- 更新日 : 2025年2月27日
消費税の割戻し計算とは?積み上げ計算との違いも解説
インボイス制度の導入により、消費税の制度が大きく変わりました。代表的な変更点は、仕入税額控除を受けるためには取引先からの適格請求書等(インボイス)が必要になることです。また、消費税の計算方法も割戻し計算と積み上げ計算について、使用方法などの変更がありました。
ここでは、消費税の割戻し計算の概要や、積み上げ計算との違いを解説します。
なお、マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が確定申告する際に知っておきたい基礎知識や、確定申告の準備、確定申告書の作成方法・提出方法などを分かりやすくまとめた「青色申告1から簡単ガイド」を無料で用意しております。
チェックリスト付きなので、情報収集だけでなく、書類作成・申告手続きを行う時にもお使いいただけます。
この記事を読む方におすすめ
税理士監修で、40ページ以上の情報がギュッと詰まったお得な1冊となっていますので、毎年使える保存版としてご活用ください。
【割戻し計算、消費税 積み上げ計算】などについてお調べの方にもダウンロードいただいているのが、消費税の基本・消費税計算の方法を図解を使ってわかりやすく解説している、「消費税・消費税計算丸わかりガイド」です。
1冊持っておきたい保存版としてぜひご利用ください。会計士監修で安心してご利用いただけます。

