- 更新日 : 2025年1月7日
個人事業主が従業員を1人でも雇用したら社会保険に加入が必要?加入条件や手続き方法を解説
個人事業主が従業員を雇い入れた場合、1人であっても社会保険のうち労働保険に入らなければなりません。労災保険と雇用保険は計算方法や手続きが異なるため、事前に確認しておきましょう。
本記事では、個人事業主が従業員1人を雇ったときに負担する社会保険について、手続き方法や保険料の負担、保険料を経費に計上できるかなどを解説します。
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目次
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個人事業主が従業員を1人でも雇用したら社会保険に加入が必要?
個人事業主が従業員を1人でも雇用した場合、社会保険に加入しなければいけないのかは気になるところです。
ここでは、社会保険の概要や、従業員を雇用した場合の加入義務について解説します。
そもそも社会保険とは
社会保険とは、社会生活で起こりうるさまざまなリスクに備えるための公的な保険です。企業などで雇用される従業員に関係がある社会保険には、「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5種類があります。
このうち、狭義の社会保険と呼ばれるのは健康保険、厚生年金保険、介護保険です。それ以外の雇用保険と労災保険は、一般的に「労働保険」と呼ばれます。
従業員が5人未満の場合は社会保険の加入義務がない
狭義の社会保険である健康保険、厚生年金保険、介護保険は、従業員数が5人以上の事業所に加入義務があります。そのため、従業員が1人だけの場合は加入義務がありません。
ただし、任意適用制度を利用して社会保険に加入することは可能です。任意加入は従業員にとってメリットであり、事業主への信頼につながります。
一方、5人以上を雇用しているにもかかわらず社会保険に加入しない場合、加入の指導や立入検査が入ることもあります。指導に従わずに強制加入になった場合、過去2年にさかのぼって保険料が徴収されることになるため注意が必要です。
労働保険への加入義務が発生する
従業員が1人の場合、狭義の社会保険は任意ですが、原則として労働保険(労災保険・雇用保険)の加入は必要です。
労災保険は業務中や通勤中に起きた事故・ケガに対して保障を行う保険であり、雇用保険は従業員が失業した際に失業手当を受け取るための制度です。
なお、個人事業主自身は、原則としてこれら労働保険には加入できません。
労働保険の加入条件
労災保険と雇用保険は、それぞれ加入条件が異なります。
詳しくみていきましょう。
労災保険の加入条件
従業員を1人でも雇用している個人事業主は、原則として労災保険の加入が必要です。正社員や契約社員、パート・アルバイトなど、雇用形態や雇用日数にかかわらず、すべての従業員が加入しなければなりません。1日限りのアルバイトでも、加入が必要です。
ただし、派遣社員は派遣元で労災保険に加入します。派遣先での加入は必要ありません。
雇用保険の加入条件
雇用保険は、次の要件に該当する従業員の加入が必要です。
- 1週間あたりの所定労働時間が20時間以上
- 31日以上継続して雇用の見込みがある
- 昼間部の学生ではない
1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある場合は、パートやアルバイトでも雇用保険に加入が必要です。ただし、残業などで結果的に20時間以上働いた場合は要件を満たすことにはなりません。
「31日以上継続して雇用する見込み」は、雇用期間の定めがなく、雇用契約の更新規定によって31日未満で雇い止めすることが明示されていないといった場合が該当します。
これらの要件を満たしていても、昼間部の高校や大学に在学中の学生は対象外です。夜間や定時制学校、通信教育の学生は対象となります。
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労働保険の手続き方法
労災保険と雇用保険は、加入手続きも異なります。
ここでは、それぞれの手続き方法を解説します。
労災保険の手続き方法
従業員を雇用したら、労働保険の保険関係成立届を所轄の労働基準監督署または公共職業安定所(ハローワーク)に提出します。提出期限は、従業員を雇い入れた日の翌日から10日以内です。
さらに、その年度分の労働保険料を概算保険料として申告するため、労働保険概算保険料申告書を作成します。労働保険料は、保険関係が成立した日からその年度の末日までに従業員に支払う賃金の総額の見込額に、保険料率を乗じて計算します。
