- 更新日 : 2025年10月21日
個人事業主が代替わりする時の挨拶文とは?ケース別の例文ガイド
個人事業主として事業を続けていく中で、避けて通れないのが「代替わり」のタイミングです。代表者の交代や事業承継、事業譲渡、屋号の変更、急な事業主の逝去など、さまざまなケースが想定されます。
こうした場面では、取引先や関係者への丁寧な挨拶が求められます。本記事では、各ケースに応じた挨拶文の文例や通知の方法を解説します。
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目次
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個人事業主が代替わりするのはどんなケース?
個人事業主の代替わりとは、事業の運営主体が変更されることを指し、背景にはさまざまな事情があります。それぞれのケースで対応方法や法的・税務上の取扱いも異なるため、状況に応じた適切な挨拶や手続きが必要です。
親族への事業承継(生前贈与・相続)
親族内での事業承継は、後継者育成と信頼関係の維持が比較的しやすい選択肢です。
親族への事業承継は、個人事業主が生前に子や配偶者に事業を譲る形や、死亡後に相続によって引き継ぐ形があり、いずれの場合も事業用資産の移転にともない贈与税または相続税が発生する可能性があります。
これに対応するため、「個人版事業承継税制」という制度が設けられており、一定の条件を満たせば納税の猶予や免除が受けられます。ただし、制度活用には都道府県へ2026年3月末までに承継計画の提出が必要です。また、親族承継であっても、後継者は新たに開業届を出す必要があります。
事業を相続で受け継いだ場合、亡くなった個人事業主の2年前の課税売上高が1,000万円を超えている場合は消費税の課税事業者となり、消費税の申告と納付の義務が発生します。
第三者への事業譲渡(M&Aによる売却)
第三者への譲渡は資金化の手段として有効ですが、準備と信頼構築が重要です。 親族以外の第三者に事業を売却する場合、M&Aによる事業譲渡という形を取ります。
売却で譲渡益が出た場合は、資産の種類により所得税の総合課税または分離課税となり、翌年の確定申告で適切に申告・納付します。
M&Aで事業主が交代することで取引条件が変更になる可能性もあるため、取引先との信頼関係維持には丁寧な説明や挨拶による周知が求められます。譲渡日の前に、譲受先、事業の継続体制などを明確に伝えることで、取引先の不安を最小限に抑えることが可能です。
事業主の死亡による代替わり
急な事業主の死亡時は、迅速な対応と後継者の意思表明が不可欠です。 個人事業主が死亡した場合、遺族が事業を引き継ぐかどうかを判断する必要があります。継続する場合は、遺族や相続人が速やかに挨拶状を発信し、新たな体制での営業を表明することが信頼継続につながります。
一方、事業を終了する場合は、これまでの支援に対する感謝と廃業の通知を丁寧に伝えるようにしましょう。
税務面では、死亡を起点に「準確定申告」の義務が発生し、1月1日から死亡日までの所得について相続人が、相続の開始があったことを知った日から4か月以内に申告・納税しなければなりません。
申告義務者は相続人全員で、1つの申告書に相続人全員の氏名を連署して提出すれば準確定申告を済ませた扱いになります。この手続きを怠ると延滞税や加算税の対象になることもあるため注意が必要です。
代替わりの挨拶は手紙とメールのどちらで伝えるべき?
