- 更新日 : 2025年9月19日
個人事業主の建物解体費用は経費にできる?判断基準や確定申告・経理処理のポイントを解説
建物の解体費用は高額になることが多く、個人事業主にとって経費として計上できるかどうかは重要です。
しかし、すべての解体費用が経費になるわけではなく、税務上の取り扱いは建物の用途や解体の目的によって異なります。
本記事では、必要経費として認められるケース・認められないケースを整理し、確定申告や経理処理上のポイントもあわせて解説します。
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目次
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個人事業主が建物解体費用を経費にできるかは目的次第
建物の解体費用は、すべてが経費になるわけではありません。個人事業主の場合、解体の目的によって税務上の扱いが変わります。事業に必要な支出であれば経費として認められますが、事業に関係ない場合は経費にはなりません。
ここでは、その判断基準を整理します。
事業用建物を解体する場合は経費にできる
店舗や事務所、賃貸物件など、事業のために使用していた建物を取り壊す場合は、その解体費用を必要経費として計上できます。さらに、取り壊した建物に帳簿上の価値(未償却残高)がある場合は、「除却損」としてあわせて経費に含めることも可能です。
自宅などの解体や土地売却のための解体は経費にできない
自宅など私的に使用していた建物の解体費用は、事業と無関係な「家事費」として扱われ、経費にはできません。また、土地を売却する目的で建物を解体した場合、その費用は「譲渡費用」として譲渡所得の計算上の控除対象にはなりますが、事業経費としては認められません。
以下で、ケースごとに経費にできるかどうかを見ていきましょう。
建物解体費用を経費にできるケース
建物解体費用が個人事業主の必要経費として認められるかどうかは、解体される建物が事業にどう関与していたか、そしてその解体が事業遂行に必要な支出かどうかで判断されます。
ここでは、確定申告上で経費計上が可能なケースを整理します。
事業用建物を解体する場合
事業活動のために使用していた建物(たとえば店舗、事務所、作業場など)を取り壊す場合、その解体費用は必要経費として認められます。加えて、その建物に帳簿価額(未償却残高)が残っている場合は、固定資産除却損として経費に計上できます。たとえば、解体費用が500万円、残存簿価が300万円の建物であれば、合計800万円が経費に算入されます。
これにより、その年の事業所得を圧縮し、所得税・住民税の軽減効果が期待できます。なお、建物が自宅兼事務所の場合は注意が必要です。建物全体を解体しても、その費用のうち事業に使っていた部分のみが経費対象となり、プライベートな用途に対応する部分は経費にできません。
この場合は、面積や使用割合などの合理的な基準に基づいて按分計算を行い、該当部分のみを経費として申告する必要があります。
賃貸用建物(不動産所得・事業的規模)を解体する場合
不動産貸付業を行う個人事業主が、アパートや貸家などの賃貸物件を取り壊す場合も、その費用は必要経費として認められます。ただし、規模によって取り扱いが分かれます。貸付が「事業的規模」(いわゆる5棟10室基準など)と認められる場合は、解体費用をその年の不動産所得の必要経費として全額計上可能です。
さらに、建物に未償却残高がある場合には、除却損として追加で経費に算入できます。仮に不動産所得が赤字となった場合でも、青色申告をしていれば他の所得との損益通算や、翌年以降への繰越控除が可能です。一方、賃貸の規模が事業的規模に満たない場合、除却損については、除却損を計上する前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入できます。
解体費用については全額が損金算入できます。したがって、解体費用によって不動産所得が赤字になった場合、その損失は他の所得と損益通算が可能です。
自宅兼事務所を解体する場合
建物の一部を事業に利用し、残りを居住用として使っているようなケース(たとえば1階が店舗、2階が住居)では、解体費用のうち事業スペースにかかる分のみが経費にできます。
このような場合、建物全体の解体費用や除却損を、面積や使用割合に応じて合理的に按分し、事業部分のみを必要経費として処理します。このケースでは、税務署から按分の妥当性を確認される可能性があるため、面積の根拠や使用状況を明確に記録しておくことが望まれます。
