- 更新日 : 2025年9月19日
年収250万円の個人事業主が払う税金はいくら?負担の内訳や節税対策を解説
個人事業主として年収250万円を得ている場合、所得税や住民税などの税金はまず発生します。さらに、事業所得によっては個人事業税、場合によっては消費税の対象になることもあります。
本記事では、年収250万円の個人事業主が負担する税金の種類や税額の目安、青色申告・白色申告による違い、節税に有効な控除制度や共済制度の活用などを解説します。
目次
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年収250万の個人事業主が負担する税金の種類
年収250万円程度の個人事業主でも、納めるべき税金は複数存在します。基本となる所得税・住民税に加え、年収が増加した場合には個人事業税の対象となり、場合によっては消費税の対象になることもあります。
所得税が発生する条件
所得税は、個人事業主の年間所得に対して課される国税です。年間の事業収入から経費を差し引いた「事業所得」から、基礎控除や扶養控除、社会保険料控除など各種の所得控除を引いた「課税所得」に、5%〜45%の超過累進税率をかけ、控除額を差し引いて計算されます。
年収250万円の場合、控除後の課税所得が194万9,000円以下であれば5%、195万円~329万9,000円以下であれば10%(控除額9万7,500円)などが適用されます。さらに、所得税には2037年まで復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加算されます。
ただし、課税所得の金額は控除の活用によって大きく変わります。基礎控除は一律48万円で、所得が2,400万円以下なら誰でも適用可能です。なお、所得が2,400万円超~2,500万円以下の間では、段階的に基礎控除の金額が下がり、2,500万円超だと基礎控除を受けられなくなります。
加えて、国民年金・国民健康保険料などの支払い分も「社会保険料控除」として全額控除できます。
住民税は前年の所得に基づいて課税される
住民税は、都道府県民税・市町村民税からなる地方税で、前年の課税所得に対して課されます。
住民税には「所得割」と「均等割」の2つがあり、所得割は原則として全国的に標準税率である10%(都道府県民税4%+市町村民税6%)の税率、均等割は自治体によって変わりますが、定額でおおむね5,000円(都道府県1,000円、市町村3,000円、森林環境税1,000円)です。
所得税と同様に基礎控除(住民税では43万円)などが適用され、課税所得が抑えられる仕組みになっています。納税は基本的に6月以降に始まり、個人事業主は年4回(6月・8月・10月・翌年1月)に分けて納める普通徴収方式を用います。給与所得者のように天引きされることがないため、納付期限の管理をしっかり行うことが必要です。
個人事業税は所得が290万円を超えた場合のみ対象
個人事業税は、都道府県に納める地方税の一種で、法定業種に該当し事業所得が年間290万円を超えた場合に課されます。税率は業種によって異なり、3~5%となっています。したがって、経費を差し引いた事業所得が250万円であれば、事業主控除(290万円)に満たないため課税対象外です。
納税は通常年2回(8月末・11月末)に分けて行われ、確定申告書の内容をもとに都道府県税事務所が税額を決定し、納税通知書が郵送されます。所得が増え、290万円を超えるようになった場合には、支払い対象となることを見越して準備しておくと安心です。
消費税は免税事業者でも条件により課税される場合あり
消費税は、原則として前々年の課税売上高が1,000万円、または前年の1月1日から6月30日までの課税売上高が1,000万円を超えた場合に納税義務が発生します。年収250万円規模の個人事業主であれば、基準期間の課税売上高も少ない場合が多く、ほとんどの場合は免税事業者として扱われ、消費税の申告・納付義務はありません。
ただし、2023年10月から施行された「インボイス制度」の影響で、たとえ売上が1,000万円以下でも、取引先との関係上、免税事業者から課税事業者となり「適格請求書発行事業者」として登録した場合は、消費税の納税義務が発生します。
免税の特例が使えなくなるため、消費税額を収受した場合は、その分を申告して納めなければならなくなります。インボイス制度により、課税事業者としての登録は任意とはいえ、実質的に求められる場面もあるため、自身の取引先の意向を考慮しながら慎重に判断する必要があります。
年収250万の個人事業主が支払う所得税・住民税の目安
年収250万円程度の個人事業主が実際に負担する税金は、所得控除や申告方法によって異なります。青色申告特別控除を利用するかどうかで、課税所得や税額に差が生じるため、青色申告と白色申告それぞれのケースを想定して税負担の目安を確認しておきましょう。
青色申告をした場合の所得税・住民税
青色申告では、正規の帳簿づけと要件を満たすことで最大65万円の特別控除が受けられます。
年間の売上(年収)が250万円、必要経費が80万円で、青色申告(e-Taxによる65万円控除を利用)を行うケースで見てみましょう。国民年金や国民健康保険料などの社会保険料を年間で41万円支払っていると仮定します。
まず、所得税を計算します。事業所得は、売上250万円から経費80万円を引いた170万円です。ここから青色申告特別控除65万円、基礎控除48万円、社会保険料控除41万円の合計154万円を差し引くと、課税所得は16万円になります。この課税所得に対する所得税率は5%なので所得税は8,000円、さらに復興特別所得税(所得税額の2.1%)168円が加わり、所得税の年額目安は約8,100円です。
次に、住民税を計算します。住民税の計算では基礎控除が43万円になるなど、所得控除額が一部異なります。
同じ事業所得170万円から、青色申告特別控除65万円、基礎控除43万円、社会保険料控除41万円の合計149万円を引くと、課税所得は21万円です。
この21万円に対する所得割(標準税率10%)が2万1,000円、これに均等割(標準5,000円)が加わるため、住民税の年額目安は約2万6,000円となります。青色申告特別控除によって課税所得を圧縮することで、所得税・住民税の負担を抑えられる効果があります。
白色申告をした場合の所得税・住民税
青色申告と同じく、年間の売上(年収)が250万円、必要経費が80万円、社会保険料を年間41万円支払っているモデルケースで計算します。白色申告では、青色申告特別控除(最大65万円)が適用されないため、課税対象となる所得が大きくなります。
