- 更新日 : 2025年7月7日
インターネット費用は経費になる?個人事業主が押さえておくべき確定申告のポイント
インターネットは、個人事業主にとって業務上欠かせないインフラの一つです。自宅の回線やモバイルWiFi、クラウドサービスの利用など、多くの通信費が発生します。これらの費用を確定申告で正しく経費計上するには、用途や契約形態に応じた処理が必要です。
本記事では、税務知識と記帳実務を踏まえて、経費処理・按分・申告のポイントを解説します。
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目次
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個人事業主のインターネット費用の経費計上
個人事業主にとってインターネット関連費用は重要な経費です。事業で使うネット回線の費用は、「通信費」という勘定科目で経費計上できます。ただし、経費として認められるのは事業に必要な支出部分だけです。プライベート利用分が含まれる場合は家事按分(かじあんぶん)という方法で、事業利用分だけを切り出して経費にします。
インターネット費用と通信費の勘定科目
インターネット回線の利用料やプロバイダ料金は、事業に必要な通信費として経費計上できます。通信費には他にも、電話料金やスマホの通信料、郵便・宅配費用などが含まれます。個人事業主の場合、自宅で使うインターネットも仕事に使っていれば経費算入が可能です。ただし「事業のための支出」であることが条件で、家庭用の費用と明確に区別できる範囲に限られます。例えば、明らかに業務で必要なホームページ用サーバ費やクラウドサービス利用料なども、通信費として計上できます。逆に、業務に関係ない娯楽目的のネットサービス代は通信費に含められません。
経費計上する際の基本ルール
インターネット費用を経費にするには、事業収入を得るために直接要した費用かまたは、その年に生じた販管費であることが大前提です。個人事業主の場合は公私の区別が曖昧になりがちですので、業務以外の使用分を含めないよう注意します。全額が事業利用であればそのまま「通信費」で処理できますが、自宅兼事務所などで私用と兼ねている場合は後述する家事按分で事業分だけ経費計上します。また、領収書や請求書などの証拠を保管し、事業で使ったことを説明できるようにしておきましょう。クレジットカード払いにして、領収書等のほかに利用明細を残すのも一つの方法です。
個人事業主のインターネット代の家事按分
自宅で仕事をする個人事業主は、インターネット代の家事按分が必要になるケースが多いです。家事按分とは、プライベートと事業で共用する費用について、事業で使った割合分だけを経費計上する手法です。インターネット代もその典型で、使用状況に応じて合理的に按分しなければ、税務上認められないことがあります。ここでは家事按分の基本的な考え方と具体的な按分方法、実務上の注意点を解説します。
家事按分の基本とインターネット費用への適用
家事按分は、生活費と事業経費を明確に区分するための方法です。自宅の家賃や電気代、インターネット料金などは生活上も発生する支出ですが、その一部を事業のために使っている場合、使った分だけ経費にできます。インターネットの場合、按分には使用時間や日数を基準にするのが一般的です。たとえば「1日24時間のうち事業に8時間、私用に16時間使っている」なら事業割合は約33%となります。月1万円のネット代なら、その33%に当たる約3,330円を通信費として計上できる計算です。また、使用日数で考える方法もあります。週5日仕事でインターネットを使うなら7日中5日で約71%が事業利用とみなし、月額費用の71%を経費にするケースもあります。
按分割合の決め方
按分割合は自身で決めますが、合理的で説明可能な基準にすることが重要です。税務調査で「なぜその割合か」を問われた際に答えられるよう、日々の使用状況を記録した通信明細や業務日報などを保存しましょう。無理のある家事按分、たとえば実際はプライベート利用が多いのにネット代の大半を経費にするような処理は、後で否認されるリスクがあります。常識的、合理的でかつ業務実態に即した割合を心がけ、説明がつかない按分は避けましょう。また、按分割合を計算した根拠資料は保存しておきましょう。事業内容によって適切な割合は異なりますが、IT業で常時ネットを使うなら高め、そうでなければ低めになるのが自然です。
