• 更新日 : 2025年8月8日

個人事業主が外国人を雇用するには?在留資格・届出・リスクを解説

外国人雇用に興味がある個人事業主にとって、「どの在留資格の人を雇えるのか」「どんな手続きが必要なのか」は気になるポイントです。適法に雇用するためには、ビザの種類や就労制限の有無を正しく理解し、採用後の届出や税務・社会保険の処理も正確に行う必要があります。

本記事では、外国人を雇う際に押さえておきたい在留資格の種類、雇用可能な範囲、必要な手続き、税務・労務管理の注意点を解説します。

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外国人雇用は個人事業主でも可能!在留資格の種類と要件

個人事業主であっても、外国人を雇用することは制度上可能です。ただし雇用できるかどうかは、外国人の持つ在留資格の種類によって異なります。ここでは、フルタイム勤務が可能なケース、アルバイト勤務が可能なケース、就労ビザ取得が必要なケースに分けて、それぞれの雇用条件と留意点を解説します。

永住者や日本人の配偶者は制限なく雇用できる

「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」などの在留資格を持つ外国人は、就労に制限がありません。個人事業主であっても、日本人と同様に正社員として雇うことができます。職種や勤務時間に制限がなく、特別な手続きも不要なため、もっとも採用しやすい人材層といえます。

ただし文化的背景や言語の違いによる行き違いを防ぐため、労働契約書や就業条件の説明は丁寧に行うことが望まれます。業務開始後も、相談しやすい環境づくりやフォロー体制を整えておくと、定着率向上にもつながります。

資格外活動許可があればアルバイト雇用も可能

「留学」や「家族滞在」などの在留資格は、原則として就労を目的としないものです。ただし入管で「資格外活動許可」を取得していれば、週28時間以内でのアルバイト就労が可能となります。個人事業主でも、パートタイムスタッフとして雇用することができます。

雇用にあたって最も注意すべきは、在留カード裏面に「資格外活動許可あり」との記載があるかどうかです。表面には「就労不可」と書かれていても、裏面に記載があれば雇用可能です。許可のないまま雇用すると不法就労に該当し、事業主側も罰則を受けるおそれがあるため、採用時には必ず確認を徹底しましょう。

就労ビザによる採用は可能だが審査は厳格

「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」といった就労系在留資格による採用も、個人事業主に認められています。ただし法人に比べて審査は厳しく、採用計画を立てる段階から準備が必要です。

たとえば、雇用する外国人の就労ビザを取得するには、開業届の写し、確定申告書、事業計画書、雇用契約書など、入管が求める多数の書類をそろえ、安定性・継続性のある事業であることを証明しなければなりません。提出書類の不備や説明不足があると、不許可となる可能性もあります。

そのため、就労ビザでの雇用を考える場合には、行政書士などの専門家に相談しながら進めることが推奨されます。とくに初めて外国人を雇用する場合には、ビザの種類ごとの条件や手続きを十分に理解し、無理のない計画で対応することが大切です。

個人事業主が外国人を雇用する時の手続き

外国人を雇用する際、個人事業主であっても適切な確認と届出を行うことが法律上の義務とされています。就労資格の確認をはじめ、行政機関への手続きが必要であり、怠ると罰則の対象にもなります。ここでは、外国人を採用する際に必ず押さえておきたい基本的な雇用手続きを整理します。

在留カードの確認で就労資格をチェックする

雇用を決めた時点で最初に確認すべきなのが、在留カードに記載された就労資格の内容です。在留資格欄を見て、その外国人が就労できる立場にあるかどうか、また雇用予定の業務が在留資格の範囲内かをチェックします。たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の資格であれば、通訳やエンジニア、プログラマーなどの専門業務に就くことが認められています。

また、「留学」や「家族滞在」の在留資格であっても、「資格外活動許可」があるかどうかを裏面で確認すれば、週28時間以内のアルバイト雇用が可能です。資格外活動許可がなければ、たとえ本人が働きたいと希望しても、事業主が雇用することはできません。

在留カードの有効期限や在留期間も確認し、雇用期間が在留期限内に収まっているかを確認しておきましょう。本人の了承を得たうえで、在留カードとパスポートのコピーを保存しておくと、後からの確認にも役立ちます。

ハローワークへ外国人雇用状況届出を提出する

外国人を雇用した場合(および退職した場合)には、「外国人雇用状況の届出」をハローワークに提出する必要があります。これは雇用対策法に基づく法定の義務であり、法人・個人を問わずすべての事業主が対象です。

