- 更新日 : 2025年2月25日
入院費用は確定申告で医療費控除の対象になる?
病気やケガにより、やむを得ず入院することがあります。本人だけでなく、一緒に暮らす家族が入院することもあります。そのような場合、入院費用は確定申告において医療費控除の対象になるのでしょうか?
この記事では、入院費用の医療費控除について解説します。
目次
入院費用は医療費控除の対象になる?
一般に、病気やケガの治療のため、一定期間医療機関に入ることを「入院」といいます。医療機関でも病床のないところには入院できません。また、入院から退院がその日のうちに終了するものは「日帰り入院」と呼ばれます。
これらの入院費用は医療費控除の対象となるのでしょうか?
医療費控除とは、
1月1日から12月31日の間に、
自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の医療費を支払った場合に
その支払った医療費が一定額を超えるとき
に適用されるものです。
つまり、該当する人が入院した場合、その入院費用は医療費控除を受けることができます。
しかしながら、医療費控除の対象となるものには要件がありますので、よく見ていきましょう。
そもそも医療費控除とは
医療費控除とは、次のような制度です。
- 1年間に支払った医療費合計が10万円以上
- 所得が200万円未満は、所得の5%超の場合
確定申告において医療費控除の手続きをすれば、
所得税の還付及び翌年度の住民税の減額が受けられる制度。
医療費控除で所得から控除される金額は、次のとおりです。
引用:医療費控除を受ける方へ|令和6年分 確定申告特集|国税庁
医療費控除は「所得控除」の一つですので、所得金額をマイナスする働きがあります。医療費控除を受けると結果として所得税が減り、さらに翌年度の住民税の計算においても同様に減額する結果があります。
所得税の税率は累進課税であるため、所得によって税率が大きくなります。したがって、医療費控除で軽減される税額については適用される税率によって異なります。
なお、医療費控除についての詳細は、こちらの記事をご参照ください。
入院費用の中で医療費控除の対象になるもの
入院の前の診察費用、入院時の交通費、そして退院時に精算する入院費用は基本的に医療費控除の対象です。
基本的に、「入院の対価として医師の診療等を受けるために直接必要となる費用で、かつ、通常必要なもの」が医療費控除の対象となります。請求明細の中に医療費控除の対象外となるものはないか、よく見てみましょう。
【医療費控除の対象となる例】
事例 | 備考 |
---|---|
付添人を頼んだときの付添料 | 療養上の世話を受けるための費用は医療費控除の対象になる |
入院中に病院で支給される食事 | 食事代は入院代に含まれるため医療費控除の対象になる 同様に入院費に含まれるシーツやまくらカバー等のクリーニング代も医療費控除の対象になる |
入退院時の電車代、バス代 | 患者を一人で通院させることが危険な場合、患者の通院費だけでなく付添人の交通費(通院のために通常必要なものに限る) |
自力で歩行困難な場合における入退院時のタクシー代 | 但し領収書等が必要 |
入院費用の中で医療費控除の対象外となるもの
国税庁のHPに、「入院に伴う一般的な費用が医療費控除の対象となるかどうか」の事例がありますので、まとめると次のようになります。
【医療費控除の対象外となる例】
事例 | 備考 |
---|---|
容姿の美化などの目的で行う整形手術に伴う入院の費用 | ホクロの除去費用などは医療費控除の対象にならない。 |
入院にあたって購入する洗面具などの身の回り品 | 医療費ではないため控除の対象にはならない。 |
医師や看護師に対するお礼 | 診療の対価ではないため控除の対象にはならない。 その他、親族に支払う療養上の世話の対価も控除の対象にはならない。 |
本人又は家族の依頼によって個室に入院した場合などのベッドの差額 | 医療費ではないため控除の対象にはならない。 |
出前やテイクアウトなどで支払った入院中の食事 | 出前や外食などは、控除の対象にはならない。 |
親族が付き添う場合のその親族の食事代 | 付添人の食事代で付添いの対価として、支払われるもの(一定のものに限る)は控除の対象となるが、親族は控除の対象外 |
パジャマ等のクリーニング代 | その他、入院時の散髪代や病室の花代、テレビなどのレンタル代などは控除の対象にはならない。 |
入退院時のマイカーのガソリン代など | 同様にマイカーの駐車場代、高速料金などは控除の対象にならない。 |
病院の都合によるホテルや旅館への宿泊費用 | ホテルや旅館の宿泊代は、控除の対象にならない。 |
