- 更新日 : 2022年11月22日
外貨貯金の為替差益に確定申告が必要になるケースとは?
外貨貯金の為替差益があると確定申告が必要になるかもしれません。
ただ、確定申告が必要か不要かを判断するのは少し複雑です。
理由は、為替差益といってもさまざまな為替差益があるからです。
この記事ではどのような為替差益が確定申告の対象になるのか、どのタイミングで所得にするのかなど、具体的な方法を説明していきます。
目次
「マネーフォワード クラウド確定申告」なら日々の取引入力→申告書の作成→申告作業が、オンラインで完結します。
取引明細の自動取得と仕訳の自動作成に対応しており、手入力を減らしてカンタンに記帳・書類を作成。来年の確定申告は余裕を持って対応できます。
PC(Windows/Mac)だけでなく、スマホアプリからも確定申告が可能です。

為替差益とは
為替差益とは、為替レートが変動することによる差益です。
為替レートは基本時に取引時レート(外貨を保有したときのレート)と決済時レート(外貨を日本円にしたときのレート)があり、これらの差額が利益の場合には為替差益、対して損失の場合は為替差損といわれます。
なお、この記事では所得税の確定申告を念頭に置き、為替差益について説明します。
確定申告の対象になる為替差益
厳密にいうと為替差益は為替レートが関係していれば発生するため、幅広く生じるものです。ただし、確定申告ではこの意味での「全ての為替差益」が対象になっているわけではありません。
確定申告の対象になる為替差益は以下の2つのポイントがあります。
- 外貨を受け取ってすぐに日本円にすると為替差益ではない
- 未実現の評価益ではなく日本円に換算し確定していること
まず、1つ目に想定するのは、輸出やサービス提供などの代金を外貨で受け取る場合です。
この場合で外貨をすぐに日本円に換算した場合は、為替差益が生じません。
このような取引の収入は、確定申告するにあたって日本円で収入があったことと同じだと考えます。
ただし、事業所得で帳簿を付ける場合は売掛金や買掛金などから為替差益が発生することがあります。事業所得については後述します。
2つ目に想定するのは、外貨の資産運用です。
補足として、未実現の評価益とはまだ日本円で確定していない含み益の状態です。
具体例としては、外貨預金の運用があります。
この場合、為替レートが変動するため、為替差益が発生します。しかし、運用期間中は日本円として受け取っていないため、未実現の評価益です。そのため、評価益の状態の為替差益は確定申告の対象になりません。
対して、運用を終了して日本円に換算した場合は、契約時と終了時の差額が為替差益になります。この為替差益は日本円として確定しているため、確定申告の対象になります。
ここまでをまとめると、為替差益のうち実現(日本円として確定)したものが確定申告の対象となります。単なる含み益の状態は確定申告不要です。また、外貨を受け取りすぐに日本円にした場合は、為替差益ではなく日本円の収入とします。
補足として、事業所得で帳簿付けを行う場合は会計基準や所得税法に従うため、未実現の為替差益でも確定申告の対象になります。
マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が知っておきたい"経費"のキホンや勘定科目を分かりやすく1つにまとめた「個人事業主が知っておくべき経費大辞典」を無料で用意しております。
税理士監修で、経費の勘定科目や具体例だけでなくワンポイントアドバイスもついているお得な1冊となっていますので、ぜひ手元に置きたい保存版としてご活用ください。
為替差益の確定申告は必要?
ここまでの説明で、確定申告の対象となる為替差益を説明しました。
具体的には、外貨預金などの資産運用の際、日本円に換算したときの為替差益と事業(本業や副業)で、海外取引の決済のときに生じる為替差益です。
為替差益を計上するタイミング
為替差益を計上するタイミングは、日本円に換算したときです。
理由は、日本円に換算したときに為替差益の金額が確定するためです。
また、為替差益の計算は基本的に取引時レートと決済時レートで換算した差額になります。
外貨預金を例にすると以下の計算になります。
【計算の前提】
外貨の定期預金を契約し、1万ドルを購入して預け入れた。
当時の為替相場は1ドル100円で3年間運用する。- 3年後に満期になり、定期預金から1万ドルを引き出し日本円に換算した。
このときの為替相場は1ドル105円であった。
【為替差益の計算】
契約時の日本円換算額
1万ドル × 100円 = 100万円終了時の日本円換算額
1万ドル × 105円 = 105万円為替差益の計算
105万円 - 100万円 = 5万円
上記の為替差益5万円は、契約が終了し日本円に換算したときに計上します。
つまり、日本円に換算した日が含まれる年の所得になります。
反対に運用期間中の為替差益は未実現の評価益であるため、確定申告の対象にはなりません。