届出内容には、氏名、国籍、在留資格、在留期間などが含まれます。正社員に限らず、アルバイトやパートタイムの外国人を採用した場合も対象となるため、「短時間労働だから不要」と思い込まないよう注意が必要です。

提出期限は原則として雇入れの場合は翌月10日までに、離職の場合は翌日から起算して10日以内とされています。怠った場合には30万円以下の罰金が科されることもあるため、採用直後に忘れず届け出ましょう。様式は厚生労働省のウェブサイトやハローワークで入手可能で、郵送での提出も認められています。

税務署・労基署へ必要な届出を済ませる

外国人に限らず、従業員を初めて雇用する個人事業主は、いくつかの行政手続きが必要になります。まず、所轄の税務署に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出し、給与支払者として登録を行います。

また、「源泉所得税の納期の特例の承認申請書」も同時に提出しておくと、給与から源泉徴収した所得税を年2回に分けて納付できるため、資金繰りや事務負担の軽減につながります。

さらに、労働基準監督署には「労働保険関係成立届」、ハローワークには「雇用保険被保険者資格取得届」なども提出する必要があります。これらの書類提出は、原則として雇用開始から10日以内とされているため、スケジュールを管理して迅速に対応しましょう。

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外国人雇用時の給与支払・源泉徴収・社会保険

外国人労働者を雇う場合、個人事業主であっても給与や税務、保険に関する対応は日本人従業員と基本的に同じです。むしろ「外国籍だから特別扱いできる」という認識は誤りであり、適切な処理が求められます。ここでは、外国人雇用における給与支払いと関連手続きについて詳しく見ていきます。

給与支払時の源泉徴収

外国人に給与を支払う場合も、所得税の源泉徴収が必要です。毎月の給与額や扶養親族の有無に応じて、国税庁の「源泉徴収税額表」をもとに所得税を算出し、給与から天引きします。この基本的な流れは、日本人に対する処理と変わりません。

税法上の区分では、外国人でも日本に1年以上居住している場合は「居住者」として扱われ、通常の累進課税が適用されます。一方、滞在が短期(おおむね1年未満)で生活の拠点を日本に置いていない場合は「非居住者」となり、原則20.42%の一律課税になります。ただし、ほとんどの就労ビザ取得者は日本に居住しているため、多くのケースでは「居住者」扱いとなります。

源泉徴収した税金は、原則として翌月10日までに税務署へ納付する義務があります。ただし、従業員が10人未満であれば「納期の特例制度」により、半年に一度まとめて納付することも可能です。給与明細には控除額や税額を記載し、本人にも納税状況が分かるようにしておくことが信頼構築にもつながります。

また、年末調整の実施も重要です。年末に従業員の年間給与を集計し、年間の所得税を精算することで、過不足のない納税が可能になります。なお、短期アルバイトなど年末調整を行わない場合は、確定申告が必要となるため、その旨を本人に案内しておくと丁寧です。

社会保険・労働保険への加入義務

外国人社員であっても、条件を満たせば社会保険と労働保険への加入が必要です。社会保険(健康保険・厚生年金)は、業種や規模に応じて適用義務があり、たとえば常時5人以上の従業員を雇用する飲食店などは原則として適用事業所となります。この場合、外国人も含めて対象となり、雇用主と従業員で保険料を折半して支払うことになります。

適用事業所以外でも、個人事業主と外国人従業員との話し合いのうえで「任意適用」申請を行い、社会保険に加入することは可能です。また、事業所が社会保険の対象でない場合でも、外国人本人は国民健康保険や国民年金へ加入する必要がありますので、加入方法をきちんと案内することが大切です。

労働保険(労災保険・雇用保険)については、より広い範囲で義務が生じます。労災保険は従業員を1人でも雇った場合に強制適用され、外国人も労災の補償対象です。業務中のけがや通勤災害などが発生した場合、日本人同様に保護される仕組みとなっています。保険料は全額事業主負担で、労働基準監督署への届け出が必要です。

雇用保険は、所定労働時間が週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合に適用されます。条件に該当すれば、外国人であっても例外なく加入手続きを行う必要があります。たとえば正社員や長期アルバイトとして外国人を雇う場合は、ハローワークでの被保険者資格取得届の提出が必要です。一方、週20時間未満の短時間勤務であれば、雇用保険は適用されませんが、労災保険は適用される点に注意が必要です。

