- 更新日 : 2025年9月19日
個人事業主のためのマンション購入ガイド|住宅ローン審査・税金・確定申告を解説
個人事業主として独立して働く人がマンションを購入する際、会社員と異なり、住宅ローンの審査や手続きでいくつかの壁に直面することがあります。収入の変動や確定申告書による所得の見られ方、税金の納付状況などが信用評価に影響するため、準備不足のままでは審査に落ちるリスクも否めません。
一方で、事前に対策を講じておけばローン審査の通過も容易になり、節税メリットも活かしながら不動産を取得することが可能です。
本記事では、居住用はもちろん、事業用・投資用としてマンションを購入する際のポイントや注意点を解説します。
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目次
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個人事業主のマンション購入は難しい?現状と課題
個人事業主がマンションを購入することは可能ですが、会社員に比べると住宅ローンの審査基準は厳しい傾向があります。
審査で不利と言われる理由
個人事業主が住宅ローン審査で不利とされるのは、収入の安定性に対する懸念があるためです。会社員と異なり、月々の売上が変動しやすい個人事業主は、金融機関から返済能力の予測が難しいと見なされがちです。このため、最初から融資対象から外されてしまう場合もあります。また、多くの金融機関では、直近3年間の業績が安定して黒字であることや、平均所得が一定以上あることを条件にしており、1年でも赤字があると融資が難しくなることがあります。
このように、個人事業主は会社員よりも信用力が低く見られる傾向があり、住宅ローン審査のハードルは高くなります。ただし、収入状況を改善したり、書類の整備を行うなどして信用力を高めることで、審査を通過することも十分可能です。
個人事業主が住宅ローンを利用する条件
個人事業主がマンションを購入する際に住宅ローンを利用するためには、会社員と異なる独自の審査基準をクリアする必要があります。この項では、個人事業主がローン審査に臨む際に求められる条件を整理します。
審査基準は収入ではなく「所得」が重視される
個人事業主の場合、住宅ローン審査では売上額(年商)ではなく、確定申告書に記載された「所得金額(収入-経費)」が評価の基準となります。会社員であれば源泉徴収票によって「年収」が明示されますが、個人事業主の場合は経費の多寡によって所得額が大きく変動するため、安定した所得があることが重視されるのです。
このため、節税目的で経費を過剰に計上し、結果的に所得を低く申告していると、返済能力が低く見なされて審査で不利になる可能性があります。住宅ローンの申し込みを視野に入れる年度には、適度に所得を確保しておくことが賢明です。
業歴や確定申告年数の要件
多くの金融機関では、審査時に過去2〜3年分の確定申告書の提出を求めます。これは、個人事業主の経営が安定しているかを判断するためであり、開業して間もない方にとっては大きな壁となることもあります。金融機関によっては、業歴が2年未満では申し込みを受け付けないケースもあり、さらに過去3年のうち一度でも赤字があると融資が難しくなるという基準を設けている金融機関も存在します。
そのため、住宅ローンの申し込みを目指すなら、少なくとも3年間は安定して黒字を出し、申告所得を明確に記録する経営を行うことが望ましいといえます。白色申告ではなく青色申告を選び、収支の透明性を高めることも信用力向上につながります。
税金や社会保険料の納付状況もチェックされる
住宅ローン審査では、所得以外にも税金や社会保険料の納付状況も確認されます。会社員と異なり、個人事業主は自ら納税や保険料の支払いを管理する立場にあるため、支払いの遅延や未納があると信用評価に悪影響を及ぼすおそれがあります。税務署発行の納税証明書や、国民年金・健康保険料の領収書などを通じて、確実に納付していることを証明できるよう備えておきましょう。
加えて、既に抱えている借入の状況も審査項目です。他のローン残高が多かったり、クレジットカードや消費者金融で返済延滞履歴があると、返済能力に懸念があると判断されます。事業資金の借入がある場合も、それが無理のない返済計画になっているかを示す必要があります。住宅ローンの申し込み前には、可能な限り他の借入を整理し、自身の信用情報に延滞記録が残っていないかを確認しておくことが大切です。
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個人事業主が住宅ローン審査で求められる提出書類
