- 更新日 : 2025年3月5日
個人事業主は消費税を経費で計上できる?仕訳や節税の方法も解説
個人事業主は、処理方法により消費税を経費にできるのかや仕訳方法などが変わります。たとえば、税込経理方式を採用している個人事業主は消費税を経費計上できます。経費処理方法によって仕訳や節税効果が変わってくるため、どの記帳方法を選択するか慎重に検討しましょう。
本記事では、個人事業主の消費税の取り扱いを解説します。あわせて計上方法の種類や各方法のメリット・デメリット、消費税の仕訳や節税方法なども紹介します。
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目次
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個人事業主は消費税を経費として計上できる?
税込経理方式を採用している個人事業主は、仕入れのときに支払った消費税をそのまま経費として計上できます。課税事業者と免税事業者(※)の区分に関係なく、税込経理方式の場合は経費計上が認められているためです。
※消費者から受け取った消費税について、納税義務のある事業者を課税事業者、免除される事業者を免税事業者(売上高1,000万円以下など一定要件を満たす事業者のみが選択できる)といいます。
また、税込経理方式の課税事業者については、納税した消費税も経費処理の対象です。
仕入れにかかった消費税を経費として計上できる
個人事業主が仕入れを経理処理する際は、仕入代金と消費税額を合わせた税込価格で経費計上できます。たとえば、1,000円の商品(消費税が100円)を仕入れた場合、経費計上できるのは税込価格の1,100円です。仕入代金と消費税額を区分せずに経費処理できるため、経理処理の負担を抑えられます。
税込経理方式と税抜経理方式のメリット・デメリットを比較
前述の通り、仕入代金と消費税額を合わせた税込価格で経費計上できますが、税抜価格で経費処理することも可能です。前者を「税込経理方式」、後者を「税抜経理方式」と呼び、どちらか一方を選択します。ただし、免税事業者は税抜経理方式を選択できません。
税抜経理方式の場合、消費税は経費として計上しないことになりますが、メリットもあるため選択肢の1つです。両方式のメリットとデメリットを解説します。
税込経理方式のメリット・デメリット
税込経理方式のメリットの1つ目は、売上や仕入代金と消費税を区分しないため経理処理が簡単であることです。実際に支払った金額や受け取った金額を仕分けするだけで済みます。
メリットの2つ目は、節税につながる可能性がある点です。
「中小企業投資促進税制」を利用する場合、消費税を含めて控除額を計算するため控除額が大きくなることもメリットです。中小企業投資促進税制とは、2025年3月31日までに所定の設備投資などをした中小企業(青色申告者)に対する税制上の優遇措置(特別償却または税額控除)をいいます。
デメリットの1つ目は、仕入れや売上を税込価格で記帳するため損益が把握しにくいことです。課税事業者が税込経理方式を選択した場合、決算時まで消費税の納税額がわかりません。
デメリットの2つ目は、軽減税率(8%)など異なる消費税率が混在すると消費税額全体が把握しにくいことです。帳簿では損益と消費税の納税額を確認できません。
また、少額の固定資産を購入した場合、「一括償却資産」と「少額減価償却資産の特例」という減価償却方法が利用しにくいこともデメリットです。固定資産が10万円以上20万円未満(少額減価償却資産は30万円未満)の場合、3年(少額減価償却資産は一括)で減価償却できます。税込経理方式の場合、固定資産の価格には消費税が含まれるため、上記の減価償却方法が利用できない可能性もあります。
参考: No.5433 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)|国税庁
参考:少額の減価償却資産及び一括償却資産(令第138条及び第139条関係)|国税庁
税抜経理方式(経費として計上しない)のメリット・デメリット
税抜経理方式のメリットの1つ目は、税抜きの仕入れや売上、損益の金額を把握しやすいことです。消費税を区分して仕訳するため、帳簿を見れば各金額が明確に記載されています。
メリットの2つ目は、標準の消費税率(10%)と軽減税率(8%)の取引が混在しても消費税額がわかりやすいことです。仕訳では税率ではなく、実際に支払った(または受け取った)消費税額を記載するためです。
また、減価償却についても固定資産の価額は消費税が含まれないため、前述の「一括償却資産」や「少額減価償却資産の特例」の利用要件を満たしやすくなります。
デメリットの1つ目は、税抜経理方式のほうが経理処理は煩雑になることです。仕入れや売上の価格を消費税と区分して記帳しなければならないためです。これまで、税込経理方式を利用していた個人事業主にとっては大きな事務負担となるかもしれません。
デメリットの2つ目は、消費税分は経費として計上できないことです。確定申告で、受け取った消費税と支払った消費税を精算して納税します。経費にできれば利益を抑えて節税できますが、税抜経理方式ではできません。
また、前述の「特別償却」や「税額控除」について、固定資産の価額は税抜価格を基に計算するため控除額が小さくなることもデメリットです。
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消費税の仕訳に利用する勘定科目
