- 更新日 : 2025年7月7日
個人事業主が活用できるマル経融資とは?申し込みの流れや必要書類をわかりやすく解説
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)は、個人事業主や小規模事業者が無担保・無保証人で利用できる、日本政策金融公庫の融資制度です。商工会議所や商工会の経営指導を受けたうえで推薦を得ることで、低金利で最大2,000万円の融資を受けられる点が大きな魅力です。本記事では、制度の概要から申請の流れ、必要書類、審査のポイント、融資後の経理処理について解説します。
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目次
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マル経融資は個人事業主も利用できる融資制度
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)は、商工会議所等の推薦を受けた小規模事業者が、無担保・無保証人で日本政策金融公庫から融資を受けられる制度です。金利も低めに設定されており、資金繰りの支援と経営改善を同時に実現できる公的な融資制度として注目されています。
マル経融資とは
「マル経融資」は正式には「小規模事業者経営改善資金融資制度」と呼ばれ、1973年に設けられた長年の実績を持つ制度です。
商工会議所や商工会が経営指導を行った上で、日本政策金融公庫が無担保・無保証人で融資を行う仕組みとなっており、対象は中小企業基本法で定められる小規模企業者です。商業・サービス業であれば従業員5人以下、製造業などでは20人以下であることが条件です。事業規模の小さな個人事業主が利用できるのが特徴です。
個人事業主がマル経融資を利用するメリット
マル経融資は、担保や保証人が不要であり、資産や信用に不安のある個人事業主でも利用しやすい点が大きな利点です。また、2025年5月現在で年1.7%程度という低利で借り入れができるため、返済の負担も軽減されます。さらに、融資の申請過程で商工会議所などから継続的な経営指導を受けられるため、事業計画の改善や経営体制の見直しといった実務面でのサポートも得られます。資金を得るだけでなく、事業全体の底上げにもつながる制度といえるでしょう。
個人事業主がマル経融資を利用する際の注意点
この制度を利用するには、いくつかの条件を満たしていることが前提となります。とりわけ注意したいのは、創業間もない事業者(開業から1年未満)は対象外となる点です。また、商工会議所等で原則6か月以上の経営指導を受けていることが必要であるため、資金が急ぎで必要な場合には申請から融資実行までに時間がかかり、スピード感のある調達には向いていません。ただし、条件を満たせば非常に優遇された内容で融資を受けられるため、計画的に準備を進めていきましょう。
個人事業主がマル経融資を利用する条件
マル経融資を受けるには、すべての申請者が共通して満たすべき条件が定められています。
事業規模
マル経融資の対象となるのは「小規模事業者」です。個人事業主でも、常時使用する従業員が20人以下であれば原則対象となります。ただし、商業やサービス業(宿泊業・娯楽業を除く)の場合は従業員数5人が上限です。従業員を雇用していない場合でもこの条件は満たしているとみなされます。
営業年数
申請時点で、少なくとも1年以上、同一の商工会議所や商工会の管轄区域で継続的に事業を営んでいる必要があります。創業資金としては利用できず、開業して1年未満の事業者は対象外となります。これにより、一定の事業実績と地域密着性が求められていることが分かります。
経営指導
商工会議所または商工会の経営改善普及事業に基づく経営指導を、原則として6か月以上受けている必要があります。この間に経営指導員との面談を重ね、計画的に経営改善に取り組んでいることが前提となります。単に在籍しているだけでなく、実際に改善への意欲を示しているかどうかも評価対象となります。
納税状況
所得税、住民税、個人事業税など事業に関わるすべての税金を完納していることが条件です。納税義務を果たしていない状態では商工会議所からの推薦を受けることができません。滞納がある場合は、まず納税を済ませる必要があります。
業種の適格性