個人事業主が住宅ローンを申し込む際には、会社員よりも多くの書類提出が求められます。ここでは、審査時に必要とされる提出書類を整理します。
所得証明書類は確定申告書が中心
まず必要となるのが、本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、住民票など)です。そして最も重視されるのが、所得を証明するための確定申告書控えと納税証明書です。金融機関により異なりますが、直近2~3年分の提出を求められるのが一般的です。
会社員であれば源泉徴収票で収入が把握できますが、個人事業主の場合、金融機関は確定申告書の内容から所得を確認します。そのため、税務署の収受印が押された確定申告書の控え(原本)や、e-Taxでの受信通知などを添える必要があります。
不動産関係の書類も忘れずに
あわせて、購入予定物件の売買契約書や重要事項説明書なども必要となります。物件の担保評価や融資限度額の判断にも影響するため、正確な資料をそろえて提出しましょう。特に個人事業主の場合、提出書類の不備や記載漏れが信用審査の妨げになることもあるため、余裕をもって準備を進めておくことが大切です。
個人事業主が住宅ローン審査に通るためのポイント
個人事業主が住宅ローン審査を通過するには、収入の見せ方や信用力の向上、リスクへの備えが不可欠です。以下では、審査通過率を高めるための方策を解説します。
十分な自己資金を用意し担保価値の高い物件を選ぶ
個人事業主が審査で有利になるためには、まず自己資金を多く準備し、借入希望額を抑えることが効果的です。借入額が少なければ、金融機関は返済リスクが低いと判断しやすくなります。また、購入予定の物件の担保価値も重視されます。担保評価は「もし返済不能となった場合、物件売却で回収できるか」に直結するため、資産価値が高く流動性のあるエリアの物件ほど評価が高くなります。
築年数が新しく、管理状態の良いマンションは高評価を得やすい一方、築古物件や流動性の低い特殊物件は審査に不利になりがちです。自己資金の比率と物件選びはセットで考えることが重要です。
返済負担率を下げる収支計画を心がける
金融機関は年収(個人事業主の場合は所得金額)に対して住宅ローンの返済額が占める割合「返済負担率」を重視します。一般的には返済負担率30~35%以内が望ましく、これを超えると審査は厳しくなります。年所得が300万円の場合、年間返済額が90万円を超えるような借入額が必要な物件は慎重に検討する必要があります。可能であれば、自己資金を増やしたり、物件価格を見直すなどして負担率を調整しましょう。
また、事業の将来的な収益見通しを具体的に示すことも効果的です。売上計画や経費削減方針をまとめた収支計画書や事業計画書を準備すれば、審査担当者に「今後も返済能力を維持できる」ことをアピールできます。面談時には、自身のビジネスモデルや収益安定のための取り組みを丁寧に説明すると、信用力が高まります。
信用力を高める工夫と将来リスクへの備え
信用力の強化も審査対策の基本です。税金や社会保険料を期日通り納めているか、金融機関は厳しく確認します。延滞や未納があるとマイナス評価となるため、日頃から納付状況を管理し、納税証明書などを提示できるように備えておきましょう。クレジットカードやスマートフォンの支払い延滞についても信用情報に記録されるため、支払いは常に期日内に済ませておくことが大切です。
また、将来的な収入減少に備えた姿勢を示すことも評価されます。たとえば、数年分の住宅ローン返済に相当する貯蓄を維持している、という点は金融機関にとって安心材料になります。さらに、団体信用生命保険や所得補償保険に加入することで、万一のときの返済能力維持を補完できるため、返済不能リスクを抑える対策としても有効です。
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個人事業主のマンション購入と税金・確定申告
個人事業主がマンションを購入し住宅ローンを組んだ場合、一定の条件を満たせば住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けられます。会社員と異なり、毎年確定申告を通じて自ら手続きを行う必要があり、加えて自宅兼事務所とする場合には、居住部分と事業部分の扱いを明確に区分する必要があります。
住宅借入金等特別控除の条件と確定申告手続き
住宅借入金等特別控除は、毎年末のローン残高の0.7%相当額を所得税から控除できる制度で、控除期間は原則13年間(中古は10年間)です。適用には、床面積50㎡以上かつその50%以上が居住用、返済期間10年以上、合計所得金額2,000万円以下などの条件があります。