目次
消費税の計算方法は「割戻し計算」と「積上げ計算」の2つ
消費税の計算方法には「割戻し計算」と「積上げ計算」の2つがあります。事業者がどちらかを選んで消費税の納付額を計算します。
そこで、まずは「割戻し計算」と「積上げ計算」の内容について見ていきましょう。
割戻し計算とは
割戻し計算とは「1年間の税込金額合計」から税抜金額に割り戻し、消費税額を求める計算方法のことです。
まず、1年間の合計売上金額や合計仕入金額などについて、それぞれ税込金額を出します。次に、それぞれの税抜金額に計算し直します。最後に、それぞれの税抜金額に消費税率を乗じて、売上および仕入に対する消費税額を求めます。
積上げ計算とは
積上げ計算とは、適格請求書等(インボイス)に記載された消費税の金額を合計して、消費税額を求める計算方法のことです。割戻し計算のように、1年間の合計税込金額から税抜金額に割り戻すことはしません。
「割戻し計算」と「積上げ計算」は何が違う?
次に「割戻し計算」と「積上げ計算」の違いを見ていきましょう。
端数処理の違い
割戻し計算と積上げ計算では、端数処理をするタイミングに違いがあります。端数処理とは消費税の計算上、1円未満の金額が出たときの処理方法のことです。
割戻し計算では、1年間の売上金額や仕入金額を税込金額から税抜金額に割り戻し、割り戻した税抜金額に消費税率を乗じて消費税額を求めますが、端数処理はこのときに行います。
一方、積上げ計算は1年間の合計金額ではなく、適格請求書等(インボイス)ごとに端数処理を行います。
売上に対する消費税額と仕入に対する消費税額の計算方法の違い
消費税の納税金額は、簡単にいうと「売上に対する消費税額-仕入に対する消費税額」で計算します。そのため、まずは「売上に対する消費税額」と「仕入に対する消費税額」をそれぞれ求めなければなりません。
売上に対する消費税額は、割戻し計算と積上げ計算のどちらかを選択することができます。仕入に対する消費税額も、割戻し計算と積上げ計算のどちらかを選択できますが、売上に対する消費税額で積上げ計算を選択した場合は、仕入に対する消費税額も積上げ計算しか選択できません。
売上に対する消費税額と仕入に対する消費税額の計算方法の違いをまとめると、次のようになります。
売上に対する消費税額 | 仕入に対する消費税額 |
---|---|
割戻し計算 | 割戻し計算 |
積上げ計算 | |
積上げ計算 | 積上げ計算 |
マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が知っておきたい"経費"のキホンや勘定科目を分かりやすく1つにまとめた「個人事業主が知っておくべき経費大辞典」を無料で用意しております。
税理士監修で、経費の勘定科目や具体例だけでなくワンポイントアドバイスもついているお得な1冊となっていますので、ぜひ手元に置きたい保存版としてご活用ください。
割戻し計算による消費税の計算方法
ここからは、具体例で割戻し計算による消費税の計算方法を見ていきましょう。
例)1年間で400円(税込)消費税36円の売上が1万個ある場合
割戻し計算では、以下の要領で消費税額を計算します。
- 1年間の売上金額の税込金額を計算します。
400円(税込)×1万個=4,000,000円(税込) - 計算した金額を税抜金額に計算し直します。
4,000,000円(税込)×100/110=3,636,363円→3,636,000円(1,000円未満切り捨て) - 税抜金額に消費税額を乗じて消費税額を求めます。
3,636,000円×10%※=363,600円
※実際の消費税の計算では、国税部分7.8%と地方税部分2.2%は分けて計算しますが、ここでは分かりやすいように10%で計算します。
積上げ計算による消費税の計算方法
割戻し計算と同じ具体例で、積上げ計算による消費税の計算方法を見ていきましょう。積上げ計算では、適格請求書等(インボイス)に記載された消費税の金額を合計して、消費税額を求めます。
ここでは、割戻し計算と比較しやすくするために、1枚のインボイスに400円(税込)の商品が1個記載されているものとします。
消費税36円×1万個(枚)=360,000円
この例では、割戻し計算よりも積上げ計算のほうが、売上に対する消費税額が低くなります。売上に対する消費税額が低いということは、その分納税額も低くなることを意味します。
マネーフォワード クラウド会社設立は、個人事業主が法人成りを検討したほうがよいタイミングをまとめた「法人化を検討すべき7つのタイミング」を無料で用意しております。
創業支援に強い税理士監修で、ポイントがまとまったお得な1冊となっていますので、ぜひ将来を見据えた情報収集でご活用ください。
インボイス制度ではどちらの計算方法が有利になるのか?
上述したとおり、割戻し計算と積上げ計算では、端数処理をするタイミングに違いがあります。積上げ計算は、適格請求書等(インボイス)に記載された消費税の金額を積み上げて消費税の金額を計算します。積み上げる消費税額は、適格請求書等ごとに端数処理を行った後のものです。
例えば、消費税額が100.5円になる請求書が10枚ある場合、100.5円×10枚=1,005円になるのではなく、1枚の請求書において1円未満切り捨てて100円としたのちに、100円×10枚=1,000円となります。
実は、適格請求書等に記載する消費税額の端数処理の方法について、四捨五入や切り上げ、切り捨てなどは任意です。売上のインボイスで消費税額の端数処理を切り捨てにすれば、適格請求書等発行の都度、円未満の消費税が切捨てられるため、売上に対する消費税額が低くなり、積上げ計算のほうが有利になります。
特に、小売業など適格請求書等の発行が多い業種では、積上げ計算のほうが大きく消費税の納付額を抑えることができます。
「割戻し計算」と「積上げ計算」を理解し、有利なほうを選択しよう!
消費税の計算方法には、「割戻し計算」と「積上げ計算」の2つがあり、事業者はどちらか有利なほうを選んで消費税の納付額を計算します。
割戻し計算とは「1年間の税込合計金額」から税抜合計金額に割り戻し、消費税額を求める計算方法のことです。
積上げ計算とは、適格請求書等(インボイス)に記載された消費税の金額を合計して、消費税額を求める計算方法のことです。また、積み上げる消費税額は、適格請求書等ごとに端数処理を行った後のものです。
一般的に小売業など適格請求書等の発行が多い業種では、積上げ計算のほうが大きく消費税の納付額を抑えることができます。一方、割戻し計算は、適格請求書等(インボイス)に記載された消費税の金額をひとつひとつ合計していく必要がないので、事務負担は小さいです。
自社にとって、どちらを選択したほうがよいのかを考え、有利なほうを選択しましょう。
はじめての確定申告もラクラク安心に済ませる方法
確定申告がはじめての方や、簿記の知識に不安がある方、確定申告書類の作成を効率よく行いたい方は、確定申告ソフトの使用がおすすめです。
個人事業主向け会計ソフトの「マネーフォワード クラウド確定申告」は、確定申告の必要書類が自動作成でき、Windows・Macはもちろん、専用アプリも提供しています。
①取引明細は自動で取得

