• 更新日 : 2025年8月8日

個人事業主が差し押さえされる前にとるべき対応とは?手続きと予防策を解説

個人事業主にとって、差し押さえは事業資金や生活に直接影響する深刻な問題です。税金の滞納や借入金の返済遅延が続けば、預金、不動産、売掛金などの財産が差し押さえられる可能性があります。こうしたリスクは、無視や放置すれば高まりますが、分納や納税猶予、資金調達、制度の活用など、回避のための手段も用意されています。

本記事では、差し押さえに至る流れと対処法を解説し、備えるための行動指針をお伝えします。

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個人事業主への差し押さえとは

個人事業主に対する差し押さえは、主に「税金の滞納」や「借入金の返済遅延」が原因で発生します。所得税や消費税などの納付を怠った場合、税務署は督促状を送った後、必要に応じて預金口座や売掛金、不動産などの財産を差し押さえることができます。税金に関しては裁判所の許可なしに強制執行が可能なため、対応が遅れると突然の差し押さえに至ることもあります。また、事業資金の借入やリース契約の返済が滞った場合、債権者が裁判所を通じて債権回収のための差し押さえを申し立てることもあります。差し押さえは、預金や設備だけでなく、売掛金や事業車両など多岐にわたり、事業活動に直接影響を与えるため、早めの対応が重要です。

個人事業主への差し押さえの手続き・事前通知

個人事業主に対する差し押さえは、突然実行されるものではなく、必ず一定の手続きや事前通知を経て実施されます。税金や債務の滞納が続くと、最終的には財産の差し押さえに至る可能性があるため、早期の対応が求められます。

税金滞納に対する差し押さえ

税務署による差し押さえは、法律に基づき強力な権限で執行されます。所得税や消費税などの納付が期限を過ぎて滞ると、まず「督促状」が送付されます。この督促状の発送日から10日が経過しても納付が行われない場合、税務署は裁判所の許可なしで財産の差し押さえを実行できます。実務では、督促に加えて「最終催告」などの追加通知が行われることもありますが、法律上は督促のみで差し押さえ可能です。税務署は質問検査権を行使し、納税者の預金口座や取引先に関する情報を照会することも認められており、この段階で信用に悪影響を及ぼすおそれがあります。

民間債務に対する差し押さえ

一方で、税金以外の借入金や未払い代金など、民間の債務に対する差し押さえには裁判所を通じた手続きが必要となります。債権者からの度重なる請求や内容証明による督促が続いても支払いが行われない場合、債権者は訴訟を提起し、勝訴判決などの債務名義を取得します。その後、裁判所に強制執行を申し立てることで、預金口座や不動産、売掛金などの財産を差し押さえることが可能になります。これらは通常、訴訟の段階で差し押さえの兆候が見えるため、ある程度事前に察知することができます。

動産差し押さえ

裁判所による差し押さえのうち、動産執行(家具や機器、車両など)の場合、執行官が突然事業所や自宅に訪れることもあります。事前の通知がなく、債務者がその場で初めて差し押さえの事実を知ることもあるため、精神的にも大きなダメージを受けやすいのが特徴です。ただし、裁判所から訴状が届いた、もしくは差し押さえに関する通知があった場合には、滞納を解消することで強制執行を回避できる可能性もあります。早期の対応が差し押さえ防止の鍵を握ります。

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預金口座の差し押さえ

税金滞納や債務不履行があると、まず個人事業主の銀行預金口座が差し押さえの対象になりやすい傾向にあります。預金の差押えは比較的手続きが容易で、資金を即座に確保できるため、事業資金への影響も大きく注意が必要です。

差し押さえの影響

預貯金口座の差押えは、税務署にとっても民間の債権者にとっても回収しやすい手段です。金融機関に差押命令が送達されると、その時点の口座残高から滞納額に充当できる範囲で資金が凍結されます。差押えによって口座にある資金は引き出しや振込に利用できなくなり、事業用資金の決済に支障が生じます。残高が債権額に満たない場合は口座の残金がすべて差し押さえられますが、差押えは一度の効力であり、実行後に新たに振り込まれた資金は原則自由に使えます。もっとも、未納が続けば再度の差押えも可能なため、根本的な解決にはなりません。

