- 更新日 : 2025年2月25日
青色申告者の個人も源泉徴収される?確定申告書への入力方法や仕訳を解説!
源泉徴収といえば、給与所得者(会社員など)の源泉徴収がよく知られていますが、青色申告をする個人事業主も報酬の内容によっては源泉徴収されることがあります。
納付すべき所得税が源泉徴収額を下回る場合は、源泉徴収によって所得税を多く納めていることになるため、還付を受けられます。
この記事では、青色申告の個人事業主でも源泉徴収される理由や仕訳の仕方、源泉徴収に関連して確定申告時に記入が必要な箇所について解説します。
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目次
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青色申告を行う個人事業主も源泉徴収される場合がある
所得税は、納税義務者(所得のある人)自身が年間の税額を申告して納税する申告納税が原則です。ただし、給与など特定の所得については源泉徴収制度が採用されています。
源泉徴収制度とは、報酬などを支払う者が報酬に対する所得税を計算し報酬から天引きして、納税者に代わって国に所得税を納付する制度のことです。
源泉徴収制度は特定の所得を対象としており、青色申告を選択している個人事業主でも、源泉徴収が必要な所得がある場合は源泉徴収されます。
ただし、支払者が個人の場合は、ホステス等に支払う料金等を除き源泉徴収は必要はありません。源泉徴収をするのは、その支払者が源泉徴収義務者であるときです。
※白色申告の個人事業主も源泉徴収制度の対象です。
源泉徴収の対象となる報酬
源泉徴収の対象となる特定の所得には、さまざまなものがあります。給与や退職金、配当金のほか、源泉徴収の対象となるのは以下のような所得です。
- 弁護士、公認会計士、税理士など、特定の業務を行う人への報酬・料金
- 原稿料、講演料、デザイン料、翻訳料、通訳料、スポーツ指導料など
- 職業野球選手、プロサッカー選手など職業運動家の業務に対する報酬・料金
- モデルの報酬、芸能人への出演料(一般の人へのテレビ等出演料含む)など
- ホステスやコンパニオンなどの業務に対する報酬・料金
- 事業広告宣伝のための賞金
- 馬主に支払われる競馬の賞金
- 社会保険診療報酬支払基金の診療報酬
- プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
この記事では、これらのうち「報酬・料金等の源泉徴収」を取り上げて解説します。
参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
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源泉徴収金額の計算方法
司法書士や土地家屋調査士、外交員、集金人、ホステスなどは源泉徴収額の計算方法が異なりますが、報酬や料金を受け取った人の多くは、源泉徴収の計算方法が共通しています。
弁護士や税理士などへの報酬等、原稿料、デザイン料、芸能人・スポーツ選手などへの報酬の源泉徴収税額の計算式は、以下のとおりです。
*ただし、上記の式は個々の報酬について異なる場合があります。例えば、司法書士の一定の業務に関する報酬は、「(報酬の額 - 1回の支払いにつき10,000円)×10.21%」が源泉徴収税額となります。
※同一の人に対して1回あたりに支払われる額が100万円超のときは、100万円を超過した部分については20.42%
(計算例1)デザイン料50万円だったときの源泉徴収税額
50万円×10.21%=51,050円
(計算例2)弁護士報酬200万円だったときの源泉徴収税額
100万円×10.21%=102,100円
(200万円-100万円)×20.42%=204,200円
102,100円+204,200円=306,300円
源泉徴収に関する仕訳
メインの事業所得に対して源泉徴収が行われた場合や、確定申告によって還付金が発生し後日支払われた場合は、以下のように仕訳を行います。
報酬が発生した場合
事業所得で報酬が発生したことにより源泉徴収が行われた場合の仕訳において、事業主勘定を使用する場合と仮払金勘定を使用する場合について解説します。
事業主勘定を使う
(仕訳例)デザイナーが顧客より、デザイン料30万円(源泉徴収税額30,630円を差し引き後)を現金で受け取った。
「事業主貸」の勘定科目は、個人事業主の個人的な支出などで使用する勘定科目です。源泉徴収税の性質は、確定申告で納付する所得税と同じです。事業経費の計算上、所得税は必要経費にならないため、納付時は「事業主貸」で仕訳をします。同じ理由で、源泉徴収された分も「事業主貸」で仕訳をします。
