約や業務委託契約に基づいて働く人は「労働者」には当たりません。委託先は個人であっても独立した事業者という扱いになり、雇用契約が存在しない限り法的には「従業員」ではなくなります。
法的立場に応じた呼称を使用することで、雇用関係の誤認やトラブルを避けられます。ただし、請負契約や業務委託契約に基づいて働いていても、実態をみて労働者とされる場合があるため、法律上の取り扱いにおいては注意が必要です。
慣習的に使われる呼び方
現場では「スタッフ」「社員」「パートナー」など、柔らかく聞こえる表現がよく使われます。「スタッフ」という呼称は親しみやすく、小売業やサービス業などで広く用いられていますが、法的意味合いは伴いません。
また、「パートナー」という表現は、対等な協力関係を表す意図で使われることがありますが、実際の契約内容が雇用であれば、「従業員」として扱うのが適切です。呼び方を変えたとしても、法的な関係や税務処理が変わるわけではありません。日常会話や名刺、店舗の紹介などでは柔らかい言葉を選ぶことも可能ですが、公的な書類や契約においては、実態に即した呼称を使用しましょう。
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雇用契約と業務委託契約の違い
個人事業主が人手を必要とする場面では、「雇用契約」と「業務委託契約」のいずれかの形で人材を活用することになります。ここでは、契約形態による呼称の違いと注意点を整理します。
雇用契約による人材は「従業員」
雇用契約を結ぶ場合、その人は法律上「労働者」として扱われ、日常的には「従業員」などと呼ばれます。事業主は従業員に対して勤務時間や業務内容を指示し、労働に対して給与を支払います。
これに伴い、最低賃金の遵守や時間外労働の割増賃金の支払義務が生じます。また、労働保険(労災保険・雇用保険)は原則として加入が義務付けられます。社会保険(健康保険・厚生年金)については、法人の場合は加入義務があり、個人事業主の場合でも常時使用する従業員が5人以上の場合には加入義務が生じます。
また、事業主は原則として従業員の給与から所得税を源泉徴収し、税務署へ納付する義務を負います。アルバイトやパートであっても、雇用契約に基づいて働いている限りは「従業員」に該当します。したがって、雇用関係にある人を「スタッフ」「メンバー」といった柔らかい表現で呼ぶことはあっても、税務・労務上は一律に「従業員」として扱われます。
業務委託契約の相手は「従業員」ではない
一方、業務委託契約(請負・委任契約を含む)は、仕事の完成や成果物の提供を目的とした契約です。フリーランスや外部の個人事業主などに対して業務を発注する場合、受託者は従業員ではなく、独立した事業者として扱われます。
事業主は委託先に対して直接的な指揮命令を行うことはできず、納期や成果物に対する対価として報酬を支払う関係になります。このような相手を「従業員」や「社員」と呼ぶと、雇用関係と誤認されるおそれがあり、偽装請負ではないかと疑われる可能性もあります。
委託先には社会保険の加入義務や源泉徴収の義務は原則としてありませんが、個人に報酬を支払う場合、たとえば原稿料、デザイン料、講演料、税理士や弁護士への報酬など、所得税法で定められた特定の報酬・料金については源泉徴収が必要になるため注意が必要です。
業務委託で関わる人については、「外部スタッフ」「パートナー」「契約先」などの呼び方を用いるケースもありますが、契約書上の名称ではなく、契約形態そのものが重要です。
青色事業専従者と他の従業員の違い
個人事業主が人を雇う際、自身の家族を手伝いとして迎えるケースも多く見られます。青色申告事業者で雇った家族が該当するのが「青色事業専従者」です。
通常の従業員とは税務・労務上で取扱いが異なるため、区別して理解することが求められます。
青色事業専従者とは
青色事業専従者とは、青色申告者である個人事業主と生計を一にしている配偶者その他の親族であり、その年の12月31日時点で15歳以上の人で、その年を通じて6月を超える期間、青色申告者の営む事業に専ら従事している人を指します。
青色申告者が「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署へ提出することで、支払う給与が対価として正当であれば、その給与を全額必要経費にできます。これにより、所得税や住民税の節税が可能になります。白色申告の場合は専従者控除制度があり、年間で配偶者であれば86万円、それ以外の親族は1人あたり50万円が経費として認められますが、それ以上の給与は控除対象外です。
税務上の違い
通常の従業員への給与は「給料賃金」として処理され、必要経費として全額が控除可能です。一方、専従者への給与は、届出がなければ経費にできず、税務上問題となることもあります。
また、専従者は給与を受け取ることで独立した所得者とみなされ、配偶者控除や扶養控除の対象にはなりません。
労務管理上の扱い
青色事業専従者を含む家族従業員については、「同居の親族のみを使用する事業」に該当する場合、労働基準法の適用外となります。そのため、労働時間や休憩、休日に関する規定は法的拘束力を持ちません。
ただし、家族以外の従業員を1人でも雇った場合、その事業所は労働基準法の適用対象となります。その上で、同居の親族が労働基準法上の「労働者」に該当するかどうかは、使用従属性や報酬の労働対価性などに基づいて個別に判断されます。
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確定申告や帳簿上での従業員の分類・記載