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建物解体費用を経費にできないケース
建物の解体費用が個人事業主の経費として認められるには、支出が「事業の遂行に必要かつ直接関係している」ことが前提となります。一方で、この条件を満たさない場合には、経費として扱うことはできません。ここでは、所得税法上の必要経費に該当しないケースを解説します。
自宅など非事業用建物を解体する場合
個人事業主であっても、解体する建物が完全にプライベートな用途(例:自宅、別荘、家族の住居など)であれば、その解体費用は「家事費」とされ、必要経費にはなりません。老朽化した自宅を更地にするために解体する場合、その費用はたとえ事業用口座から支払ったとしても経費にはできません。
仮にその後、空いた土地を事業用に転用したとしても、解体する建物がプライベートな用途のものであれば経費には含まれません。
土地の利用目的で購入した建物を解体する場合
土地を購入し、その上にある古い建物を取得後おおむね1年以内に取り壊すなど、初めからその建物を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかな場合、解体費用は経費にはなりません。このケースでは、建物の解体は土地の取得を前提としたものであり、税務上は「土地取得のための付随費用」とみなされます。
つまり、解体費用は建物の取得費としてではなく、土地の取得原価に加算される扱いとなります。
事業用建物を解体して自宅を建てる場合
もともと事業に使用していた建物を取り壊し、その跡地に自宅を建てるというケースも、解体費用は必要経費としては認められません。ただし、未償却残高については除却損として経費計上できます。
建物解体費用に関する確定申告・経理処理の注意点
建物の解体費用を経費や譲渡費用として計上する際には、確定申告書への正しい記載と、日々の帳簿処理の正確性が求められます。ここでは、勘定科目や証拠書類の扱い、申告区分など、経理・申告上の注意点を解説します。
勘定科目を適切に選ぶ
建物解体費用の勘定科目は、その解体の目的によって変わります。たとえば、事業用建物を取り壊した場合は「固定資産除却損」や「修繕費」で処理します。事業用建物を別の事業用建物に建て替えるために取り壊した場合、その解体費用は、支出した年の必要経費として計上されます。
一方、土地の利用を目的として建物付きの土地を購入し、すぐに建物を取り壊すようなケースでは、解体費用は土地の取得価額に算入され、経費にはなりません。
証拠書類をしっかり保管する
解体費用を申告するためには、請求書や領収書、契約書などの証拠書類を集め、保管する必要があります。これらの書類は、青色申告決算書や不動産収支内訳書に記載する経費額の根拠となり、税務調査の際に提出・提示を求められることがあります。
資産損失を正しく処理する
建物に未償却残高がある場合、その除却によって発生する帳簿上の損失は、「減価償却資産の除却損」として経費に計上できます。なお、事業的規模に満たない不動産については、その年の不動産所得の範囲内でしか除却損を控除できないことにも注意が必要です。
申告区分を正確に分ける
解体費用がどの所得に対応するかによって、申告書での記載欄も異なります。事業所得に関するものであれば、「必要経費」欄に記載します。一方、不動産所得に関連する費用であれば、「不動産収支内訳書」の経費欄に記載します。土地売却のために解体した場合は、譲渡所得として申告書第三表(譲渡所得の内訳)に記載する必要があります。それぞれの区分を誤ると申告内容に整合性が取れず、税務署から問い合わせが入ることもあるため注意が必要です。
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解体費用を経費にできるかは「用途」と「目的」で判断しよう
個人事業主が建物の解体費用を経費として計上できるかどうかは、その建物が事業に使われていたか、解体の目的が事業遂行上の必要性に基づいているかが判断基準となります。
事業用や賃貸用として使用していた建物の除却費用は経費として認められますが、自宅や非事業目的の解体については認められません。
また、解体後の用途や建替えの意図によっても取り扱いが異なるため、確定申告では費用の性質を正しく見極め、区分を誤らないようにすることが大切です。帳簿処理や書類の整備も含め、慎重な判断と記録管理を心がけましょう。

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