- 更新日 : 2025年8月28日
個人事業主が申請できるパソコン関連の補助金は?仕組みや経理処理の注意点を解説
個人事業主として事業を行う中で、パソコンは業務の効率化や売上管理、会計処理に欠かせないツールです。しかし、高性能な機器を導入するにはコストの負担も大きくなります。そんなときに活用したいのが、国や自治体が実施する補助金制度です。
本記事では、個人事業主がパソコン購入に利用できる最新の公的支援制度を、制度の仕組みや注意点も含めて解説します。
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目次
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個人事業主がパソコン購入の補助に利用できる「IT導入補助金」
個人事業主が業務用にパソコンを導入する際、費用の一部を公的に補助してもらえる制度があります。経済産業省が実施する「IT導入補助金」です。ここでは、IT導入補助金の仕組みと、パソコン導入に使える内容を解説します。
IT導入補助金の概要
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入して業務効率化や生産性向上を図る際、その費用の一部を国が支援する制度です。個人事業主も、従業員規模や事業内容の要件を満たせば申請可能であり、フリーランスの方も対象になり得ます。
2025年時点では、パソコン等のハードウェア購入補助は主に「インボイス枠(インボイス対応類型)」が対象となります。。
インボイス枠でパソコン購入費が補助対象に
インボイス枠では、インボイス制度に対応した会計ソフトや受発注管理、決済システムなどを導入する際、その運用に必要なパソコンも補助対象となります。ただし、パソコン単独での申請は認められておらず、必ず対象ソフトとセットで導入することが条件です。
補助率は、ソフトウェア部分が50万円以下なら中小企業で3/4、小規模事業者で4/5、それを超える額は2/3となっています。パソコン等のハードウェア部分は1/2以内、上限額は10万円です。たとえば20万円のパソコンを購入する場合、10万円が上限として補助されます。レジや専用端末の場合には、上限が20万円に引き上げられます。(2025年時点での情報です。最新の情報はホームページで確認してください。)
参考:IT導入補助金2025
申請には、インボイス対応ソフトの導入が必須条件で、会計・受発注・決済いずれかの機能を備えた製品を最低1種類以上導入する必要があります。また、申請者は「適格請求書発行事業者」に登録することを検討ことが求められます。このため、課税事業者への転換を検討している個人事業主にとって、パソコン導入と同時にインボイス制度対応検討が進められる点が大きな利点です。
IT導入補助金の申請方法
IT導入補助金の申請はオンラインで行いますが、事前に「gBizIDプライム」アカウントの取得が必要です。このIDは国の電子申請手続き共通アカウントであり、取得には数日から2週間かかることもあるため、早めの準備が推奨されます。
また、申請には「IT導入支援事業者」の協力が不可欠です。これは補助金事務局に登録されたITベンダーで、申請者に対しマイページへの招待、ITツールの選定支援、書類作成のアドバイスなどを行います。補助金を利用するには、必ず支援事業者経由での手続きが必要です。
IT導入補助金の注意点
注意点として、補助金の交付が決定される前にパソコン等を購入してしまうと、補助対象外になります。中古品の購入や、自己判断で先に契約・支払いを済ませた場合も補助金は支給されません。導入後には、領収書や納品書などの証憑書類をもとに実績報告を提出し、審査完了後に補助金が振り込まれる流れとなります。支給には数週間から数か月かかることもあるため、立替資金の準備も大切です。
IT導入補助金については2025年も複数回の公募があり、最新情報は必ず公式サイトや支援事業者を通じて確認してください。事前準備を整えておけば、パソコン導入を有利に進められます。
従業員を雇用している個人事業主が利用できる「業務改善助成金」
業務改善助成金は、厚生労働省が所管する中小企業・小規模事業者向けの制度で、最低賃金の引き上げと引き換えに、生産性向上を目的とした設備投資費用を助成するものです。取組内容が一定の条件を満たせば、事業用パソコンの購入費も助成対象となります。
パソコンが対象となる条件と助成内容
この制度では、「業務効率化」や「人件費削減」など、生産性向上に直結する投資が対象となります。助成率は3/4〜4/5と高く、助成上限額は従業員30人以上の事業者では30万円から600万円までです。対象は賃上げ幅と従業員数に応じて決まります。
原材料費の高騰などで利益率が前年同期に比べ3%ポイント以上低下している事業者である「特例事業者」については、通常は対象外となるパソコンやタブレット、スマートフォンの購入費も助成対象に含まれる特例措置が設けられています。この特例を活用すれば、パソコン導入の初期費用を大幅に軽減することが可能です。
個人事業主であっても、従業員を雇用し、賃上げ計画を策定・実施できる場合には、この助成金の申請が認められています。 フリーランスの方でも、事業の成長とともにスタッフを雇っている場合は、条件を満たせばパソコン導入費への助成を受けられます。
申請準備と注意点
申請には、事前に賃上げ計画と設備導入計画を記載した申請書類を作成し、実施前に提出する必要があります。導入後の申請は認められないため、計画段階でしっかり準備することが重要です。また、制度は年度予算に基づいており、予算上限に達すると申請受付が終了する可能性があるため、申請時期にも注意が必要です。
