• 更新日 : 2025年2月14日

特定口座とは?源泉徴収あり・源泉徴収なしの違いや確定申告との関係を解説

株式の取得や譲渡、配当金の受け取りをはじめ、さまざまな金融商品を取り扱える証券会社の口座には、特定口座、一般口座、NISA口座という種類があります。

この記事では、特定口座の種類(源泉徴収あり・源泉徴収なし)や確定申告との関係、特定口座年間取引報告書、損益通算などについて詳しく解説します。

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特定口座とは

証券会社で開設できる特定口座とは、申告分離課税の対象となる上場株式等の譲渡損益を管理できる口座のことです。納税者の申告・納税手続きの負担を軽減するために設けられています。特定口座で管理できるものは、申告分離課税の対象になるもののうち、以下のような特定の金融商品です。

特定口座で管理できる金融商品
  • 上場株式
  • 上場新株予約権(将来の株式取得の権利)
  • 上場新株予約権付社債
  • 上場ETF(上場投資信託)、上場ETN(上場投資証券)
  • 上場REIT(上場不動産投資信託)
  • 外国市場の株式や新株予約権
  • 国債、地方債、外国国債などの公社債
  • 公募株式投信
  • 公募公社債投信 など

特定口座の種類

特定口座は、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類に分かれます。以下では、それぞれの特定口座の特徴と、特定口座以外の口座として利用できる「一般口座」「NISA口座」について解説します。

源泉徴収ありの特定口座

源泉徴収ありの特定口座は、上場株式等を売買して損益が発生すると、その取引(または一定期間ごと)に所得税や復興特別所得税、住民税が証券会社によって源泉徴収・還付される仕組みです。源泉徴収ありの特定口座では、証券会社が投資家に代わって納税を行うため、確定申告が不要となるのが大きな特徴です。

源泉徴収ありの特定口座では、条件を満たすことで上場株式の配当金や公社債の利子なども同じ口座で受け取り、損益通算を行うことができます。ただし、配当金を特定口座で受け取るためには「株式数比例配分方式」などの手続きを取る必要があるため、利用する際は証券会社に確認しましょう。

源泉徴収なしの特定口座

源泉徴収なしの特定口座では、取引時に税金が源泉徴収されないため、投資家自らが年間の損益を確定申告する必要があります。ただし、証券会社が発行する「特定口座年間取引報告書」を使えば、取引明細の集計や計算を簡単に行えるため、一般口座と比べると確定申告の手間が大幅に軽減されます。

源泉徴収ありの特定口座と違って確定申告は必要ですが、書類上の集計が簡単という意味で「簡易申告口座」と呼ばれることもあります。

特定口座以外の口座

上場株式等を管理する口座には、特定口座以外に「一般口座」や「NISA口座」があります。

一般口座

一般口座は、特定口座では扱えない非上場株式や先物取引オプション取引、FX取引などの損益をまとめて管理できる口座です。多様な金融商品を取り扱えますが、取引の度に源泉徴収は行われません。そのため、投資家自身で年間取引を集計し、確定申告を行う必要があります。また、特定口座のように「特定口座年間取引報告書」は発行されないため、手続きはやや複雑になります。

一般口座の確定申告について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

NISA口座

NISA(少額投資非課税制度)口座とは、株式や投資信託などで得た利益が一定額まで非課税となる税制優遇制度を利用するための口座です。

通常、上場株式等の譲渡益や配当金には税金がかかりますが、NISA口座内での取引や受取配当金は、一定の投資枠内で非課税になります。制度は随時改正が行われるため、最新の適用期間や非課税投資枠については事前に確認しておきましょう。

NISA口座の確定申告について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

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特定口座の選び方

特定口座は「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類から選択する必要があり、1つ証券会社につき1つの口座しか開設できません(複数の証券会社で口座を開設することは可能です)。

ここでは、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」メリット・デメリットと、選択する際のポイントをまとめました。

源泉徴収メリットデメリット
あり
  • 損失の繰越控除や他口座との損益通算を行うには、確定申告が必要
  • 確定申告が不要な20万円以下の所得も、源泉徴収の対象となる
なし
  • 確定申告が不要な20万円以下の所得は源泉徴収されず、余計な税金を支払う必要がない
  • 配偶者控除や扶養控除などの判定では、譲渡益を合計所得に含めなければならない
  • 毎年の確定申告が必要

確定申告の手続きが面倒なら「源泉徴収あり」

確定申告の手続きが面倒で、証券会社に任せたい場合は、「源泉徴収あり」の特定口座がおすすめです。基本的には確定申告の必要がないため、負担が少なくなります。ただし、譲渡損失が大きい場合は、確定申告をしないと損失の繰越控除などが受けられず、結果として税金を多く支払う可能性がある点に注意が必要です。

所得控除の判定を重視するなら「源泉徴収あり」

「源泉徴収あり」の特定口座を選択し、確定申告をしなければ、配偶者控除や扶養控除における合計所得の判定から譲渡益を除外できるというメリットがあります。上場株式等の取引を配偶者や扶養親族が行うケースでは、源泉徴収ありを選択した方がよいでしょう。

