- 更新日 : 2025年2月27日
個人事業主は家族に給与を払うと節税になる?青色事業専従者給与も解説
個人事業主は家族で経営を行うことが多く、家族に給与を支払うケースもあります。もし家族の給与を経費にできれば節税になりますが、原則生計を一にする家族への給与は経費になりません。ただし、青色申告をしている場合は、例外もあるのです。
ここでは、個人事業主の家族への給与と経費の関連や青色事業専従者給与について解説します。
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目次
所得税の考え方
はじめに、所得税における家族の考え方について見ていきましょう。
所得税は個人にかかる税金のことです。ただし、事業所得においては、家族がひとつとなって事業を営んでいると考えます。例えば、お店を夫婦一緒に経営したり、子供に手伝ってもらったりしているように、代表として夫(または妻)が事業の確定申告をして、税金を納めているイメージです。
家族への給与を経費にできる?
次に、家族への給与を経費にできるのかどうかを見ていきましょう。
家族への給与が経費になる要件
原則、家族は生計を一にする(同じ財布で生活している)ため、給与は経費にできません。個人事業主が所得税の申告をする際、家族は配偶者控除や扶養控除など控除の対象として扱われます。
ただし、家族でも次の要件をどちらも満たせば、給与を経費にすることができます。
- 明らかに独立した別生計の家族を従業員として雇っている場合
- 他の従業員と同じ業務内容をこなし、同じ基準で給与を支払っている
青色申告の特典を使う
少しでも節税をするために、生計を一にしている家族への給料がある場合は、青色申告を行いましょう。青色申告をすると、「最大65万円の青色申告特別控除がある」「貸倒引当金の計上ができる」などの節税につながる特典が使えます。
青色申告特別控除とは、青色申告をするだけで使える控除のことです。個人事業主は経費を増やすことが難しい面もあるので、最大65万円の青色申告特別控除はかなり節税に有効な手段になります。
損失の繰り越しを行う
青色申告を行うと、青色申告特別控除以外にもとても有利な特典があります。それが「損失の繰り越し」です。
損失の繰り越しとは、事業で出た赤字を翌年以降3年間に繰り越し、翌年以降の黒字と今年の赤字を相殺できるというものです。例えば、今年30万円の赤字、翌年40万円の黒字の場合、繰越損失があるかどうかで、翌年の所得金額が次のように変わります。
青色申告せずに、繰越損失がない場合
翌年の黒字40万円が、所得税の対象です。
青色申告して、繰越損失がある場合
翌年の黒字40万円-前年の赤字30万円=10万円が、所得税の対象です。
このように、繰り越しの損失を行えば、かなりの節税効果が得られます。
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青色事業専従者給与で家族への給与が経費に
実は、生計を一にする家族であっても、給与を経費にする手段はあります。それが「青色事業専従者給与」です。
ここでは、青色事業専従者給与について詳しく見ていきます。
青色事業専従者給与とは
青色専従者給与とは、青色申告をしている個人事業主が、青色専従者に対して支払った給与を経費にできる制度のことです。ただし、家族を青色専従者にするには、次の要件を満たす必要があります。
- 青色申告者と生計を共にしている配偶者や親族であること
- 経費にしようとする年の12月31日現在で15歳以上であること
- 1年間で6か月以上、家族の事業で働いていること
- 事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署へ提出していること
青色事業専従者給与に関する届出書には、自分で決めた給与額を記載します。青色事業専従者給与を経費にするためには、青色事業専従者給与に関する届出書に記載した給与額を超えないように支払う必要があるのです。
青色事業専従者給与額の決め方
青色事業専従者給与は、上述した条件を満たせば必ず経費にできるというわけではなく、あくまで常識的な給与額である必要があります。あまりにも高額な給与を支払った場合は、経費で認められないことになります。青色専従者給与額の決め方には、主に次の方法があります。
求人誌や求人サイトなどを参考にする
求人誌や求人サイトで、同じ仕事であれば、通常どれくらいの給与となっているのかを調べ、それに合わせた給与額にします。
源泉徴収税(所得税)のない範囲の給料にする
青色専従者給与も、一般の従業員と同じく、源泉徴収の対象となります。そのため、月額給与が88,000円以上になると、毎月の給与から源泉徴収をしなければなりません。そこで、源泉徴収の対象とならないように、月額88,000円未満の給与額にします。一般的な扶養の範囲内の、8万円程度にすることも多いです。
青色事業専従者給与については、下記でも詳しく解説しています。ご参照ください。
青色事業専従者給与の節税効果
青色事業専従者給与は、大きな節税効果があります。具体例で所得税の節税効果を見てみましょう。
例)事業の所得金額400万円、配偶者への給料100万円の場合
※他の控除はないものとする
配偶者が青色事業専従者でない場合
配偶者が青色事業専従者でない場合は、給与は経費になりません。代わりに配偶者控除が適用されます。
課税される所得金額が362万円の場合の所得税率は、「20%-控除額427,500円」です。
配偶者が青色事業専従者の場合
配偶者が青色事業専従者の場合は、給与は経費になります。代わりに、配偶者控除は使えません。
課税される所得金額が300万円の場合の所得税率は、「10%-控除額97,500円」です。
節税額
296,500円-202,500円=94,000円
この例では、配偶者が青色事業専従者の場合は、青色事業専従者でない場合に比べて94,000円の節税になります。
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節税のためにも、扶養家族への給与や賃金がある場合は、青色事業専従者給与を使おう
原則、生計を一にする家族への給与は経費にはなりません。なぜなら、所得税において事業は、家族がひとつになって行うものと考えるからです。
ただし、青色申告を行って家族を青色事業専従者にした場合、その家族への給与は青色事業専従者給与として経費になります。家族への給与を青色事業専従者給与として経費にすることで、大きな節税となります。家族への給与がある場合は青色申告を行い、青色事業専従者給与を使いましょう。
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よくある質問
個人事業主の家族への給与は、経費になりますか?
生計を一にする家族への給与は原則、経費になりません。詳しくはこちらをご覧ください。
個人事業主の家族への給与を経費にする方法はありますか。
青色申告を行い、家族を青色事業専従者にすることで、青色事業専従者給与として経費にすることが可能です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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