なお、妊娠・出産に係る費用については、こちらの記事もご参照ください。
入院費用において、医療費控除を受けるための確定申告のやり方(方法)
入院に関して支払った費用について医療費控除を受けるには確定申告が必要です。
ここでは給与所得者が医療費控除を受けるための確定申告方法について説明しましょう。
- 確定申告書
- 医療費控除の明細書
- 源泉徴収票(確定申告書の転記のために必要です)
- 医療費の領収書やレシート(医療費のお知らせ)
- 入院に係る交通費の領収書やメモ、タクシーの領収書など
- 保険金、給付金などで補てんされた金額がわかるもの
手順1. 医療費のお知らせや領収書などを合計し、合計額が医療費控除の対象となるかを確認する。
源泉徴収票の下記赤枠の金額が200万円以上の場合は、合計額が10万円を超えていれば医療費控除の対象となります。
出典:[手続名]給与所得の源泉徴収票(同合計表)|国税庁
「【手書用】令和 年分 給与所得の源泉徴収票(令和5年分以後用)」を加工して作成
手順2. 源泉徴収票から確定申告書へ転記する。
確定申告書の「収入金額等」「所得金額等」「所得控除の額の合計額」「源泉徴収税額」の欄にそれぞれ源泉徴収票から下図のように転記します。
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
手順3. 医療費控除の明細書を作成し、確定申告書に所得控除額を記載する。
医療費の領収書やレシート、入院に係る交通費の領収書やメモ、タクシーの領収書などから医療費控除の明細書を作成します。
医療費控除の明細書は、こちらからダウンロードできます。
健保から送られる「医療費のお知らせ」などが、下記の「医療費通知」に該当するときは、医療費控除を受ける際の添付書類として利用できます。
医療費通知に該当する場合とは、次の事項の記載があるものです。
- 被保険者等の氏名
- 療養を受けた年月
- 療養を受けた者(後期高齢者医療広域連合からの場合を除く)
- 療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称
- 被保険者等が支払った医療費の額
- 保険者等の名称
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
手順4. 還付される税金や税金の受取場所(口座情報など)を記載し、確定申告書、医療費控除の明細書を税務署に提出する。
確定申告書は郵送やe-Taxでも提出できます。
入院費用において保険金を受け取る際の医療費控除の注意点
ここで、医療費控除における計算式をもう一度みてみましょう。
引用:医療費控除を受ける方へ|令和6年分 確定申告特集|国税庁
医療費控除の計算においては、保険金などで補てんされる金額を控除して計算することになります。したがって、保険金部分について医療費控除は適用されません。
また、支払った医療費を超える補てん金を受けた場合には医療費控除は受けられませんが、次の場合には、病気Bについては医療費控除を受けることが可能です。
- 病気Aに係る入院費用支払額(30万円)- 病気Aに係る保険金(45万円)
- 病気Bに係る入院費用支払額(20万円)- 病気Bに係る保険金(なし)
この場合、病気Aについては入院費用を15万円上回る保険金を受けましたが、病気Bからその上回る部分を差し引く必要はなく、病気Bは医療費控除の対象になります。
マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が知っておきたい"経費"のキホンや勘定科目を分かりやすく1つにまとめた「個人事業主が知っておくべき経費大辞典」を無料で用意しております。
税理士監修で、経費の勘定科目や具体例だけでなくワンポイントアドバイスもついているお得な1冊となっていますので、ぜひ手元に置きたい保存版としてご活用ください。
入院費用の医療費控除に関して理解を深め、正しく確定申告を行おう
入院すると、いろいろなことに影響があり生活費がかさんでしまうものです。
入院費用だけでなく、入院に係る交通費なども医療費控除の対象になりますので、こまめに領収書やメモをして、賢く節税しましょう。また、「医療費」の控除ですので、入院費用以外の医療費についても忘れずに合算してください。
はじめての確定申告もラクラク安心に済ませる方法
確定申告がはじめての方や、簿記の知識に不安がある方、確定申告書類の作成を効率よく行いたい方は、確定申告ソフトの使用がおすすめです。
個人事業主向け会計ソフトの「マネーフォワード クラウド確定申告」は、確定申告の必要書類が自動作成でき、Windows・Macはもちろん、専用アプリも提供しています。
①取引明細は自動で取得

