- 更新日 : 2025年1月7日
個人事業主の国民健康保険は高すぎる?安くする方法を解説
国民健康保険は、個人事業主などが加入する社会保障制度です。一般的に、国民健康保険の保険料は、法人が加入する社会保険より被保険者の負担額が高くなる傾向にあります。しかし、控除や経費を活用すると出費を抑えるのに役立つでしょう。本記事では、国民健康保険料を安くする方法について詳しく解説します。
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個人事業主の国民健康保険は高すぎる?
国民健康保険料の保険料は、高齢化社会に伴う医療費の増加により年々上がり続けています。はじめに、国民健康保険料の推移から、実際に負担額が高すぎるのか見てみましょう。
国民健康保険料の推移
厚生労働省の「国民健康保険事業年報 令和4年度」によると、平成30年度から令和4年度における介護分を除く保険料(調定額)は、以下のとおりです。
年度 | 1世帯当たり調停額 (介護分除く) | 1人当たり調定額 (介護分除く) | ||
---|---|---|---|---|
金額 | 伸び率 | 金額 | 伸び率 | |
平成30年度 | 152,449円 | -0.6 | 95,515円 | 0.9 |
令和元年度 | 153,158円 | 0.5 | 97,324円 | 1.9 |
令和2年度 | 151,612円 | -1.0 | 97,407円 | 0.1 |
令和3年度 | 151,651円 | 0.0 | 98,416円 | 1.0 |
令和4年度 | 153,071円 | 0.9 | 100,825円 | 2.4 |
出典:国民健康保険事業月報等 国民健康保険事業年報 令和4年度|政府統計の総合窓口、「事業概況 表22」を加工して作成
1人当たりの調定額を月額に換算すると、5年間で月442.5円上がっている計算です。
参考:国民健康保険事業月報等 国民健康保険事業年報 令和4年度|政府統計の総合窓口
社会保険より個人負担額が多い
保険料率だけを見れば、国民健康保険のほうが社会保険より料率が低いので個人負担が少ないと思われがちです。しかし、社会保険は年金部分を含め事業主と個人で保険料を折半するため、結果的に国民健康保険より保険料負担が少なくなります。
厚生労働省の資料を例に挙げてみると、月額給与98,000円の方が国民健康保険に加入する場合、月々の個人負担額(国民健康保険料+国民年金保険料)は20,800円です。同じ収入で社会保険に加入した場合、月々の保険料総額(健康保険料+厚生年金保険料)は27,800円となります。
ただし、社会保険の場合、保険料総額を事業主と折半します。したがって、個人負担額は13,900円(27,800円÷2=13,900円)となり、国民健康保険のほうが6,900円も高くなるのです。
参考:社会保険適用拡大のこんなとき!どうする?|厚生労働省、社会保険加入を考える3ステップ
個人事業主の国民健康保険が高いと思う理由
国民健康保険料が高いと感じる主な理由には2つあります。
- 保険料が個人全額負担である
社会保険が保険料負担を事業主と個人とで折半するのに対し、国民健康保険は全額加入者が負担しなければなりません。会社員と同水準の所得でも、国民健康保険のほうが負担感が高くなります。 - 国民健康保険には扶養が存在しない
社会保険では、配偶者や親族を扶養にできるため、扶養になった配偶者や親族が負担すべき保険料は発生しません。一方、国民健康保険料には扶養という概念がなく、国民健康保険の対象となる個人1人ひとりが保険料を負担する必要があります。
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個人事業主の国民健康保険料はいくら?
国民健康保険料には、大きく分けて3つの区分があります。
- 所得割:世帯の所得に応じて負担する保険料であり、世帯の所得金額に料率を乗じて求めます。
- 平等割:世帯に対し、市区町村ごとに定められた料率で徴収されます。
- 均等割:加入者1人ひとりに対し、市区町村ごとに定められた料率で徴収されます。
計算方法は各自治体によって異なり、「所得割+平等割+均等割」の3方式あるいは「所得割+均等割」の2方式いずれかの方法で保険料が計算されます。
1〜3はさらに「医療分」「支援分」「介護分」に区分されており、「3方式×3区分=9区分」または「2方式×3区分=6区分」を合計したものが、国民健康保険料の年額となります。なお、以前は上記のほか「資産割」がありましたが、2024年4月で廃止されました。
小樽市の令和6年度における国民健康保険料の計算イメージは下図の通りです。
令和6年度 国民健康保険料(小樽市) | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
医療分 | 支援分 | 介護分 | ||||||
所得割 | 平等割 | 均等割 | 所得割 | 平等割 | 均等割 | 所得割 | 平等割 | 均等割 |
9.3% | 26,640円 | 26,400円 | 2.8% | 8,280円 | 8,160円 | 2.6% | 6,360円 | 8,160円 |
所得割は給与等の所得金額、平等割は世帯数、均等割は世帯人数に対して各市区町村が定めた料率を乗じ、それぞれの区分を合計した金額として求めます。
では、北海道小樽市在住の単身世帯を例に、国民健康保険料の計算方法を確認してみましょう。
【例:給与収入500万円の単身世帯(40歳)の保険料負担額」】
「医療分」 (A)+(B)+(C)344,130円→344,100円(百円未満切り捨て)
- 所得割 313万円×0.093=291,090円(A)
- 平等割 26,640円×1人×軽減なし=26,640円(B)
- 均等割 26,400円×1世帯×軽減なし=26,400円(C)
「支援分」 (D)+(E)+(F)104,080円→104,000円(百円未満切り捨て)
