- 更新日 : 2025年10月21日
個人事業主の国民年金は免除できる?収入条件・申請手続き・確定申告の扱いを解説
個人事業主として働く中で、国民年金保険料の負担が重く感じられることもあるでしょう。収入が不安定なときでも、未納にせず制度を活用することで将来の年金受給資格を守れます。
本記事では、国民年金の免除制度について、種類や申請方法、所得基準など個人事業主が知っておくべきポイントを解説します。
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目次
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個人事業主の国民年金保険料は免除できる?
個人事業主も条件を満たせば国民年金保険料の免除が可能です。対象は第1号被保険者で、申請が承認されれば全額または一部の納付が免除されます。ただし未納とは異なり、制度に沿って申請する必要があります。
個人事業主も保険料免除の対象になる
国民年金第1号被保険者であれば、所得や経済状況に応じて免除制度を利用できます。
自営業者やフリーランスを含む国民年金第1号被保険者は、前年所得を基準に、本人・配偶者・世帯主の所得が定められた基準以下の場合に、全額免除・一部免除が承認されます。前年の所得が一定基準以下であれば、所得審査に基づいて「全額免除」「4分の3免除」「半額免除」「4分の1免除」のいずれかが承認される可能性があります。また、納付を一時的に猶予する「納付猶予制度」や「学生納付特例制度」なども用意されており、50歳未満の若年者や学生にとっても選択肢となります。
このように、個人事業主でも正規の申請を通じて国民年金保険料の負担を軽減できる制度が整備されており、経済状況が苦しい場合には積極的に活用すべき仕組みです。
未納と免除・猶予は異なる
保険料を支払わないという点では未納と免除は似ていますが、年金制度上の扱いはまったく異なります。
免除が認められた期間は、たとえ保険料を支払っていなくても、年金受給資格期間にカウントされます。また、老齢基礎年金の一部は国庫負担分として加算されるため、将来の年金額にも一定の反映があります。
一方、未納は制度上の認定を受けていないため、受給資格期間に算入されず、老齢基礎年金の支給対象外となるリスクがあります。10年の受給資格期間を満たせず、結果的に年金が一切受給できない可能性もあります。さらに、障害や死亡といった不測の事態が起きた場合でも、直近1年に未納期間があると障害基礎年金や遺族基礎年金の支給を受けられないケースがあるため、注意が必要です。
経済的な事情で保険料の支払いが難しい場合は、未納のまま放置するのではなく、正しく免除や猶予の申請を行うことが将来の保障につながります。
国民年金保険料の免除の種類と条件は?
国民年金の保険料免除制度は、保険料の納付が困難な状況にある人を対象に、所得などの基準に応じて全額または一部の保険料を免除する制度です。個人事業主も対象となり、申請により承認されれば経済的負担を軽減できます。ここでは、免除の種類、対象条件、特例措置について見ていきます。
所得に応じた4つの免除区分
国民年金保険料の免除は、所得に応じて「全額免除」「4分の3免除」「半額免除」「4分の1免除」に分類されます。
前年所得が各区分の基準を下回っていれば、本人・配偶者・世帯主の所得が審査対象となり、いずれかの免除が承認されます。所得基準は以下のように定められています。
免除区分 | 所得基準の目安(計算式) | 免除時の保険料(月額) |
---|---|---|
全額免除 | (扶養親族等の数 + 1)×35万円 + 32万円 以下 | 0円(保険料全額免除) |
4分の3免除 | 88万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額 など 以下 | 約4,130円(25%のみ納付) |
半額免除 | 128万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額 など 以下 | 約8,260円(50%納付) |
4分の1免除 | 168万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額 など 以下 | 約12,390円(75%納付) |
扶養親族が多いほど控除が加算され、より高い所得でも免除対象になりやすくなります。扶養親族がいない場合は前年所得約67万円以下、扶養親族が1人いる場合は約102万円以下で全額免除の可能性があります。
納付猶予制度(50歳未満向け)