個人事業主の代替わりを取引先に伝える際は、誠意ある対応と信頼関係の維持が求められます。通知手段としては「手紙(挨拶状)」と「メール」がありますが、場面ごとの適切な選択について解説します。
原則は手紙による通知が望ましい
代表者の交代や事業の譲渡といった重要事項は、新体制で引き続きお付き合い頂きたいという挨拶を兼ねたものですから、書面(封書)で通知するのが望ましいです。手紙は丁寧な印象を与えやすく、長年の信頼関係を損なわずに新体制を伝える手段として有効です。
年配の顧客や重要取引先に対しては、形式に則った手紙の方が誠実さや配慮が伝わりやすいです。
メールの活用は速報性と手軽さに優れる
件数が多い場合や急ぎの連絡ではメールも併用可能です。取引先が多数ある場合や、通知を早く届けたい場合は、メールを併用することも合理的です。
件名は「[事業所名]○○代表交代のご挨拶」のように具体的にし、本文には感謝の意、交代の事実、新旧代表の名前、連絡先、今後の方針を簡潔にまとめます。
文体は手紙と同様の敬語表現を用い、誤字脱字がないよう十分に見直しましょう。メール送信後に追って手紙を送るのも有効です。
季節の挨拶状への記載だけでは不十分
年賀状などに一言添えるだけの通知は避けるべきです。年賀状や暑中見舞いに「代表が交代しました」などと添えるだけでは、重要な情報が埋もれて見落とされるおそれがあります。
新年の挨拶が主目的の文面では、事業継続の意思や体制の詳細が十分に伝わりません。少人数の取引先であっても、正式な挨拶状や可能であれば訪問を通じて、改めて丁寧に報告することが望ましい対応です。
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事業承継する場合の文例
事業を引き継ぐ際は、先代への感謝と、新代表の決意を丁寧に伝える挨拶文が求められます。挨拶状には、交代日、新旧代表者の氏名、今後の方針などを明記し、継続的な支援をお願いする内容としましょう。
旧代表者が引き続き関与する場合はその旨を記載すると、取引先に安心感を与えられます。
挨拶文例
拝啓
時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
このたび令和○年○月○日をもちまして、代表者を○○から△△に交代いたしました。なお、○○は今後も顧問として社業に携わってまいります。
つきましては、新体制の下、社員一同これまで以上に精進してまいる所存でございます。何卒ご高承のうえ、今後とも変わらぬご指導ご鞭撻とご厚情を賜りますようお願い申し上げます。
まずは略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます。
敬具
この文例では、交代の事実を簡潔に報告し、旧代表が顧問として関与を続けることも明記しています。振込先や連絡先に変更がある場合は、別紙などで詳細を添えると親切です。
なお、挨拶状は「取引先各位」とせず、個別宛名で送付するのが望ましい対応です。
個人事業主が死亡した場合の挨拶文はどう書けばいい?
個人事業主が亡くなった際は、まず訃報を通知し、そのうえで事業を継続するか否かを明確に伝えることが必要です。継続する場合は、後継者からの挨拶として、新体制の意向と支援のお願いを記載した挨拶状を作成します。
文面には、故人への感謝、後継者の氏名・続柄、事業継続の意思を明記します。
挨拶文例(事業主逝去に伴う承継)
拝啓
平素より格別のご愛顧を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、去る令和○年○月○日、弊店代表の○○が永眠いたしました。ここに故人が生前賜りましたご厚情に深く感謝申し上げます。
つきましては、故人の事業◇◇(屋号)を、△△(故人長男)が継承し、今後も従来と変わらぬ体制で営業を続けてまいる所存です。微力ではございますが、より一層サービスの向上に努めてまいりますので、故人同様のご厚誼を賜りますようお願い申し上げます。
略儀ながら書中をもちましてご通知かたがたご挨拶申し上げます。
敬具
この文例では、感謝、継承者の情報、事業継続の決意を簡潔に盛り込んでいます。姓が異なる場合は旧姓や続柄も添えると親切です。
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第三者へ事業譲渡した場合の挨拶文はどう書けばいい?
