• 更新日 : 2025年8月28日

賠償責任保険は必要?個人事業主のリスクと保険選びのポイントを解説

個人事業主にとって、万が一の事故やトラブルによって他人に損害を与えてしまった場合、その事故等がその個人事業主に起因するときは、その賠償責任をすべて自らが負う必要があります。賠償責任保険は、こうしたリスクに対応するための重要な保険であり、補償内容や保険料、税務処理まで理解しておくことが安心して事業を継続するための第一歩となります。

本記事では賠償責任保険の種類から選び方、経費と税務の扱いなどを解説しています。

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賠償責任保険とは

賠償責任保険は、業務中の偶然の事故などによって第三者に損害を与え、法律上の賠償責任を負ってしまった場合に、その損害賠償金や関連費用を補償してくれる損害保険の一つです。ここでは賠償責任保険の概要と、個人事業主にとっての必要性を解説します。

賠償責任保険は第三者への損害を補償する保険

賠償責任保険は、事業活動の中で発生した不測の事故により、他人の身体や財物に損害を与えた場合、その賠償金を補填する保険です。たとえば、仕事中に顧客を転倒させてしまった場合や、飲食店で提供した食品が原因で食中毒事故が発生した場合など、加害者として責任を問われるケースが対象となります。賠償リスクは業種を問わず起こりうるものであり、どんな事業者でも備えておく必要があります。賠償責任保険に加入しておけば、万一の際に多額の賠償金を自己負担せずに済み、事業と生活の両方を守ることができます。

個人事業主が加入する必要性

会社員であれば、業務中の事故や損害賠償は勤務先が対応しますが、個人事業主はすべての賠償責任を自身で負うことになります。つまり、取引先に損害を与えてしまった場合や、顧客とのトラブルで訴訟に発展した場合には、自分の資産から賠償金を支払う可能性も否定できません。日本損害保険協会の2025年3月の報告書によれば、中小企業の約73%がなんらかの損害保険に加入しています。。一方で、過去の日本損害保険協会の調査では、事故を経験した企業の約半数が「保険に入っておけばよかった」と後悔する結果も出ており、リスクへの備えの重要性がうかがえます。

経営リスクへの備えが不十分な状態では、万一の損害が事業継続に深刻な影響を与えかねません。賠償責任保険は、事業者にとって“万が一”を“日常”に変えないためのリスク対策といえます。

個人事業主が加入できる賠償責任保険の種類

賠償責任保険には、個人事業主の業種や業態に応じたさまざまな種類が用意されています。ここでは賠償責任保険の種類と特徴を紹介します。

一般的な事業者向け賠償責任保険

個人事業主全般におすすめできるのが、いわゆる「事業総合賠償責任保険」と呼ばれるものです。これは、事業活動中に発生した第三者への人身事故や物損事故などに伴う損害賠償責任を幅広く補償する保険です。事務所で来訪者が転倒してケガを負った場合や、業務中に取引先の備品を壊してしまったといった場面が補償対象となります。

この保険は、家庭用の個人賠償責任保険とは異なり、業務遂行中の賠償リスクや情報漏洩、名誉棄損、著作権侵害といったビジネス特有のトラブルも対象となる点が特徴です。加入することで、事業の信頼性向上にもつながり、対外的なリスク対策として有効に機能します。

PL保険(生産物賠償責任保険)

製造や販売、建設、メンテナンスなど「モノ」を扱う業種では、PL保険(生産物賠償責任保険)の加入が強く推奨されます。これは、自社が製造・販売した商品や完成した工事に欠陥があり、利用者にケガや財物の損壊をもたらした場合に、その損害賠償を補償する保険です。

日本では1995年に製造物責任法(PL法)が施行されており、過失がなくても製品の欠陥が原因であれば責任を問われる可能性があります。たとえば、電気機器の誤作動による火災や、食品の異物混入による健康被害などがこれに該当します。製品クレームが訴訟に発展するリスクもあるため、ものづくりや請負業を行う事業者にとっては、PL保険はほぼ必須の備えといえるでしょう。

