- 更新日 : 2025年10月21日
個人事業主は家族旅行を経費にできる?出張や社員旅行のルールを解説
個人事業主にとって「家族旅行の費用は経費にできるのか?」という疑問は、節税や確定申告につながるテーマです。旅行が事業目的であれば一部費用の経費計上は可能ですが、私的な観光旅行であれば経費として認められません。家族が従業員や専従者として関与しているケースと、プライベートで同行するケースでは判断が分かれます。
本記事では、家族旅行費を経費とするための条件や注意点を解説します。
目次
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家族旅行の費用は経費にできる?【基本ルール】
個人事業主にとって、家族旅行の費用を経費として扱えるかどうかは重要なポイントです。その取り扱いには明確な線引きが存在し、事業との関連性がはっきりしている場合に限り経費計上が可能です。ここでは、前提となるルールを解説します。
家族旅行でも事業目的が明確なら経費にできる
家族旅行であっても、主な目的が事業活動である場合には経費計上が認められる可能性があります。たとえば、取引先との商談や展示会の視察、市場調査、業務に関連したセミナーや研修への参加などが旅程の中心であり、かつ家族も従業員や専従者として事業に参加しているのであれば、その旅費の一部または全部を必要経費として処理することが考えられます。
私的な旅行目的では経費として認められない
家族旅行の目的が観光や娯楽である場合には、経費としては認められません。国税庁のサイトでも「収入を得るために直接要した費用」でなければ必要経費とされないとされており、プライベートな支出を経費に含めることは税務上問題となります。旅行の実態がレジャー中心である場合、たとえ一部に業務的な要素があったとしても全体として私的支出と見なされ、経費計上は否認される可能性が高いのです。
参考:必要経費の知識|国税庁
家族が事業に関与している場合の旅費は経費にできる?
家族が事業に関わっている場合、その旅費を経費として扱えるかは、業務との関連性と実態により判断されます。ここでは、従業員としての同行と福利厚生(社員旅行)としての取り扱いに分けて解説します。
家族が従業員として同行する業務出張は経費計上が可能
家族が青色事業専従者や正式な従業員として事業に従事している場合、業務上の必要性がある出張に同行すれば、その旅費は必要経費として認められる可能性があります。たとえば個人事業主とその配偶者が共に展示会や取引先との商談に参加するケースでは、配偶者が専従者であり、業務遂行上その同行が必要であり、かつ費用が通常必要な範囲であると判断される場合に限り、交通費・宿泊費・日当などを経費に計上することが可能です。
重要なのは「なぜその家族の同行が必要だったのか」を説明できることです。現地で行った業務内容、サポート業務の具体例(資料準備、議事録作成、商談補助など)を記録し、日程や宿泊内容が業務のため必要であることを証明できるようにしましょう。旅程が観光中心と疑われるような構成であると、税務調査で否認されるリスクが高まります。
また、家族だけが出張に出かけ、事業主本人が同行していない場合は、その出張が業務上、必要であることを立証しなければ、経費にはなりません。
社員旅行としての取り扱いには厳格な条件がある
もう一つのケースとして、家族を含む慰安旅行(社員旅行)があります。従業員との親睦や福利厚生の一環として実施される旅行は、条件を満たすことで福利厚生費として経費計上が可能です。家族が専従者や従業員であるなら、この制度を活用する余地があります。
経費として認められるには、次の要件をすべて満たす必要があります。
- 従業員の過半数(50%以上)が参加していること
- 年1回程度の実施であること
- 旅行内容や費用が社会通念上妥当な範囲に収まっていること(高額・豪華すぎない)
- 旅行期間が4泊5日以内であること
しかし、個人事業主と配偶者(専従者)の2人で運営している事業で、両名が参加する慰安旅行を実施した場合、条件上は過半数参加(100%)を満たすものの、福利厚生費として認められず、実質的には私的旅行と認められます。この場合、旅行費用が必要経費とされるためには、他に従業員の同行があることや業務上必要な旅行であることを立証できなければなりません。また、以下のような場合は経費とは認められません。
- 実質的に家族サービスが目的となっている旅行
- 幼い子供など、事業に実質関与しない家族の費用
- 豪華な海外旅行や高額なリゾート宿泊など、社会通念を逸脱するもの
社員旅行の名目を使っていても、実態が家族だけの観光や娯楽中心である場合は、私的支出と判断されて経費としては否認される可能性があります。従業員である家族が同行する場合でも、常に「事業のための支出」であることを明確にし、記録と証拠の整備が求められます。
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家族がプライベートで同行する旅行費は経費にできる?