日本政策金融公庫の定める融資対象業種に該当している必要があります。公序良俗に反する事業や、金融業、ギャンブル性の高い娯楽産業などは原則対象外となるため、自身の事業内容が該当するか事前に確認しておきましょう。
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マル経融資の審査時に確認されるポイント
申請条件を満たし商工会議所から推薦を受けた後は、日本政策金融公庫による融資審査が行われます。審査では、確定申告書や決算書をもとに、売上や利益の水準、資金繰りの安定性が評価されます。返済能力や資金の使途も詳細に確認され、目的が不明確な申請は通過しづらい傾向があります。また、過去のクレジットカード支払い延滞や借入金の返済遅延など、個人の信用情報も審査対象に含まれます。
事業計画の重要性
借入額が大きい場合(1500万円超が目安)には、事業計画書の提出が求められます。この計画書には、今後の収益見通しや設備投資の効果、返済計画などを具体的に記載する必要があります。内容が曖昧だったり、実現可能性に欠けると判断された場合は不採択となる可能性もあるため、商工会議所等の支援を受けながら慎重に作成することがおすすめです。
申告・会計の影響
申告された所得の金額や納税状況も審査に大きく影響します。直近の確定申告で適正な所得が申告されており、必要な税金を納めていることが確認されれば、融資の信頼性も高まります。融資後の返済能力を明確に示すことで、公庫の審査を通過しやすくなります。
個人事業主のマル経融資申し込みの流れ
個人事業主がマル経融資を利用するには商工会議所での継続的な経営指導を受けたうえで推薦を得ることが前提となり、その後に日本政策金融公庫での審査が行われます。申し込みの流れを解説します。
商工会議所・商工会への経営相談開始
最初に、事業所の所在地を管轄する商工会議所または商工会に相談の予約を取ります。面談ではマル経融資の仕組みや要件、今後の進め方について説明があり、融資を受けるための準備として経営指導がスタートします。なお、この時点では会員である必要はなく、非会員でも経営指導を受けることが可能です。
6か月以上の経営指導の継続
商工会議所の経営指導員と定期的に面談を重ね、事業の課題を洗い出しながら改善提案を受けていきます。原則として6か月以上の継続的な経営指導が必要であり、この間の姿勢や取り組みが推薦の可否に大きく影響します。指導内容には、収支の見直しや資金計画、販路拡大などの提案が含まれる場合があります。
商工会議所から推薦を受ける
所定の指導期間を経て、他の条件(事業継続年数、納税状況など)も満たしている場合は、商工会議所の内部審査を経て推薦状が発行されます。推薦状の発行には、提出した確定申告書や納税証明書の内容、指導員による経営改善への評価などが反映されます。推薦が得られれば、正式に融資の申請が可能になります。
日本政策金融公庫へ申込書類提出・審査
推薦状を受け取ったら、必要書類を揃えて日本政策金融公庫の窓口へ提出します。申請内容に不明点がある場合は、審査中に公庫担当者から追加での資料提出や面談(ヒアリング)が求められることもあります。審査は1か月程度が目安ですが、繁忙期など状況によっては2か月以上かかることもあります。
融資決定・契約手続き
審査に通過すると、公庫から融資決定の通知が届きます。融資金額、利率、返済期間、返済方法などの条件が記載された書類を確認し、問題がなければ契約書に署名・捺印します。あわせて、返済用の金融機関口座の登録や振込先の確認などの手続きを進めていきます。
資金の受取りと使途報告
契約完了後、融資金は指定した銀行口座に振り込まれます。振込までにはさらに数日から数週間程度かかる場合があります。資金は当初の目的に従って使用し、商工会議所に対して進捗状況や使途報告を行う場面もあります。フォローアップ面談などを通じて、経営状況の確認や今後の改善提案を受けられることもあります。
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個人事業主のマル経融資申し込みの必要書類
マル経融資を申し込む際には、必要書類を揃えて正確に提出することが求められます。法人とは提出内容が一部異なるため、個人事業主としての申請に必要な代表的な書類をここで確認しておきましょう。
確定申告書類一式(前年・前々年分)
