- 更新日 : 2025年1月31日
個人事業主は社会保険に加入できない?加入できる保険や経費計上について解説
個人事業主は、会社員や公務員が加入する社会保険には加入できません。しかしながら、健康保険制度や国民年金制度の加入義務があることから、会社員とは異なる管理者のもとで制度に加入することになります。どのような備えをしておくべきか、会社員と異なる部分を踏まえた対策などを解説します。
目次
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個人事業主は社会保険に加入できない?
社会保険とは、公的機関が管理監督者となって、国民の生活の安定などを図る制度です。
広義の社会保険には、狭義の社会保険と労働保険が含まれます。狭義の社会保険とは、健康保険、年金保険、介護保険のことです。一般的に、社会保険というと、狭義の社会保険を表します。
厚生年金には加入できない
会社員の場合、全国健康保険協会などが管轄する「健康保険」と日本年金機構が管轄する「国民年金」と「厚生年金保険」、40歳以上は「介護保険」に加入します。
個人事業主は、市区町村が管轄する「国民健康保険」、日本年金機構が管轄する「国民年金」、40歳以上は「介護保険」に加入します。
個人事業主は、国民年金に加入することから、会社員や公務員が加入する厚生年金には加入できません。
原則として労働保険(雇用保険・労災保険)には加入できない
広義の社会保険に含まれる労働保険は、労災保険と雇用保険のことです。労災保険は、勤務中の病気やケガを補償する保険で、雇用保険は失業時の生活と雇用の安定を支援する保険です。
原則として、個人事業主は、労災保険にも雇用保険にも加入できません。ただし、令和6年11月より、労災保険については特別加入が認められるようになりました。特定委託事業に従事するフリーランス(個人事業主)については、労災保険の加入が認められます。
個人事業主が加入できる社会保険
個人事業主が加入できる社会保険には、国民年金、国民健康保険、介護保険があります。
国民年金
国民年金は、20歳以上60歳未満の日本に住むすべての人に加入の義務がある公的保険です。国民年金には、個人事業主のほか、農業者や職に就いていない方、学生などが加入します。
国民年金は、厚生年金とは異なり、保険料が所得に応じて増減しません。毎年度決められた額(令和6年度は月16,980円)を納付します。月額400円の付加保険料を納付することで、将来受け取る年金の額を増やすことが可能です。
国民健康保険
国民健康保険制度は、原則としてすべての国民に加入義務がある保険制度です。
健康保険制度の保険者は、市町村と健康保険組合などに分かれます。会社員が加入するのは、健康保険組合か、組合のない中小企業であれば協会けんぽなどです。
個人事業主の場合、市町村の国民健康保険に加入します。開業している業種で国民健康保険組合があれば、組合の国民健康保険に加入することも可能です。以前の勤務先で2カ月以上継続して健康保険に加入していた場合は、2年間に限り任意継続できます。
介護保険
介護保険は、社会全体で介護を必要とする方を支援するための制度です。2000年に成立した介護保険法により、40歳以上の人は介護保険に加入する義務があります。
介護保険は、40歳から64歳までの加入者を第2号被保険者、65歳以上の加入者を第1号被保険者といいます。第2号被保険者は健康保険と同じ組織が徴収し、第1号保険者は原則として年金から市町村が徴収する仕組みです。
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個人事業主は社会保険に加入できない分をどのようにカバーすればよい?
個人事業主は厚生年金に加入できないため、国民年金分のみが給付されることになります。会社員と比べて将来の年金額が少なくなる可能性があることから、将来に備えた資産形成が重要です。
個人事業主が国民年金に上乗せして加入できる制度に、「国民年金基金」や「iDeCo」があります。国民年金基金は掛金に応じて将来受け取れる年金を増やせる制度です。iDeCo(個人型確定拠出年金)は私的年金の一種で、拠出した掛金を運用して、原則として60歳以降に運用資産を受け取れる仕組みです。
ほかにも、将来の備えとして、個人事業主が廃業時などに拠出した掛金に応じて共済額を受け取れる「小規模企業共済制度」などがあります。
労働災害に備える労災保険については、一部の業種において個人事業主の特別加入が認められるようになりました。一人親方などといわれる個人事業主をカバーしています。労災保険に加入できない個人事業主については、一部を民間の傷害保険などでカバーする方法も考えられます。
国民健康保険と国民年金保険には扶養の仕組みがある?
会社員や公務員が加入する健康保険や厚生年金には、扶養の仕組みがあります。所得が一定以下の配偶者がいる方については、配偶者を扶養に入れることができます。扶養に入れば、その配偶者は自己負担なしで健康保険や厚生年金に加入できる仕組みです。
一方、個人事業主に関しては扶養の仕組みがありません。納付義務者は世帯主ですが、加入者一人ひとりに保険料が算定されるため、家族全員分の支払いが必要です。そのため、個人事業主の方は社会保険料の負担が重くなる可能性があります。
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個人事業主本人や家族の国民健康保険料や国民年金保険料は、経費計上できる?
個人事業主の社会保険関連の経費としての取り扱いについて解説します。
経費計上はできないが控除の対象になる
個人事業主が支払う国民健康保険料や国民年金保険料、介護保険料は、事業の経費として認められません。いずれも、事業の必要経費には該当しないためです。
社会保険料は、必要経費には計上できない代わりに、所得控除が認められています。社会保険料控除として、その年に支払った国民健康保険料や国民年金保険料などの全額を所得から控除できます。
従業員を雇用した場合の社会保険料は経費計上できる
個人事業主が従業員を雇用する場合、雇用保険や労災保険の加入義務が生じます。健康保険や厚生年金も場合によっては加入が必要です。
社会保険と労働保険のいずれも、従業員を雇用することにより支払い義務などが生じることになります。そのため、個人事業主自身の社会保険料とは異なり、従業員の社会保険関係の事業主負担分は、事業の経費として計上できます。
個人事業主が経費計上できる保険
先述したように、国民健康保険料や国民年金保険料などの公的保険については、事業の経費に計上できません。それでは、公的保険ではない私的保険についてはどうでしょうか。
まずは生命保険についてですが、生命保険は所得控除のうち「生命保険料控除」で一部を所得から控除できるため、事業の必要経費として計上できません。法人の場合は扱いが異なります。
民間の保険には、生命保険のほかに損害保険もあります。何らかの損害を受けた際に、保険金が支払われる保険です。損害保険については、事業の必要経費と認められる内容であれば、経費に計上できます。例えば、事務所として使用している物件の火災保険料や、事業用の貨物自動車の自動車保険料などは事業の経費にできます。
個人事業主は会社員と同じ社会保険には加入できない
個人事業主は、国民健康保険や国民年金などに加入する義務がありますが、会社員と同じ社会保険制度には加入できません。加入できないことにより、将来の資産形成に不安が生じやすい、保険料の負担が増加しやすいなどの課題もあります。資産形成に関しては、iDeCoなどのほかの公的制度をうまく組み合わせて将来に備えましょう。

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