• 更新日 : 2025年8月28日

個人事業主がNISAで資産形成するには?メリット・注意点・iDeCoとの使い分けを解説

個人事業主として働く方にとって、将来の生活資金や老後の備えは自身で準備する必要があります。税制優遇を受けながら効率的に資産を形成する手段として注目されているのが「NISA(少額投資非課税制度)」です。運用益が非課税になるこの制度は、少額から始められる手軽さと柔軟な資金管理が魅力です。

本記事では、NISAの基本的な仕組みや個人事業主にとってのメリットや注意点、iDeCoとの違いや口座開設の手順を解説します。

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NISAの基本

NISA(ニーサ)は、投資の利益に対する税金が非課税になる制度で、個人投資家や個人事業主の資産形成に役立ちます。ここでは、NISAの仕組みや種類、非課税となる理由について詳しく解説します。

NISAの概要

NISA(少額投資非課税制度)は、株式や投資信託といった金融商品から得られる利益にかかる税金を免除する制度です。通常、これらの運用益には20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の税率で課税されますが、NISA口座で運用した場合、その利益は非課税となります。たとえば、課税口座で10万円の利益が出ると約2万円の税金が差し引かれますが、NISA口座で同額の利益が出た場合、税金は発生せず、利益を全額受け取れます。この仕組みにより、資産形成において税金による目減りを防ぐことができ、退職金制度のない個人事業主にとっては有効な運用手段となります。

NISAの制度の変遷

NISAにはこれまで、一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAという3つの制度がありました。一般NISAは年間120万円まで投資でき、最長5年間非課税。つみたてNISAは年間40万円まで、最長20年間非課税という内容でした。ジュニアNISAは未成年者を対象とした制度です。しかし、2024年からNISA制度は一本化され、「新NISA」として再構築されました。これにより、これまでの複数制度は2023年末で新規の投資が終了し、新たな非課税制度が導入されています。

非課税の仕組み

NISAが非課税となるのは、国が個人の資産形成を後押しするためです。特定口座など通常の投資口座では、譲渡益や配当金に税金がかかりますが、NISA口座ではそれらの課税が免除されます。NISAの非課税という仕組みには、個人の長期的な資産形成を促すという狙いがあります。「つみたて投資枠」では、金融庁が定めた長期・積立・分散投資に適した基準を満たす投資信託等が対象となります。一方、「成長投資枠」では、一部の除外銘柄を除き、より幅広い上場株式や投資信託にも投資が可能です。

自営業者のように、年金や福利厚生が限られる立場にある人にとって、税制面での恩恵が大きい制度といえるでしょう。

個人事業主がNISAを利用するメリット

NISAは非課税で投資ができる制度として広く知られていますが、個人事業主にとって多くの利点があります。ここでは、個人事業主がNISAを活用することによって得られるメリットについて解説します。

運用益非課税で税負担が軽減される

NISAを利用する最大のメリットは、投資によって得られた利益が非課税となる点です。通常、株式や投資信託などの運用益には20.315%の税金が課されます。たとえば100万円の利益が出た場合、約20万円が税金として差し引かれ、実際の手取りは80万円となります。しかしNISA口座で得た利益は非課税のため、同じ100万円の利益がそのまま全額手元に残ります。これは、投資効率を大幅に高めることにつながり、長期的に見れば資産の伸びに大きな差が生じます。個人事業主は事業所得に対しても税金を負担しているため、NISAを通じて税制上の優遇を受けることは、資金管理の観点からも有効です。

長期の資産形成に適している

NISAは「長期・積立・分散」といった資産形成の基本に則った制度であり、2024年からは非課税保有期間が無期限となりました。これにより、投資を長期間にわたって非課税で継続できるため、複利効果を十分に活かした運用が可能になります。個人事業主は公的年金や退職金が会社員と比べて少ない傾向にあり、老後資金を自らの努力で準備する必要があります。その点、NISAは毎月少額ずつ積み立てながら将来のための資産を築くのに適した制度です。運用益が非課税であることは、再投資時にもそのまま利益を回せることを意味し、時間を味方につけた効率的な資産形成が実現します。若いうちから始めることで、大きな備えとなる可能性を秘めています。

必要なときに引き出せる高い柔軟性

事業を営む上では、設備投資や資金繰りの都合で急に現金が必要になることもあります。その際に役立つのが、NISAの高い資金流動性です。iDeCoとは異なり、NISAは原則としていつでも売却・現金化が可能であり、必要なときに資産を取り崩せます。NISA口座内での売却益には税金がかかりません。さらに、NISA口座内の商品を売却した場合、その商品の簿価(取得価額)に相当する生涯非課税枠が翌年以降に復活し、再利用できます。これにより、生涯にわたる非課税投資枠1,800万円を柔軟に活用することが可能です。(ただし、売却した年にその枠を再利用することはできません。)

このように、NISAは将来に備えながら、必要な場面では柔軟に現金化できるという二面性を持っています。個人事業主にとって、資金の使い勝手が良いことは大きな利点であり、事業と資産運用を両立するための選択肢として有用です。