為替差益の所得区分
為替差益は、基本的に以下の所得になります。
所得区分 | 内容 |
---|---|
事業所得 | 事業として行う商品の販売またはサービスの提供から生じる所得 |
雑所得 | 所得税の9種類の所得に当てはまらない所得 |
まず、事業所得になる為替差益は、事業として行う商品やサービスの提供から生じるもの、その他事業に関係するものが含まれます。
さらに会計処理の方法によっては、未実現の為替差益も所得計算に含まれることがあります。
次に、雑所得はその他の所得で、所得税の所得のどれにも当てはまらない所得です。
具体的には、事業に関係しない外貨預金の為替差益や小規模な副業で生じる為替差益などが該当するでしょう。雑所得は日本円に換算し、確定した為替差益が該当します。
補足として、為替差益の発生原因で所得を区別することがあります。
例に挙げるならば、外貨の積立保険や外国株式の売却益などは利益に為替差益が含まれます。
しかし、これらはその発生原因で所得を区別します。外貨の積立保険では保険の払戻金として一時所得になります。
確定申告が必要なケース
為替差益があり、以下のどれかに該当する場合は確定申告が必要です。
- 事業に関連する為替差益がある
- 確定した為替差益が雑所得として年間20万円を超え
まず、事業に関連する為替差益がある場合は、事業所得に為替差益が含まれます。
帳簿付けでは金額によりますが、「為替差益」や「売上」「雑収入」などの勘定科目で収益として計上することになります。
次に、為替差益が年間20万円を超える場合は確定申告が必要です。
具体例としては外貨預金を日本円に換算し、20万円超の為替差益が発生した場合です。
補足として、確定申告が必要な場合を為替差益が関連するものに限定しています。
ほかに確定申告が必要な例として、給与が複数ある場合や医療費控除などを適用する場合などがありますが、他の原因によるものは記載していません。
確定申告が不要なケース
為替差益があっても以下の場合、確定申告が不要な目安になります。
- 為替差益の金額が20万円以下になる
この20万円は、給与所得など他の所得があっても所得税が増加しないという意味です。具体例の1つとして給与所得があり、そのほかに為替差益を含む雑所得の合計20万円以下になる場合、確定申告は不要です。
また、確定申告が不要になる場合を厳密にいうと、所得税を追加で支払わない場合です。
所得は人によってさまざまなパターンがありますが、源泉徴収や年末調整ですでに所得税を支払っており、確定申告を行っても所得税を追加で支払わない場合、確定申告は不要です。
為替差益の確定申告に必要な書類
為替差益は事業所得または雑所得のどちらかになります。
それぞれの所得と必要書類について説明していきます。
まず、為替差益を事業所得として申告する場合、必要書類はありません。
ただし、帳簿を作成することから為替差益の根拠となる書類は保管しておく必要があります。具体的には入出金明細や請求書、決済業者が発行するレポートなどが考えられるでしょう。
これらの書類は確定申告書に添付して提出しませんが、自身で保管しておく必要があります。
為替差益を雑所得として申告する場合は、以下の書類が必要になることがあります。
- 年間取引報告書
- 銀行または証券会社等が発行するレポート等
- その他為替差益を証明する書類
上記の書類は紙面で確定申告書を提出する際に必要になることがあります。
e-Taxで確定申告を行う場合は不要ですが、すぐに処分するのではなく自身で保管しておく必要があるでしょう。
確定申告しないとどうなる?
確定申告をしていないことが税務署に発覚した場合は、確定申告を行った場合に支払う所得税をもとに、延滞税や無申告加算税などの税金を支払うことになります。
申告を行わないことについて、税務署に悪質と判断されると上記のほか、重い罰則につながることがあります。
マネーフォワード クラウド会社設立は、個人事業主が法人成りを検討したほうがよいタイミングをまとめた「法人化を検討すべき7つのタイミング」を無料で用意しております。
創業支援に強い税理士監修で、ポイントがまとまったお得な1冊となっていますので、ぜひ将来を見据えた情報収集でご活用ください。
確定申告の具体的な方法はこちら
確定申告の仕方などがわからない場合は、確定申告時期に開催される無料相談窓口や税務署、税理士に相談するのがおすすめです。為替差益があり、確定申告が必要な方は必ず申告しましょう。
以下のリンクでも具体的な確定申告の仕方を説明していますので、参考にしてください。
はじめての確定申告もラクラク安心に済ませる方法
確定申告がはじめての方や、簿記の知識に不安がある方、確定申告書類の作成を効率よく行いたい方は、確定申告ソフトの使用がおすすめです。
個人事業主向け会計ソフトの「マネーフォワード クラウド確定申告」は、確定申告の必要書類が自動作成でき、Windows・Macはもちろん、専用アプリも提供しています。
①取引明細は自動で取得