50歳未満の第1号被保険者には「納付猶予制度」が適用されます。この制度は、保険料を払えないが免除基準に満たない若年層のために設けられています。全額免除と同様の所得基準で審査されますが、対象は本人と配偶者に限定され、世帯主の所得は考慮されません。そのため、実家暮らしなどで世帯主の収入が高い人でも、納付猶予制度を利用できる可能性があります。
納付猶予が承認されると、該当期間の保険料納付が一時的に猶予されます。ただし、年金受給資格期間には含まれるものの、将来の年金額には反映されません。後から追納することで反映される仕組みです。
所得に関係なく適用される免除制度
特定の状況にある人には、所得に関係なく保険料が免除されるケースがあります。
ひとつは「法定免除制度」で、障害基礎年金(1級・2級)や生活保護(生活扶助)を受けている方が該当します。申請により自動的に保険料が免除されます。また、出産を控える第1号被保険者についても、出産予定日(出産日)が属する月の前月から4か月間(多胎は3か月前から6か月間)は申請により保険料が免除されます。
もうひとつは「特例免除制度」で、失業や災害など予期せぬ事情で保険料納付が困難になった場合に適用されます。失業時は離職票、災害時は罹災証明書などを提出すれば、前年の所得にかかわらず、該当期間の免除が認められることがあります。これにより、急な収入減や生活困難への対応が可能になります。
このように、国民年金には多様な免除制度が設けられており、個人事業主であっても経済的状況に応じて利用できる選択肢が存在します。収入が不安定な時期には積極的に申請し、制度を活用することで将来への備えを確保しましょう。
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国民年金保険料免除の申請方法は?
国民年金の免除や納付猶予を受けるには、正しい手続きとタイミングが重要です。申請は年度ごとに必要ですが、令和7年度からは一部の免除区分で手続きを簡略化できる「自動審査制度」も始まりました。
通常の免除申請は市区町村または年金事務所で行う
免除・猶予の申請は、所定の申請書に記入し、市区町村の国民年金窓口または最寄りの年金事務所に提出することで行います。提出する書類は「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」で、記入内容は基本的な個人情報と所得状況などです。申請の際、本人・配偶者・世帯主の前年所得は自治体側が税情報から自動的に確認するため、通常は所得証明書などの添付は不要です(ただし、税申告が済んでいることが前提となります)。
申請先は役所か年金事務所の窓口に限らず、郵送での申請を受け付けている自治体もあります。希望すれば、社会保険労務士などに申請手続きを代行してもらうことも可能です。
申請の時期と遡及できる期間に注意
免除や猶予の申請は毎年度ごとに必要であり、遅くとも該当保険料の納期限から2年以内であれば申請が可能です。2025年4月分の国民年金保険料であれば、2027年4月末までに免除申請を行えば対象となります。過去に保険料を未納のまま放置してしまった場合でも、2年以内であれば遡って免除が認められる可能性があります。
経済的に厳しく支払いが困難だった期間が過去にある場合でも、早めに手続きすることで未納扱いを回避できます。
特例免除は証明書類を添えて提出
失業や災害など、やむを得ない事情で保険料が支払えない場合は「特例免除」の申請が可能です。
この場合、通常の申請書に加えて状況を証明する書類が必要です。失業の場合は、離職票や雇用保険受給資格者証、廃業届などが該当します。災害時には、自治体が発行する罹災証明書などを添付します。特例免除は、その事情が発生した月の前月から適用できるため、できるだけ早めの申請が望まれます。
継続審査制度の活用
国民年金保険料の免除や納付猶予は、原則として毎年度申請が必要です。ただし、全額免除または納付猶予を受けた人が継続を希望した場合には、翌年度は改めて申請書を提出しなくても日本年金機構が自動的に審査する「継続審査」が行われます。これにより、前年と経済状況が大きく変わっていない場合には、継続的に制度を利用しやすくなっています。
なお、4分の3免除や半額免除などの一部免除には適用されず、対象は全額免除と納付猶予に限定されます。さらに、前年に「失業による特例免除」を受けた場合は継続審査の対象外となるため、再度申請が必要です。継続希望の意思表示は、日本年金機構から届く案内にチェックを入れて返送することで行います。
個人事業主が受けられる社会保険料の支援制度は?