給与所得者や年金所得者で年間取引額が少ないなら「源泉徴収なし」

給与収入が2,000万円以下で年末調整の対象となる会社員や、公的年金の収入400万円以下の年金受給者は、他の所得が20万円以下の場合に確定申告が不要となる制度があります。しかし、「源泉徴収あり」の特定口座では、年間の譲渡益が20万円以下でも、取引の都度税金が徴収されてしまいます。

そのため、年間取引額が少なく譲渡益が20万円以下に収まりそうな場合は、源泉徴収なしを選択した方が余計な税金を徴収されずに済みます。

初心者で特に希望がないならとりあえず「源泉徴収あり」

特定口座は、取引年ごとに「源泉徴収あり」「源泉徴収なし」を選択できます。上場株式等の取引に慣れていないうちは、「源泉徴収あり」の特定口座を選んでおけば、確定申告の手間やミスを削減できて安心です。

翌年以降、取引の規模が大きくなったり損益通算したくなったら、「源泉徴収なし」に切り替えるという方法もあります。

特定口座と確定申告の関係

続いて、特定口座と確定申告の関係について解説します。

確定申告が必要なケース

「源泉徴収なし」の特定口座の場合、1年間(1月1日~12月31日)に上場株式などの譲渡損益が発生すると、確定申告が必要です。

「源泉徴収あり」の特定口座でも、損失の繰越控除や他の口座との損益通算をしたい場合は、確定申告を行うことで他の口座の損益と合算・相殺が可能です。

確定申告が不要なケース

上場株式等の譲渡があっても、「源泉徴収あり」の特定口座で取引している場合は、確定申告が不要です。取引の都度、証券会社から税金が自動的に徴収されるため、間接的に納税したことになります。

このほか、1年間で上場株式等の取引がまったくない場合は、損益が確定しないため確定申告は必要ありません。

確定申告をした方がいいケース

「源泉徴収あり」の特定口座なら確定申告は不要ですが、他の口座との損益通算をしたい場合や、譲渡損失を繰り越したい場合は、確定申告を検討しましょう。

確定申告によって、他の証券会社の特定口座や一般口座の譲渡所得、上場株式等の利子所得や配当所得の金額と損益通算ができ、控除しきれない分は損失の繰越控除ができます。繰越控除では、翌年以後3年間にわたり、上場株式等の譲渡所得のほか、上場株式等の利子所得や配当所得から損失分を差し引くことが可能です。

特定口座年間取引報告書とは

特定口座年間取引報告書とは、1年間(1月1日~12月31日)の上場株式等の譲渡損益や配当金、源泉徴収税額などをまとめた書類です。

特定口座を保有している場合、証券会社から特定口座年間取引報告書が必ず交付されます。特定口座年間取引報告書の様式は証券会社によって異なりますが、基本的な項目は共通しています。

特定口座年間取引報告書
引用:F3-5 特定口座年間取引報告書(同合計表)|国税庁、「令和 年分 特定口座年間取引報告書(令和4年分以後用)

特定口座年間取引報告書の上部には、上場株式等の譲渡に関する金額が記載されます。確定申告時に確認したいのは、赤枠で囲んだ年間の譲渡所得等の金額と、青枠で囲んだ源泉徴収税額です。

特定口座年間取引報告書

出典:F3-5 特定口座年間取引報告書(同合計表)|国税庁、「令和 年分 特定口座年間取引報告書(令和4年分以後用)

特定口座年間取引報告書の下部には、配当金や源泉徴収税の金額が記載され低ます。特に、赤枠で囲んだ計算の部分を押さえておきましょう。

特定口座年間取引報告書

出典:F3-5 特定口座年間取引報告書(同合計表)|国税庁、「令和 年分 特定口座年間取引報告書(令和4年分以後用)

特定口座と損益通算

特定口座における損益通算とは何か、もう少し詳しく解説していきます。

損益通算とは

損益通算とは、1年間(1月1日~12月31日)に発生した利益と損失を相殺し、課税対象となる所得を減らす仕組みです。

株式の譲渡損益は「分離課税」の対象で、原則として給与や事業など他の所得は通算できませんが、上場株式等の譲渡所得・配当所得・公社債利子所得とは相互に損益通算することが認められています。

特定口座での損益通算の仕組み

特定口座を利用している場合、同じ口座内で発生した損益は、自動的に相殺されます。

しかし、異なる証券会社の特定口座や一般口座で発生した損益を通算したい場合には、確定申告が必要です。損益通算を行っても控除しきれなかった損失は、確定申告をすることで、翌年以降3年間、譲渡所得や配当所得などから繰り越して控除できます。

このように、特定口座を利用している場合でも、確定申告によって税負担を軽減できるケースがあります。年間の取引内容をよく確認し、必要に応じて確定申告することが大切です。

特定口座の仕組みを理解して正しく確定申告しよう

「源泉徴収あり」の特定口座を選べば、原則として確定申告が不要ですが、損失の繰越や他口座との損益通算が必要など、状況によっては「源泉徴収なし」の方が有利になる可能性があります。取引規模や扶養控除などの家族構成、所得状況を踏まえて、毎年どちらが自分に合うか判断することが大切です。必要に応じて確定申告を行い、税負担を最小化しながら投資を行いましょう。

確定申告について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例

データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。

ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

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