銀行口座やカードを登録すると、取引明細を自動取得します。現金での支払いに関しても、家計簿のようなイメージで、日付や金額などを自分で入力することが可能です。
②仕訳の勘定科目を自動提案

自動取得した取引明細データや、受領後にアップロードした請求書・領収書などの情報をAIが判別し、仕訳を自動で入力します。学習すればするほど精度が上がり、日々の伝票入力が効率化されます。
③確定申告必要書類の自動作成機能

白色申告・青色申告の両方に対応しており、確定申告に必要な書類が自動で作成できます。また、マネーフォワード クラウド確定申告アプリで、スマホから直接の提出も可能です。印刷しての提出やe-Taxソフトでの提出にも対応しています。
追加料金なしで確定申告以外のサービスが使える
有料プラン(パーソナルミニ・パーソナル・パーソナルプラス)に登録すると、基本料金だけで請求書や契約のサービスを含む複数サービスを利用することができます。日々の業務や作業をまとめて効率化しましょう。

合わせて読みたいおすすめ資料
マネーフォワード クラウド確定申告では、さまざまなお役立ち資料を用意しています。 無料登録するだけで資料がダウンロード可能なので、ぜひ読んでみてください。会社員の確定申告 丸わかりガイド

青色申告1から簡単ガイド

個人事業主が知っておくべき経費大辞典


マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例
データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
確定申告の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
副業の確定申告で還付金を受け取れる?どんな人が対象になるのか解説
副業の所得が20万円を超える方、2カ所以上から給与をもらっている方は、原則として確定申告をしなければなりません。本業の勤務先や副業での取引先から源泉徴収された税額が本来納めるべき所得税額より多い場合、還付金を受け取ることができます。副業の収…
詳しくみる矯正歯科治療の確定申告 – 歯列矯正は医療費控除の対象?
噛み合わせの調整や審美のためなど、さまざまな目的で歯列矯正(歯科矯正)が行われています。一般的に、治療を受けた者が負担した医療費は所得税の所得控除である医療費控除の対象になりますが、歯列矯正も医療費控除に含めることができるのでしょうか。 こ…
詳しくみる課税所得とは?税金に差が出る理由や計算方法、所得控除・税額控除、非課税所得まとめ
所得税の課税所得とは、所得税を計算するために必要な金額です。 課税所得の計算を正しく理解することができれば、同じ年収でも税金に差が出る理由が理解できます。 ここでは所得税がどのように計算されているのか、順を追って解説していきます。なお、税法…
詳しくみる総合課税とは?申告分離課税との違いや所得税の計算方法を解説!
所得税は、所得の種類によって個別に計算を行った後、各種所得を合算して総所得金額等を求め、総所得金額等をもとに所得税を計算する総合課税がベースです。この記事では、総合課税は具体的に何かということから、計算方法、申告分離課税との違い、確定申告の…
詳しくみる個人事業主の電子帳簿保存法の対応を1から簡単に解説
個人事業主の電子帳簿保存法の対応としては、【①電子取引の確認、②会計ソフトが電子帳簿保存法に対応しているか確認、③データの保管場所を決める、④ペーパーレスの運用を検討する、⑤保存ファイル名の統一】などが挙げられます。 電子帳簿保存法は、事業…
詳しくみる生命保険料控除を確定申告で受ける方法とは?
生命保険などの保険料を支払った場合、確定申告で所得税や住民税の負担を調整する制度である「生命保険料控除」が活用できます。自分の身や生活を守るために保険料を支払う生命保険に対して、所得を軽減する仕組みです。 確定申告では、所得控除の内容や記載…
詳しくみる