- 更新日 : 2025年3月5日
個人事業主が働けなくなった時の対策ガイド!制度・保険・収入確保まで
個人事業主は健康にも留意しなければなりません。病気やケガで働けなくなった場合、それが一過性のものであれば、回復後に再び事業を継続したいものです。この記事では、万が一個人事業主が働けなくなった場合の対策としてどのようなものがあるのかを解説します。
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目次
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個人事業主が働けなくなった時のリスクとは?
まずは、個人事業主が働けなくなった場合、どのようなことが起こるのか、個人事業主が働けなくなる原因としてどのようなものが考えられるのかについて紹介します。
傷病手当金を受け取れない
「傷病手当金」とは、協会けんぽや組合健保などの「健康保険制度」に含まれる手当です。
会社員などの健康保険の被保険者が病気やケガのために出勤できず、十分な給与が受けられない場合に本人や家族のために支給されます。
一方、個人事業主は主として「国民健康保険」に加入しており、国民健康保険には傷病手当金の制度がありません。したがって、傷病手当金は受け取れません。
ただし、新型コロナウイルス感染症に感染した場合など、過去においては一部の自治体で国民健康保険でも傷病手当金が支給される例がありました。
参考:新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給(国民健康保険)|東京都北区
参考:傷病手当金の支給(国民健康保険・後期高齢者医療加入者)|門真市
収入が途絶える
個人事業主が働けなくなった時のリスクとして、最も深刻なのは事業を運営できず事業収入が途絶えることです。預貯金や家族の協力などがあったり、病気やケガの回復が早期に期待できたりする場合にはまだよいのですが、そうでない場合は生活費が確保されません。社会保障等を含めた対応を考える必要が出てきます。
個人事業主が働けなくなる主な原因
個人事業主が働けなくなる主な原因には、身体的な要因、事業における要因、精神的な要因などが考えられます。さらに、これらが複雑に関係しあうこともあります。対応策として考えられることを補記すると、以下のとおりです。
- 身体的な要因:病気やケガ
(対策)健康診断や人間ドックの受診、食事への配慮、適度な運動など - 事業における要因:事業の失敗、災害など
(対策)事業計画や資金繰り表による経営管理、経営相談や税務相談などの支援活用、BCP(事業継続計画)の策定など - 精神的な要因:ストレスや人間関係など
(対策)ストレス解消法を見つけ、リフレッシュを心がける、家族や友人に相談する、同業者のコミュニティでの交流など
個人事業主が働けなくなった時にまずやること
病気やケガ、事業上の困難はいつ起こるかわかりません。そのような状態になった時、まずやることを洗い出しておきましょう。
関係者への連絡
事業において関係が近い人から順に、現況を報告します。スタッフや協力業者などが多い場合には、緊急の場合を想定した連絡網を作成しておくほか、メールで一斉配信等ができるように準備しておくのもよいでしょう。
正しい情報を早く共有することによって、事業主が働けない影響を小さくすることができます。
取引先との調整
売上先や仕入先との調整も非常に大切です。特に定期的に取引をしている先については、現況や解消時期等を明らかにしておく必要があります。
外注や代理の活用
同業者などで代替して業務を引き継ぐ先があれば、状況を説明して一時的に代わってもらえないかを打診するなど、取引先との関係が絶たれない方法を考えましょう。また、業務を外注に出すなどできる場合には、いくつかあたってみてください。さらに、代替設備等で対応できる場合には、調達方法を検討しましょう。
加入している保険の確認
万が一に備えて、保険の加入状況を確認しましょう。「保険一覧表」などを作成して、保険会社、保険の種類、契約日や保険期間、保険金額、特約などとともに、保険料の支払についても管理しておくと安心です。
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個人事業主が働けなくなった時の収入確保の手段
ここでは、個人事業主が働けなくなった場合の収入確保の手段をいくつか紹介します。これらの手段を組み合わせることで、収入確保が可能となることもあるため、現況に合わせて最適な方法を選択しましょう。
緊急用の貯蓄の取り崩し
定期預金や投資商品など、すぐ利用できるものを確保しておきましょう。そのための金融機関のカードや印鑑の所在も確認しておきましょう。緊急事態に対応するため、日ごろから事業運営に必要な資金、生活費を分けて貯蓄をしておくのがおすすめです。
民間の保険(就業不能保険や傷害保険など)
就業不能保険とは、病気やケガで働けなくなった時に、一定期間の収入補償をしてくれる保険です。精神疾患に対応する保険もあります。また、傷害保険や医療保険は、ケガによる入院や治療費を補填するもので、様々なタイプのものがあります。
これら民間の保険に無理のない範囲で加入すると、万が一に備えることができます。
小規模企業共済
小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者等のための退職金制度です。契約者は、一定の条件を満たせば低金利で貸付制度を利用することができます。一般貸付け、緊急経営安定貸付け、傷病災害時貸付け、福祉対応貸付けなど種々の貸付制度があります。
小規模企業共済については以下の記事でくわしく解説しているので合わせて参考にしてください。
国の障害年金
病気やケガで障害が残って働くことができなくなった場合、障害年金を受け取ることができます。障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金があります。病気やケガで初めて医師の診療を受けた時に、国民年金加入の場合は「障害基礎年金」、厚生年金加入の場合は「障害厚生年金」を請求することができます。障害の程度や加入状況によって受給額は異なります。
障害者手帳等(税金優遇や公共料金の割引)
障害者手帳は、一定の障害がある方に交付される手帳です。障害者手帳を持つことで、税金の優遇や公共料金の割引などのサービスを受けられる場合があります。例えば、所得税や住民税には障害者控除があります。また、自治体によっては水道料金の割引などがあります。
収入確保の手段というより、他の制度と組み合わせて節税や費用負担軽減のための手段として考えるのがよいでしょう。
労災保険(特別加入している一人親方など)
労災保険は、業務上の災害によって負傷したり病気になったりした場合に、治療費や休業補償などの給付を受けられる保険です。労災保険の特別加入制度においては、一人親方等が業務以外のケガ等でも給付を受けられる場合があります。
参考:特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)|厚生労働省
個人事業主が働けなかった年の確定申告
個人事業主が働けなくなった場合でも、支払うべき所得税がある場合には、確定申告を実施する必要があります。病気やケガが発生した時期にもよりますが、できるだけ早めに税務署に相談して、状況に合わせて利用可能な制度を確認しておきましょう。
例えば所得税等の国税においては、期限までに確定申告ができなくなった場合、申請により申告期限等を延長できる制度があります。また、国税を納期限までに納付するのが困難な場合には、申請により換価の猶予や納税の猶予(原則1年以内)が認められる場合があります。
参考:期限延長の対象となる主な手続について|国税庁
参考:No.9206 国税を期限内に納付できないとき|国税庁
参考:納税に関する総合案内|国税庁、「国税の猶予制度」
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個人事業主が長期で働けない場合はどうする?