個人事業主が従業員を雇う場合、初めて雇用した日から1か月以内に税務署への届出をし、帳簿管理、確定申告の書類記載をするなど、多くの手続きが発生します。ここでは、経費計上の方法や青色・白色申告における専従者給与の扱いなど、正確な処理に必要な知識を解説します。
従業員の給与を経費として計上する
従業員に支払った給与は、事業に必要な経費として「給料賃金」勘定で帳簿に記載します。新たに従業員を雇用した際は、初めて従業員を雇った日から1か月以内に税務署へ「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する必要があります。給与を支払う場合、所定の源泉所得税を控除し、原則として翌月10日までに納付します。また、年収103万円以下の人や年度の途中で辞めた人を除き、年末には従業員の年末調整を行い、源泉徴収票を作成します。
これらの情報は申告書に反映されるため、帳簿上も源泉徴収税額などを適切に仕訳し、給与台帳も整えておきましょう。
青色申告における専従者給与の記載方法
青色申告をしている事業主が、家族を青色事業専従者として雇っている場合は、青色専従者給与として経費に算入できます。支払った給与は、事前に届け出た金額の範囲内であることが条件で、青色申告決算書の「専従者給与」欄に記載します。
届出より多く支払った場合、その超過分は経費にできません。事前の届出よりも青色専従者給与を増額する場合、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を提出することで、増額分までを経費にできます。ただし、税務署から利益操作ではないかと疑われた場合に、労働の対価として正当であると主張する理由が必要です。
専従者給与を支給した場合は、確定申告書に専従者給与の内訳を記載します。この内訳には、専従者の氏名・続柄・支給額などを記載し、記録に基づいて説明できるよう準備しておくことが大切です。また、給与額によっては専従者であっても源泉徴収の対象となるため、一般従業員と同様の対応が必要です。
白色申告の場合の専従者控除の扱い
白色申告の場合、「事業専従者控除」として一定額を所得から控除する制度があります。控除限度額は、配偶者であれば年間86万円、それ以外の親族は50万円です。
個人事業主の従業員の呼び方に関する注意点
個人事業主が人を雇用する際、日常的な呼び方にあまり意識を向けないこともありますが、正式な文書などで不適切な呼称を使うと誤解を招いたり、労務・税務上のトラブルにつながることもあります。
このセクションでは、避けるべき表現と背景にあるリスクを解説します。
「社員」「会社員」の使用は誤認のもとになる
「社員」や「会社員」という呼び方は、本来、法人に雇用される正規職員を指す用語です。個人事業主には法人格がないため、自身の従業員を「社員」と表現すると、外部から法人であると誤解されるおそれがあります。
これにより、法的文書や契約上で誤った印象を与える可能性があるため、正式には「従業員」「スタッフ」という表現を用いる方が適切です。
業務委託先を「従業員」と呼ぶのはリスクがある
業務委託契約を結んだ外部の協力者に対して「従業員」や「社員」と呼ぶのは、労務管理上のリスクにつながります。実態が請負や委任であるにもかかわらず、従業員と誤認される表現を用いると、「偽装請負」ではないかと疑われる可能性が生じるためです。
トラブルを防ぐためにも、正式な文書や公的な場では「契約先」「業務パートナー」「外部スタッフ」など、契約内容に即した呼称を使うことが望まれます。
個人事業主が人材募集時に使うべき表現
求人を出す際、個人事業主が使う「募集文言」や「職種の呼び方」には注意が必要です。ここでは、募集時に適切とされる表現と理由を整理します。
契約内容に応じた適切な呼称を使う
雇用契約で人を募集する場合、「アルバイト」「パート」「従業員」「スタッフ」といった表現が一般的です。これらの呼び方は、実際に個人事業主の指揮命令下で働くことを前提としているため、求人情報として自然な記述といえます。
一方で、「社員」という表現は法人を連想させることが多く、個人事業主の立場では誤解を招くおそれがあるため避けるのが無難です。
業務委託の場合は別の表現を
業務委託契約で人材を募集する場合、「業務委託パートナー」「委託スタッフ」「フリーランス協力者」など、従業員とは異なることを明示する表現が適切です。雇用関係がないにもかかわらず「従業員募集」などと書いてしまうと、契約の誤認やトラブルの原因になります。
求人媒体や掲示物では、法的関係を明確に伝える表現を選ぶことが、信頼性のある募集につながります。
従業員の呼び方を正しく使い、信頼ある雇用関係を築こう
個人事業主が人を雇用する場合、正式な文書や求人媒体などでの呼び方ひとつで誤解やトラブルの原因となることがあります。「従業員」「スタッフ」など、契約実態に即した表現を選ぶことが基本であり、「社員」「会社員」など法人向けの用語は避けるのが賢明です。
また、業務委託や専従者との区別も明確にし、帳簿や確定申告上も正確な処理を心がけましょう。呼称の適切な使い分けは、税務・労務の両面においてトラブルの回避につながります。
適切な表現を意識し、トラブルのない雇用環境を整えていきましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
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