申告書の提出後に「領収済通知書(納付書)」を受け取り、金融機関で概算保険料を納付するという流れです。
最初に提出する労働保険概算保険料申告書の提出期限は、従業員を雇い入れた日の翌日から50日以内になります。
雇用保険の手続き方法
雇用した従業員が雇用保険の加入条件を満たす場合は、雇用保険の加入手続きが必要です。所轄の公共職業安定所に「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。
雇用保険適用事業所設置届は初めて雇用保険の加入条件を満たす従業員を雇ったときに提出する書類であり、その後の雇用では必要ありません。雇用保険被保険者資格取得届は、雇用保険への加入条件を満たす従業員を雇い入れる都度に提出が必要です。
労働保険の保険料の負担
労働保険の保険料は、労災保険と雇用保険それぞれで個人事業主の負担額が異なります。
詳しい内容をみていきましょう。
労災保険の負担額
労災保険の保険料は、従業員全員の賃金総額に労災保険料を乗じて計算し、全額を個人事業主が負担します。
申告と納付は、年度更新という手続きを行います。保険年度ごとに概算で保険料を納付し、保険年度末に賃金総額が確定したあとに精算するという方法です。
前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続きが必要になります。年度更新は、毎年6月1日〜7月10日に行います。
雇用保険の負担額
雇用保険料は、個人事業主と従業員が、それぞれの雇用保険料率に応じた金額を負担します。
2024年の雇用保険料率は、以下のとおりです。
- 一般の事業:従業員負担0.6%・個人事業主負担0.95%
- 農林水産・清酒製造の事業および建設の事業:従業員負担0.7%・個人事業主負担1.05%
雇用保険料は、次の計算式で計算します。
保険料の申告・納付は、農林水産業や建設業などを除き、労災保険料と一括で行います。
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個人事業主自身は労働保険に加入できる?
労災保険の対象は労働者(従業員)であり、原則として労働者ではない個人事業主は加入できません。
ただし、例外的に労災保険の特別加入が認められる場合があります。
労災保険の特別加入とは、業務の実態や災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいとみなされる場合、一定の要件の下に労災保険に特別に加入することを認めている制度です。
特別加入できるのは、次のいずれかに該当する人です。
- 中小事業主等
- 一人親方等
- 特定作業従事者
- 海外派遣者
個人事業主がいずれかに該当し、特別加入する場合は、次の2つの方法があります。
- 新たに特別加入団体を作って労災保険の特別加入を申請する
- すでにある特別加入団体を通じて加入する
1の場合は特別加入申請書を作成し、労働基準監督署を経由して所轄の都道府県労働局長に提出します。2の場合は、特別加入に関する変更届を作成し、監督署長を経由して労働局長に提出する手続きが必要です。
保険料は経費にできる?
社会保険の保険料を経費にできるかは、従業員の保険料と個人事業主自身の保険料で異なります。
ここでは、それぞれの場合について、経費への計上の可否を解説します。
従業員の保険料
事業主が負担した保険料で経費に計上できるのは、事業を継続するために必要な保険に対して支払った分のみです。
個人事業主が一部を負担することが法律で定められている保険料については、健康保険・介護保険・厚生年金保険、および労働保険のいずれについても、「法定福利費」に該当します。そのため、経費として計上できます。
個人事業主自身の保険料(国民年金・国民健康保険料)
社会保険のうち、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の4つは給与所得者を対象としており、個人事業主は加入できません。健康保険は国民健康保険に、年金は国民年金に加入することになります。これらは事業の継続に必要な保険ではなく、経費としては認められません。
ただし、社会保険料控除は適用できるため、所得税の確定申告で全額が所得控除の対象になります。
個人事業主は従業員を1人でも雇ったら労働保険の加入が必要
社会保険は狭義の社会保険と労働保険に分かれ、個人事業主が従業員を1人でも雇用したときは、労働保険の加入が必要になる場合があります。労災保険は必ず加入が必要であり、雇用保険も従業員が要件に該当する場合は加入しなければなりません。
手続きには期限があるため、従業員を雇用した際は、早めに手続きを行いましょう。

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