申請手続きに不安がある場合は、社会保険労務士や地域の支援機関に相談するのも有効です。適切な準備をすれば、パソコン導入と同時に労働環境の改善も目指せる実用的な支援制度といえるでしょう。
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自治体によるテレワーク導入補助金
テレワークの普及や中小事業者のデジタル化を後押しする目的で、各地方自治体では独自の補助金・助成制度を設けている場合があります。パソコンやタブレットの購入を補助対象とする例も多く、地域の制度をうまく活用すれば、導入費用の負担を軽減できます。
各地の代表的なテレワーク関連補助制度
過去に実施されていた代表的な例として、東京都の「テレワークトータルサポート助成金」や札幌市の「働き方改革テレワーク導入補助金(令和7年度は受付終了)」があります。これらの制度では、テレワークに必要なパソコンやタブレット、Webカメラ、ルーターなどの機器購入費用の一部が助成対象となっていました。補助率は2分の1から3分の2、上限額は50万円~100万円程度と、地域により異なります。
現在利用できる制度については、お住まいの自治体のウェブサイトで、『DX推進』『テレワーク支援』などのキーワードで最新の情報を確認してください。
対象条件や申請の流れ
自治体によって申請条件が細かく異なります。たとえば、「初めてテレワークを導入する事業者であること」や「常時雇用する従業員が1人以上いること」などが要件となることがあります。また、申請には事前に交付決定を受けたうえで機器を購入する必要があり、購入後の申請は対象外となるケースがほとんどです。
個人事業主が利用する際のポイント
個人事業主であっても、該当自治体に事業所を構えていれば申請できるケースがあります。補助金の活用により、パソコンや周辺機器の導入コストを抑えられるため、地域の制度を積極的に活用すると良いでしょう。国の制度(例:IT導入補助金)と併用できる場合もあり、組み合わせることでより多くの支援を受けられる可能性があります。
パソコン購入費の経理処理と確定申告のポイント
補助金や助成金を利用して事業用パソコンを導入した場合、その後の経理処理や確定申告において正しい対応が求められます。ここでは、減価償却の特例や補助金に関する税務上の取扱いについて整理します。
パソコン代の費用計上
事業用に購入したパソコンは、原則として減価償却資産として取り扱われます。耐用年数4年にわたって取得費用を分割して計上しますが、中小企業者や青色申告をしている個人事業主には「少額減価償却資産の特例」が用意されています。
この特例を利用すれば、30万円未満の資産については取得年度に全額を一括で経費として計上でき、年間300万円まで適用可能です。たとえば20万円のノートパソコンであれば、購入した年にその全額を経費として申告できます。ただし、この特例は恒久的な制度ではなく、現行の租税特別措置法では「2026年3月31日」までに取得し事業の用に供した資産が対象となる時限措置ですので注意してください。
なお、10万円未満の資産は本来から経費化が可能で、10万円以上20万円未満の資産は3年間で均等償却することも選べます。(一括償却資産)
特例を利用するには、確定申告書に所定の明細書を添付し、青色決算書の摘要欄などに条文を明記する必要があります。制度を活用する際は、事前に顧問税理士や税務署に確認し、要件を満たすよう正確に処理することが求められます。
補助金を受け取った場合の所得申告
補助金や助成金でパソコン購入を行った場合、その受領額は原則として課税対象です。個人事業主の場合、これらの給付金は「事業所得の雑収入」として扱われ、確定申告時に収入に計上しなければなりません。「補助金は返済不要だから非課税」と誤解されがちですが、税務上は収入とみなされるため注意が必要です。
申告にあたっては、確定申告書の雑収入欄に補助金の受領額を記載し、備考欄に「〇〇補助金△円受領」などの記載をすることが一般的です。補助金額が大きい場合、所得税や住民税の負担増につながるため、税負担を見越した資金計画も重要です。
一方で、一定の要件を満たす場合には、「圧縮記帳の特例」を使うことで、補助金相当額を収入に含めずに申告する方法も選択可能です。これは、補助金で取得したパソコンの購入費について、補助金分だけ資産の取得価額を減額し、その分収入に計上しないという方法です。結果的には課税の繰り延べとなり、償却期間にわたって補助金収入に係る税金が繰り延べられます。適用には「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」の添付が必要で、実務上は税理士など専門家の指導のもとで対応するのが安全です。
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補助金を活用してパソコンを導入し、業務効率化を図ろう
個人事業主が業務用にパソコンを導入する際、費用面での負担を軽減できる補助金・助成金制度が複数存在します。各制度は申請条件や補助率、対象経費が異なるため、導入目的や事業規模に合わせて選ぶことが重要です。経理処理や確定申告のポイントにも注意し、制度を上手に活用してパソコン導入と業務効率化を両立させましょう。

マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例
データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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