2024年1月以降に建築確認を受ける新築住宅は、原則として省エネ基準に適合していることが控除の必須要件となるなど、制度が変更されていますので正確な条件は国税庁や国土交通省の最新情報をご確認ください。個人事業主もこの制度を利用可能ですが、控除を受けるには毎年の確定申告が必要です。
確定申告時には住宅借入金等特別控除額の計算明細書、借入金残高証明書、登記事項証明書などを添付し、期限内に提出する必要があります。なお、会社員と異なり、毎年自身で確定申告による手続きを継続する点に注意が必要です。
参考:住宅ローン減税|国土交通省
参考:タックスアンサー No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
自宅兼事務所の場合の住宅借入金特別控除と経費計上の扱い
自宅兼事務所とする場合、住宅借入金等特別控除は居住部分のみ対象です。たとえば70%を居住用、30%を事業用とする場合、控除の対象はローン残高の70%に限定されます。一方で、事業部分にかかる支払利息や減価償却費、光熱費などは、面積や使用時間に応じて経費として計上できます。
ただし、元本返済分は経費にならず、また同一費用の二重控除(控除と経費計上の両方)はできません。正確な按分と帳簿管理が必要となり、不安な場合は税理士などの専門家に相談するのが望ましいです。住宅借入金等特別控除と経費計上を適切に活用すれば、税負担を大きく軽減することが可能です。
個人事業主が投資用・事業用にマンションを購入するケース
ここまでは居住用マンションの購入を前提に解説してきましたが、個人事業主の中には、賃貸収入を目的とする投資用マンションや、事業拠点として利用する事業用マンションを購入するケースもあります。これらの用途では融資の種類や税務上の取り扱いが異なります。
投資用マンションを購入する場合
自分では住まずに第三者へ貸し出す目的でマンションを購入する場合、通常の住宅ローンは利用できません。代わりに「不動産投資ローン(アパートローン)」を活用することになります。投資ローンは住宅ローンよりも金利が高く、借入期間も短くなる傾向があります。たとえば都市銀行の投資ローン金利は1~2%台、地方銀行では2.5~5%台とされており、住宅ローンよりも負担が重くなります。
そのため、家賃収入とローン返済、管理費、修繕費、税金などを見込んだ綿密な収支計画が不可欠です。また、住宅ローン控除は適用されませんが、支払利息・減価償却費・固定資産税などは必要経費として不動産所得から差し引くことができます。仮に家賃収入より経費の方が大きければ、不動産所得が赤字となり、事業所得との損益通算により節税効果が得られる場合もあります。ただし将来の譲渡所得課税も見越して、長期的な資金計画を立てておくことが重要です。
事業用不動産として購入する場合
マンションの一室を事務所や店舗などの事業用スペースとして購入する場合もあります。この場合も住宅ローンは利用できず、金融機関のプロパー融資や不動産担保ローンなどの事業用融資が主な選択肢になります。住宅ローンより金利が高く、返済期間も短めとなる傾向があります。
税務面では、購入した物件が純粋な事業用資産となるため、支払利息や減価償却費、固定資産税などはすべて必要経費に計上できます。ただし、住宅ローン減税は使えません。将来的に物件を売却する際は、事業用資産としての譲渡所得課税がかかることも理解しておく必要があります。
なお、政府系金融機関(日本政策金融公庫など)の制度融資や自治体の中小企業向け支援制度を活用できる可能性もあります。また、不動産の規模が大きい、もしくは信用力を高めたい場合は、法人を設立して法人名義での購入を検討することもひとつの方法です。税務戦略や事業方針も絡むため、計画段階から専門家へ相談して進めることが安心です。
審査・税務・資金計画を点検して、個人事業主のマンション購入を実現しよう
個人事業主がマンションを購入することは十分可能ですが、住宅ローンの審査基準や税務手続きには会社員とは異なるハードルがあります。審査では「所得」の安定性や確定申告の内容、税金・保険料の納付状況などが細かく見られます。必要な書類も多岐にわたり、提出不備は審査に不利になるため余裕をもった準備が欠かせません。
投資用や事業用マンションを購入する場合には、住宅ローンではなく事業性ローンや投資ローンの利用となり、税務上の取り扱いも変わるため、計画段階から専門家の助言を受けて慎重に進めましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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