まず、所得税を計算します。事業所得170万円から基礎控除48万円、社会保険料控除41万円の合計89万円を差し引くと、課税所得は81万円になります。この課税所得に対する所得税率は5%なので所得税は4万500円、さらに復興特別所得税(所得税額の2.1%)850円が加わり、所得税の年額目安は約4万1,300円です。
次に、住民税を計算します。 事業所得170万円から、住民税用の所得控除(基礎控除43万円、社会保険料控除41万円)の合計84万円を引くと、課税所得は86万円です。この86万円に対する所得割(標準税率10%)が8万6,000円、これに均等割(標準5,000円)が加わるため、住民税の年額目安は約9万1,000円となります。
このモデルケースでは、青色申告(合計税額 約3万4,100円)と比較して、白色申告(合計税額 約13万2,300円)のほうが年間で約9万8,200円も税負担が重くなります。記帳の手間を考慮しても、青色申告がもたらす節税効果は大きいことがわかります。
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年収250万円の個人事業主と確定申告のポイント
年収が250万円程度であっても、個人事業主であれば原則として毎年確定申告を行う必要があります。ここでは、年収250万円の個人事業主が押さえておきたい確定申告の基本と注意点を整理します。
年収250万円でも確定申告は必要
個人事業主は会社員と異なり、所得が48万円(令和7年度からは58万円)を超える場合には基本的に確定申告をする必要があります。年収250万円の場合、必要経費がよほど大きくない限り、所得が48万円を下回ることは考えにくいため、確定申告は必須と考えるべきです。
申告しないまま放置すると、後に税務署から指摘を受け、延滞税や無申告加算税などのペナルティが発生するリスクもあるため、毎年の期限を守って適正に申告することが求められます。
青色申告と白色申告の違い
青色申告は、事前に届け出をして、所定の帳簿を備え一定の条件を満たすことで、最大65万円(簡易帳簿で10万円)の青色申告特別控除を受けられる申告方法です。申告書の提出や帳簿作成には手間がかかるものの、所得控除が増えることによる節税効果は高く、さらに赤字を翌年以降に繰り越せるなどのメリットもあります。一方、白色申告は特別な届け出が不要で簡単ですが、青色申告のようなメリットは受けられません。記帳義務については簡易的な帳簿でよいものの、白色申告者にも帳簿保存が求められます。
確定申告で意識したい注意点
確定申告では、必要経費を証明できるように領収書やレシート、請求書を保管・整理し、それに基づいて帳簿に正しく反映させることが基本です。経費をきちんと計上することで課税所得を減らせて、結果として納税額も軽減されます。
また、社会保険料や小規模企業共済掛金、生命保険料などの各種控除を最大限活用することも忘れてはなりません。さらに、青色申告を選ぶ場合は基本的に開業日から2か月以内に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。
確定申告期限(通常3月15日)に間に合わないと青色申告控除は10万円となってしまうため、期限管理は慎重に行う必要があります。年収250万円規模でも、制度を正しく活用することで負担する税金は大きく変わります。
年収250万円の個人事業主が活用できる節税対策
年収250万円規模の個人事業主でも、適切に節税対策を講じることで所得税・住民税の負担を減らすことが可能です。ここでは、無理なく実践できる節税対策を紹介します。
小規模企業共済を利用する
小規模企業共済は、個人事業主が廃業時や老後に備えて積み立てを行う制度で、掛金全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象になります。月額1万円(年間12万円)を拠出すれば、課税所得を12万円分減らせて、その分税額も軽減されます。
さらに、将来の共済金受け取り時にも税制優遇があるため、長期的な資産形成をしながら節税効果も得られます。なお、開業していれば加入条件を満たせるため、年収が多くなくても利用できます。
生命保険料控除や社会保険料控除を活用する
民間の生命保険や医療保険に加入している場合、保険料の一部を「生命保険料控除」として所得控除に含められます。生命保険料控除には「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の3つの枠があり、それぞれ年間支払保険料に応じて、所得税では旧制度であれば最大5万、新制度で最大4万円、3つの枠合計で最大12万円の所得控除が受けられます。
また、国民年金保険料、国民健康保険料は全額が社会保険料控除となるため、年間数十万円の所得控除となり、節税効果が高いです。
経費と家事按分を正しく処理する
事業に必要な支出はすべて経費として計上できるため、領収書やレシートを日頃から整理し、もれなく申告することが基本です。さらに、自宅の一部を事務所として使っている場合や、スマートフォン・インターネットなどを仕事と私用で併用している場合には、「家事按分」によって事業使用分を経費として処理できます。たとえば通信費について、事業での使用時間やデータ使用量など合理的な基準に基づき按分し、事業使用分を経費として処理できます。
仮に業務割合を50%と客観的に説明できる場合、その分を経費に計上することが可能です。
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負担する税金を減らすためにできることを確認しよう
年収250万円でも、所得税・住民税のほかに、年収の増加や条件によっては個人事業税や消費税の負担が発生します。青色申告を活用すれば課税所得を抑えて、実際の納税額を軽減できます。
さらに、小規模企業共済や各種控除制度、経費の適切な計上を行うことで節税効果は高まります。制度や申告の選択によって年間の税負担は大きく変わるため、自身の事業状況に応じて適切な対策をとっていきましょう。
 
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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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