所得税の確定申告書とともに、青色申告者は青色申告決算書、白色申告者は収支内訳書をそれぞれ添付します。直近2年分が必要となることが多く、これらは事業収入や経費、利益の状況を把握するための基礎資料として審査に用いられます。
納税証明書または領収書
所得税、事業税、住民税といった各種税金の納付を証明する書類が必要です。税務署や自治体が発行する納税証明書や、納付時の領収書(写し)などが該当します。これはマル経融資の完納要件の確認に用いられ、滞納があると推薦を受けられないため、提出は必須です。
見積書・カタログ
借入金の用途が設備投資の場合、購入予定の機械や車両などに関する見積書や製品カタログを添付します。価格や仕様、導入目的が明確になる資料であることが望ましく、資金使途の妥当性を審査機関に対して説明する根拠資料となります。
不動産登記簿謄本
個人事業主本人が不動産を所有している場合、初回申込時にはその不動産の登記事項証明書を求められることがあります。担保提供を求められるわけではありませんが、信用力や資産状況の確認の一環として提出が求められるケースがあります。
事業計画書
融資額が大きい場合(目安は1500万円超)や、公庫側から事業の見通しについて説明を求められた場合には、事業計画書の提出が必要です。売上・利益の予測、費用の内訳、資金使途の詳細、返済計画などを含めた実現可能な内容が求められ、形式に決まりはないものの、具体性と信頼性が重視されます。
マル経融資を受けた後の資金使途と経理処理の注意点
マル経融資で資金を得た後においても、適切な使途と正しい会計処理が必要です。個人事業主としては、事業資金と私的支出を明確に分け、融資金を本来の目的に沿って使うことが求められます。ここでは資金使途の分類と経理処理上の注意点について説明します。
資金使途のポイント
マル経融資の資金は、運転資金と設備資金のいずれにも使用できます。運転資金としては、仕入代金、買掛金の決済、家賃や水道光熱費、広告費、従業員の給与など、日常の経費支払いに充てられます。設備資金としては、事業用車両の購入、店舗や工場の改修、什器・備品の導入などが対象です。いずれの場合も、事業に関連する支出であることが前提です。個人的な用途への流用や、他の借入金返済(借換え)への充当は契約上認められていません。
経費計上の扱い
融資金を使って仕入れた原材料や支払った経費は、他の資金による支払いと同様に必要経費として計上できます。例えば、地代家賃、通信費、広告宣伝費など、事業の継続に関わる支出であれば問題なく経費化されます。一方、機械や車両などの資産を取得した場合は、固定資産として帳簿に記載し、耐用年数に応じた減価償却で費用配分していきます。取得時に全額を一括で経費化することはできないため、償却期間と方法に注意を払う必要があります。
借入金の記帳方法
マル経融資で得た金額は、帳簿上「借入金」として記録します。複式簿記を導入している場合、借入時には「普通預金」や「当座預金」を借方、「借入金」等を貸方として仕訳し、返済時は逆の仕訳で記帳します。単式簿記の場合でも、入金・返済の実績を時系列で正確に記録し、借入残高の管理をしておくことが大切です。
利息と元金の取り扱い
返済時には元金と利息が含まれていますが、会計処理上はこれを分けて考える必要があります。元金は返済義務のある負債の返済であり、経費にはなりません。一方、利息部分は「支払利息」として経費計上でき、確定申告の際に必要経費としての計上が可能です。たとえば10万円の返済のうち1万円が利息であれば、その1万円のみが経費として処理されます。利息は「租税公課」ではなく、「利子割引料」等の項目に記載します。元金返済は貸借対照表上で借入金残高を減らす処理となるため、正確な区分が必要です。
マル経融資は個人事業主にとって心強い資金調達手段
マル経融資は、商工会議所の支援を受けながら無担保・無保証で低利融資を受けられる、個人事業主にとって活用価値の高い制度です。申請には一定の条件と準備期間が必要ですが、計画的に進めれば事業の資金繰り改善や成長投資に大きく役立ちます。資金受領後も、使途を明確にし、経理処理や税務対応を丁寧に行うことで、信頼と実績を築いていくことができます。制度を正しく理解し、早めの相談と準備で有効に活用しましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
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