- 更新日 : 2025年2月28日
青色申告特別控除で10万円控除を受ける要件とは?帳簿や書類について解説
青色申告特別控除とは、青色申告だけに認められるメリットです。控除額は最大65万円で、作成する帳簿や申告方法により65万円のほかに55万円、10万円の控除額が用意されています。
65万円の控除を受けるためには、複式簿記の帳簿を付け、e-tax(電子申告)もしくは電子帳簿での保存が必要です。ただし、10万円控除の場合は簡易な帳簿でよいとされています。
また、10万円控除は不動産所得につき、事業的規模でなくても適用できる点が特徴です。本記事では、青色申告特別控除で10万円控除を受ける場合について紹介します。
なお、マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が確定申告する際に知っておきたい基礎知識や、確定申告の準備、確定申告書の作成方法・提出方法などを分かりやすくまとめた「青色申告1から簡単ガイド」を無料で用意しております。
チェックリスト付きなので、情報収集だけでなく、書類作成・申告手続きを行う時にもお使いいただけます。
この記事を読む方におすすめ
税理士監修で、40ページ以上の情報がギュッと詰まったお得な1冊となっていますので、毎年使える保存版としてご活用ください。
目次
青色申告特別控除で10万円控除を受ける要件とは?
青色申告のメリットは特別控除で節税効果が得られる点ですが、特別控除には最大65万円のほかに基本となる55万円、その下の10万円という3種類があります。
金額の違いは、帳簿の形式や申告方法などによるものです。ここでは、青色申告特別控除で10万円控除となる要件について紹介します。
65万円控除との違いは?
10万円控除と65万円控除は、記帳方法が異なります。65万円の特別控除を受けるためには複式簿記で記帳しなければなりませんが、10万円控除は簡易簿記の作成でかまいません。
また、確定申告で65万円控除を受ける場合、貸借対照表と損益計算書の揃った青色申告決算書を提出しますが、10万円控除では貸借対照表の作成義務はありません。
適用される所得の範囲も異なります。65万円控除は事業規模の不動産所得と事業所得のみに適用されますが、10万円控除は事業規模でない不動産所得や山林所得も含まれます。
さらに、65万円控除を受けるにはe-tax(電子申告)での確定申告、もしくは電子帳簿での保存(届出が必要となる。下記参考)が必要です。一方、10万円控除にはこのような決まりはなく、申告方法や保存方法は自由です。
青色申告特別控除については、次の記事もぜひ参考にしてください。
参考:[手続名]国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る65万円の青色申告特別控除・過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出手続|国税庁
e-Taxなしでは最高55万円控除に
確定申告において、青色申告特別控除は基本として55万円控除です。
同じ複式簿記で記帳していても、e-tax(電子申告)、もしくは電子帳簿での保存の届出をしておかなければ10万円を上乗せして、最高65万円の控除を受けることはできません。
電子帳簿保存については、届出のないものについては上乗せの10万円控除は適用できませんのでくれぐれもご注意ください。
その他の確定申告変更については次の記事で紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
10万円控除の帳簿は簡易簿記で作成可能
10万円控除がその他の控除と違うところは、簡易簿記による記帳でよいという点です。55万円控除や65万円控除で要求される複式簿記による記帳は必要ありません。ここでは、複式簿記と簡易簿記の違いや10万円控除で必要な帳簿、確定申告で必要な書類について紹介します。
複式簿記とはどう違う?
