• 更新日 : 2025年10月21日

【2025年税制改正】「48万円の壁」は古い?個人事業主が知るべき確定申告の基準を解説

2025年12月施行の税制改正により、所得税の基礎控除が48万円から58万円(最大95万円)へと引き上げられます。これにより、「所得48万円以下なら確定申告は不要」という従来の基準が見直され、確定申告の要否や扶養控除の判断基準にも影響を与えます。

本記事では、変更後の新しい基礎控除の仕組みや、個人事業主が知っておくべきポイント、申告した方が有利になるケースなどを解説します。

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個人事業主は所得48万円以下なら確定申告が不要?

これまで「所得48万円以下なら確定申告は必要ない」と認識されていた方は多いかもしれません。しかし、2025年12月から施行される税制改正により、基礎控除が引き上げられ、2025年分(令和7年分)の所得から適用されます。確定申告が不要となる所得の基準も変化します。ここでは新たな判断基準について解説します。

【2025年改正前】48万円以下なら確定申告は原則不要だった

従来、個人事業主の所得が基礎控除48万円をはじめとする「所得控除額以下」であれば、所得税額が生じず、原則として確定申告は不要とされてきました。これは、大部分の納税者に一律で適用される「基礎控除」の額が48万円だったためです。事業所得(売上-経費)が48万円以下でかつ他の所得と合算しても基礎控除内に収まる場合であれば、課税所得がゼロになり、所得税が発生しないことから、申告義務もないという扱いになっていました。

たとえば、年間の事業利益が30万円であれば、基礎控除48万円の範囲内に収まるため、課税されず確定申告も不要ということになります。この考え方は、長年にわたって「48万円の壁」として知られてきました。

【2025年12月以降】基礎控除が58万円(最大95万円)に拡大

令和7年(2025年)12月以降、税制改正により基礎控除の額が一律58万円に引き上げられるとともに、その中でも低所得者には最大95万円まで控除が適用される段階的な仕組みが導入されます。これにより、従来48万円を超えていたために申告が必要だったケースでも、申告不要になる可能性が出てきます。

合計所得金額が132万円以下であれば基礎控除は95万円となり、他の控除がない場合には所得が95万円以下であれば課税所得がゼロとなります。ただし、所得によっては令和7、8年のみ基礎控除額が大きくなるので要注意です。

【基礎控除の見直し】

合計所得金額改正後改正前
令和7、8年のみ令和9年以降
132万円以下95万円48万円
132万円超 336万円以下88万円58万円
336万円超 489万円以下68万円
489万円超 655万円以下63万円
655万円超2,350万円以下58万円

参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁

つまり、改正後は「48万円の壁」ではなく、「58万円~95万円の壁」に基準が移行するのです。

「確定申告不要」の基準が人によって変わるようになる

新しい制度では、控除額が「一律」ではなく、「所得に応じて変動する」という点も重要です。たとえば、合計所得金額が120万円の人であれば、基礎控除は58万円ではなく95万円に拡大されるため、事業所得が95万円まで非課税となる可能性があります。

その一方で、所得が多くなると控除額は縮小し、最終的には合計所得655万円を超えると一律58万円で固定されます。したがって、「自分がどの控除額に該当するのか」を判断することが、これまで以上に重要になります。

複数の所得がある場合は合計所得金額で判定される

注意すべき点として、事業所得以外にも給与所得配当所得などがある場合、すべての所得を合算した「合計所得金額」で判定されます。本業で給与所得があり、副業で事業所得がある場合は、その合計が基礎控除額を超えるかどうかで確定申告の要否が決まります。

たとえ副業の事業所得が30万円でも、給与所得と合わせた合計が基礎控除額を超えていれば、申告義務が発生するため注意が必要です。複数収入がある場合は、全体を見渡して判断しましょう。

わずかでも超過すれば申告義務が生じる点は変わらない

基礎控除額が拡大したとはいえ、所得がその額を1円でも超えた場合には、確定申告の義務が発生します。 たとえば、基礎控除が95万円で、事業所得が96万円なら、他の控除がない場合には1万円が課税対象となり、申告と納税が必要です。

この点は従来と変わらず、「課税所得があるかどうか」が申告義務の有無を決定します。制度が変わったからといって油断せず、自身の所得が控除内に収まっているか正確に確認することが求められます。

確定申告が不要でも、申告した方が得になるケースは?

2025年の税制改正により、基礎控除は従来の48万円から原則58万円へと引き上げられ、所得が少ない人ほど最大95万円まで拡大される特例措置も導入されます。このため、以前は申告義務があった人でも、改正後は所得税の確定申告が不要となるケースが増えると見込まれます。

しかし、確定申告の義務がない人であっても、自主的に申告を行うことで税金の還付を受けたり、将来の節税につながったりする場面があります。ここでは、申告が不要でも申告した方が有利になるケースを紹介します。

源泉徴収された税金を取り戻せる場合

フリーランスや個人事業主として仕事を請け負う際、報酬から所得税が源泉徴収されることがあります。執筆、講師、デザインなどの業務において、報酬の10.21%が源泉徴収されて支払われることが多くあります。

仮に年間100万円の報酬を得ていた場合、10万2,100円の税金が天引きされている計算です*。このとき、経費を差し引いた所得が基礎控除(58万~95万円)以下であれば、本来は所得税がかからないため、この源泉徴収分を全額還付してもらえる可能性があります。

*この場合、売上高としての報酬は税引き前の100万円となります。

ただし、還付を受けるには確定申告(還付申告)を行うことが前提です。所得税の申告義務がないからといって申告しないままでいると、差し引かれた税金はそのまま国に納められたままとなります。源泉徴収を受けた収入がある人は、申告して払いすぎた税金を取り戻せます。