家事按分したインターネット代の仕訳
按分計算で事業利用分が決まったら、経費として計上するのはその部分の金額のみです。勘定科目は「通信費」を使いますが、私用分を除外する仕訳が必要です。例えば月のネット代が2万円で按分割合60%(事業用)なら、12,000円を通信費、残り8,000円は経費にしません。この際、会計上は私用分を「事業主貸」という勘定で処理するのが一般的です。事業主貸とは、個人事業主が事業用口座から私的支出を出した場合などに使う科目で、簡単に言えば「事業のお金で立て替えたプライベート費用」を表します。
仕訳例としては、借方に通信費12,000円と事業主貸8,000円、貸方に普通預金20,000円(引き落とし額)といった形になります。このように記帳しておけば、後から見ても事業分と私用分を区別していたことが明確にわかります。なお、摘要欄には「インターネット代○○%按分」などと記載しておくと、よりわかりやすいでしょう。
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契約形態別の経費処理方法
インターネット回線の契約形態によって、経費処理の方法や必要な手続きが少し異なることがあります。個人事業主は自宅の個人契約回線を使うケースも多いですが、事業専用に法人向けプランを契約する方法もあります。契約名義や利用目的によっては、経費計上できる範囲や証拠書類の要件が変わる場合もあるため注意が必要です。
個人契約のインターネット回線を事業で使う場合
自宅のインターネットを個人名義で契約している場合でも、事業に使った分は通信費として経費にできます。ただし、この場合は前述の通り家事按分が必要です。自宅兼事務所でビジネスとプライベートが混在するなら、利用時間などから事業利用割合を算定し、その割合分だけ経費計上します。ポイントは、契約名義が個人でも実際の負担者と利用実態を明らかにするということです。仮に家族名義の回線を事業で使っている場合でも、事業分の費用を自分が負担していれば経費計上は可能です。その際は名義人に事業利用分の金額を支払い、領収書やメモを残しておくと良いでしょう。なお、この場合はなぜ契約名義が事業主でないのかを説明する資料もあればよりよいです。
また、個人契約だと支払い方法は口座振替やカード払いが多いですが、事業専用口座やカードで支払うようにすれば、経理記録の面でも公私の区別がつけやすくなります。可能であれば、仕事用と私用で回線自体を分けることが望ましいです。事業用に別のモバイルWi-Fi契約を持つなどすれば、按分の手間が省け経費管理も明瞭になります。
法人契約(事業名義)のインターネット回線を利用する場合
個人事業主でも、契約を事業専用名義(いわゆる法人契約)で結ぶことができます。ビジネス用途に限って使う回線であれば、原則その利用料は全額経費計上が可能です。たとえば、フリーランスが法人向け光回線サービスを契約し、自宅オフィスで業務だけに使うなら、按分せず全額を通信費にできるわけです。この場合でも請求書や領収書はきちんと保管しましょう。法人契約の回線サービスでは、請求書発行に対応している事業者がほとんどなので安心です。
一方、事業専用と言いつつ実際には家庭でも使っていると按分が必要になる点は同じです。また、個人契約に比べて法人契約プランはサポートや料金体系がビジネス向け仕様になります。支払い方法が銀行振込に対応するなど、経費精算しやすくなる利点もあります。費用対効果を考えて、事業がネットに大きく依存するなら法人契約も検討すると良いでしょう。ただし契約形態によって税務処理の根本が変わるわけではないので、「事業で使った分が経費」という原則は共通です。
インターネット費用を経費計上する際の注意点
インターネット費用を経費計上する際には、正確な記帳と確定申告時の適切な処理が不可欠です。ここでは通信費の記帳や申告における注意点を整理し、経理処理のポイントを解説します。
記帳時のポイント
インターネット代を含む通信費を記帳する際は、勘定科目の選択を間違えないようにします。基本はすべて「通信費」で処理しますが、電話機などの機器購入代は通信費ではなく消耗品費や備品費になります。また、荷物の送料など荷造運賃と通信費は混同しやすいので注意が必要です。インターネット料金の支払いを記録する仕訳は、単式簿記の場合は経費帳に「通信費○○円(インターネット利用料)」と書けば足ります。
