個人事業主の「消費税」に関する見逃せない5つのポイント

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「消費税は複雑でなんだか不安……」
「そもそも支払う義務はあるの?支払うとしたら金額は?」

この記事では、こんな疑問を持っている個人事業主の方向けに5つのポイントに絞り消費税を解説していきます。
複雑そうな消費税ですが、理解すべきポイントがわかれば不安になることはありません。それでは1つずつ確認していきましょう。

個人事業主にとっての消費税は、ただ支払うだけの消費税ではない。

消費者にとって消費税は、ただ支払うだけの税金です。
しかし、個人事業主として事業者になると消費税を支払うだけでなく、得意先から消費税を預かっている(受け取っている)ことになります。

当然のことながら、預かっている消費税が大きくなると確定申告・納付が必要になってきます。

事業者が消費税を納めるかどうかの境界額は課税売上高1,000万円超!

消費税の確定申告は納税義務がある事業者(課税事業者)が行います。反対に消費税の確定申告を行う必要がないのは、納税義務が免除された事業者(免税事業者)です。

消費税の納税義務を判断するには、まず「基準期間」「特定期間」「課税売上高」という用語を理解しましょう。

用語内容
基準期間納税義務を判定する年の前々年こと
特定期間納税義務を判定する前年の1月1日~6月30日までの期間のこと
課税売上高・消費税が課税される売上高のこと
・基本的に消費税は含まれない税抜の金額

次に納税義務の判定は、以下の2つのステップがあります。

STEP1:基準期間の課税売上が1,000万円を超えるか?
はい→消費税の納税義務があり、確定申告を行う必要があります。
いいえ→以下のSTEP2へ
STEP2:以下の2つの条件に両方とも該当するか?
条件1:特定期間の課税売上が1,000万円を超える
条件2:特定期間の給与等支払額(給与、賞与等の支払額)が1,000万円を超える

はい→消費税の納税義務があり、確定申告を行う必要があります。
いいえ→消費税の納税義務がなく、確定申告を行う必要がありません。

上記の補足として、以下の2つに注意が必要です。
まず、開業初年度の場合には基準期間がないことに注意しなければいけません。
基準期間がない場合は、自動的に免税事業者となります。

もう1つの注意点としては、課税売上高が税抜金額なのか税込金額なのかに注意が必要です。
基準期間の課税売上高は、基準期間に課税事業者であった場合、消費税が含まれない税抜金額になります。
反対に、基準期間において免税事業者であった場合、課税売上高は消費税が含まれる税込金額となります。

わかりにくい税額計算を簡略化!場合によっては節税効果も得られる「簡易課税制度」

納付する消費税の計算方法は以下の2つがあります。

  • 原則(一般課税)
  • 簡易な計算方法(簡易課税制度)

それぞれの計算方法は以下の画像の通りです。

消費税の計算_イメージ画像

それぞれの違いは、仕入や経費で支払った消費税(課税仕入れ等に係る消費税額)の計算方法が違ってきます。

一般課税では、課税仕入れ等に係る消費税額が「実際に支払った消費税の金額」に近くなります。
それに対して簡易課税では、課税仕入れ等に係る消費税額は、課税売上高に係る消費税に「みなし仕入率」を乗じた金額とします。

時間の短縮が見込める簡易課税制度

簡易課税は、実際に支払った消費税を計算しないため一般課税に比べて時間を短縮することができます。
補足になりますが、仕入や経費は支払う回数が多い項目のため日々の経理や決算で消費税を集計するのに手間がかかってしまいます。この点、簡易課税制度では売上の消費税だけを集計すれば良いので、日々の経理や決算の手間を軽減できます。

簡易課税を使うと場合によって節税効果も!

実際にどういう場合が節税となるのか、具体的な事例を見てみましょう。

【例の前提】
消費税:10%
業種:小売業(みなし仕入率80%)
売上880万円(税込)うち消費税80万円
仕入550万円(税込)うち消費税50万円
【一般課税の場合】
売上の消費税80万円 - 仕入の消費税50万円 = 納付税額30万円
注:計算の便宜上、消費税と地方消費税をまとめて計算しています。
【簡易課税の場合】
売上の消費税80万円 - 仕入の消費税64万円(※) = 納付税額16万円
※売上の消費税80万円 × みなし仕入率80% =仕入の消費税64万円
注:計算の便宜上、消費税と地方消費税をまとめて計算しています。

この例の場合は、消費税を「簡易課税制度を適用したほうが、14万円節税できた」という結果になります。ただし、この14万円は収益計上されますので、個人の場合、所得が増え、所得税等が増加します。したがって、消費税は14万円の節税ができますが、所得は14万円増加します。

どうすれば簡易課税事業者となれるの?