10万円控除で行う簡易簿記とは家計簿のようなもので、お金が入った原因と出て行った原因の記録です。ひとつの勘定科目を使い、お金の出入りだけを記帳します。
一方、複式簿記は取引を2つの勘定科目で記載する帳簿です。左右をそれぞれ「借方」「貸方」に分け、取引を2つの側面から記載していきます。
簡易簿記で把握できるのは主としてお金の出入りのみで、資産の増減や借入金などの状況はわかりません。財政状況を正しく把握するためには、複式簿記による記帳が必要です。
10万円の控除で必要な帳簿
10万円控除で必要になる帳簿は、主として次の4つです。
この他に、現金と預金を分けて管理していれば、預金出納帳も必要です。
作成した帳簿は確定申告などに添付する必要はありませんが、一定期間保存する義務があります。青色申告の帳簿類は、申告期限となる日の翌日から7年の保存が必要です。
10万円控除の確定申告で必要な書類
10万円控除の確定申告で必要な書類は、確定申告書と青色申告決算書です。65万円(55万円)控除の場合は貸借対照表と損益計算書を記載して提出しますが、10万円控除の場合、貸借対照表の記載は特に必要ありません。
10万円控除の簡易簿記では入金と出金の記録しかなく、損益の状況を見る「損益計算書」は作成できるものの、財産の状態を記録した「貸借対照表」は作成できないからです。
青色申告における簡易簿記については、次の記事で詳しく紹介しています。
マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が知っておきたい"経費"のキホンや勘定科目を分かりやすく1つにまとめた「個人事業主が知っておくべき経費大辞典」を無料で用意しております。
税理士監修で、経費の勘定科目や具体例だけでなくワンポイントアドバイスもついているお得な1冊となっていますので、ぜひ手元に置きたい保存版としてご活用ください。
より節税効果を高めるには65万円控除を目指しましょう
青色申告は特別控除による節税効果が大きなメリットですが、作成する帳簿の形式によっては10万円の控除にとどまります。最大65万円の控除を受けるためには、複式簿記で帳簿を作成しなければなりません。複式簿記は財政状況を把握するうえでも必要です。節税効果を高めるため、複式簿記に変えて65万円控除を目指してみてはいかがでしょう。
なお、青色申告については以下の記事でくわしく解説しています。

マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例
データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
よくある質問
青色申告特別控除とは?
青色申告の申請をしている人が受けられる控除のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
青色申告特別控除でいくらの控除が受けられますか?
最大65万円で、要件の違いにより55万円、10万円の3種類があります。詳しくはこちらをご覧ください。
青色申告の10万円控除を受ける要件は何ですか?
届出の提出と簡易簿記による記帳、確定申告で青色申告決算書を提出しなければなりません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
確定申告の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
青色申告の関連記事
新着記事
個人事業主は事業用口座を開設すべき?メリットや開設方法、注意点を解説
個人事業主は、事業用口座を開設することができます。事業用口座とは個人の事業用で、口座名義に屋号を入れるなどができる口座のことです。 この記事では、事業用口座の概要や事業用口座を開設するメリット・デメリット、開設するタイミング、開設方法などを…
詳しくみる個人事業主におすすめの店舗火災保険とは?保険料の相場や比較ポイントなど
店舗を構えて事業をしている個人事業主は、店舗火災保険に加入したほうがよいでしょう。なぜなら万が一、店舗が火災にあっても一定の補償を受けられるからです。 店舗火災保険は、保険会社によって保険料などが違います。今回は、店舗火災保険の保険料の相場…
詳しくみる個人事業主も社会保険適用拡大の対象!常時5人以上の個人事業所の対応を解説
社会保険の適用拡大により、個人事業主も社会保険加入が必要です。この記事を読めば、「個人事業主で社会保険が対象になる基準は?」「社会保険適用の事務手続きがわからない」という悩みを解決できます。本記事で、社会保険適用拡大の概要や、社会保険の仕組…
詳しくみる保険外交員はなぜ個人事業主?メリットや確定申告・経費についても解説
保険外交員とは、保険契約の勧誘や代理、契約後のサポートなどを行う職種です。本記事では、保険外交員の雇用形態をはじめ、個人事業主として働くメリットやデメリットについて解説します。 保険外交員にまつわるよくある質問と回答も取り上げるため、興味を…
詳しくみる個人事業主は圧縮記帳を使えない!国庫補助金等の総収入金額不算入について解説
圧縮記帳とは、課税の繰り延べをする会計処理のことを指します。税法で規定されており、企業が国からの補助金を利用して固定資産を取得した際に用います。そのため、個人事業主の場合には使えません。本記事では、圧縮記帳の概要や圧縮記帳を活用するメリット…
詳しくみる個人事業主の美容師とは?メリットや年収、経費や確定申告などを解説
個人事業主の美容師とは、法人を設立せずに独立して事業を営む美容師の方を指します。個人事業主として活躍していくためには、独立後の働き方や税務手続き、収入の安定性などを考慮する必要があります。本記事では、個人事業主の美容師の働き方や年収、メリッ…
詳しくみる