銀行口座やカードを登録すると、取引明細を自動取得します。現金での支払いに関しても、家計簿のようなイメージで、日付や金額などを自分で入力することが可能です。
②仕訳の勘定科目を自動提案

自動取得した取引明細データや、受領後にアップロードした請求書・領収書などの情報をAIが判別し、仕訳を自動で入力します。学習すればするほど精度が上がり、日々の伝票入力が効率化されます。
③確定申告必要書類の自動作成機能

白色申告・青色申告の両方に対応しており、確定申告に必要な書類が自動で作成できます。また、マネーフォワード クラウド確定申告アプリで、スマホから直接の提出も可能です。印刷しての提出やe-Taxソフトでの提出にも対応しています。
追加料金なしで確定申告以外のサービスが使える
有料プラン(パーソナルミニ・パーソナル・パーソナルプラス)に登録すると、基本料金だけで請求書や契約のサービスを含む11サービスを利用することができます。日々の業務や作業をまとめて効率化しましょう。

合わせて読みたいおすすめ資料
マネーフォワード クラウド確定申告では、さまざまなお役立ち資料を用意しています。 無料登録するだけで資料がダウンロード可能なので、ぜひ読んでみてください。会社員の確定申告 丸わかりガイド

青色申告1から簡単ガイド

個人事業主が知っておくべき経費大辞典


マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例
データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
よくある質問
入院費用は医療費控除の対象となりますか?
自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の医療費を支払った場合、医療費が一定額を超えるときに医療費控除の対象となります。したがって、これらに該当すれば入院費用は医療費控除の対象となります。詳しくはこちらをご覧ください。
入院費用について、医療費控除の対象になるものとならないものの違いはなんですか?
基本的に、「入院の対価として医師の診療等を受けるために直接必要となる費用で、かつ、通常必要なもの」が医療費控除の対象となります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
確定申告の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
医療費控除の関連記事
新着記事
個人事業主は事業用口座を開設すべき?メリットや開設方法、注意点を解説
個人事業主は、事業用口座を開設することができます。事業用口座とは個人の事業用で、口座名義に屋号を入れるなどができる口座のことです。 この記事では、事業用口座の概要や事業用口座を開設するメリット・デメリット、開設するタイミング、開設方法などを…
詳しくみる個人事業主におすすめの店舗火災保険とは?保険料の相場や比較ポイントなど
店舗を構えて事業をしている個人事業主は、店舗火災保険に加入したほうがよいでしょう。なぜなら万が一、店舗が火災にあっても一定の補償を受けられるからです。 店舗火災保険は、保険会社によって保険料などが違います。今回は、店舗火災保険の保険料の相場…
詳しくみる個人事業主も社会保険適用拡大の対象!常時5人以上の個人事業所の対応を解説
社会保険の適用拡大により、個人事業主も社会保険加入が必要です。この記事を読めば、「個人事業主で社会保険が対象になる基準は?」「社会保険適用の事務手続きがわからない」という悩みを解決できます。本記事で、社会保険適用拡大の概要や、社会保険の仕組…
詳しくみる保険外交員はなぜ個人事業主?メリットや確定申告・経費についても解説
保険外交員とは、保険契約の勧誘や代理、契約後のサポートなどを行う職種です。本記事では、保険外交員の雇用形態をはじめ、個人事業主として働くメリットやデメリットについて解説します。 保険外交員にまつわるよくある質問と回答も取り上げるため、興味を…
詳しくみる個人事業主は圧縮記帳を使えない!国庫補助金等の総収入金額不算入について解説
圧縮記帳とは、課税の繰り延べをする会計処理のことを指します。税法で規定されており、企業が国からの補助金を利用して固定資産を取得した際に用います。そのため、個人事業主の場合には使えません。本記事では、圧縮記帳の概要や圧縮記帳を活用するメリット…
詳しくみる個人事業主の美容師とは?メリットや年収、経費や確定申告などを解説
個人事業主の美容師とは、法人を設立せずに独立して事業を営む美容師の方を指します。個人事業主として活躍していくためには、独立後の働き方や税務手続き、収入の安定性などを考慮する必要があります。本記事では、個人事業主の美容師の働き方や年収、メリッ…
詳しくみる