簡易課税制度の適用スケジュール

簡易課税事業者となるには、以下の要件があります。

  • 基準期間の課税売上高が5,000万円以下であること
  • 簡易課税制度を適用しようとする課税期間の開始の日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出すること

これらの要件を満たしていれば、簡易課税制度を適用することができます。

なお、簡易課税の届出書は不備があると却下されることがあるので、なるべく早めに提出しましょう。

事業が急成長!課税売上高5,000万円を越えてしまったときは

基準期間の課税売上高が5,000万円を超えてしまったときは、簡易課税制度を適用できず、一般課税が自動的に適用されます。
しかし、その後に売上高が減って基準期間の課税売上高が5,000万円以下になった場合は再度、簡易課税制度を適用することができます。
理由は、一度自動的に一般課税が適用されたからといって「消費税簡易課税制度選択届出書」の効力が失効するわけではないためです。

納める消費税額によっては、申告や納付回数が1回では済まない場合も!

消費税の中間申告は、必要になる場合と任意で行う場合の2つがあります。

まず、消費税の中間申告が必要になる場合は、「直前の課税期間の確定消費税額(地方消費税額を含まない年税額)が48万円を超えた場合」です。
直前の課税期間の確定消費税額によって中間申告・納付の回数が異なります。
詳細は以下の表の通りです。

直前の課税期間の確定消費税額 中間申告の回数
48万円以下不要
48万円超から400万円以下年1回
400万円超から4,800万円以下年3回
400万円超から4,800万円以下年11回

次に消費税の中間申告を任意で行う場合は、直前の課税期間の確定消費税額が48万円以下の事業者の方に限られます。さらに、任意に中間申告書(年1回)を提出する旨を記載した届出書を提出が必要です。
この届出をしなければ、任意の中間申告・納付を行うことができません。

消費税にかかわる届け出書類一覧とその役割

最後に、消費税にかかわる届出書類で個人事業主にとって特に重要なものをピックアップしました。内容と役割を確認しておきましょう。

消費税課税事業者届出書(基準期間用)

課税売上高が1,000万円を超えた場合は、わかった時点で速やかに提出しましょう。

国税庁:[手続名]消費税課税事業者届出手続(基準期間用)

消費税課税事業者届出書(特定期間用)

基準期間の課税売上高が1,000万円以下であったものの、特定期間で、課税売上高が1,000万円を超え、かつ給与等支払額も1,000万円を超えた場合に提出します。

国税庁:[手続名]消費税課税事業者届出書(特定期間用)

消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書

これまで課税事業者であった人で、基準期間の課税売上高が1,000万円以下になった場合に免税事業者となるために必要な届出書です。基準期間の課税売上高が1,000万円以下になったことがわかった時点ですぐに提出しましょう。
補足として、そもそも免税事業者である人は、この届出書を提出する必要がありません。

国税庁:[手続名]消費税の納税義務者でなくなった旨の届出手続

消費税簡易課税制度選択届出書

簡易課税制度を適用する場合に提出する届出書です。
提出期限が、「適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで」となっており、早めに提出しましょう。

なお、消費税簡易課税制度選択届出書を提出すると、事業を廃止した場合を除き、2年間継続して、消費税の確定申告を行うことになります。

国税庁:[手続名]消費税簡易課税制度選択届出手続

まとめ

これまで個人事業主の方向けに消費税の5つのポイントを解説しました。
その中でも特に重要なのが、「納税義務の判定」と「消費税の計算方法」です。
この2つを理解しておくことで消費税に関する不安はなくなると思います。

また、消費税の確定申告の前に、消費税を集計できるような経理をしておくと確定申告の際に効率化することができます。軽減税率導入後は、標準税率10%と軽減税率8%をそれぞれ区別できるように経理を行っていきましょう。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:並木 一真(税理士/1級FP技能士/相続診断士/事業承継・M&Aエキスパート)

並木一真税理士事務所所長
会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。



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