銀行口座やカードを登録すると、取引明細を自動取得します。現金での支払いに関しても、家計簿のようなイメージで、日付や金額などを自分で入力することが可能です。
②仕訳の勘定科目を自動提案

自動取得した取引明細データや、受領後にアップロードした請求書・領収書などの情報をAIが判別し、仕訳を自動で入力します。学習すればするほど精度が上がり、日々の伝票入力が効率化されます。
③確定申告必要書類の自動作成機能

白色申告・青色申告の両方に対応しており、確定申告に必要な書類が自動で作成できます。また、マネーフォワード クラウド確定申告アプリで、スマホから直接の提出も可能です。印刷しての提出やe-Taxソフトでの提出にも対応しています。
追加料金なしで確定申告以外のサービスが使える
有料プラン(パーソナルミニ・パーソナル・パーソナルプラス)に登録すると、基本料金だけで請求書や契約のサービスを含む11サービスを利用することができます。日々の業務や作業をまとめて効率化しましょう。

合わせて読みたいおすすめ資料
マネーフォワード クラウド確定申告では、さまざまなお役立ち資料を用意しています。 無料登録するだけで資料がダウンロード可能なので、ぜひ読んでみてください。会社員の確定申告 丸わかりガイド

青色申告1から簡単ガイド

個人事業主が知っておくべき経費大辞典


マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例
データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
よくある質問
確定申告の対象になる為替差益は?
為替差益のうち日本円として確定したものが確定申告の対象となりますが、単なる含み益の状態は確定申告不要です。また、外貨を受け取りすぐに日本円にした場合は、為替差益ではありません。 詳しくはこちらをご覧ください。
為替差益を計上するタイミングは?
為替差益を計上するタイミングは日本円に換算したときです。詳しくはこちらをご覧ください。
為替差益に確定申告が必要なケースは?
為替差益があり、事業に関連する為替差益があるまたは確定した為替差益が雑所得として年間20万円を超える場合は確定申告が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
確定申告の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
投資の確定申告の関連記事
新着記事
個人事業主は事業用口座を開設すべき?メリットや開設方法、注意点を解説
個人事業主は、事業用口座を開設することができます。事業用口座とは個人の事業用で、口座名義に屋号を入れるなどができる口座のことです。 この記事では、事業用口座の概要や事業用口座を開設するメリット・デメリット、開設するタイミング、開設方法などを…
詳しくみる個人事業主におすすめの店舗火災保険とは?保険料の相場や比較ポイントなど
店舗を構えて事業をしている個人事業主は、店舗火災保険に加入したほうがよいでしょう。なぜなら万が一、店舗が火災にあっても一定の補償を受けられるからです。 店舗火災保険は、保険会社によって保険料などが違います。今回は、店舗火災保険の保険料の相場…
詳しくみる個人事業主も社会保険適用拡大の対象!常時5人以上の個人事業所の対応を解説
社会保険の適用拡大により、個人事業主も社会保険加入が必要です。この記事を読めば、「個人事業主で社会保険が対象になる基準は?」「社会保険適用の事務手続きがわからない」という悩みを解決できます。本記事で、社会保険適用拡大の概要や、社会保険の仕組…
詳しくみる保険外交員はなぜ個人事業主?メリットや確定申告・経費についても解説
保険外交員とは、保険契約の勧誘や代理、契約後のサポートなどを行う職種です。本記事では、保険外交員の雇用形態をはじめ、個人事業主として働くメリットやデメリットについて解説します。 保険外交員にまつわるよくある質問と回答も取り上げるため、興味を…
詳しくみる個人事業主は圧縮記帳を使えない!国庫補助金等の総収入金額不算入について解説
圧縮記帳とは、課税の繰り延べをする会計処理のことを指します。税法で規定されており、企業が国からの補助金を利用して固定資産を取得した際に用います。そのため、個人事業主の場合には使えません。本記事では、圧縮記帳の概要や圧縮記帳を活用するメリット…
詳しくみる個人事業主の美容師とは?メリットや年収、経費や確定申告などを解説
個人事業主の美容師とは、法人を設立せずに独立して事業を営む美容師の方を指します。個人事業主として活躍していくためには、独立後の働き方や税務手続き、収入の安定性などを考慮する必要があります。本記事では、個人事業主の美容師の働き方や年収、メリッ…
詳しくみる