参考:還付申告|国税庁

赤字(損失)を将来に繰り越す場合

青色申告をしている個人事業主が事業で赤字を出した場合、その損失は翌年以降最長3年間にわたって繰り越せます。これを純損失の繰越控除と呼びます。

2025年に30万円の赤字を出した場合、2026年に40万円の利益が出たときにその赤字を差し引いて、課税対象は10万円に減らせます。これにより、所得税の納税額が大幅に抑えられるメリットがあります。

ただし、この繰越控除を適用するためには、赤字が発生した年に確定申告を行っておくことが必須条件です。また、その損失を使い切るまでのすべての年分について、連続して確定申告書を提出しなければなりません。連続して申告していなければ、後から損失を申告することはできず、翌年以降の節税効果も得られません。

また、この制度は「青色申告」で適正に帳簿を備えている事業主に限られるため、白色申告では基本的に利用できません(例外あり)。将来的な利益を見越して、赤字の年も忘れずに申告することが賢明です。

所得税がなくても住民税の申告が必要なことがある

所得税の申告が不要な場合でも、住民税については別途申告が求められることがあります。これは、所得税の確定申告をしない限り、市区町村がその人の所得情報を把握できないためです。

多くの自治体では、所得税の申告書を提出していない人に対して、「住民税の申告書(市民税・県民税申告書)」の提出を求めています。たとえ所得税が非課税でも、住民税には「均等割(所得に関係なく一定額が課される部分)」があるため、所得の多少にかかわらず課税対象になる場合があります。

また、住民税の申告をしていないと、次のような不利益が生じることもあります。

  • 非課税証明書や課税証明書が取得できない
  • 国民健康保険料や年金保険料の軽減措置が受けられない、正しく計算されない
  • 各種助成制度の申請で必要な所得証明が発行されない

つまり、税金はかからなくても「所得がないこと」を証明するためには、申告が必要になる場面が多いということです。

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扶養親族や配偶者控除の所得要件は58万円以下に拡大

2025年の税制改正により、扶養控除や配偶者控除の対象となる「合計所得金額」の要件が48万円以下から58万円以下に緩和されました。これにより、個人事業主が扶養している配偶者や親族の収入が多少増えても控除対象から外れにくくなります。ここでは、その変更内容と個人事業主への影響を詳しく解説します。

所得要件が「48万円以下」から「58万円以下」に10万円拡大

従来、配偶者控除や扶養控除の対象となるためには、扶養される人(配偶者や親族)の「合計所得金額」が48万円以下である必要がありました。しかし、2025年分以降はこの条件が58万円以下へと引き上げられます。

たとえば、個人事業主の配偶者がパート勤務などで得る収入があった場合、これまでの制度では所得が48万円を超えると配偶者控除の適用外となっていましたが、改正後は所得58万円(最大95万円)までなら引き続き控除対象となります。

さらに、2025年の税制改正では給与所得控除も合わせて見直されます。したがって、合計所得金額が58万円というのは、給与収入の年収ベースでは次のとおり123万円となります。

合計所得58万円 = 給与収入(123万円)― 給与所得控除65万円 

【給与所得控除の見直し】

年間の給与収入給与所得控除
改正後改正前
162.5万円以下65万円55万円
162.5万円超 180万円以下収入×40% ― 10万円
180万円超 190万円以下収入×30% + 8万円

参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁、「所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)

従来、所得税が課税される基準として「103万円の壁」と言われてきましたが、改正により「123万円」から最大「160万円」の壁となります。最大となる「160万円の壁」は、基礎控除が48万円から95万円へと従来よりも47万円引き上げられることにより実現されます。

個人事業主が家族を扶養している場合の節税効果が持続

この改正は一見すると会社員世帯向けの内容に見えるかもしれませんが、扶養控除・配偶者控除を活用している個人事業主にとっても大きなメリットがあります。たとえば、事業主が世帯主であり、専業主婦(または主夫)の配偶者を扶養に入れている場合、配偶者が年間123万円から160万円程度までパートなどによる給与収入を得たとしても、引き続き所得税上の控除対象としてカウントできることになります。

また、扶養控除も同様に、16歳以上の親族(子ども、両親など)の所得要件が48万円以下から58万円以下に引き上げられたため、一定のアルバイト収入などがあっても扶養親族として認められる範囲が広がります。このことにより、家族の就労の幅を広げながらも、事業主自身の節税メリットを維持しやすくなるのです。

勤労学生控除など他の所得制限付き制度も緩和

あわせて、2025年の改正では基礎控除の改正に伴い、「勤労学生控除」の所得要件も見直され、従来の合計所得75万円以下から85万円以下に拡大されました。学生を扶養している個人事業主の家庭では、この変更により学業と収入の両立がしやすくなり、かつ税務上の不利益を被りにくくなる環境が整えられています。

これらの制度は、事業主本人の所得税率や納税額にも影響を与えるものです。世帯全体の収支や税金の設計に影響を与える制度のうち、どれが改正されたかをよく見極めましょう。家族を支える立場の個人事業主にとっても、今回のような改正は「間接的な減税効果」として受け取れるでしょう。

所得の少ない個人事業主こそ、最新の税制を正しく理解して活用を

2025年の税制改正により、確定申告が不要となる基準は「所得48万円以下」から「58万円以下〜最大95万円」へと変わります。この変化は、少額所得で活動する個人事業主にとって負担軽減となる一方で、申告することで得られる還付や節税のチャンスを見逃すリスクもはらんでいます。控除額の拡大、扶養や配偶者控除の緩和など、制度全体を正しく理解することで、確定申告が不要な場合でも有利な選択が可能になります。制度の変化を正しく捉え、自分にとって最適な行動をとることが、これからの事業運営において重要です。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例

データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。

ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

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