特定リスクに対応する保険

事業内容によっては、業種特有のリスクに対応した保険への加入も検討すべきです。たとえば、IT事業者やコンサルタント業務を行う個人事業主であれば、情報漏洩や納品ミスによる損害が生じることがあります。このようなリスクに対応するのが、サイバー保険(情報漏えい賠償責任保険)です。顧客情報の流出やセキュリティ事故が社会的信頼に直結する業種にとって、有効な補償内容を含みます。

また、建設業や設備工事業を営む事業者には、請負業者賠償責任保険が適しています。これは施工ミスや作業中の事故による第三者への損害を補償するもので、現場仕事に伴う危険をカバーします。さらに、従業員を雇っている場合には、ハラスメントや不当解雇に対するトラブルに備える雇用慣行賠償責任保険も有効です。

法人向け保険でも加入できる場合がある

一部の賠償責任保険は「法人向け」とされていますが、実際には一定の条件を満たせば個人事業主でも加入が可能なケースは多いです。たとえば、年間売上や従業員数などが保険会社の基準に合致すれば、法人契約に準じた保険内容を個人で契約できることがあります。

保険の種類によっては、取り扱う代理店や保険会社によって引受条件が異なるため、事業内容を明確に伝えたうえで相談するとよいでしょう。個人事業主であることを理由に保険加入をあきらめる必要はなく、事業のリスクに応じた補償を整えることが、安定した経営への一歩となります。

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個人事業主が賠償責任保険を選ぶ際のポイント

賠償責任保険は、事業の内容やリスクに応じてさまざまな種類や補償内容が用意されています。ここでは、個人事業主が自分の事業に適した賠償責任保険を選ぶための基本的な視点を整理します。

事業リスクに合った補償内容を見極める

まず重視すべきは、自分の事業が抱えるリスクに合った補償内容であるかどうかです。事業の種類によって想定される事故や損害の性質は異なるため、それに適した補償内容でなければ、実際に事故が起きた際に保険金が支払われない可能性もあります。たとえば、IT業であれば情報漏えいリスク、飲食業であれば食中毒リスクなど、業種ごとのリスクを整理したうえで、必要な補償が網羅されているか確認しましょう。不要な補償が多すぎる保険を選んでしまうと、保険料が割高になってしまうため注意が必要です。

保険料と補償額のバランスを考える

保険選びでは、補償内容と保険料のバランスも重要な検討要素です。補償が充実している保険は魅力的ですが、保険料が高額になりすぎると事業経営の負担になります。開業直後や小規模事業の場合は、過剰な保険加入が資金繰りを圧迫しかねません。保険料は業種や売上、補償金額などによって月数千円から数万円以上まで幅があります。複数の保険会社から見積もりを取り、事業の規模に見合った適切な保険料かどうかを見極めましょう。

補償範囲と支払限度額を確認する

補償内容が事業リスクに適していても、実際に支払われる金額が不十分であれば意味がありません。補償範囲がどこまで及ぶか、支払限度額がいくらに設定されているかは、必ずチェックすべき項目です。たとえば、1事故あたりの限度額が1,000万円で足りるのか、無制限が望ましいのかは、取引先の規模や業務内容によって判断する必要があります。賠償金が高額化する可能性がある事業であれば、限度額が高めの保険を選ぶと安心です。

付帯サービスや特約の有無を確認する

保険には基本の補償に加えて、事故時のサポートやリスク対策に役立つ付帯サービスがついている場合があります。被害者との示談交渉を保険会社が代行してくれるサービスは、精神的な負担を大きく軽減します。また、弁護士への初期相談や、事故対応のアドバイスが受けられるサービスもあります。さらに、顧客情報漏えい時の対応支援や、リスク診断ツールなどを提供する保険会社も増えています。こうしたサービスの内容や質は保険会社によって異なるため、保険料だけでなく、サポート体制の違いも比較して選ぶとより安心です。