回避策・予防ポイント

口座差押えを防ぐには、期限までの納税・返済が第一ですが、資金繰りが困難な場合は事前に債権者と協議して支払い計画を立てることが重要です。税金であれば分割納付の相談や納税猶予の申請を行い、金融機関から融資を受けて納付する選択肢も検討します。また、公的給付金や生活費等、差押えが禁止されている資金については、預金口座を分けて管理することが推奨されます。例えば児童手当や年金などの給付金は専用口座で受け取り、他の事業資金と混在させないことで、万一の差押え時にも保護されやすくなります。

不動産の差し押さえ

個人事業主が所有する不動産(自宅や事業用物件)は、滞納額が大きい場合や担保として提供している場合に差し押さえの対象となります。不動産が競売で売却されると事業拠点や住居を失うことになり、影響は甚大です。住宅ローン滞納時は、金融機関による差押え・競売手続きが迅速に進む傾向があります。

差し押さえの影響

不動産は高額資産であるため、滞納額が大きい場合には差押えの有力な対象となります。住宅ローンを滞納すれば金融機関が担保の不動産を差し押さえて競売にかけることが想定され、税金滞納でも裁判所の許可なく行政機関が直接不動産の差押登記を行い得ます。競売によって物件が売却されれば、その代金から滞納額が回収されますが、事業用の店舗や自宅を失う結果となり、個人事業主には甚大な影響が及びます。

回避策・予防ポイント

不動産の差押えを避けるためには、早めの対応が肝要です。住宅ローンの返済が困難な場合、任意売却(市場で物件を売却)して債務を清算することも有効な手段です。競売に比べて高値で売却できれば、滞納額を完済し差押えを回避できます。税金滞納の場合も、差押え前に税務署へ事情を説明し、分割納付や換価の猶予(財産の換価処分を一定期間猶予してもらう制度)を申請することで、不動産の即時差押えを防げる可能性があります。いずれにせよ、滞納を放置せず専門家や債権者と協議し、資産を失う前に解決策を講じることが重要です。

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売掛金の差し押さえ

個人事業主が取引先に対して有する売掛金(未回収の売上代金)も、差し押さえの対象となることがあります。売掛金を差し押さえられると、本来受け取るはずの収入が債権者に直接回収され、資金繰りに直結する打撃となります。また、取引先に差押命令が送達されるため、信用面でも悪影響を及ぼしかねません。

差し押さえの影響

売掛金(取引先から受け取るべき代金)は、法律上「債権」の一種であり、差押えの対象になりえます。実際に債権者(または税務署)が裁判所を通じて差押命令を発すると、取引先はその売掛金を債務者ではなく債権者へ支払う義務を負います。これにより本来受け取るはずだった収入を直接回収されてしまい、個人事業主の資金繰りに即座に悪影響が生じます。また、取引先に差押えの通知が送られることで、信用不安を招き事業関係に悪影響を及ぼす恐れもあります。

回避策・予防ポイント

売掛金の差押えを防ぐには、根本原因である滞納の解消が不可欠です。取引先への差押えが実行されれば信用問題にも発展しかねないため、その前段階で債権者と交渉し、支払猶予や債務の一部返済で合意を得ることが望まれます。資金調達の手段として、ファクタリング(売掛債権の売却)を活用して早期に現金化し、滞納分の支払いに充てる方法も考えられます。ただし、差押えを免れる目的で財産を隠匿・処分する行為は違法となるため注意が必要です。いずれの場合も、差押命令が発令される前に、専門家(弁護士や税理士)に相談しつつ適切な対応策を講じることが重要です。