複式簿記の場合は、「(借方)通信費/(貸方)普通預金」等と仕訳します。家事按分した場合は、先述のように事業主貸を使って私用分を除外する仕訳を切ります。なお、摘要欄へのメモ(例:「インターネット代〇%事業利用」)は、摘要欄に入れておきましょう。
領収書や証拠書類の管理
経費として計上する以上、支出の根拠となる書類は必ず保存しておきます。インターネット料金は毎月の請求書や利用明細がそれに当たります。プロバイダや回線業者からの請求書をファイルしておくか、PDFをダウンロードして保存しましょう。もし領収書が発行されないケース(例えばクレジットカード払いのみで領収書がない)でも、カードの利用明細や銀行の引き落とし記録があれば支払は確認できます。これらを帳簿に添付する形で整理し、領収書や預金通帳等については少なくとも法定保存期間(通常7年間)は保管してください。
また、事業と私用をはっきり分けていることを示すために、日常から記録をつけておくことも大切です。例えば日ごとのネット利用時間をざっくりメモしておけば、按分割合の裏付け資料になります。税務調査になった際にも、こうしたエビデンスがあれば経費計上の妥当性を説明しやすく安心です。
確定申告時の注意点
通信費を適切に経費計上できたら、あとは確定申告で漏れなく申告します。青色申告決算書または収支内訳書の経費欄に「通信費」として年間合計額を記載します。その金額は事業利用分のみの合計になっているよう注意しましょう。按分計算した場合、私用分は経費に含めないため、帳簿上も申告書上も事業分だけ計上されていることを確認します。
また、課税事業者の場合は消費税の区分にも留意が必要です。国内のインターネット料金や電話代は課税仕入れになりますが、例えば海外のサービス利用料部分などがあった場合はよく調べましょう。もっとも、一般的な国内プロバイダへの支払いであれば消費税は課税仕入れで問題ありません。
参考:国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について|国税庁
最後に、青色申告と白色申告で家事按分の扱いに違いがあるかについて触れておきます。
白色申告・青色申告を問わず、事業使用が50%以下であっても明らかに区分できれば経費として算入はできます。要は事業に使った事実を示せるかどうかです。青色申告でも白色申告でも、正確な按分と証拠準備をしていれば、インターネット費用を必要経費に含めることができます。
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個人事業主は通信費の扱いに注意を払って正確に経費処理しよう
個人事業主が自宅の回線やスマートフォン、モバイルWiFiなど多様な通信手段を使っている場合、それぞれの用途や契約形態に応じて、事業利用分のみを「通信費」として経費計上する必要があります。
とくに自宅兼事務所でインターネットを私用と共用している場合、家事按分によって合理的な割合を設定し、その根拠を示す記録や資料を保管しておくことが不可欠です。領収書や請求明細、業務日誌などをきちんと整理しておくことで、後の税務対応もスムーズになります。
また、契約名義が個人でも法人でも、実態に即して利用目的が事業のみであれば経費として認められます。反対に、私的利用が多い場合には安易に全額を経費にすることは避けるべきです。
記帳にあたっては「通信費」という勘定科目で統一し、按分処理や支払い方法の整理も重要になります。青色申告・白色申告を問わず、きちんとした根拠と記録を備えておけば、インターネット費用は正当に経費として計上できます。
さらに、クラウドサービスや業務アプリなど、インターネットを通じて利用する業務システムの費用についても、内容に応じて通信費・消耗品費・支払手数料などの科目に適切に振り分けて、継続適用すると良いでしょう。これにより、経費の過少計上や重複計上を防ぎ、税務調査時にも透明性を確保できます。
インターネットを活用する働き方が拡大する今だからこそ、通信費の管理と記帳を正確に行うことが、個人事業主にとって大きな安心と節税効果につながります。日常から証憑を整え、確定申告に備えましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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