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個人事業主がNISAを利用する際の注意点

NISAは非課税で投資ができるという大きな利点を持ちますが、制度の性質上、あらかじめ理解しておくべき注意点もあります。ここでは、制度を活用する際に留意すべき3つのポイントについて詳しく解説します。

NISAへの投資資金は経費計上できない

NISA口座を通じて投資する資金は、税務上の「必要経費」とは認められません。つまり、NISAへの投資は事業にかかる支出ではなく、あくまで個人の資産形成を目的とした「私的な投資」にあたるためです。そのため、たとえ事業用の口座から投資資金を捻出していたとしても、その金額を所得税の計算において経費として差し引くことはできません。また、iDeCoと異なり、NISAには拠出時の所得控除という仕組みもありません。NISAの税制優遇は、あくまで投資から得た利益が非課税になるという一点に限られているため、節税目的で利用する場合はこの点を誤解しないようにする必要があります。事業の収支とは切り離して、完全に「個人の資産運用」として活用するのが正しい使い方です。

損失が出ても損益通算できない

NISA口座で運用した結果、もし損失が出たとしても、その損失は他の所得と相殺(損益通算)ができません。これはNISA口座内の取引が非課税であることに起因します。税務上、NISA口座の損失は「存在しなかったもの」として扱われるため、課税口座で得た利益と相殺することも、翌年以降への損失繰越も行えません。一方、通常の課税口座(特定口座や一般口座)であれば、損失は確定申告によって他の株式等の利益と通算したり、3年間にわたって繰り越したりすることが可能です。この違いを理解しておかないと、NISAの中で損が出た場合にかえって不利になることもあります。

投資リスクと元本割れの可能性に留意する

NISAは非課税という大きな利点がある一方で、投資商品である以上、元本保証はされていません。つまり、運用次第では元本を下回るリスクも存在します。株式など値動きの大きい商品に投資する場合、相場の変動によって大きく評価額が下がることもあります。個人事業主の場合、生活費や事業運営資金とのバランスを考えずに無理な投資をすると、事業活動に支障を来す恐れもあります。NISAは確かに魅力的な制度ですが、そのメリットを最大限に活かすためには、リスク許容度を考慮し、余裕資金の範囲内で行うことが大切です。長期運用を前提としつつも、定期的にポートフォリオの状況を確認し、必要に応じてリスク分散や資産の見直しを行う姿勢が求められます。

NISAと確定申告

ここでは、個人事業主がNISAを利用する際に知っておくべき確定申告との関係について解説します。

NISAの利益は確定申告が不要

NISA口座で得られた利益については、基本的に確定申告の必要はありません。これはNISAの大きな特長のひとつであり、株式や投資信託などから得られる配当金や売却益が非課税となるため、そもそも納税義務が発生しないからです。国税庁のQ&Aでも、非課税口座内で得た譲渡益や配当については申告不要であると明記されています。(※)個人事業主は事業所得などの申告が必要であるため、投資による利益についても気にすることが多いかもしれませんが、NISAに関しては原則として税務上の手続きを気にせずに利用できます。

このため、申告業務の煩雑さを軽減したい自営業者にとっては、扱いやすい資産形成制度といえるでしょう。税務の面から見ても、NISAの非課税効果は手続きのシンプルさを含めた大きな利点となります。

※出典:国税庁「NISA及びつみたてNISAの手続に関するQ&A

確定申告が必要となる例外ケース

ただし、NISAに関していくつかの例外に該当する場合は、確定申告が必要になることがあります。代表的なケースの一つが、配当金の受け取り方法による違いです。NISA口座で保有する株式などの配当金を「株式数比例配分方式」で受け取れば非課税となりますが、それ以外の方法、たとえば銀行口座で受け取る「登録配当金受領口座方式」や、郵便局で受け取る「配当金領収証方式」を設定した場合、その配当金は課税対象となってしまいます。この場合は源泉徴収が行われた上で、配当控除などの適用を受けるために確定申告が必要となる可能性があります。

もう一つ注意すべき例外は、旧NISA制度における非課税期間終了後の取り扱いです。たとえば5年または20年の非課税期間が終了し、その資産が課税口座に移管された後に売却益が発生した場合、その利益は課税対象となります。ただし、確定申告の要否は移管先の口座によって異なります。例えば、特定口座(源泉徴収あり)に移管していれば、利益に対する税金は源泉徴収されるため原則として申告は不要です。一方で、一般口座や特定口座(源泉徴収なし)で利益が出た場合は、ご自身で確定申告が必要となります。こうした特殊なケースでは、NISAであっても申告が求められることがあるため、制度の仕組みと運用方法をあらかじめ確認しておきましょう。

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個人事業主はNISAとiDeCoをどう使い分けるべき?