国民年金以外の社会保険料にも、個人事業主が活用できる公的支援制度があります。国民健康保険料や介護保険料は世帯の所得に応じて軽減・減免される仕組みがあり、災害や失業などの事情により支払いが困難な場合にも柔軟な対応が取られます。また、扶養制度や生活支援制度を活用することで、保険料負担を一時的に軽減することも可能です。
国民健康保険料の軽減・減免制度
個人事業主が加入する国民健康保険では、所得の低い世帯に対し、保険料の均等割・平等割が7割・5割・2割のいずれかで自動的に軽減されます。軽減は7割・5割・2割ですが、基準は43万円に世帯人数等の係数を乗じる「年度別の式」で決まり、自治体・年度で数値が変動します。最新の令和7年度基準は各自治体の公表値を確認しましょう。
この制度は、住民税非課税レベルの低所得世帯に広く導入されており、対象となる場合は申請不要で軽減されるのが特徴です。
災害や失業、病気などにより収入が著しく減少したときは、保険料の一部または全額が減免されることがあります。これらはお住まいの自治体が個別に基準を設けているため、該当しそうな場合は市区町村の国保窓口に早めに相談することが大切です。
配偶者の扶養に入る選択肢もある
自営業の配偶者が会社員や公務員であれば、年収130万円未満を目安にその扶養に入れます。この場合、自身は第3号被保険者となるため、国民年金保険料の負担がなくなります。また、健康保険も被用者保険の扶養家族としてカバーされるため、国民健康保険料も発生しません。パート勤務への一時的な切り替えや収入調整によって扶養に入る選択肢も検討できますが、収入が増えると扶養から外れる点には注意が必要です。
公的支援制度の利用も視野に
生活が困難な状況にある場合、生活保護制度を利用することで、国民年金保険料は法定免除となり、医療費も公費で負担されます。また、生活保護に至らない場合でも、緊急小口資金や総合支援資金などの無利子貸付制度を利用できることがあります。自治体によっては中小事業者向けの独自支援や保険料減免措置も設けられているため、役所や社会福祉協議会に相談することで活路が開けることもあります。
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国民年金が免除になった場合の確定申告は?
国民年金の保険料が免除された場合、確定申告での扱いがどう変わるか気になる方も多いはずです。ここでは、免除と納付の違いによる社会保険料控除の影響や、追納した場合の取扱いについて整理します。
支払っていない期間の保険料は控除の対象外
国民年金保険料が免除された期間は、確定申告で「社会保険料控除」として申告することはできません。 これは、実際に保険料を納付していないため、支出として所得控除に計上できないからです。全額免除された期間については、支払い額がゼロなので控除額もゼロになります。
一部免除(たとえば半額免除など)の場合には、実際に納付した金額分だけが控除対象となります。月額1万6,000円のうち半額の8,000円を支払っていた場合、その支払った分のみが申告可能です。控除額は、日本年金機構などから送られてくる「社会保険料控除証明書」で確認できます。
追納した場合は追納した年に控除できる
免除や猶予を受けた期間の保険料を後から「追納」した場合、その金額は追納した年の社会保険料控除として申告できます。
2023年に全額免除を受けた保険料を、2025年に追納した場合、その支払った2025年分の確定申告で控除対象になります。控除できるのは実際に支払った年のみであり、免除を受けた年には申告できない点に注意が必要です。
また、追納には「加算額(延滞金)」が上乗せされることがありますが、加算分を含めた全額が控除対象となります。控除証明書に反映されるため、そちらに基づいて正確に申告しましょう。
国民年金の免除制度を活用して将来に備えよう
個人事業主にとって、国民年金保険料の免除・猶予制度は経済的に苦しいときの強い味方です。免除を受ければ当面の支出負担を減らせる上に、保険料未納による年金受給資格喪失を避けられます。低所得のときには国民健康保険料の軽減など他の公的支援も積極的に利用し、生活の立て直しを図りましょう。経済状況が回復した際には追納も検討し、将来受け取る年金額を充実させることも可能です。無理なく制度を賢く活用し、将来の安心につなげましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
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