個人事業主が長期間働けない、事業を継続できない場合は休業か廃業となります。休業・廃業にあたっては、税金や年金、社会保険料等をどのように支払うかなども考えなければなりません。税務署、市役所、年金事務所、商工会議所、税理士などいくつかの相談先にどのような方法があるかを確認しておきましょう。
事業を休業や廃業するにあたって、検討、確認すべきことは以下のとおりです。
休業の検討をすべきか
休業とは、一定期間事業を休むことです。再起に希望があれば、一定期間ののち事業が継続できるよう検討するのがよいでしょう。休業への不安や疑問があれば専門家に相談するなど、一人で考えずに客観的で冷静な判断を心がけましょう。取引先等には休業の連絡をするとともに、契約内容や今後の対応について協議しておくことも重要です。
従業員がいる場合には、休業期間中の給与や雇用契約などの検討が必要です。店舗や事務所を借りている場合には、休業期間中の契約を確認しておきましょう。許認可の必要がある業種の場合には、休業中の取り扱いについても確認しておきましょう。
廃業の検討をすべきか
廃業とは、個人事業を終了することです。廃業は、個人事業主にとっては非常に大きな決断です。後悔のない選択のために、様々な角度から検討し、専門家等にも相談するとよいでしょう。その上で、廃業時期はできるだけ周囲への影響が少ない時期を選ぶのがよいでしょう。
廃業する場合、事業を廃止した日から1カ月以内に「廃業届」を税務署へ提出します。青色申告者であった場合には、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」が必要です。消費税の課税事業者であれば「事業廃止届出書」、従業員がいれば「給与支払事務所等の廃止届出書」などの提出が必要となります。
これらだけではなく、従業員、取引先、契約先、許認可について廃業の手続きが必要です。
参考:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
参考:A1-10 所得税の青色申告の取りやめ手続|国税庁、
参考:A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出|国税庁
参考:D1-14 事業廃止届出手続|国税庁
個人事業主が働けなくなる前に備えること
万が一に備えて、個人事業主が備えておくことを紹介します。
事業用・生活用の貯蓄を確保する
まず、事業用資金と生活費のそれぞれに最低限必要となる貯蓄額を確保しましょう。事業資金は、休業しても発生する固定費を数カ月カバーできる金額を、生活費は最低3カ月分を目安に準備しておくと、やや安心です。
民間保険を検討する(就業不能保険や所得補償保険など)
就業不能保険や所得補償保険を利用して、働けなくなった場合の収入を補填することも考えましょう。ただし、現況に合わせて妥当な保障額や期間としましょう。
外注できる業務は委託する
外注できる業務は積極的に委託をすることで、万が一のことがあっても事業を継続できる場合があります。日ごろから、信頼できる外注先を見つけておきましょう。
会計・請求業務を自動化する
クラウド型会計ソフトなどにより事務作業を極力自動化することで、ある程度は事務作業が進むように備えましょう。
休業中でも収益が入る仕組みを作る
SNSの発信やYouTubeなど「ストック型のコンテンツ」を作成したり、投資などによる不労所得を得る手段を検討したりすることも重要です。 休業中でも一定収入が入る仕組みを持っている場合は、あまり慌てる必要はありません。
専門家や家族と連携する
税理士、社労士、中小企業診断士などの専門家や、家族や友人、特に同業者との連携も大切です。 万が一の時に、ある程度の事業の継続や生活のサポートが依頼できるかどうかは、日ごろの連携の強さに比例します。
個人事業主は、万が一の事態にも対応できるよう準備しよう!
会社員に比べて、個人事業主に万が一のことがあると周囲への影響は大きいです。逆に、万が一のことがあっても大きな影響のない個人事業主は、事業が順調とは言い難いということでしょう。
個人事業主本人の病気やケガだけでなく、家族や従業員に万が一のことがあっても大きな影響を受けることは多々あります。すべてカバーするような対応策はないにしても、最低限のカバーができるように、日ごろから対策を練っておくことが大切です。
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合わせて読みたいおすすめ資料
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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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