個人事業主が出張などで遠方に赴く際に、家族がプライベート目的で同行することがありますが、原則として、業務に関係しない同行者の費用は経費計上できません。ここでは、その理由と注意点について解説します。
家族分の旅費は業務に無関係であれば経費にできない
家族が事業に関与しておらず、私的な理由で旅行に同行する場合、その家族分の旅費や関連費用は事業に直接必要な支出とは認められません。たとえば、事業主が商談や現地調査のために出張する際に家族が同行しても、経費にできるのは事業主本人に係る交通費や宿泊費に限られます。家族の分は観光目的である以上、完全に私費扱いとなり、確定申告で経費に含めることはできません。
公私の支出を明確に分けて処理する必要がある
家族同行の旅行では、事業用支出と私的支出を明確に区分することが求められます。航空券や新幹線のチケットは、事業主と家族それぞれ個別に手配し、領収書も別々に管理するのがよいでしょう。宿泊費についても、二人部屋を利用した場合は一人部屋との差額分を家族の負担として切り分ける必要があります。現地での食費や移動費についても、家族の分は按分して除外するのが適切です。
また、旅程のうち業務に関係する部分がごく一部しか含まれていない場合、その旅行全体が私的と見なされ、経費として否認されるリスクがあります。観光旅行の一部に名刺交換などの軽微な用務を挟んでも、事業との関連性を証明するには不十分です。
子供の同行費用は原則として認められない
高校生以下の子供が同行するようなケースでは、業務への貢献が難しいとされ、旅費の経費計上は原則として認められません。たとえ家族旅行の一部に業務が含まれていたとしても、子供がその活動に関与していない限り、費用は全額私費とするのが妥当です。ただし介助など業務上特別な必要性がある場合は例外的に認められる可能性があります。
誰の費用が事業に必要だったのかを冷静に見極め、私的な分は自費で処理する姿勢が求められます。税務署の判断は厳格であり、公私混同が見られると他の経費まで調査対象となる可能性もあります。
家族分の旅費を経費計上する際の注意点
家族の旅行の費用が事業経費として含まれる場合、税務署にその正当性を説明できるだけの資料と記録が必要です。ここでは、注意点について解説します。
旅行目的と事業関連性を証明するための証拠を準備する
まず重要なのは、旅行の主目的が業務にあることを証明できる書類を整備することです。商談のアポイントメントが分かる予定表、セミナーの参加証、現地での会議資料や議事録、名刺交換の記録などが挙げられます。また、視察や研修の様子を写真や動画で記録しておけば、客観的に業務との関係を説明しやすくなります。
宿泊費や交通費などの領収書も必要ですが、単なる支出記録だけでは不十分です。可能な限り、誰が・どこで・何の目的で使った費用なのかを、日付や場所と共に明記したメモを添えて保管しましょう。入場券や施設のパンフレットなども、現地で何を行ったのかを補完する資料になります。
帳簿管理と税務調査への備えを怠らない
帳簿と証憑類の管理は、形式的な保存にとどまらず、内容の整合性と正当性が重視されます。経費計上時には、支出の内訳や背景を具体的に記録し、後日、調査等があった場合に税務署に対して合理的に説明できる状態を保つことが求められます。近年では電子帳簿保存法のもと、デジタル形式での領収書保管も可能となりましたが、保存期間は原則7年間となるため、データの紛失には注意が必要です。
家族分の費用が旅行費用に含まれている場合、税務調査では「なぜその家族が同行したのか」「旅程の何が業務なのか」といった点が詳細に問われることがあります。業務活動が旅程の中心であることや、費用が社会通念上妥当な範囲にあることを客観的に説明できる資料が求められます。
リスクのある経費処理は避け、専門家への相談も検討を
もし業務との関連が不明瞭な旅行費を無理に経費に含めた場合、税務調査で否認されるだけでなく、過少申告加算税や重加算税などのペナルティが課される可能性があります。仮装・隠蔽と判断された場合には、最大40%の重加算税が課されることもあり、リスクは大きくなります。
さらに一度疑念を持たれれば、過去数年分の申告までさかのぼって調査対象になる可能性もあるため、「グレーゾーンかもしれない」と感じる費用については、経費計上を避ける、あるいは税理士などの専門家に相談する姿勢が賢明です。
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旅費規程の整備・活用方法は?