外国人雇用時の税務手続きと確定申告

外国人を雇用した個人事業主は、通常の事業申告に加えて、給与支払や税金に関する特定の手続きも必要になります。年末から翌年初頭にかけての時期には、自治体や税務署への届出が求められるため、計画的に対応することが大切です。ここでは、税務処理の基本的な流れを2つの視点から整理します。

給与支払報告書の提出

外国人であっても、給与を受け取っていれば原則として住民税の対象となります。これに関連して、個人事業主は毎年1月31日までに「給与支払報告書」を、従業員の住所地を管轄する市区町村へ提出する義務があります。給与支払報告書は、年間の給与総額や源泉徴収した所得税額、扶養親族の情報などを記載するもので、自治体が住民税の計算を行うための基礎資料となります。

提出対象は日本人・外国人を問わず、アルバイトやパートであっても含まれます。報告書の提出を怠った場合、地方税法に基づき罰則が科される可能性もあるため注意が必要です。提出書類には特別徴収(給与から住民税を天引きして事業主が納付)と普通徴収(本人が個別に納税)の区別を記載します。従業員が住民税の支払いスケジュールを把握できるよう、報告書の提出後に説明の機会を設けると親切です。

源泉徴収票の交付と年末調整の実施

年末調整を行った場合には、翌年1月31日までに従業員一人ひとりに対し「源泉徴収票」を発行・交付する義務があります。これは給与の総支給額、源泉徴収額、適用控除などを記載した書類で、所得税の精算や確定申告に必要な情報がまとめられています。

源泉徴収票は、外国人であっても居住者として日本に住民登録がある場合には、必ず発行しなければなりません。仮に従業員が年の途中で退職・帰国した場合でも、退職後1カ月以内に交付する必要があります。これは、その後に本人が日本国内で確定申告を行う際や、在留手続きで収入証明が必要になった場合などに活用されます。

また、個人事業主自身の確定申告でも、従業員に支払った給与総額や源泉徴収した税額の記載が求められます。給与は事業に必要な支出として「必要経費」に計上できる一方、源泉徴収した税額は「預り金」として帳簿に記載し、適切に税務署へ納付していることを証明する必要があります。

このように、雇用した外国人に関する税務処理は、日本人とほぼ同様に対応が求められます。対応漏れがあると、後々のトラブルや税務調査のリスクにつながるため、事前にチェックリストを用意し、年末調整や確定申告の準備を丁寧に進めていきましょう。

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個人事業主が外国人を雇用する際に知っておくべきリスクと罰則

外国人を雇用する際には、在留資格や労働条件に関する法令を正しく理解し、適切に対応する必要があります。ここでは、主な違法行為とそのリスクについて整理します。

不法就労の助長は刑事罰の対象

不法就労とは、在留資格を持たない外国人を雇ったり、資格で認められた範囲を超えた就労をさせる行為を指します。たとえば、留学生に週28時間を超えて働かせたり、許可のない単純労働を任せると「不法就労助長罪」に該当します。この罪に問われると、最長で懲役3年または300万円以下の罰金が科される場合があります。近年はさらに厳罰化が進み、罰則の上限は5年以下の懲役または500万円以下の罰金に強化されました。たとえ悪意がなくても、在留カードの確認を怠ったなどの過失でも処罰対象になるため、採用前のチェックを徹底することが不可欠です。

労働法違反や届出漏れにも要注意

在留資格に問題がなくても、ハローワークへの雇用状況届出を怠ると30万円以下の罰金、給与支払報告書の未提出では1年以下の懲役または50万円以下の罰金といった法令違反になります。また、労働基準法に違反した場合には労基署の是正指導や、悪質と判断されれば送検される可能性もあります。

さらに、社会保険や雇用保険への加入を怠ると、保険給付の支障や未納分の一括徴収など、事業者にとって大きな負担となることもあります。「外国人だから」「分からなかった」という言い訳は通用しません。すべての労働者に対し、適法な雇用と手続きを行うことが、事業主自身のリスク回避につながります。

在留資格と適切な手続きを押さえて外国人を雇用しよう

個人事業主でも、条件を満たせば外国人を合法的に雇用することは可能です。永住者など就労制限のない在留資格を持つ方はフルタイム雇用ができ、留学生や家族滞在者でも資格外活動許可があればアルバイトとして働くことが認められます。一方で、就労ビザを用いた採用は審査が厳しく、計画的な準備が必要です。在留資格の確認、各種行政への届出、給与の源泉徴収や社会保険の加入など、外国人雇用には多くの手続きが伴います。適法な対応を徹底することで、トラブルを避け、信頼ある雇用関係を築くことができます。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

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