- 更新日 : 2025年10月21日
所得200万円の個人事業主は国民健康保険料をいくら払う?計算方法や申告のポイントを解説
「所得200万円の個人事業主」の国民健康保険料は実際いくらになるのか、ご存じですか?保険料の金額は単純に所得だけで決まるものではなく、年齢や地域、家族構成、そして申告の有無によっても変わってきます。
本記事では、保険料の計算の仕組みや、軽減制度・控除の使い方、2025年の税制改正による影響などを解説します。
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目次
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個人事業主の所得200万円とは?
保険料計算のベースの「所得」は事業所得
この記事で用いている「所得200万円」とは、確定申告書に記載される「事業所得」欄に該当する金額を指しています。これは、売上(総収入)から必要経費を差し引いた後の金額であり、まだ所得控除(基礎控除・社会保険料控除・配偶者控除・扶養控除など)は差し引かれていません。
一方、課税所得とは、事業所得からさらに各種の「所得控除」を差し引いた残りの金額のことです。たとえば、基礎控除や国民年金・国民健康保険料などの社会保険料控除、配偶者や扶養家族がいればその控除額も加味され、課税対象となる所得はより低くなります。
本記事の「所得200万円」は国民健康保険料の計算に使われる基礎データである事業所得で、課税所得とは異なる概念です。控除前の所得金額=事業所得をベースに、保険料の計算を行っていることをご理解ください。
給与所得者の年収とは意味が異なる
所得200万円は、給与所得者の「年収200万円」とは性質が異なります。給与所得者は源泉徴収票で明示された年収が基準ですが、個人事業主は自ら経費を算出し、差し引いた金額が所得となります。つまり、同じ「200万円」という数字でも、可処分所得や保険料負担において差が生じる可能性があります。
所得200万円の個人事業主の国民健康保険料はいくら?
個人事業主として事業所得が年間200万円の場合、支払う国民健康保険料は年間22〜28万円程度になるのが一般的な目安です。ただし、保険料は一律ではなく、居住している自治体、年齢、世帯構成によって変動します。ここでは保険料の構成要素と計算方法を整理したうえで、試算例と注意点を解説します。
国民健康保険料は3つの要素で構成される
国民健康保険料は、主に次の3つの項目を合算して決まります。
- 所得割
前年の「総所得金額等」から基礎控除(多くの自治体で43万円)を引いた額に、医療分・支援金分・介護分(40~64歳対象)の各料率を乗じて算出。 - 均等割
世帯内の国保加入者1人あたりに課される定額。 - 平等割
世帯単位に定額で課される場合がある(自治体により有無あり)。
たとえば東京都新宿区では、令和7年度の料率において医療分の所得割率は7.71%、支援金分は2.74%で、均等割・平等割の設定も併せて保険料が決まります。なお、基礎控除額(43万円)は2025年税制改正後も国保計算上の水準として据え置かれています。
所得200万円・単身者の試算例(新宿区)
23歳の個人事業主(単身者)が所得200万円であった場合、令和7年度の新宿区の料率を用いると、次のような保険料になります。
- 医療分所得割:200万円−43万円=157万円 × 7.71% ≒ 121,047円
- 支援金分所得割:200万円−43万円=157万円 × 2.74% ≒ 43,033円
- 医療分均等割:47,300円
- 支援金分均等割:16,000円
これらを合計すると22万7,380円となります。なお、23歳のため介護納付金(40~64歳が対象)は含まれていません。
40〜64歳の場合は介護納付金(介護分保険料)が上乗せされる
同じ所得・同じ地域でも、加入者が40〜64歳である場合は「介護納付金分」が追加されます。新宿区ではこの介護分の所得割率・均等割も設定されており、合計保険料は約27万9,305円に増加します。保険料において年齢が直接影響する例といえるでしょう。
家族構成や自治体によって保険料はさらに変動
国保制度では「扶養」という考え方がないため、家族全員がそれぞれ被保険者としてカウントされます。配偶者や子が国保に加入していれば、その人数分だけ均等割が加算されます。また平等割を採用している自治体では、世帯ごとにさらに定額が追加されるため、家族の多い世帯では保険料が大幅に増える可能性があります。
さらに自治体ごとに設定される所得割率や均等割・平等割の金額も異なるため、同じ「所得200万円・単身者」でも、医療分の所得割率が高い自治体では、保険料が1〜2万円以上違ってくるケースもあります。
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確定申告・住民税を未申告だと国民健康保険料はどうなる?
