特定口座と確定申告の関係

株式を売却したり購入したり、取引するための口座には、「一般口座」「特定口座」「非課税口座」の3種類があります。
ここでは株式取引を行なうための3種類の口座のうち「特定口座」を取り上げて紹介するとともに、確定申告時の具体例を挙げながら解説をしていきます。
特定口座を開設すると確定申告が不要になる
株式の取引を行なうための特定口座は、証券会社などの金融商品取引業者等で開設することになります。
特定口座を開設するためには「源泉徴収口座(源泉徴収あり)」と「簡易申告口座(源泉徴収なし)」のどちらかを選択する必要があります。

(出典:株式等譲渡益課税制度|国税庁HP)
特定口座を開設するための注意点は3つあります。
1つめの注意点は、特定口座を開設できるのは上場株式のみとなります。NISA口座も上場株式しか対応していないため、未公開株式の取引を希望する場合は、一般口座を開設することになります。
2つ目の注意点は、同じ証券会社で特定口座は1つしか開設できない点です。ただし、特定口座以外の一般口座やNISA口座は同じ証券会社でも開設することは可能です。。
3つめの注意点は、「簡易申告口座(源泉徴収なし)」を選択した場合、株式取引で生じた譲渡益に対する税金を、自分で確定申告しなければならないという点です。
「源泉徴収口座(源泉徴収あり)」を選択した場合は、証券会社などの金融商品取引業者等が源泉徴収することになるため、自分で確定申告する必要はありません。
ただし、「源泉徴収口座(源泉徴収あり)」を選択した場合であったとしても、損益通算を行なう場合は確定申告することができます。
損益通算とは、株式売買で生じた損失を、配当金などの収益で補てんすることをいいます。損益通算を行なうために確定申告することによって、損失を減少させることができるだけでなく、翌年以降3年に渡って繰り越すことが可能となります。
特定口座の「源泉徴収口座(源泉徴収あり)」で確定申告する具体的な事例
それでは実際に、特定口座の「源泉徴収口座(源泉徴収あり)」を選択した場合を見ていきましょう。
平成27年中に〇〇証券会社の特定口座(源泉徴収口座)で、
株式取引で生じた収入金額5,000,000円-取得費や譲渡費用4,600,000円=差引金額400,000円
という取引を行ないました。株式取引で生じた収入金額は株式売却益となり、取得費や譲渡費用は売却する際の販売手数料や委託手数料などが含まれます。
また、同じ特定口座(源泉徴収口座)で配当金600,000円を受け取った場合の、株式取引で得た所得合計額は、
400,000円+600,000円=1,000,000円
となります。
上記の例の場合は特定口座(源泉徴収口座)であるため既に税金は証券会社経由で納税済みとなっており、差引合計が黒字であるため、確定申告をする必要はありません。
しかし、差引合計が赤字になってしまった場合は、損益通算をするために確定申告をすることができます。損益通算とは、差引合計の赤字を、配当金などの黒字で補てんすることをいいます。
たとえば、上記例の特定口座(源泉徴収口座)で、
株式取引で生じた収入金額5,000,000円-取得費や譲渡費用5,800,000円=差引金額△800,000円
という取引を行ない、株式取引で損失が出たとします。
しかし配当金として600,000円を受け取った場合、損益通算をすることで、
800,000円の損失を600,000円から差し引いて、△200,000円の損失
に減額することができるのです。
損益通算によって差し引きれなかった損失は、翌年より3年間繰り越すことができます。
上記の一連の流れは、すべて証券会社から送付される「特定口座年間取引報告書」に記載されており、実際の確定申告では「特定口座年間取引報告書」の内容を「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」や「確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」に転記していくこととなります。
まとめ
株式を取引するための口座には、「一般口座」「特定口座(源泉徴収あり/なし)」「非課税口座」の3種類がありますが、株式を取引するほとんどの人が確定申告の手間を省くために「特定口座(源泉徴収あり)」を開設しています。
「特定口座(源泉徴収あり)」を開設することによって確定申告の手間を省くことができるだけでなく、配偶者の扶養内のままでいることができるメリットもあります。
「特定口座(源泉徴収なし)」を選択するメリットは、給与所得以外の株式取引で生じた所得が20万円以下となった場合に、確定申告をする必要がなくなることが挙げられます。
しかし株式取引で生じた所得が20万円を超えるかどうかは、1年間取引してみないとわからないため、あらかじめ「特定口座(源泉徴収あり)」を選択しておくことによって確定申告を免れることができます。特定口座は未公開株式の取引を行なうことができないため、そのような場合は一般口座を開設することになります。
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