家族を従業員や専従者として雇っている個人事業主が、出張費や家族同行の旅費を適切に経費処理するには、旅費規程を整備しておくことが有効です。ルール化された支給基準があれば、税務調査でも説明が容易になります。
旅費規程は「任意」だが整備するメリットは大きい
旅費規程とは、出張に関わる交通費、宿泊費、日当などの支給基準や範囲を明文化した社内規程です。法人では一般的に整備されていますが、個人事業主については、従業員(家族を含む)を雇っている場合は作成することが可能です。つまり、事業主本人には日当等の支給ができないため旅費規程は適用できませんが、従業員について旅費規程があれば、出張のたびに支給額を個別に決める必要がなくなり、支出に一貫性が生まれます。
旅費に日当を加える場合や、支出の根拠を示す必要がある場面では、旅費規程があるか否かで税務署の印象は大きく変わります。帳簿や領収書とともに、定められた旅費規程に沿って支出したと説明できれば、調査時にも合理的な根拠として扱われやすくなります。
家族が同行する出張を経費にする際の有効な支援資料となる
家族が専従者や従業員として業務に従事し、出張に同行する場合、その旅費を経費にするには「業務上の必要性」が説明できなければなりません。旅費規程を整備しておけば、「どのような条件で出張と認められ、どの範囲の費用が支給対象となるのか」が明示されているため、支出の正当性を補強できます。
たとえば、「片道100km以上の出張には日当〇円、宿泊費上限〇円、交通費は実費支給」といった基準を設けておけば、家族の旅費が恣意的ではないことが示しやすくなります。また、出張命令書や報告書と合わせて運用すれば、業務内容や成果を文書化できるため、税務署への対応もより明確になります。
作成時の注意点と運用ポイント
旅費規程を作成する際には、支給金額や対象範囲が「社会通念上妥当な水準」であることが求められます。過度に高額な日当や、実際の活動に見合わない支給内容は、経費として否認されるリスクを高めます。
また、規程が存在するだけでは不十分で、日常的に正しく運用されていることが大前提です。実務では、規程に沿って費用を支出し、その証拠として領収書や報告書を整備する必要があります。家族旅行を含むケースでは、業務の実態が伴っていることを証明するため、行動予定や記録をきちんと残すことが不可欠です。
具体的には「旅費規程」以外にも次のような書類を備えて運用することが大切です。
- 出張申請書
- 出張報告書
- 領収書等の証憑類
- 客観的証拠(訪問先からの依頼、名刺、予定表等)
旅費規程の整備は、家族旅行と業務出張の境界を明確にし、不要な税務リスクを避けるうえで有効な手段です。規程を活用して、公私の線引きを透明にする体制を構築しておきましょう。
家族の旅行費を経費にするには、事業との関係を明確にしよう
家族の同行のある業務旅行の費用を経費として確定申告に含めるには、「誰が・なぜ・どのように」旅行に関わったのかを明確にし、業務上必要な支出であると説明できることが前提となります。家族が従業員や専従者として関与している場合であっても、旅程や目的が観光中心であれば経費としては認められません。出張との混同を避けるためには、旅費規程を整備し、証拠書類や日報の記録を残すことが重要です。不明瞭な支出はリスクが高いため、専門家の助言を受けながら、適切な処理を心がけましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
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