個人事業を第三者に譲渡した場合、これまでの支援への感謝と譲渡の事実、そして今後の連絡先や取引条件について丁寧に伝える挨拶文を用意することが大切です。
挨拶状には、譲渡日や譲受人の情報を明記し、サービスや条件が継続される旨を記載することで、取引先の不安を軽減できます。旧事業主が送付者となり、必要に応じて新事業主からの挨拶文を同封することもあります。
挨拶文例(第三者への事業譲渡)
拝啓
平素は格別のご厚情を賜り、誠にありがとうございます。
このたび私こと○○は、令和○年○月○日をもちまして長年営んでまいりました◯◯事業を△△(譲受人氏名・社名)に譲渡いたしました。
在任中に賜りました皆様のご支援に心より御礼申し上げます。事業譲渡後も、△△により従来と変わらぬサービス提供がなされますので、今後とも変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。
なお、本件譲渡に伴い〇月〇日以降の問い合わせ先は下記の新事業主へご連絡くださいますようお願いいたします。
(新事業主連絡先:〒xxx-xxxx 新住所、電話番号、担当者名 等)
まずは略儀ながら書中をもちまして事業譲渡のご報告を申し上げます。
敬具
この文例では、譲渡日と譲受人の情報を明示し、長年の支援への感謝と共に、今後のサービスについて伝えています。また、問い合わせ先の変更も具体的に記載しています。
個人事業主の代替わりに伴う税務手続きは?
個人事業主の代替わりでは、挨拶状などの社外対応に加え、税務署への正しい手続きが必要です。承継方法に応じて必要な届出や申請が異なりますので、最新の制度を含めて確認しておきましょう。
廃業と開業の届け出が基本
先代は「廃業届出」、後継者は「開業届出」を提出します。原則として廃業から1か月以内に届出を行い、青色申告をしていた場合は「青色申告の取りやめ届」も必要です。
消費税の課税事業者は「事業廃止届出書」「消費税課税事業者選択不適用届出書」なども提出し、従業員がいる場合は「給与支払事務所の廃止届出書」も必要です。
後継者は、事業を譲り受けてから1か月以内に開業届を提出し、青色申告を希望する場合は原則として譲り受けた年の3月15日までに承認申請書を出す必要があります。ただし、先代が青色申告の承認を受けていた事業を相続により承継する場合は、相続開始を知った日によって青色申告の期限が変わるため、確認しましょう。
「個人版事業承継税制」による税負担の軽減
贈与税や相続税の納税猶予を受けられる特例制度です。この制度を活用すると、一定の条件を満たすことで事業用資産にかかる贈与税・相続税の納税が猶予または免除されます。
2026年3月末までに承継計画を都道府県へ提出し、その後都道府県知事へ認定申請書を提出して認定を受ける必要があります。内容が複雑なため、税理士などの専門家への相談がおすすめです。
新規開業扱いによる消費税の免除
生前贈与の場合は、後継者は新たな事業を開始した扱いになるため、原則2年間は消費税の納税が免除されます。ただし、初年度の売上・給与額によっては次年度に消費税の納税義務を負うほか、インボイス登録をする場合は初年度でも納税義務は免除されません。
相続の場合は先代の課税売上高を引き継ぐため、先代が前々年に課税売上高1,000万円以上を稼いでいた場合、事業を譲り受けた初年度でも課税事業者になるため注意しましょう。
死亡時は準確定申告が必要
相続人は4か月以内に故人の所得を申告します。相続の開始があったことを知った日(死亡日)の翌日から4か月以内に、相続人が準確定申告を行い、所得税を納付します。
また、亡くなった方の廃業届なども相続人が提出します。事業を引き継ぐ場合は、通常通り開業届や青色申告の申請を改めて行います。
円滑な代替わりで信頼関係を引き継ごう
個人事業主の代替わり時には、適切な挨拶文による周知が欠かせません。シーンごとに盛り込むべき事項(交代の事実・日付、新旧氏名、今後の方針など)を押さえ、書式に沿った丁寧な挨拶を行うことで取引先の混乱や不安を和らげるようにしましょう。
あわせて、廃業届・開業届の提出や準確定申告など必要な税務手続きも忘れずに行い、法的にも万全の状態で新体制をスタートさせましょう。
適時適切なコミュニケーションと手続きを通じて、先代から築いてきた信頼関係を次世代へとしっかり引き継いでいきましょう。

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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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