ここからは、消費税の仕訳に利用する勘定科目を見ていきましょう。
租税公課
租税公課は、税込経理方式で利用する勘定科目です。通常、決算時には、納める消費税額を計算し、翌3月31日までに消費税を納付します。翌3月31日までに納付する消費税額は、決算で「租税公課」として計上することが可能です。この場合、相手勘定科目は「未払消費税(等)」を使います。
なお、決算では未払計上せずに、翌年度の納付時に「租税公課」として処理しても構いません。
仮払消費税
仮払消費税(等)は、税抜経理方式で利用する勘定科目です。税抜経理方式では、取引ごとに本体価格と消費税額に分けて処理します。支払いの取引において消費税を処理する際に「仮払消費税」科目を使います。
仮受消費税
仮受消費税(等)は、税抜経理方式で利用する勘定科目です。
税抜経理方式では、取引ごとに本体価格と消費税額に分けて処理します。支払いの取引において消費税を処理する際には「仮払消費税」科目を使います。売上の取引において、消費税を処理する際には「仮受消費税」科目を使います。
仮払消費税と仮受消費税は、決算時に相殺する必要があります。この際、翌3月31日までに納付する消費税額は「未払消費税(等)」を使います。仮払消費税と仮受消費税を相殺し、未払消費税を計上する仕訳では、差額が出ることがあります。差額は「雑収入」「雑損失」などの科目で処理します。
税込経理方式と税抜経理方式の仕訳
税込経理方式と税抜経理方式の仕訳方法について解説します。
税込経理方式の場合
仕入れや売上は、消費税を含んで次のように記載します。決算時に今まで支払った消費税と受け取った消費税を精算し、「未払消費税」として計上します。
例)8,000円の商品Aを仕入れる
借方 | 貸方 | ||||
---|---|---|---|---|---|
仕入高 | 8,800円 | 現金 | 8,800円 |
例)1万円の商品Bを販売する
借方 | 貸方 | ||||
---|---|---|---|---|---|
現金 | 11,000円 | 売上高 | 11,000円 |
例)決算時
借方 | 貸方 | ||||
---|---|---|---|---|---|
租税公課 | 200円 | 未払消費税 | 200円 |
税抜経理方式の場合
仕入れや売上は取引ごとに消費税を区分して、次の通り仕分けます。
消費税は、「仮払消費税」「仮受消費税」として取引ごとに仕分けて、決算時に精算します。
例)8,000円の商品Aを仕入れる
借方 | 貸方 | ||||
---|---|---|---|---|---|
仕入高 | 8,000円 | 現金 | 8,800円 | ||
仮払消費税 | 800円 |
例)1万円の商品Bを販売する
借方 | 貸方 | ||||
---|---|---|---|---|---|
現金 | 11,000円 | 売上高 | 10,000円 | ||
仮受消費税 | 1,000円 |
例)決算時
借方 | 貸方 | ||||
---|---|---|---|---|---|
仮受消費税 | 1,000円 | 仮払消費税 | 800円 | ||
未払消費税 | 200円 |
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個人事業主が経費にできる税金は?
消費税以外の税金は経費計上できるのでしょうか。経費にできる税金とできない税金を解説します。
経費にできる税金
「事業の運営に必要な税金」は経費計上でき、「不要な税金」は経費計上できません。経費にできるものは次の通りです。
- 固定資産税(事業で使用している土地や建物にかかる固定資産税)
- 自動車税
- 事業税
- 登録免許税 など
経費にできない税金
事業に関係のない税金は経費にできません。経費にできないものは次の通りです。
- 所得税
- 住民税
- 相続税
- 贈与税 など
個人事業主が消費税を節税する方法
個人事業主が消費税を節税する主な方法は次の通りです。
「簡易課税」と「2割特例」は消費税の納税額を計算する方法で、「みなし仕入率」を利用することで簡単に納付額の計算ができます。具体的には、「仕入れで支払った消費税の額」を「受け取った消費税の額 × みなし仕入率」で計算します。
2割特例は、「免税事業者からインボイス発行事業者になった個人事業主」を対象とした、期間限定の特例です。「受け取った消費税の額 × 20%」を納税します。一般的に、簡易課税と2割特例によって納税額を少なくできますが、ケースバイケースです。
個人事業主は、開業年度や次年度の売上高が1,000万円を超えていても開業後2年間は消費税が免除されます。また、個人事業主が法人化した場合も、法人化して2年間は消費税が免除されます。適格請求書発行事業者に登録すると消費税免除は受けられないため、注意しましょう。
長所・短所を理解して消費税の計算方法を選択しよう
個人事業主が支払った消費税は経費として計上できます。税込経理方式の長所は、「税込価格で経理処理するため、事務負担が少ない」ことと「消費税分を経費計上できること」などです。
一方、「税込価格で記帳されるため損益が把握しにくい」という短所もあります。両方式のメリットとデメリットを理解して、自社に合った方式を選択しましょう。

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