- 更新日 : 2025年2月27日
消費税の割戻し計算とは?積み上げ計算との違いも解説
インボイス制度の導入により、消費税の制度が大きく変わりました。代表的な変更点は、仕入税額控除を受けるためには取引先からの適格請求書等(インボイス)が必要になることです。また、消費税の計算方法も割戻し計算と積み上げ計算について、使用方法などの変更がありました。
ここでは、消費税の割戻し計算の概要や、積み上げ計算との違いを解説します。
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目次
消費税の計算方法は「割戻し計算」と「積上げ計算」の2つ
消費税の計算方法には「割戻し計算」と「積上げ計算」の2つがあります。事業者がどちらかを選んで消費税の納付額を計算します。
そこで、まずは「割戻し計算」と「積上げ計算」の内容について見ていきましょう。
割戻し計算とは
割戻し計算とは「1年間の税込金額合計」から税抜金額に割り戻し、消費税額を求める計算方法のことです。
まず、1年間の合計売上金額や合計仕入金額などについて、それぞれ税込金額を出します。次に、それぞれの税抜金額に計算し直します。最後に、それぞれの税抜金額に消費税率を乗じて、売上および仕入に対する消費税額を求めます。
積上げ計算とは
積上げ計算とは、適格請求書等(インボイス)に記載された消費税の金額を合計して、消費税額を求める計算方法のことです。割戻し計算のように、1年間の合計税込金額から税抜金額に割り戻すことはしません。
「割戻し計算」と「積上げ計算」は何が違う?
次に「割戻し計算」と「積上げ計算」の違いを見ていきましょう。
端数処理の違い
割戻し計算と積上げ計算では、端数処理をするタイミングに違いがあります。端数処理とは消費税の計算上、1円未満の金額が出たときの処理方法のことです。
割戻し計算では、1年間の売上金額や仕入金額を税込金額から税抜金額に割り戻し、割り戻した税抜金額に消費税率を乗じて消費税額を求めますが、端数処理はこのときに行います。
一方、積上げ計算は1年間の合計金額ではなく、適格請求書等(インボイス)ごとに端数処理を行います。
売上に対する消費税額と仕入に対する消費税額の計算方法の違い
消費税の納税金額は、簡単にいうと「売上に対する消費税額-仕入に対する消費税額」で計算します。そのため、まずは「売上に対する消費税額」と「仕入に対する消費税額」をそれぞれ求めなければなりません。
売上に対する消費税額は、割戻し計算と積上げ計算のどちらかを選択することができます。仕入に対する消費税額も、割戻し計算と積上げ計算のどちらかを選択できますが、売上に対する消費税額で積上げ計算を選択した場合は、仕入に対する消費税額も積上げ計算しか選択できません。
売上に対する消費税額と仕入に対する消費税額の計算方法の違いをまとめると、次のようになります。
売上に対する消費税額 | 仕入に対する消費税額 |
---|---|
割戻し計算 | 割戻し計算 |
積上げ計算 | |
積上げ計算 | 積上げ計算 |
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割戻し計算による消費税の計算方法
ここからは、具体例で割戻し計算による消費税の計算方法を見ていきましょう。
例)1年間で400円(税込)消費税36円の売上が1万個ある場合
割戻し計算では、以下の要領で消費税額を計算します。
- 1年間の売上金額の税込金額を計算します。
400円(税込)×1万個=4,000,000円(税込) - 計算した金額を税抜金額に計算し直します。
4,000,000円(税込)×100/110=3,636,363円→3,636,000円(1,000円未満切り捨て) - 税抜金額に消費税額を乗じて消費税額を求めます。
3,636,000円×10%※=363,600円
※実際の消費税の計算では、国税部分7.8%と地方税部分2.2%は分けて計算しますが、ここでは分かりやすいように10%で計算します。
積上げ計算による消費税の計算方法
割戻し計算と同じ具体例で、積上げ計算による消費税の計算方法を見ていきましょう。積上げ計算では、適格請求書等(インボイス)に記載された消費税の金額を合計して、消費税額を求めます。
ここでは、割戻し計算と比較しやすくするために、1枚のインボイスに400円(税込)の商品が1個記載されているものとします。
消費税36円×1万個(枚)=360,000円
この例では、割戻し計算よりも積上げ計算のほうが、売上に対する消費税額が低くなります。売上に対する消費税額が低いということは、その分納税額も低くなることを意味します。
インボイス制度ではどちらの計算方法が有利になるのか?
上述したとおり、割戻し計算と積上げ計算では、端数処理をするタイミングに違いがあります。積上げ計算は、適格請求書等(インボイス)に記載された消費税の金額を積み上げて消費税の金額を計算します。積み上げる消費税額は、適格請求書等ごとに端数処理を行った後のものです。
例えば、消費税額が100.5円になる請求書が10枚ある場合、100.5円×10枚=1,005円になるのではなく、1枚の請求書において1円未満切り捨てて100円としたのちに、100円×10枚=1,000円となります。
実は、適格請求書等に記載する消費税額の端数処理の方法について、四捨五入や切り上げ、切り捨てなどは任意です。売上のインボイスで消費税額の端数処理を切り捨てにすれば、適格請求書等発行の都度、円未満の消費税が切捨てられるため、売上に対する消費税額が低くなり、積上げ計算のほうが有利になります。
特に、小売業など適格請求書等の発行が多い業種では、積上げ計算のほうが大きく消費税の納付額を抑えることができます。
「割戻し計算」と「積上げ計算」を理解し、有利なほうを選択しよう!
消費税の計算方法には、「割戻し計算」と「積上げ計算」の2つがあり、事業者はどちらか有利なほうを選んで消費税の納付額を計算します。
割戻し計算とは「1年間の税込合計金額」から税抜合計金額に割り戻し、消費税額を求める計算方法のことです。
積上げ計算とは、適格請求書等(インボイス)に記載された消費税の金額を合計して、消費税額を求める計算方法のことです。また、積み上げる消費税額は、適格請求書等ごとに端数処理を行った後のものです。
一般的に小売業など適格請求書等の発行が多い業種では、積上げ計算のほうが大きく消費税の納付額を抑えることができます。一方、割戻し計算は、適格請求書等(インボイス)に記載された消費税の金額をひとつひとつ合計していく必要がないので、事務負担は小さいです。
自社にとって、どちらを選択したほうがよいのかを考え、有利なほうを選択しましょう。
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