個人事業主が将来に備えて資産形成を行う場合、NISAとiDeCoの活用は有力な選択肢です。どちらも税制優遇が受けられる制度ですが、それぞれの仕組みや目的には違いがあります。ここでは、両者の特徴を整理し、どのように使い分けるのが効果的か解説します。

iDeCoは所得控除による節税効果が大きい

iDeCoは、拠出した掛金が全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、確定申告で所得税・住民税が軽減されます。個人事業主は月額6.8万円(年間81.6万円)まで拠出可能(※)で、節税額は所得に応じて数十万円に達することもあります。さらに、運用益も非課税で再投資が可能です。ただし、60歳まで原則引き出しができないため、途中で資金を使えない点が最大の制約となります。老後資金の準備としては有効ですが、中途解約できない特性から、流動性を求める用途には不向きです。

※2025年度の税制改正で月額7.5万円(年間90万円)に引上げが決定しています。(施行時期未定)

NISAは自由度の高さが強み

NISAは所得控除こそありませんが、運用益が非課税である点は共通しています。特に新NISAでは非課税期間が無期限となり、より長期の投資に対応できるようになりました。iDeCoと違い、いつでも資産を売却して現金化できるため、教育資金や住宅資金、あるいは急な事業資金にも柔軟に対応できます。中長期の資産形成を目的とするのであれば、NISAの使い勝手の良さは大きな魅力です。また、投資スタイルに応じて積立・一括どちらでも利用可能な点も特徴です。

両方を併用して目的別に使い分けるのがベスト

NISAとiDeCoは併用可能であり、目的に応じて使い分けることで資産形成の効率を高められます。たとえば、iDeCoで老後資金を積み立てつつ、NISAで中期的な資金需要に備えるという使い方です。iDeCoは節税効果を重視する人、NISAは柔軟な運用を求める人に適しています。生活費に余裕がない場合はNISAを優先、所得が多く節税効果を得たい場合はiDeCoを優先するなど、自身の状況に応じて最適な活用方法を選ぶことが重要です。

このように、NISAとiDeCoはそれぞれに明確なメリットがあり、両者をバランス良く活用することが、将来にわたって安定した資産形成につながります。ライフプランに応じた柔軟な選択を心がけましょう。

個人事業主がNISAを始めるまでの流れ

個人事業主でも、一般の会社員と同様にNISA口座を利用できます。特別な制限はなく、通常の手続きで口座開設が可能です。ここでは、NISAを始めるまでの流れを解説します。

(1) 金融機関を選ぶ

まずはNISA口座を開設する金融機関を選びます。NISA口座は、同一年においては一人一つの金融機関でしか利用できません。年単位で金融機関を変更することは可能ですが、手続きに時間がかかる場合もあるため、長期的な視点で利用しやすい金融機関を慎重に選ぶことが大切です。

ネット証券、銀行、対面型の証券会社などがあり、それぞれ取扱商品、手数料、サービスに違いがあります。個人事業主に人気なのはネット証券で、手数料の安さやスマホでの取引のしやすさが魅力です。長期で付き合うことになるため、取引画面の見やすさやサポート体制も比較検討しましょう。

(2) 証券口座を開設する

NISA口座は証券総合口座と連動させる必要があるため、まずその金融機関で証券口座を開設します。NISAの申し込みと同時に行うことも可能です。証券口座の開設はオンラインで完結できることが多く、申込フォームに氏名・住所・職業などの基本情報を入力すれば、5〜10分ほどで手続きが完了します。開業して間もない個人事業主でも問題なく開設できます。

(3) 必要書類を提出する

口座開設にあたっては、本人確認書類とマイナンバー確認書類の提出が必要です。以前は税務署への手続きが必要でしたが、現在は制度が簡素化されており、金融機関が税務署への重複口座開設の有無を確認するため、利用者自身で特別な書類を取り寄せる必要はありません。

(4) NISA口座開設を待つ

書類提出後、税務署により「その年に他の金融機関でNISA口座を開設していないか」の確認が行われます。問題がなければ数週間でNISA口座が開設されます。時期や混雑状況によっては3〜4週間かかることもあるため、早めに申し込みを済ませておくと安心です。口座開設が完了すると、取引画面上でNISA枠の状況や対象商品が確認できるようになります。

(5) 商品を選んで投資を始める

NISA口座が開設されたら、いよいよ投資のスタートです。新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があり、投資信託やETF、個別株などが選べます。初心者には、新NISAの「つみたて投資枠」の対象となっているインデックスファンドが扱いやすく、長期・積立・分散投資に向いています。

毎月一定額を積み立てる設定にすれば、価格変動のリスクを抑える効果もあります。NISAは長く続けることで非課税メリットが最大化される制度なので、焦らずコツコツと運用していく姿勢が大切です。定期的に資産状況を確認し、必要に応じてポートフォリオを見直しましょう。

NISAは個人事業主の資産形成を後押しする制度

NISAは、投資による利益が非課税になることで、個人事業主の資産形成を大きく後押ししてくれる制度です。自由に引き出せる柔軟性や、確定申告の手間がほとんどない点も利点となります。事業と並行して無理のない形で将来に備えるには、こうした税制優遇をうまく活用することが効果的です。iDeCoとの違いを理解し、自身の資金計画や生活状況に合わせた使い方を意識することで、長期的な安心につながる資産づくりが可能になります。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例

データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。

ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

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