- 所得割 313万円×0.028=87,640円(D)
- 平等割 8,280円×1人×軽減なし=8,280円(E)
- 均等割 8,160円×1世帯×軽減なし=8,160円(F)
「介護分」 (G)+(H)+(I)95,900円→95,900円(百円未満切り捨て)
- 所得割 313万円×0.026=81,380円(G)
- 平等割 6,360円×1人×軽減なし=6,360円(H)
- 均等割 8,160円×1世帯×軽減なし=8,160円(I)
国民健康保険料年額:医療分344,130円+支援分104,000円+介護分95,900円=544,000円
参考:国民健康保険料|小樽市
個人事業主が国民健康保険料を安くする方法
次に、保険料を安くする方法について考えてみましょう。
①所得金額を減らす
課税対象となる世帯合計所得を減らして、保険料を抑える方法です。所得金額は収入から必要経費を差し引いた残りの「もうけ」部分ですが、加入者ごとにこの「もうけ」部分を算出し、合算したものに対して保険料が課されます。所得自体を減らせば、国民健康保険料も自動的に下がる仕組みです。
②国民健康保険組合を検討する
建築国保や医師国保など、国民健康保険組合への加入を検討するのも1つの方法です。所得金額によっては、国民健康保険組合のほうが保険料負担を抑えられるケースがあります。市区町村で加入する国民健康保険と、自身の業種に応じた保険組合の料率を比較してみるのもよいでしょう。
③世帯分離を検討する
たとえば両親と同居している場合、両親の所得と自身の所得を同一世帯として合算すると所得割等が高くなってしまいます。両親と自身を別世帯として「世帯分離」すれば、それぞれ別世帯となるため、保険料を抑えることが可能です。
④保険料の軽減、減免制度
国民健康保険には、所得が低い世帯に対する保険料の軽減措置や、解雇等の理由で保険料を支払うことが困難な方のための減免制度があります。自身の所得や、働けなくなった理由等を説明できるように書類等を準備しておきましょう。
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個人事業主が所得金額を減らすにはどうすればよいか
個人事業主が所得金額を減らすためには、具体的にどのような手続きをすればよいのか解説します。
青色申告をする
個人事業主の場合、住所地を所轄する税務署に届け出をすることで所得税の「青色申告制度」を使用できます。青色申告制度の中には、複式簿記で決算書を作成した場合、所得金額から要件に応じた一定額(55万円)を控除できる「青色申告特別控除」があります。
また、マイナンバーカード等を利用して電子申告した場合、最大で65万円の特別控除を受けられるためさらにお得です。
家事按分をする
事業とプライベートが混在する取引を事業主貸として全額計上している場合、その中から事業に関する取引を抜き出してみるのも所得を抑える方法の1つです。合理的な按分基準を使って混在する取引を事業とプライベートに分ける必要があります。
経費を漏れなく計上する
基本的な部分ですが、事業で支出した経費を1年分漏れなく計上するのも大事なポイントです。所得の計算は「収入から必要経費を差し引いた残り」として計算できるため、必要経費が漏れなく計上されていれば、それだけで所得金額を抑えられます。
家族給与を経費にする
個人事業主の場合、原則として配偶者や親族に対して給与を支払っても必要経費にはなりません。しかし、税務署に届出をすることで、青色申告は「青色事業専従者給与」、白色申告は「事業専従者給与」を支給して、必要経費にできます。
小規模企業共済
将来の退職金のケアをしておきたい方は、小規模企業共済への加入をおすすめします。事業を廃業したときに退職金を受け取れるほか、毎月の掛け金を確定申告で所得控除する節税効果も期待できます。
経営セーフティ共済
経営セーフティ共済の共済掛金は、事業の必要経費として全額経費計上できるため、所得を減らせます。万が一取引先の倒産などがあった場合、機構から融資を受けることも可能です。
所得控除を利用する
所得税では、社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除、医療費控除など、所得金額を減らせる各種控除があります。所得金額が大きい場合には、これらの所得控除を増やす余地がないか忘れずに検討してみましょう。
個人事業主の高い国民健康保険料がどれだけ安くなるか
個人事業主が所得金額を抑えることで、国民健康保険料がどれくらい安くなるかシミュレーションしてみましょう。なお、所得金額500万円、東京都大田区在住の40歳として試算してみます。
青色申告特別控除の適用(電子申告)を受けた場合
所得金額が500万円の場合、負担する国民健康保険料は年間約72万円になります。ここで65万円の青色申告特別控除を受けた場合、保険料は約63万円になり、9万円程度の節税効果があります。
家族給与を経費にした場合
所得金額が500万円のケースで、家族に対して青色事業専従者給与200万円を支給したとします。保険料は約72万円から約44万円と28万円もの節税効果があります。ただし、専従者給与は支給を受ける側の税負担や社会保険料負担増も考慮しなければなりません。
国民健康保険料を安くする方法を探しましょう
社会保険と比べて割高感の強い国民健康保険料ですが、計算の仕組みさえ正しく理解してしまえば保険料を安く抑えることも可能です。まずは、自身が加入している制度を調べたうえで、保険料を安くできるサービス等がないか検討してみましょう。

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データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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