個人事業主が前年分の所得を申告しないままでいると、所得額にかかわらず「所得不明」として扱われ、保険料が高くなる可能性があります。国民健康保険には所得に応じた軽減措置がありますが、申告しないとその対象から外れるため、低所得でも満額の保険料が請求されるおそれがあります。
所得がゼロでも申告しないと軽減措置が受けられない
たとえ前年の所得がゼロであっても、確定申告や住民税の申告をしていなければ、市区町村では「所得不明」と判断されます。すると、国民健康保険の均等割や平等割の軽減措置(7割・5割・2割の減額)が適用されず、通常より高い保険料が賦課されることになります。本来は非課税となるような所得でも、申告しなかったことによって不要な負担が発生してしまうケースが多く見られます。
高額療養費制度の限度額判定にも影響が出る
未申告の状態が続くと、国民健康保険料だけでなく、医療費負担にも不利益が及びます。高額療養費制度では、所得に応じて月あたりの自己負担限度額が決まりますが、申告していない場合は最上位の所得区分として扱われ、自己負担限度額が高く設定されます。結果として、低所得者であっても本来よりも多くの医療費を支払うことになる可能性があります。
必ず毎年、所得の申告を行うことが重要
このような不利益を避けるためにも、所得の有無にかかわらず、毎年必ず確定申告または住民税申告を行いましょう。特に個人事業主の場合は、自らの申告が行政サービス全般の判定材料となるため、申告漏れが生活に直接影響することを意識する必要があります。
支払った国民健康保険料は控除できる?
個人事業主が支払う国民健康保険料は、確定申告を通じて「社会保険料控除」として所得から差し引けます。ここではその仕組みと注意点を解説します。
国民健康保険料は「社会保険料控除」の対象
国民健康保険料は、所得税法上の「社会保険料控除」の対象に含まれており、1年間に支払った全額を所得から控除できます。これは、自営業者本人が支払った分だけでなく、生計を一にする配偶者や家族のために支払った場合も対象となります。この控除を活用することで、課税所得が減り、その結果として所得税と住民税の金額が下がります。
たとえば、所得が200万円の個人事業主が年間で国民健康保険料を20万円支払っていれば、その20万円を差し引いた180万円が課税所得の基礎となります。税率5%の階層に収まる課税所得であれば、国保料20万円の社会保険料控除により所得税は概ね1万円減少します。住民税の減税効果は別途加わります。
確定申告での申告が必要、控除証明書は発行されない
会社員と異なり、個人事業主は年末調整がないため、確定申告時に自ら「社会保険料控除」欄へ金額を記入しなければなりません。注意すべきは、国民健康保険には「控除証明書」が発行されないことです。そのため、納付通知書や領収書、通帳の引き落とし記録などを確認し、正確な金額を記載する必要があります。
申告を忘れると控除が適用されず、余分な税負担を抱えることになります。国保料を納めるだけでなく、それを確実に税務申告で活用することが、賢い節税につながります。
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2025年の税制改正で何が変わった?国保料への影響は?