動産の差し押さえ

高額な機械や車両、貴金属などの動産類も、他に換価できる資産が不足すれば差し押さえの対象となります。執行官が自宅や事業所を捜索し、換価価値のある動産を押収されるケースもあり、事業に必要な機器を失えば営業継続が困難となります。

差し押さえの影響

動産(現金・車両・機械・貴金属など)は、預金や不動産に次いで差押えの対象となることがあります。他に換価できる資産が十分にない場合、執行官(または税務職員)が債務者の自宅や事業所に赴き、換価価値のある動産を差し押さえることがあります。差押え禁止とされる生活必需品・営業用の最低限の器具類を除き、見つかった現金(66万円を超える額)や高価な備品、複数所有している機材などは押収されて競売にかけられます。実際に国税の滞納処分でも、職員が事業所を捜索しながら動産を差し押さえることが可能であり、業務に不可欠な機械や車両を失えばその後の営業に深刻な支障が生じます。

回避策・予防ポイント

動産の差押えを回避するには、事前に換金可能な資産を整理し、滞納の解消に努めることが有効です。例えば、使用していない高価な備品や複数台ある車両などがあれば、差押えに至る前に売却して債務返済に充てることで、強制的に没収される事態を避けられます。税務署も換価が容易で事業継続に支障の少ない財産から優先して差し押さえる傾向があります。したがって、生活や事業に不可欠な資産を守るためにも、不要不急の資産を処分して負債の減額を図り、差押えのリスクを低減させることが望ましいでしょう。また、差押え直前に資産を隠すような行為は厳禁であり、適切な手順で債務整理を検討することも大切です。

個人事業主が納税困難な場合に検討できる選択肢

納税が難しい状況に直面した個人事業主でも、適切な制度や手段を活用すれば差し押さえのリスクを回避できる可能性があります。ここでは、公的な制度から資金調達の選択肢まで、現実的に検討できる対応策を紹介します。

分納(分割納付)

税金を一括で納付できない場合、税務署に相談すれば、複数回に分けて納付する分納が認められることがあります。月々の支払額は収支状況に応じて設定され、現実的な計画に基づいて納税が可能です。延滞税が発生する場合もありますが、差し押さえを回避する手段として有効です。

納税の猶予

災害、病気、事業不振などで一時的に納税が困難な場合には、納税の猶予を申請できます。最大で1年の猶予が認められます。所轄の税務署に申請し、必要な書類と理由を提出することで審査が行われます。

換価の猶予

すでに差し押さえられた財産についても、「換価の猶予」を申請することで、すぐに売却されるのを防げる場合があります。たとえば、事業で使用している車両や機械などの動産が対象で、猶予が認められれば事業継続が可能になります。

納税資金の調達(融資・ファクタリング)

一時的に納税資金が不足している場合には、金融機関からの借入や、売掛債権のファクタリングによる現金化を検討することも有効です。日本政策金融公庫では納税目的での融資制度が用意されており、自治体の中小企業向け融資制度も利用できます。

更正の請求や期限後申告による税額の見直し

申告内容に誤りがあった場合、税額を見直すことで納付額を減らせる可能性があります。税額の過大申告があったときは「更正の請求」、未申告の場合は「期限後申告」で正しい税額に調整できます。これにより、加算税などの負担軽減につながる場合もあります。

差し押さえを回避するために、今できる行動を始めよう

個人事業主に対する差し押さえは、税金の滞納や借入金の返済遅延によって発生し、預金、不動産、売掛金、動産など幅広い財産が対象になります。差し押さえは突然行われるのではなく、事前に督促や通知が行われるのが一般的です。税金の場合は、税務署が裁判所を介さずに執行できるため、迅速な対応が欠かせません。民間債務については裁判所を通じた手続きが必要ですが、事前の訴訟や通知から兆候を察知できます。差し押さえを回避するには、早期の相談や制度活用が鍵です。分納や納税猶予、換価の猶予、納税資金の調達、更正の請求など、多角的な選択肢を正しく理解し、対応することが事業継続への第一歩となります。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例

データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。

ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

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