保険料は経費になる?個人事業主が押さえておきたい計上ルール

個人事業主にとって保険料の支出は、事業経費として計上できるかどうかが確定申告に大きく影響します。ここでは、保険料が必要経費となるケースとならないケースを分けて解説します。

保険料が経費として認められるケース

賠償責任保険など損害保険の保険料が経費として認められるのは、その保険契約が事業活動に直接関係している場合です。たとえば、製造業者が加入するPL保険(生産物賠償責任保険)や、事業中の事故に備えるための事業者向け賠償責任保険、また事務所や工場にかける火災保険などが該当します。これらは明確に事業のリスクに対応するものであり、青色申告白色申告を問わず、必要経費として問題なく計上できます。

また、自宅の一部を事務所として使用している場合など、事業と私生活を兼ねる資産にかけた保険でも、「事業用の割合」に応じて按分すれば、事業経費として計上できます。たとえば、自宅の床面積の50%を業務に使用しているなら、火災保険料の50%を経費に算入し、残りの50%は「事業主貸」などの勘定で私的支出として処理することになります。このような按分処理を行う際は、使用割合の根拠(面積、時間、用途など)を明確にしておくことが求められます。

保険料が経費として認められないケース

一方で、明らかに事業とは関係のない損害保険の保険料については、必要経費として扱うことはできません。具体的には、個人が自宅のみに加入している火災保険や、完全なプライベート用途で使用している自家用車の任意保険、レジャー目的で加入する旅行保険や個人傷害保険などが挙げられます。これらは事業活動に直接関係しない支出であるため、確定申告上は経費から除外しなければなりません。

ただし、地震保険や生命保険など一部の保険料は、「所得控除」として別途控除の対象になる場合があります。たとえば、自宅にかけた地震保険料は「地震保険料控除」の対象となり、所得税で最高5万円、住民税で最高2.5万円が所得から差し引かれます。

このようなケースでは、事業経費としては計上できないものの、所得控除としての恩恵を受けられます。

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保険金を受け取った場合の税務処理と課税の考え方

賠償責任保険から保険金を受け取った場合、それが課税対象となるかどうかは使途によって異なります。保険金全額が非課税となるわけではないため、確定申告において正確な処理が求められます。ここでは、課税対象となるケースと非課税として扱われるケースについて解説します。

非課税となる保険金の扱い

基本的に、事業における災害や事故によって受けた損害に対して支払われる保険金は、所得税の課税対象とはなりません。これは「資産の損失補填」とみなされるためで、事業所得として収入に含める必要はありません。たとえば、事務所や店舗が火災・盗難などの被害に遭い、その損害に対して保険金が支払われた場合は、非課税所得として「事業主借」などの勘定科目で処理することになります。

課税対象となる保険金の扱い

一方、保険金の使途が「収益の補償」や「必要経費の補填」に該当する場合は、課税対象となります。たとえば、事故によって営業ができずに収入が減少したことに対する補填や、仮店舗の賃料など本来事業経費となる費用を保険金で補った場合、その金額は事業収入として認識され、所得税の課税対象となります。

参考:No.2201 個人事業者が事業所得の必要経費を補てんするための損害賠償金を受け取ったとき|国税庁

このように、保険金の課税可否は「何を補うための保険金か」によって判断されます。申告漏れや誤処理を防ぐためにも、保険金の受取内容が資産損失の補填なのか、経費や収益の補償なのかを明確に区別し、帳簿処理や申告に反映させることが重要です。税務署や税理士に相談しながら、適切な処理を行いましょう。

賠償責任保険は個人事業主の経営を守る大切な備え

賠償責任保険は、万が一の事故やトラブルから個人事業主の事業と財産を守るための手段です。補償内容や保険料、税務上の扱いなどを正しく理解し、自分の事業に合った保険を選ぶことが、安定した経営の土台となります。経費としての計上や保険金の税務処理にも注意を払いながら、リスクに備えた計画的な保険活用を進めていきましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例

データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。

ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

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