2025年度の税制改正では、所得税の基礎控除額が見直され、個人事業主にも恩恵が及ぶ内容となりました。ただし、国民健康保険料の計算に用いられる基準には大きな変更はなく、所得税の負担は軽減されても国保料が直接下がるわけではありません。以下では、改正の要点と国保への影響を見ていきます。
所得税の基礎控除が段階的に引き上げられた
2025年12月施行の税制改正では、所得税における基礎控除が、従来の一律48万円から最大95万円まで引き上げられました。この新制度では、合計所得金額が132万円以下であれば基礎控除95万円が適用され、それを超えると段階的に控除額が減っていく仕組みです。たとえば、所得が200万円程度であれば基礎控除は88万円となり、改正前よりも40万円多く控除されるため、課税所得がその分少なくなります。
この改正により、個人事業主の所得税は軽減される見込みです。従来よりも40万円分の課税所得が減るため、所得税率5%の区分であれば税額が約2万円減少します。年収160万円以下の給与所得者だと課税所得がゼロとなり、所得税が完全に非課税となるケースも出てきます。
国保料計算には引き続き住民税水準の基礎控除が使われる
住民税における基礎控除額は改正後も43万円のままであり、地方税法上の所得計算ルールに変更はありません。そのため、国民健康保険料の計算においても従来通り「総所得金額等-43万円」を基準とする所得割の算出方法が続きます。
たとえば、経費控除後の所得が200万円であれば、国保料算定上の所得は157万円(200万円-43万円)となり、改正前と同様の計算構造です。このため、所得税の軽減効果はあっても、国保料自体が直接的に安くなるわけではない点には注意が必要です。
保険料の上限額引き上げなどの制度調整も
税制改正と並行して、2025年度から国民健康保険料にも一部制度変更が加えられました。課税限度額が引き上げられ、医療分の上限が65万円から66万円に、後期高齢者支援金分が24万円から26万円に、介護分が17万円に設定されています。これにより、1世帯あたりの国保料の上限は最大で109万円(40〜64歳世帯)まで引き上げられました。
ただし、これらの上限引き上げは主に高所得世帯を対象としたものであり、所得200万円規模の個人事業主にとっては実質的な影響は限定的です。とはいえ、将来的な医療費の増加に備えて、国保料の料率や構成は定期的に見直される可能性があります。
国民健康保険料の軽減制度と申請方法
所得が一定基準以下の世帯には、国民健康保険料の負担を軽減する制度が設けられています。正しく申告を行い、条件を満たせば、均等割や平等割が7割・5割・2割と段階的に軽減されます。以下では、制度の仕組みと申請手続きについて解説します。
所得に応じて均等割・平等割が軽減される仕組み
国民健康保険料は「所得割」「均等割」「平等割」の3要素から構成されていますが、このうち軽減措置の対象となるのは均等割と平等割です。所得が一定以下の世帯には、以下のいずれかの割合で軽減されます。
- 7割軽減:世帯の総所得金額等が「住民税非課税限度額以下」の場合
- 5割軽減:世帯の総所得金額等が「非課税限度額+28.5万円以下」の場合
- 2割軽減:世帯の総所得金額等が「非課税限度額+52万円以下」の場合
※「総所得金額等」とは、原則として各種所得の合計額から基礎控除(43万円)などを引いた後の金額です。
軽減判定の基準となる「世帯の所得」は、世帯主と同じ住所に住む国保加入者全員の所得を合計した額で判断されます。たとえば7割軽減は、総所得金額等(基礎控除43万円を差し引いた後)が43万円以下の場合に適用されます。具体額は世帯人数や自治体によって異なります。
なお、この軽減措置は自動では適用されず、所得の申告がなければ軽減を受けられません。 所得がまったくなかったとしても、未申告のままだと「所得不明」とみなされ、軽減措置の対象から除外されてしまいます。その結果、本来は減額されるはずの均等割・平等割まで満額で請求されるおそれがあります。
正しく軽減を受けるためには、必ず毎年、確定申告または住民税の申告を行うことが重要です。
自分の保険料を試算して納付計画を立てよう
国民健康保険料は、事業所得200万円という数字だけでは一律に決まりません。年齢、世帯構成、自治体ごとの料率など、さまざまな要素が保険料に影響します。また、未申告や申告漏れがあると、軽減措置が適用されず、実際よりも高い保険料や医療費を負担することになります。確定申告での社会保険料控除の活用も含め、制度を正しく理解して行動すれば、納付額の透明性と安心感は大きく変わります。毎年の申告と情報確認を欠かさず、自分にとって最適な負担に調整していきましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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