仮払勘定を使う
(仕訳例)デザイン料30万円(内、源泉徴収税額30,630円)を現金で受け取った。
報酬の受け取りで源泉徴収があったときは、「事業主貸」の代わりに仮払勘定(仮払金や仮払税金等)のような勘定科目を使って仕訳をすることも可能です。個人事業主の場合、事業主貸を使用すると他のプライベートの支払いと混ざってわかりにくくなるため、他の事業主貸の項目と分けたいときに便利です。
ただし、仮払勘定だと何に対する支払いなのかが不明なので、通常は決算のとき(個人事業主は12月31日)に仮払勘定から事業主貸に振り替える仕訳を行います。
還付金が入金された場合
(仕訳例)確定申告で還付が確定していた還付金5万円が普通預金に入金された。
源泉徴収分は、所得税の先払いと言えます。源泉徴収の対象になる所得が多く、納付すべき所得税よりも源泉徴収分が多いときは、確定申告により超過分が還付されます。所得税の還付金は超過分が返金されたものなので、雑所得などの収益として処理せず、貸方は「事業主借」で処理します。
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支払調書の内容を確定申告書に転記する方法
出典:[手続名]報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書(同合計表)|国税庁
「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を加工して作成
支払調書は個人への発行は義務ではないので個人宛てに発行されないこともありますが、報酬の支払と源泉徴収があれば、慣習として上のような「支払調書」を送ってくれるところが多いです。支払調書があるときは、記載内容をもとに確定申告書に必要事項を転記します。支払調書がないときは、発注書や請求書、実際の入金額などで確認します。
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
上の表は、確定申告書の中の源泉徴収税額などを記入する部分です。支払調書の内容をもとに、①所得区分、②種目(原稿料、デザイン料など)、③支払者の氏名・名称、④収入額、⑤源泉徴収税額を転記します(①~⑤は上の支払調書に対応しています)。
複数の事業者から報酬を受け取って源泉徴収されている場合は同じように記入し、最後に50番の「源泉徴収税額の合計額」に記入します。
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
第二表で計算した源泉徴収額の合計を、確定申告書第一表の50番に転記します。これで、確定申告書で源泉徴収税額を申告する手続きは完了です。源泉徴収税額が申告納税額を上回るときは、第一表の50番に還付される税額を記載します。
確定申告ソフトを使えば支払調書の内容を簡単に入力できる
確定申告ソフトであれば、第二表に支払調書の内容を入力すると、自動計算により第一表の50番の源泉徴収税の欄に合計額が反映されます。源泉徴収以外の税金の計算も、手入力が必要なものを除いて、確定申告ソフトなら基本的に自動計算に対応しているものが多いです。
手間のかかる税金の計算も自動で行われるため、ミスなく簡単に済ませることができます。確定申告が必要な人は、確定申告ソフトを利用することをおすすめします。
最後に、青色申告を選択している個人事業主であっても、特殊な区分の所得を受け取っている場合は報酬から源泉徴収されることがあります。源泉徴収された分は確定申告で納付税額から差し引けるため、忘れずに確定申告をしましょう。
なお、青色申告については以下の記事でくわしく解説しています。

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よくある質問
青色申告の個人事業主も源泉徴収される?
弁護士・税理士などの業務に対する報酬、原稿料、講演料などがある場合は、個人事業主でも源泉徴収されることがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
源泉徴収されたときの仕訳は?
事業主貸を使って仕訳をする方法と仮払勘定を使う方法があります。詳しくはこちらをご覧ください。
源泉徴収分は確定申告をする?
源泉徴収分は所得税の先払いであるため、申告納税額から差し引くことができます。源泉徴収されている場合は、確定申告をすることをおすすめします。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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